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大谷翔平 満票でMVP 日本選手2人目 イチローさん以来20年ぶり

2021-11-19 午後 04:24

  

大リーグ、エンジェルスの大谷翔平選手が今シーズン、最も活躍した選手に贈られるMVP=最優秀選手に選ばれました。日本選手の受賞は2001年のイチローさん以来2人目で、満票での受賞は大リーグで6年ぶりです。

6年ぶり 満票でMVP


大リーグのMVPはレギュラーシーズンに最も活躍した選手に贈られ、全米野球記者協会に所属する記者30人の投票によって選ばれます。

ことしの受賞者が18日、アメリカのテレビ番組の中で発表され、アメリカンリーグのMVPに、投打の二刀流でめざましい活躍を見せたエンジェルスの大谷選手が初めて選ばれました。

日本選手のMVPは2001年に大リーグ1年目だったイチローさんが受賞して以来、20年ぶり2人目です。

大谷選手は大リーグ4年目の今シーズン、ピッチャーとして9勝、156奪三振、バッターとしてホームラン46本、100打点、26盗塁で、史上6人目の「ホームラン45本、25盗塁」を達成するなど投打ともに自己最高の成績をマークし、7月のオールスターゲームでは史上初めて投打の同時出場を果たしました。


大谷「すごくうれしい 皆さんに感謝」


大谷選手は、MVPが発表された番組に中継で出演し「すごくうれしいし、投票してくれた記者や、チームの監督、コーチ、トレーナー、ファンなど支えてくれた皆さんに感謝する」と喜びを口にしました。

そのうえで、二刀流で大リーグに挑戦したときにMVPの獲得を予想していたかについては「とりたいなとはもちろん思っていた。日本にいたときよりアメリカに来たときのほうが受け入れてもらえる雰囲気があったので、感謝している」と話していました。



MVPの最終候補には大谷選手のほか、ホームラン48本でアメリカンリーグのホームラン王を獲得したブルージェイズのゲレーロJr.選手と同じくブルージェイズでホームラン45本を打ったシミエン選手が入っていましたが、大谷選手は投票した30人全員から1位の票を集め、当時ナショナルズだった2015年のハーパー選手以来、6年ぶりに満票での受賞となりました。

ナショナルリーグは打率3割9厘、ホームラン35本をマークしたフィリーズのハーパー選手が2015年以来、2回目の受賞を果たしました。


満票MVPは19人目 過去にはマントル ボンズ グリフィーなども


大谷選手は投票した30人全員から1位票を集め、初めてのMVP受賞を満票で飾りました。
MVPは、全米野球記者協会に所属する記者30人が投票でMVPにふさわしい選手として上位10人を記入し、1位に14ポイント、2位に9ポイントが与えられます。

3位以下は1ポイントずつ減って10位が1ポイントで、大谷選手はすべての1位票を集めて420ポイントを獲得しました。2位に入ったブルージェイズのゲレーロ Jr.選手には30人のうち29人が2位に、1人が3位に投票し、合計269ポイントを集めましたが大谷選手とは151ポイントの大差がつき、文字どおり「満場一致」でのMVP受賞となりました。

全米野球記者協会によりますと、満票でのMVP選出は大谷選手が史上19人目で、2015年のブライス・ハーパー選手以来6年ぶり、アメリカンリーグでは2014年にエンジェルスのマイク・トラウト選手が受賞して以来7年ぶりです。

過去の満票での受賞者には2002年のバリー・ボンズさん、1997年のケン・グリフィーさん、1956年のミッキー・マントルさんなどその時代の大リーグを代表する選手たちがいて、今回、大谷選手のMVP受賞を発表したフランク・トーマスさんも1993年に満票で受賞しています。

2001年にイチローさんがMVPを受賞した時は、当時投票した28人のうち11人から1位票を集め合計ポイントは289で、2位に入った当時アスレティックスのジオンビー選手との差はわずか8ポイントでした。

<投票結果詳細:ポイント順=10位まで>
1位 :大谷翔平 420
2位 :ゲレーロJr.(ブルージェイズ)269
3位 :シミエン(ブルージェイズ) 232
4位 :ジャッジ(ヤンキース) 171
5位 :コレア(アストロズ) 163
6位 :ラミレス(インディアンズ) 133
7位 :ペレス(ロイヤルズ) 103
8位 :オルソン(アスレティックス) 90
9位 :マリンズ(オリオールズ) 87
10位:ラウ(レイズ) 34


“二刀流” 歴史塗り替える活躍でMVP


大谷選手は今シーズン、現代野球では例のない二刀流選手としてホームラン46本を打って9勝をあげ、大リーグの歴史を塗り替える活躍で順当にリーグMVPに選出されました。

大谷選手は今シーズン、大リーグ4年目で初めて、シーズンを通して二刀流でプレーしました。



バッティングでは前半戦だけでホームラン33本を打って日本選手のシーズン最多記録を更新する快進撃を見せホームラン王争いでも一時は独走状態でした。相手の警戒が高まった後半戦は勝負を避けられる場面が相次いだこともあってペースが落ちましたが、最終戦で46号ホームランを打って打点も100の大台に乗せました。



ピッチャーとしては、4月26日の今シーズン3回目の登板で、右ひじを手術する前以来、およそ3年ぶりに勝ち投手となり、6月から9月にかけては8連勝するなど先発ローテーションを守り続けて9勝をあげました。



今シーズンは初めて投打の同時出場を解禁して、先発登板した試合でみずから先制ホームランを打ったりベーブ・ルース以来100年ぶりとなる「ホームラン数トップで先発登板」をしたりと、現代野球では例のない二刀流で活躍を続け、オールスターゲームでは史上初めて、先発ピッチャーを務めながら1番指名打者で出場して勝ち投手となりました。

ホームラン王のタイトルはゲレーロJr.選手に譲りましたが、「ヒット、打点、得点、投球回、奪三振」の投打5部門で100の大台に達した初めての選手となり、投げては160キロ超え、打っては140メートルを超えるホームランと鮮烈な印象を残し、順当にアメリカンリーグのMVPに選ばれました。


「ことし二刀流が成功できなかったら…」覚悟のシーズンだった


MVP発表の瞬間も表情を変えずいつものように冷静に受け止めた大谷選手。真っ先に述べたのは、ひじやひざの手術を乗り越えけがからの復活を支えてくれた周囲への感謝でした。



大谷選手は60試合に短縮された昨シーズン、打率1割9分、ホームラン7本にとどまり、右ひじの手術から復帰したピッチャーとしても0勝1敗、防御率37.80でわずか2試合しか登板できず、プロ入り後、自己最低の成績に終わりました。

アメリカのメディアは「今シーズンが二刀流挑戦のラストチャンス」と報じるなど投打の両方を続けることに懐疑的な見方もあり、大谷選手に向けられた目は厳しいものでした。



大谷選手の通訳を務める水原一平さんは「翔平本人は周りの声に左右されるタイプではないが、誰が見ても、ことし二刀流が成功できなかったら、今後二刀流の道が減っていくことはわかっていたと思う」と覚悟のシーズンだったことを明かしました。



そうした中、大谷選手は今シーズン初登板となった4月4日の試合に初めて指名打者を解除して投打で同時出場し、打っては第1打席で初球を特大の先制ホームラン。投げては最速160キロを超えるストレートと鋭く落ちるスプリットで4回まで0点に抑えました。

5回にランナーと交錯したため5回途中3失点で交代しましたが、気迫のこもったピッチングでヒットは2本しか許さず7つの三振を奪って投打両面で力を示しました。この試合について大谷選手はシーズン終了後の先月、「最初の試合でつまづくと、指名打者を解除するデメリットが強く印象に残ってしまう。1年間使い続けてもらうためには、スタートが大事だった」と振り返るなど、重要な試合と位置づけていました。



勝負の初登板を乗り越えた大谷選手はその後ホームランを量産し、オールスターゲームでは史上初めて投打で同時出場。野球の神様と呼ばれるベーブ・ルース以来の「ふた桁勝利、ふた桁ホームラン」にもあと1勝に迫るなど、歴史的な二刀流の活躍で全米を沸かせました。



6月には早くも大谷選手の打席で球場のファンからMVPコールが湧き上がるようになり、敬遠のフォアボールで歩かされると相手の本拠地であってもブーイングが起きるほど、ファンは敵味方関係なく大谷選手にひかれるようになりました。

さらに、レッドソックスでことし外野のレギュラーをつかんだバデュゴー選手が先月、二刀流への挑戦を表明するなどプレーを間近に見ていた現役の選手たちにも大きな影響を与えました。

MVPの投票で大谷選手に次ぐ2位に入ったブルージェイズのゲレーロ Jr.選手は今シーズン三冠王に迫る活躍でホームラン王に輝いて打率と打点も大谷選手を上回り、全米野球記者協会の記者たちからは満票での受賞は難しいのではないかという見方もありました。

そうした中、ブルージェイズの本拠地があるカナダのトロントの記者2人も大谷選手に1位の票を入れたことは、歴史的な投打二刀流の活躍が大リーグを長く取材してきた記者たちにも高く評価された証しで、日本ハム時代の2016年に受賞したパ・リーグのMVPと合わせ、日米でMVPの称号を手にしました。



二刀流継続の真価が問われたシーズンで、みずからの価値を証明した大谷選手。7年ぶりとなるコミッショナー特別表彰や選手の投票で選ぶ選手会の年間最優秀選手に選ばれるなどシーズン終了後もその偉業をたたえる声が絶えることはありません。

ただ大谷選手本人は先月、NHKのインタビューに「ことしできたことが来年できないということはなくしたい。ことしの数字が最低ラインになると思う」と話すなど、目線はすでに来シーズンを見据えていて、今シーズンを超える成績を残すため日本でトレーニングに励んでいます。


【大谷翔平 これまでの歩み】


大谷翔平選手は岩手県出身で身長1m93センチ、体重95キロ。右投げ左打ちの27歳です。



2012年、岩手県の花巻東高校3年の時に夏の岩手大会準決勝で投手として、球速160キロをマークして注目されたほか、打者として高校通算56本のホームランを打ち注目されました。

2012年のプロ野球ドラフト会議の直前には大リーグ挑戦の意向を表明しましたが、ドラフト1位で指名した日本ハムから、大リーグでプレーするという大谷選手の夢を後押しし、投手と野手の「二刀流」で育成するという異例の提案を受け、入団を決意しました。



日本ハムでは1年目から「二刀流」でプレーし、2年目の2014年には、投手として防御率リーグ3位の2.61、チームトップの11勝を挙げ、球速では当時のプロ野球最速に並ぶ162キロをマークしました。
野手としては、主に指名打者として出場し、打率2割7分4厘をマークし、ホームラン10本を打ち、この年、プロ野球史上初めて同じシーズンに2桁勝利と2桁ホームランを達成しました。
3年目はバッターとしては打率2割2厘、ホームラン5本でしたが、投手としては先発投手陣の柱として22試合に登板し、15勝5敗、防御率2.24の成績を残し、「最多勝」「最優秀防御率」「勝率第1位」の3つのタイトルを獲得しました。
4年目には、投手として10勝、防御率1.86、プロ野球最速の165キロをマークしました。打者としては自己最多のホームラン22本を打ち、史上初めて投手と指名打者の2つの部門でベストナインに選ばれました。
そして5年目のシーズンを終えた2017年11月、ポスティングシステムを利用しての大リーグ挑戦を表明。エンジェルスへの入団が決まりました。



エンジェルス1年目の2018年は、ピッチャーとして4勝、バッターとしてホームラン22本を打って新人王に輝きましたが、その年のオフに右ひじのじん帯を修復するトミー・ジョン手術を決断。翌年はバッターで軸足となる左ひざを手術しました。
右ひじの手術から1年半以上が経過した2020年シーズンはピッチャーでは0勝1敗、防御率37.80。バッターでは打率1割9分と本来のパフォーマンスにはほど遠く、2021年シーズンの開幕前、アメリカのメディアの中には2021年シーズンを「二刀流のラストチャンス」と見る向きもありました。

こうした中、大谷選手は2021年、ピッチャーとして9勝、156奪三振、バッターとしてホームラン46本、100打点、26盗塁で、史上6人目の「ホームラン45本、25盗塁」を達成するなど投打ともに自己最高の成績をマークし、シーズンで最も活躍した選手に贈られるMVP=最優秀選手に選ばれました。


過去3回MVP受賞 チームメートのトラウトも快挙たたえる


大谷選手のチームメートで過去にMVPを3回受賞しているトラウト選手は、自身のツイッターで「チームメートとして君の成し遂げたことを目の当たりにできたのは特別なことだった。MVP受賞は当然だ」とつづり「SHOTIME(ショータイム)」というハッシュタグと自身と大谷選手が握手している写真を添えて投稿しました。

さらに、みずからのことばで喜びを伝える動画を大リーグの公式ツイッターに寄せ「ショータイム!MVPを受賞したことを祝福したい。なんて信じられないシーズンだったんだ。試合の中でピッチング、バッティング、そして外野に移動するなんて。君が受賞してとてもうれしいよ」と改めて後輩の快挙をたたえていました。


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