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【詳しく】外交的ボイコットとは アメリカの思惑 中国の反応は

2021-12-11 午後 06:45

  

アメリカが、北京オリンピックとパラリンピックに政府関係者を派遣しない「外交的ボイコット」を表明しました。 そもそも“外交的”なボイコットとは何なのでしょうか?アメリカのねらいは?中国の反応は?日本をはじめ国際社会は?最新情報とともにまとめました。

“外交的ボイコット”とは?


決められた定義のようなものはありませんが、政府関係者を開会式などに派遣しないことで、外交手段の一つです。

今回、このことばが使われるようになった発端は、ことし5月、中国の人権状況に批判的な議会の有力者で、民主党のペロシ下院議長が「外交的ボイコット」を検討すべきだと主張したことです。

バイデン政権は、この「外交的ボイコット」ということばを公式には使っていないのですが、そのように伝えられることを否定もしていません。


オリンピックめぐるボイコット 過去には?


過去には、政府関係者どころか選手団を派遣しない「ボイコット」が行われたことがあります。

それが1980年夏のモスクワ大会です。

その前年のソビエトによるアフガニスタンへの軍事侵攻に抗議するため、アメリカや日本、それに当時の西ドイツなど西側諸国が選手団を派遣しませんでした。



その4年後の夏のロサンゼルス大会ではソビエトや当時の東ドイツなど東側諸国がボイコットし、冷戦で対立する両陣営によって選手たちがオリンピックに参加できませんでした。

ボイコットについて、USOPC=アメリカオリンピック・パラリンピック委員会のサラ・ハーシュランドCEO=最高経営責任者はことし4月の会見で「アスリートに悪影響を及ぼすだけでなく、国際問題の解決にも効果的でないことが明らかになっている。若い選手たちを政治の駆け引きに使うべきではない」と述べ、政治的対立にスポーツ選手を巻き込まないよう求めました。


バイデン政権のねらいは?


「中国の人権状況を容認しない」という強い姿勢を国内外に示すことです。

ホワイトハウスのサキ報道官は「人権侵害が行われている状況下では通常どおりに対応するわけにいかないというメッセージになる」と強調しています。

バイデン政権は、もともと人権重視を掲げていて、今回の「外交的ボイコット」も新疆ウイグル自治区などでの人権状況を理由に挙げています。

新疆ウイグル自治区に関しては、ウイグル族などに対して投獄、拷問などが行われ、人権の抑圧が続いているとしています。



さらに、先月には、中国で、女子プロテニスの選手が前の副首相から性的関係を迫られたと告白したあと、行方がわからなくなるという問題が起き、中国の人権状況に改めて注目が集まり、中国に厳しい姿勢を示すべきという声が高まっていました。

こうした中でバイデン政権が「外交的ボイコット」を判断するのは確実な情勢でした。

ただ、アメリカのメディアのなかには「外交的ボイコット」は象徴的なものであり、過去のボイコットも相手国の態度や行動を変えることにつながらなかったという見方を伝えているところもあります。


このタイミングで表明した理由は?背景には何が?


アメリカ国内では、議会が与野党ともに中国に対して強硬な姿勢で臨むよう政権に求めていました。

そのうえ、国内で対中感情が悪化していることもあり、バイデン政権として中国に「弱腰」ととられるような政策はとれないという事情があります。



アメリカは今週、日本などおよそ110の国と地域を招待して「民主主義サミット」を開く予定で、中国の人権に対する厳しい姿勢を打ち出すことにもつながると考えたのです。

その一方、バイデン政権は今回の表明を先月行われた中国の習近平国家主席との初の首脳会談の前に行うのではなく、会談後に行いました。

さらに、アメリカ国内の専門家は、バイデン大統領が今回の表明に先立ち「外交的ボイコット」を検討していると明らかにしたことが、中国側が寝耳に水とならないように配慮した、という見方を示しています。

さらに、ホワイトハウスは、「外交的ボイコット」について各国の対応についてはそれぞれの判断にゆだねるとしています。

そこには、国内世論も意識して中国に厳しい姿勢を示す一方で、決定的な対立も避けたいという思惑も見え隠れします。


岸田首相「国益の観点から判断」


岸田総理大臣は7日午前、総理大臣官邸で記者団に対し「アメリカが北京オリンピック、パラリンピックを外交的にボイコットするということを発表したことを承知している。わが国の対応は、オリンピックの意義、さらには、わが国の外交にとっての意義などを総合的に勘案し、国益の観点からみずから判断していきたい。これがわが国の基本的な姿勢だ」と述べました。


中国「断固とした対抗措置とる 間違った行動の代価を」


中国外務省の趙立堅報道官は、7日の記者会見で「オリンピック憲章にあるスポーツの政治的中立という原則に著しく反するものだ。強烈な不満と反対を表明し、断固とした対抗措置をとる」と述べ、アメリカに対し、対抗措置を行う考えを示しました。

具体的にどのような対抗措置を行うのかという質問に対しては「アメリカは、この間違った行動の代価を支払うことになる。待っていてほしい」と述べるにとどめました。

また、2028年にアメリカのロサンゼルスでの開催が決まっている夏のオリンピックについて、中国がボイコットを検討するかという質問について、趙報道官は「アメリカの間違った行動は、両国のスポーツ交流とオリンピックについての協力の雰囲気を壊している。アメリカは、この間違った行動の報いを認識すべきだ」と述べるにとどめ、態度は明確にしませんでした。


国際的人権団体「人道に対する罪に対抗する極めて重要な一歩」


ニューヨークに本部がある国際的な人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は、日本時間の7日未明、担当者がツイッターの投稿で、「中国による人道に対する罪に対抗するための極めて重要な一歩だ」と評価しました。

そのうえで、「これが唯一の行動であってはならない」として、新疆ウイグル自治区の人権状況などをめぐって、アメリカは各国と協力して中国に責任ある対応を促す努力をより一層強化すべきだと訴えています。


日本の専門家「人権侵害の懸念払しょく IOCにも責任」


オリンピックの理念や歴史に詳しい中京大学の來田享子教授は「女性の参加を求めることや、ユダヤ人差別への抗議、アパルトヘイト政策への抗議など、オリンピックの歴史と人権侵害を理由にしたボイコットとの関わりは深い」と指摘します。

そのうえで「スポーツ界は人権侵害の問題に目を向け、これを政治問題で終わらせてはならない」と話しています。

そして「オリンピック憲章では人権侵害は認められないという内容が示されていて、人権侵害への懸念の払しょくはIOC=国際オリンピック委員会にも責任がある。IOCが自分たちの理念にのっとった対応や行動をしなければ、オリンピックの存在意義が問われることになる」と述べました。

一方で日本選手団の派遣を担うJOC=日本オリンピック委員会に対しては「こういう時だからこそ、代表選手には単なる競技者ではなく、平和な社会をつくるための世界に対する使者だと伝える必要がある。社会の中にスポーツはあり、自分が競技をしているときも人権侵害を受けている人がいるんだということを忘れず、自分に何ができるかを世界で一緒に考える、その第一歩がオリンピックに参加することだという意識を持つよう選手たちに呼びかけてもらいたい」と話していました。


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