NHK sports

高校野球 仙台育英が愛工大名電に勝ちベスト4進出

野球 2022年8月18日(木) 午後4:54
高校野球 仙台育英が愛工大名電に勝ちベスト4進出

夏の全国高校野球は、18日に準々決勝が行われ、第1試合は宮城の仙台育英高校が愛知の愛工大名電高校に6対2で勝って、7年ぶりのベスト4進出を決めました。


仙台育英は1回、先頭バッターのフォアボールからチャンスを作って、犠牲フライで1点を先制しました。

2回には2アウト三塁の場面で9番 尾形樹人選手がタイムリーとなるバントヒットを決めると、すかさず盗塁して続くバッターのタイムリーヒットで3点目のホームを踏むなど、そつのない攻撃で5回までに6点をリードしました。

投げては今大会初めて先発した斎藤蓉投手が5回までヒット1本に抑える好投を見せ、バックも4つのダブルプレーを取るなど堅い守りで愛工大名電の打線を2点に抑えました。

仙台育英は愛工大名電に6対2で勝って、準優勝した2015年以来7年ぶりのベスト4進出を決めました。

一方、愛工大名電はここまでの3試合で40本のヒットを打ち25得点と好調だった打線が仙台育英の2人の投手の前に終盤の2得点に抑えられ、41年ぶりのベスト4進出はなりませんでした。


仙台育英 選手監督談話


【須江航監督】
準決勝に進んだ仙台育英高校の須江監督は「控えの選手たちが対戦相手を分析し準備してきたことをすべて出すことができました。チーム一丸の攻撃でした。相手は早めの継投で的を絞らせないようにピッチャーをつぎ込んでくる中で選手一人一人がよく対応してくれたと思います」と選手たちをたたえました。
また、5回までをヒット1本に抑えた先発の斎藤投手については「強気で向かっていった姿勢がよかったです。もう少し投げさせてあげたかったですが、けが明けなので最初から代えると決めていました。よくゲームを作ってくれたと思います」と話していました。
そして準決勝に向けて「きょうは5人のピッチャーのうち2人で投げきってくれて、残り3人の調子も非常によいので万全の態勢で臨めます」と意気込んでいました。
【斎藤蓉投手】
斎藤蓉投手は先月左ひじを痛めて、宮城大会ではベンチ入りできませんでした。
先発して5回をヒット1本、無失点に抑えた18日のピッチングについて斎藤投手は「この夏初めての先発だったので、少し緊張しましたが、甲子園のマウンドは固くて投げやすかったです。フォアボールを出すことなく、自分の特徴を最大限出せてよかったです」と振り返りました。
そのうえで次の試合に向け「自分が軸になってチームを勝たせたいと思っています。これからも目の前の試合に向けた準備に集中して、一戦一戦臨みたいです」と意気込んでいました。
【積極走塁で相手投手を攻略 2番の山田脩也選手】
山田選手は最初の盗塁を決めた1回の攻撃について「簡単に点を取れるピッチャーではないので、1回からこわざを使いながら走塁できていたので点数を取りに行くことができました。1回から打っていって、先制点をまず取れてよかったと思います」と振り返りました。
さらに山田選手は、ショートの守りで4つのダブルプレーすべてに絡んだことについて「配球ごとにポジショニングをずらし、キャッチャーを見ながら微調整をしました。アウトがしっかり取れたのでよかったと思います」と話しました。
そのうえで、7年ぶりの進出となった準決勝について「きょうの試合のようにどんどん打てるわけではないと思いますが、仙台育英のテーマである守り勝つことを意識して、リズムを作りながら先制点を取れるように頑張っていきたいと思います」と意気込みを話しました。


愛工大名電 選手監督談話


【倉野光生監督】
愛工大名電の倉野監督は「相手打線がエースの有馬の対策を徹底していて、流れをつかめずに防戦一方になりました。野球の怖さや難しさを感じました」と振り返りました。
序盤から相手の機動力に苦しみリードされる展開になったことついては「バッテリーを揺さぶる戦い方をされてしまった。私自身も、もうすこし選手たちにいいアドバイスができていたらと思います」と悔しそうに話していました。
そのうえで、エースとして、またキャプテンとしてチームを引っ張った有馬投手について「投打でチームを引っ張り、真のリーダーシップを発揮してくれました。これからも野球選手として非常に楽しみです」と期待を寄せていました。
【2回で降板 先発の有馬伽久投手】
有馬投手は「相手の力強い打線に立ち上がりから点を取られてしまいました。送りバントや積極的な走塁をされてしまい、バッターに集中できませんでした」と試合を振り返りました。
最後のバッターになったことについては「チームメイトが自分に打席を回してくれましたが結果が出せず、迷惑をかけてしまいました。悔しい気持ちが大きいです」と話しました。
今後については「甲子園で戦い、悔しい思いが残りました。それを生かして大学でも野球を頑張りたいです」と話していました。
【山田空暉選手】
山田選手は、相手の打線に序盤に足を絡めて得点されたことについて「仙台育英は、走塁の隙がなく、外野のヒットでも二塁から一気にホームにかえってきます。地面がしっかりしていない中であの走塁ができるので、自分たちも少し早く投げないといけないと、少し焦りも出て送球が少し浮くなどにつながったと思います」と話していました。
また試合について「悔しい気持ちというよりはやりきった、後悔はないという気持ちが大きい」と振り返ったうえで、亡くなったチームメイトの瀬戸勝登さんについて触れ、「勝登のこともあって、自分たちは大会前に落ち込んで全然練習できない時期もあったのですが、勝登の名前のように勝ち登って甲子園に行くぞという気持ちでやってきて、甲子園でも3勝してベスト8に入ることができて、やっぱりそこで気持ちが切れなかったというのは自分たちの強みでした。しっかり戦いきれたのはよかったと思います」と話していました。
そして9回2アウトでライトへのタイムリーツーベースヒットを打った場面で、打席に入った時のことを振り返り、「打席に入る前に空を見て、勝登とともに打つと考えて打席に入りました。しっかりと振り抜いたことで超えたという気持ちと、勝登に『力を貸してくれてありがとう』という気持ちでした」と話しました。
【岩瀬法樹投手】
愛工大名電の岩瀬投手は、チームメイトだった瀬戸勝登さんが亡くなったことに触れ「勝登の分まで“勝ち登る”ことができず、とても悔しい思いです」と話しました。
また、相手の打線に序盤に足を絡めて得点されたことについて「相手の選手たちのビデオを見て小技を使ってくることは分かっていました。ランナーが出た時の対応などチームメイトで話し合っていたのですが、小技もすべて相手の思いどおりになってしまいました。スイング力もあったので、ストレートも簡単に打ち返されてしまって、すごい打撃力の高いチームだなと思いました」と話していました。


仙台育英 “ふだん着”の野球でベスト4進出


仙台育英高校は、プレッシャーのかかる準々決勝の舞台で“ふだん着”の野球を存分に発揮して7年ぶりのベスト4進出を決めました。

ことしの仙台育英の野球を象徴する2つの数字があります。

「盗塁24個と送りバントなどの犠打17個」

いずれも宮城大会5試合での数字で、いかに機動力と小技を生かした攻撃を仕掛けてきたかがわかります。

18日の準々決勝でも、序盤からこの“ふだん着”の野球をいかんなく発揮しました。
2回は1アウトからヒットで出塁した7番・齋藤陽選手を2アウトになっても得点圏にと、送りバントで二塁に進めます。
齋藤選手は、続く9番の尾形樹人選手の打席の初球で、相手のキャッチャーがわずかにボールをはじいたのを見逃さず、スタートを切って三塁に到達、2アウト三塁とチャンスを広げました。

この場面で須江航監督は、愛工大名電のサードが深い位置に守っていたことを見逃しませんでした。
ピッチャーが左投げで三塁線へのバント処理が難しい点を考慮して、尾形選手に出したサインはセーフティーバント。尾形選手は三塁線に絶妙に転がし、タイムリーとなるバントヒットでその采配に見事応えました。

さらに尾形選手は、すかさず盗塁を仕掛けて二塁に進み、タイムリーヒットで3点目のホームを踏みました。
続く3回は、4番の遠藤太胡選手が地方大会から通じて初めての盗塁を決めて、チャンスを作りました。
相手のまずい守備も見逃さず、この回はシングルヒット2本で2点を追加し完全に主導権を握りました。

尾形選手は、「自分たちはそんなに長打を打てないので、いかに相手の隙をついて次の塁に進むかだと思います。それができてよかったです」と胸を張り、須江監督も「身の丈に合わないことをするのではなく、何で勝負するかを理解して、思考が整理されています」と“ふだん着”の野球に絶対の自信を示しました。

機動力と小技を絡めた攻撃で2005年のセンバツで優勝した経験がある愛工大名電の倉野光生監督も、「バッテリーが揺さぶられてしまいました。私が十数年前にやっていた攻撃をやられてしまいました」と思わず脱帽の仙台育英の攻撃。

磨き上げた“ふだん着”の野球で東北勢として初めての優勝を目指します。


愛工大名電 41年前のOBもスタンドから声援


41年ぶりのベスト4にあと一歩届かなかった愛工大名電。
アルプススタンドからはあの夏も声援を送り続けたOBが後輩のプレーを見守りました。

愛工大名電は校名が名古屋電気だった41年前の夏、のちにプロ野球・西武などで活躍する工藤公康投手を擁し、ベスト4まで進みました。

当時、1年生の部員で三塁側のアルプススタンドで声援を送った石黒邦治さん(57)は今、週に2回、後輩たちに走塁や守備を教えるOBコーチです。

41年前に目の前で見た舞台にあと一歩と迫っている後輩たちの試合を再びアルプススタンドで見守りました。

石黒さんは試合前「3年生エースを中心にここ一番での集中力で勝ち上がるところは同じ。全国制覇を目標に練習に取り組んできました」と41年前のチームと現在のチームを重ね合わせていました。

試合は序盤から機動力を絡める相手打線の前にリードされる展開になります。

石黒さんは、戦況を見つめながら「後半どう勝負するかが大事。戦っている選手たちに焦りはないと思います」と話し、あのときとは違い声を出しての応援ができないスタンドで静かに見守りました。

後輩たちは終盤、石黒さんの期待に応えます。
点差が開いてもワンプレー、ワンプレーを大切にしながら8回に1点、9回に1点を返していきます。

選手たちを見つめる石黒さんの拳にどんどん力は入っていきました。
しかし、最後はチームを引っ張り続けたキャプテンの有馬伽久投手が内野ゴロに倒れ、試合が終わりました。

スタンドに向かって整列し頭を下げた選手たちを大きな拍手で迎えた石黒さん。
「この世代はコロナの影響による苦労がありました。個性とチーム力でよくここまで勝ち上がってくれました。『ベスト8まで来てくれてありがとう』と伝えたいです」と選手たちへの精いっぱいのねぎらいのことばを送りました。

試合後、有馬選手は石黒さんについて、「夏の大会に臨む前に『信じて楽しんでこい』と声をかけてもらいました。『ありがとうございました』と伝えたいです」と感謝のことばを口にしました。

石黒さんと選手たちの夏は終わりました。


関連キーワード

関連ニュース

関連特集記事