ストーリー相撲

大相撲 "呼出し"のすべて

2019-11-17 午後 0:00

大相撲を支える裏方の中でも行司と並んで土俵の進行に大きな役割を果たすのが呼出しです。対戦力士名の呼び上げ、懸賞幕の出し入れに加えて本場所や地方巡業の土俵作り、触れ太鼓に一番太鼓、跳ね太鼓と専門性の高い技で我々を魅了してくれます。粋な裁着袴(たっつけばかま)姿で江戸情緒あふれる呼出しのすべてをお伝えします。

呼出しは立て呼出しから序ノ口呼出しまで9階級

カレンダー用に十両呼出し以上が記念撮影

 

日本相撲協会に所属する呼出しは定員が45名で現在は42名が所属しています。新規採用は義務教育を終えた19歳未満の男子で、序ノ口から三役までは力士と同じ7階級で、さらに副立呼出し、立呼出しまで9つの階級に分けられます。十両呼出しは勤続15年以上で成績優秀、幕内呼出しは勤続30年以上で成績優秀などの条件で昇進が決まります。

土俵作り

4日間かけて全員が魂を込めて作る

【1日目】土俵作りは壊すことから始まる

昭和60年の国技館の土俵の土台が姿を見せる

 

本場所の初日が5日後となる火曜日から土俵作りが始まります。まず前の東京の本場所に使われ固くなった土俵をクワで突き崩すことから土俵作りが始まります。およそ20センチ下までそぎ落とすと、昭和60年、国技館が作られたときから土台として使われてきた土が姿を見せました。壊した土はトラックで運び出されます。使う土は40トンで埼玉県川越市から採取した新しい土を元の高さまで積み上げ、並行して俵も作ります。

【2日目】 勝負俵、徳俵、角俵を埋める

大たたきで一斉に土俵を固める

 

特別に注文して作った大たたき、小たたきという道具を使って土俵の上や側面と丁寧に固めていきます。土俵が固まったら勝負俵を埋め込むために土俵の表面をクワで円形に掘り起こしていきます。勝負俵はビールびんでたたきながら湾曲をつけて埋めます。徳俵と勝負俵を取り囲む土俵の外周の角俵も埋めていきます。

最後まで手を抜かずに土俵を磨き上げて仕上げる

【3日目】 土俵の表面はこてで磨き上げる

土俵の表面をこてで磨き上げる

 

土俵の四面に一斉に階段を刻みます。力士の力水を流す水はけ口を作り、階段の上がり俵10本をビールびんでたたいて仕上げていきます。土俵の表面をこてで磨き上げ何人もの呼出しが一心不乱に磨き続けます。力水を入れる水桶を乗せるための水桶俵を置くと、いよいよ土俵の完成が近いです。

【4日目】 責任者志朗が最後の仕上げ

土俵作りの責任者志朗が最後の仕上げ

 

吊り屋根を土俵近くまで下ろして、四隅に四方を守る四神に由来する四色の房を取り付けます。青房は東北で青龍、白房は西南で白虎、赤房は東南で朱雀、黒房は西北で玄武です。土俵上では最後の仕上げ、幅6センチ、長さ90センチの2本の仕切り線が70センチの間隔を置いて白いエナメルペンキで塗られます。土俵作りの責任者三役呼出しの志朗が最後の仕上げを行い、秋場所で使う土俵が完成しました。

呼び上げ

力士に負けず気合いを入れる

東西の力士を呼び上げる幕内呼出し幸吉

 

呼出しの土俵の所作で最も目立って華やかなものが呼び上げです。裁着袴に白扇を持ち、独特の節回しで東西の力士の四股名を呼び上げます。奇数日は東から、偶数日は西からとなります。十両呼出し以上は取組表の割に名前が載り、2番呼び上げます。立呼出しは1番だけです。幕内呼出しの幸吉はうがいや手洗いを怠らず声の調子を整えているということです。「力士にはいい相撲を取ってもらいたいし、自分も負けないように気合いを入れて呼び上げています」と呼出しの心意気を語ってくれました。

懸賞幕

土俵が一瞬、懸賞幕で華やかになる

注目の取組では懸賞幕が何回も土俵を回る

 

幕内の人気力士の取組には企業などが本場所の15日間、懸賞を懸けます。場内アナウンスのコメントと土俵を一回りする懸賞幕で、観客に商品やキャッチフレーズをアピールしています。懸賞幕を披露するのも土俵上での呼出しの大切な仕事です。適切な間合いとスピードで土俵を回って素早く姿を消します。まるで忍者のような機敏な動きです。秋場所千秋楽の結びの一番には52本の懸賞が懸けられていました。土俵を何周もする大量の懸賞幕を裁くのも、呼出しの熟練の技の見せどころです。

太鼓

一番太鼓、跳ね太鼓と妙技に聞きほれて

一番太鼓を打つ序ノ口呼出し広

 

国技館の正門脇に建つ高さ16メートルのやぐら。エレベーターで上まで登って打つのが一番太鼓と跳ね太鼓です。一番太鼓は初日から千秋楽まで15日間、午前8時から30分間打ち鳴らされます。

 

跳ね太鼓を打つ幕下呼出し啓輔

 

午後6時前、弓取り式が終わって打ち出しと同時に打つのが跳ね太鼓です。国技館から観客が四方に散っていく様子を太鼓の音で表現して「テンデンバラバラ、テンデンバラバラ」と聞こえるとも言われています。

 

この記事を書いた人

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北出 幸一

相撲雑誌「NHK G-Media大相撲中継」編集長。元NHK記者。昭和の時代に横綱千代の富士、北勝海、大乃国らを取材し、NHKを定年退職後に相撲雑誌編集長となる。

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