成人年齢引き下げ 課題や懸念も

明治時代から「20歳以上」と定められてきた成人年齢を18歳に引き下げる今回の法改正には、さまざまな課題や懸念が指摘されています。

【消費者被害】
その1つは、新たに成人となる10代の若者を消費トラブルからどのように守るかです。
今の民法の規定では、20歳未満の未成年が親などの同意を得ずに結んだ契約はあとから取り消すことができます。
しかし2022年の4月に成人年齢が引き下げられた後は、18歳と19歳の若者はこうした契約を取り消すことができなくなり、悪質商法に巻き込まれるトラブルが拡大するおそれが指摘されています。

成人年齢の引き下げによって、新たに成人となる18歳と19歳の若者が親の同意なしにローンなどの契約を結ぶことができるようになる一方、消費トラブルに巻き込まれることが懸念されることから、その対策として「消費者契約法」も改正され、来年6月から施行されます。
改正された消費者契約法では、若者のトラブルが多い「デート商法」やさまざまな不安をあおる商法を不当な勧誘と位置づけ、消費者が契約を取り消すことができるようになります。
当初の改正案では不当な勧誘について「社会生活上の経験が乏しいこと」につけこむものとしていましたが、「若者しか守れない」と懸念する意見が出され、高齢や病気などで判断力が低下した消費者の不安をあおる勧誘も対象に加えられたほか、「社会生活上の経験」を年齢にかかわらず広く解釈するとする付帯決議もつけられました。
一方で、今回の改正は「デート商法」などに対象が限られていることから、専門家からは、今後、新たな手口が出てきた場合にただちに対応できず、消費者を守る効果には限界があると指摘する声もあがっています。
国の消費者委員会の前の委員長で青山学院大学の河上正二教授は、「悪徳商法が次々と出てくる中、モグラたたきのように要件を追加していく今の改正のやり方では消費者のためにならない。本来、消費者契約法は包括的な救済の受け皿となるべきで、議論が継続されることに期待したい」と話しています。

成人年齢の引き下げに伴う若者の消費トラブル防止について、消費者庁の岡村和美長官は13日の記者会見で、「若い人たちは生活の範囲が限られ、さまざまな問題に気づく機会が少ないので、社会全体で自立した消費者としての自覚を促していく必要がある。若い人たちが日常的に利用しているネット通販について自分の身を守るための勉強をしてもらいたいし、SNSを利用したマルチ商法などの被害も気にかかる。消費者庁としても、若い人に届くような動画配信などさまざまな活動に取り組んできたい」と述べました。

【養育費打ち切り】
養育費の支払いに影響が出るおそれも指摘されています。
離婚したあと子どもの養育費をいつまで支払う必要があるか、法律上の規定はありませんが実際には離婚する際の協議で、「子どもが成人するまで」を期限として双方が合意しているケースが少なくありません。
このため、成人年齢の引き下げによって養育費の支払いを20歳ではなく18歳までとするケースが増えることも想定されひとり親世帯の子どもの大学進学などへの影響が懸念されています。

厚生労働省の委託を受けてひとり親世帯から養育費についての相談を受け付けている東京・豊島区の「養育費相談支援センター」には年間6500件ほどの相談が寄せられていますが、最近は成人年齢の引き下げに関連した相談が増えているということです。
厚生労働省のおととしの調査によりますと、父親との間で養育費の支払いを取り決めている母子世帯は全体のおよそ4割で、このうち実際に支払いを受けているのは、およそ半数にとどまっているということです。
センターでは成人年齢の引き下げによって、18歳で支払いの打ち切りを求められるケースが増えるのではないかとみています。
養育費相談支援センターの山崎朋亮所長は「18歳になったあとも養育費を払うかどうか、親どうしの意見が対立するケースはこれから増えるのではないか。引き下げに伴う若者の保護や福祉に関する影響についても、今後議論が必要だと思う」と話しています。

【少年法】
少年法への影響を懸念する声もあります。
日弁連=日本弁護士連合会は、成人年齢の引き下げで少年法の保護の対象も、20歳未満から18歳未満に引き下げを求める声が強まることが予想されるとして、少年の立ち直りの支援を重視する立場から、対象年齢の引き下げに反対しています。

【成人式】
成人年齢が引き下げられることで「成人式」の開催時期や対象とする年齢を変えるかどうか今後、各地で議論を呼ぶことが予想されます。
4年後の2022年4月1日以降、18歳から成人となりますが地方自治体が主催することが多い「成人式」の開催時期については法律による規定がありません。
政府は今後、自治体と意見交換を行うなどして式のあり方を検討することにしていますが開催時期や対象年齢についての判断は各自治体に委ねられます。
18歳を対象に成人式を行うと大学入試のシーズンと重なるため、対象を18歳に引き下げるかどうかや、18歳に引き下げた場合に開催時期を変更するかどうかなど今後、各地で議論が進むとものとみられます。
毎年、国内最大規模の成人式を主催している横浜市教育委員会は、「現時点で対応は白紙ですが、18歳の冬に成人式を行うのは難しいのではないかと思います」と話しています。