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高校野球 愛工大名電 亡き友へ「“勝”ち“登”れ頂点に」

野球 2022年8月17日(水) 午後9:33
高校野球 愛工大名電 亡き友へ「“勝”ち“登”れ頂点に」

49の代表校で始まった夏の全国高校野球も勝ち残っているのは8校に。ベスト4をかけた準々決勝が18日に行われます。
41年ぶりにベスト8に進んだ愛知の愛工大名電高校の選手たちは、亡きチームメートへの思いを胸に躍進を続けています。
(甲子園取材班・中村拓斗)

突然失った仲間


3年生だった瀬戸勝登さん。
地元 愛知出身でポジションは外野手、春の東海大会では背番号「20」でベンチ入りしていました。ひたむきに野球に打ち込み、ベンチでは盛り上げ役を担う。チームになくてはならない存在でした。

しかし、最後の夏を控えた6月。一時帰宅していた実家で突然倒れ、亡くなりました。心不全でした。

「ことしの3年生は非常に仲がいいんです」
倉野光生監督は、チームワークこそ、ことしの愛工大名電の強さの秘けつだと考えていました。



そのチームに突然訪れた仲間との別れ。
瀬戸さんの死を選手たちは、すぐには受け入れることができませんでした。

夏の愛知大会が間近に迫るなか、もう野球ができなくなるんじゃないかというところまで落ち込んだといいます。


別れではなく一緒に


そんなチームを、もう一度戦う集団へと生まれ変わらせたのは、瀬戸さんでした。瀬戸さんの名前は“勝登”。

その名のとおり愛知大会を「“勝”ち“登”る」ことを目標に「勝登と一緒に甲子園に行こう」と再スタートを切ったのです。
選手たちの帽子のつばには「勝登と共に」ということばが刻まれました。


「勝登と共に」甲子園へ


愛知大会では、選手一人ひとりが長打をねらうのではなく、つなぐ野球に徹しました。

決勝では、なんと18本のヒットすべてがシングルヒットと、まさに全員野球を実践して、全国最多の175チームの中から甲子園出場をつかみ取ったのです。


親友のグラブを借りて


瀬戸さんは、3年生みんなと仲がよかったといいます。
葬儀のあと瀬戸さんの父 洋介さんのもとを訪れ「グラブを貸してほしい」と頼み込んだ選手がいました。
3年生で同じ外野手、主に7番を打つ美濃十飛選手です。

「勝登とまだ一緒に野球がしたいんです」

そう話して、瀬戸さんの愛用のグラブを借り受けた美濃選手は、そのグラブを手に甲子園のグラウンドに立つことを誓いました。



(美濃十飛選手)
「ピンチの時や不安になった時に(瀬戸さんを)思い出すことで、『1人じゃない』、『一緒に戦うぞ』と気持ちが落ち着きます。見守っていてくれるような存在です」


“勝”ち“登”れ頂点に


そして始まった甲子園の戦い。1回戦の相手は石川の星稜高校です。

アルプススタンドで応援する控えの部員や保護者たちの背中には、チームを突き動かすことば「勝ち登れ頂点に」という一文が刻まれていました。

そのなかには瀬戸さんの父、洋介さんの姿もありました。



(勝登さんの父 瀬戸洋介さん)
「(選手を見ると)勝登を感じるというか、選手たちに勝登、勝登って言ってもらえて、うれしい気持ちと感謝しかないですね。勝登も同じ気持ちだと思います。最初は球場に行くのは、つらいと思っていましたが、選手のプレーと笑顔に力をもらっています。一つ一つのプレーに感謝です」



試合が始まると、愛工大名電の打線がつながります。

1回、3点を先制してなお1アウト二塁三塁で、打席には7番の美濃選手。
引き付けて打った当たりはセンターに抜け2点タイムリーヒットとなりました。
ファーストベースに立った美濃選手は、空に向かって両手を合わせました。



「打たせてくれてありがとう」
一緒に戦うと誓った瀬戸さんへの思いを体で表現したのです。

これに続けと、選手たちは打席に入る時、ヒットを打った時、得点した時、ピンチの時、さまざまな場面で空を見上げました。

「ありがとう」「力を貸してくれ」…と。



愛工大名電の打線は、この試合15安打で14得点と何かに背中をおされるように打線がつながり、星稜高校を圧倒しました。



(倉野光生監督)
「甲子園はなかなか打たせてくれないところだと、私はずっと思っていました。けれど、ことしの選手たちは甲子園でよくこれだけヒットが出るんだなと。選手たちの思わぬ力にびっくりしました」


頂点までは「あと3勝」


愛工大名電は、この勢いのまま2回戦の青森 八戸学院光星高校戦では4点差を追いつき、最後は延長戦を制しました。

さらに強打の大分 明豊高校との3回戦はキャプテンでエースの有馬伽久投手が2失点に抑え、打線は5点をあげて快勝しました。
試合を重ねるごとに強さを増して、41年ぶりにベスト8進出を果たしました。



この夏、残る試合は最大でも3試合。

亡き仲間とともに「“勝”ち“登”れ頂点に」

まず準々決勝で宮城・仙台育英高校に挑みます。


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