特集 大鵬vs白鵬どっちが強い!?幻の取組をAIで実現

古事記や日本書紀にも登場し、1500年もの間、脈々と受け継がれてきた相撲。これまで活躍してきたあまたの力士たちの中でも、頂点を極めたのが「横綱」という絶対的な存在です。
もし歴代の横綱たちを対戦させたら一体誰が勝つのか?相撲ファンなら一度は想像したことがあるかもしれませんね。
今回はそんな横綱同士の夢の取組を、AIの技術を使って実現!現役の横綱・白鵬や平成の相撲ブームを巻き起こした貴乃花、さらには往年のスター横綱までをCGで蘇らせます。彼らの勝負の行方はいかに…!?
これまで誕生した横綱は、たった72人!
長い歴史を持つ相撲ですが、横綱まで上り詰めた力士はわずか72人。ちなみに、現存する最古の横綱の映像は、明治33年に撮影された第17代小錦八十吉の土俵入りの様子です。
ただし、AIを使って取組を再現するには細かいデータが必要になるため、今回は抽出が可能な映像が残っている44代栃錦以降の力士に限定して選出されました。
過去のデータをもとにAIが勝率を計算
AIに学習させるデータは、3役以上に対しての15勝、対戦相手に関わらず15敗の合計30取組。それぞれ横綱になってからの記録となっています。
各取組の相手との身長比や体重比のほか、立ち合い速度、取組時間、決まり手など集めるデータは多岐に渡ります。どんな相手にどんな勝ち方をしたのか、どんな風に負ける傾向があったのかも含めてAIに学習させて、それぞれの力士のモデルを作り上げていきます。
そして、力士同士を対戦させる際には、立ち合いから体がぶつかるまでを“前半”、それ以降の勝敗が決まるまでを“後半”として取組を組み立てていきます。
今回の番組で開発した「どすこいAI」では、試合の組み立て方や得意技、再現した力士同士の相互点(比較)などで勝敗が決まるようになっています。さらに、対戦前に立ち合いのスピードや長期戦・短期戦などの戦略を反映させることもでき、それも勝敗に影響するようになっています。
早速、頂点を極めた力士たちの対決を見てみましょう。
夢の対決が実現!白鵬VS大鵬
最初の対戦は第48代横綱・大鵬VS第69代横綱・白鵬!
1960年11月 九州場所で初優勝し、賜杯を手に喜ぶ大鵬
大鵬(身長187センチ/体重153キロ)は、大きな体と甘いマスクを持ち合わせ、一気に高度成長期のヒーローとなりました。当時の子どもたちの人気トップ3に「大鵬、巨人、卵焼き」と数えられるほど人気があった力士です。関節が柔らかく自由自在な相撲と、もろ差し(取り組みの体勢の1種)が得意なのが特徴です。
福岡市博多区の住吉神社で土俵入りを奉納する白鵬
対するは、1132勝(2019年10月現在)優勝42回の第69代横綱・白鵬(身長192センチ/体重154キロ)。取組では、長身ながらも低い姿勢の鋭い立ち回りとスピーディーな変わり身を武器に、先人たちの記録をことごとく塗り替え、現在も前人未到のいただきを歩み続けています。
ちなみにモンゴル出身の白鵬は昭和の大スターだった大鵬に憧れ、「鵬」の字をもらったのだそう。そんな両者の対決、どちらが勝つのでしょうか?
【どすこいAI判定】
取組は大鵬が先手を取る設定となっていましたが、過去のデータで白鵬は先手を取らない方が勝率が高くなっていたため、AIが出した結果では前半は白鵬が60.5%と優勢に。
そして後半、勝負は短期戦に。前半の勢いで主導権を握った白鵬ですが、短期戦の勝負が苦手な傾向があるので、この時点で勝率を見ると反して短期戦が得意な大鵬が上昇しています。これで大鵬の逆転なるか!と思いきや…
前半の差を縮められず、土俵ぎわの突き落としを決められてしまいます。勝率49.5%と50.5%で白鵬の勝利となりました。
平成のスターと現役最強がぶつかり合う!白鵬VS貴乃花
次も現役最強の力士・白鵬が続投!
2003年1月 土俵入りする貴乃花
対するは、第65代横綱・貴乃花(身長185センチ/体重160キロ)です。若干22歳で横綱に昇進した貴乃花。自分の持ち味を活かした積極的な相撲が特徴で、不利な体勢になっても決して諦めない姿は多くのファンを魅了し、平成相撲ブームの主役となりました。そんな不とう不屈の大横綱と白鵬がいざ対決!
【どすこいAI判定】
白鵬は自分よりも少し背が低い相手に勝つ確率が高いため、前半戦は白鵬の勝率が62.5%と優勢です。
しかし、今回は貴乃花の得意な長期戦の設定となっていたため、徐々に貴乃花がスコアを伸ばしていきますが…
白鵬得意の左からの上手投げが入り、前半の差をひっくり返すことができず白鵬の勝利!僅差のスコアで白熱した試合を見せてくれました。
さすが白鵬、数多くの記録を塗り替えてきただけあってどんな相手にも屈しません。
多彩な技を持つ同士が対決!朝青龍VS千代の富士
最後の取組は、第68代横綱・朝青龍と第58代横綱・千代の富士!
2008年3月 気合を入れる独特のポーズで会場を沸かせた朝青龍
モンゴル人初の力士で角界一の破天荒で知られる朝青龍(身長184センチ/体重148キロ)は、技の多彩さと切れ味のよさで土俵を支配し、3年半ものあいだ一人横綱として相撲会を盛り上げ続けました。
1985年1月 千代の富士の土俵入り
その対戦相手は、引き締まった筋肉と相手に襲いかかる取り口から「ウルフ」との異名を持った千代の富士(身長183センチ/体重127キロ)。必殺技・ウルフスペシャルをはじめスピード感あふれる取組でこれまでの相撲のイメージを一新し、日本中をウルフフィーバーに巻き込みました。
さて、両者の勝敗は…?
【どすこいAI判定】
立ち合いスピードの平均データが上回る千代の富士が先手を取り、前半は千代の富士が勝率100%と圧倒します。ただ今回は長期戦という設定になっていたため、長期戦が得意な朝青龍の勝率が徐々に上がっていきました。
しかし、前半の千代の富士の優位を覆すまではいかず、千代の富士が上手出し投げを繰り出し勝利!後半の勝率は千代の富士68.5%、朝青龍31.5%という結果に終わりました。
現実では決して見ることのできない夢の取組。CGの映像とはいえ、好きな力士が登場すると本気で応援したくなっちゃいますね!