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◆マラソン中継で初!新開発の受信システム
〜 映像が乱れずに移動中継できるエリアを拡大 〜
(平成23年3月4日)
 

○ NHKでは、このたび、マラソンや駅伝などのスポーツ競技を広いエリアで映像が乱れずに移動中継できる受信システムを開発しました。

○ マラソンなどのスポーツ中継では、移動するバイクや中継車から映像を無線で送り、複数の受信点*1で受信します。そして、各受信点の受信映像を専用線で中継本部*2まで伝送します。従来は、中継本部で各受信点の受信映像の中から、最もノイズの少ない映像を選択する方法を主に用いていました(図1(a))。しかし、FPU受信機*3を受信点の数だけ用意する必要があり、また状況によっては映像が乱れる可能性が残されていました。

○ 今回、中継本部まで専用線で伝送された各受信点の受信映像の中から、よりノイズの少ない映像にするのに適した幾つかの映像を自動的に選択して組み合わせることで、映像品質を従来よりも向上させる受信装置をあらたに開発しました(図1(b))。仮にどこの受信点映像を単独に選択しても映像が乱れる場合があったとしても、受信位置の異なる複数の映像を組み合わせることができるため、映像の乱れを抑えることができます。

○ 本装置では、異なる受信点の受信映像を組み合わせるため、中継本部までの映像到達時間のずれを補正する信号を用いています。これにより、従来の技術ではできなかった数kmから数十kmと大きく離れた受信点からの映像を組み合わせることが初めて可能になり、映像が乱れることなく移動中継できるエリアを拡大することができます。

○ 本装置は3月6日に開催されるびわ湖毎日マラソンの番組中継で初めて使用する予定です。NHKは今後も、高品質で迫力のある中継を実現できるよう技術開発を推進していきます。

*1 中継車から無線で送られた映像を受信する場所で、コース沿いなど良好に受信できる場所に設置。
*2 複数の受信点からの映像が集められ、映像の切り替えなどを行う中継の拠点となる場所。
*3 FPU(Field Pick-up Unit)は中継に用いられる無線の送受信装置であり、ここではそのために使用される専用の受信機。




(a)従来方式
 各受信点から専用線で送られた映像を中継本部の各FPU受信機で受信し、最もノイズの少ない映像を選択します。
(b)今回開発した方式
 各受信点から専用線で送られた映像を中継本部の新受信装置で受信し、最大16の受信点の映像の中から、よりノイズの少ない映像にするのに適した4つの映像を自動的に選択して組み合わせます。
 新受信装置は、現行の標準規格*Aに準拠したOFDM方式*Bの信号に対応するほか、MIMO−OFDM方式*Cにも対応しており、OFDM方式では信号対雑音比(S/N比)が大きい4つの映像を、MIMO−OFDM方式では相関の低い4つの映像を選択して組み合わせます。
 組み合わせる際には、各受信点から中継本部までの映像到達時間のずれを補正します。従来は、ガードインターバル(時間差のある映像信号同士の干渉を防ぐために設けられる期間)に相当する距離差1.8km以内の受信点しか補正できませんでしたが、新受信装置は最大160km離れた受信点でも組み合わせるでき、マラソンの全受信点をカバーできます。

*A 標準規格:社団法人電波産業会の定める標準規格 ARIB STD-B33
「テレビジョン放送番組素材伝送用可搬形OFDM方式デジタル無線伝送システム」
*B 直交波周波数分割多重方式(Orthogonal Frequency Division Multiplexing):地上デジタル放送などで使用され、反射波などの妨害に対しても映像が乱れにくい特徴を持つ方式。
*C 複数の送信アンテナから同じチャンネルで内容が異なる信号を同時に出力することで、一度に伝送できる情報量を飛躍的に増大させる方式。


図2 今回開発した「16入力基地局MIMO受信装置」

 
 
 
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