【滞在記・根室市】漁業の歴史と未来をつなぐ「魚箱」の工場

地域にディープな人脈をもつローカルフレンズのもとに、ディレクターが1ヶ月間滞在する「ローカルフレンズ滞在記」。10月は根室海峡沿岸で“サケの聖地”をめぐります。このエリアでガイドをする齋藤智美さんがローカルフレンズです。

舞台は根室市。
滞在3週目はサケの魅力を伝えてきた「魚箱」をつくる工場へ。
中では、大きな音を立てて多くの機械が稼働しています。
代表を務める山口耐一さんによると、工場の機械の中には半世紀以上前のものもあるそうです。
この工場のルーツは大正時代まで遡ります。
当時、北洋漁業で多くの海産物を取るようになっていた日本。
塩鮭などが全国に流通することができたのは、水分をほどよく吸収する魚箱があったからでした。
100年近く全国に貴重な栄養を届けることに貢献してきた木製の魚箱。
その後安価な発泡スチロールの箱が台頭し同業者は次々と減っていく中で、山口さんはこの伝統を後世に残したいと工場を守り続けてきたのです。
工場の一角には、長い歴史の証となる貴重な品が保管されていました。
魚箱に文字や絵柄を印刷するときに使用する印版です。
中にはかつて日本を代表する有名な水産会社のものも。
山口さんは、ひとつひとつの印版が根室の漁業の歴史を今に伝える大事な”産業遺産”だと語ります。
その多くが、いまは使われることのなくなった印版。
そこに新たな命を吹き込もうとする人がいます。
山口さんの息子・人士さんです。
これまで東京で建築の仕事をしてきましたが、今年から地元や家業を応援したいと根室と東京の2拠点で活動を開始しました。
人士さんが手がけるのは、洋服やバッグに印版をプリントしたオリジナルグッズ。
印版はかつて人目に付くようにとそれぞれが意匠を競い合ったことから、デザインとしても秀逸。
たちまちアンテナの高い人たちの注目を集め、東京でも販売されるようになってきたそう。
今も現役で動き続ける印版と山口さんの工場。
戦前からつづく漁業の歴史と根室海峡の未来を繋いでいきます。