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◆再撮映像、「モアレ解消フィルタ」を開発!
〜映像モニタを撮影した際に発生するめざわりなモアレを解消〜
(平成21年6月5日)
 
○ NHKは、プラズマや液晶などの映像モニタをテレビカメラで撮影した際に発生するモアレを解消するフィルタを開発*1)しました。

○ 放送局では、スタジオ内の大型映像モニタにさまざまな映像を表示して、その画面を撮影する「再撮」と呼ばれる演出を多く行っていますが、その際、モアレと呼ばれる干渉縞が発生することがあります。近年、家庭のテレビが大画面化、高画質化しているのに伴い、再撮映像でモアレが目立ち、見苦しくなることがあります。

○ 今回開発したモアレ解消フィルタは、光学的なローパスフィルタ*2)の特性の高透過率フィルムと、正面からの反射を抑えるフィルムを画面サイズに応じてそれぞれのフィルムの特性を最適に組み合わせることにより実現しました。映像モニタの前面に取り付けて利用します。

○ 例えば小型の映像モニタでは、ドットピッチが細かくなるため、ローパスフィルタの特性をドットピッチの細かさに比例して強めてより高周波成分を除去することによりモアレをおさえることができます。反面、照明の反射が強くなる傾向があるため、さらに反射率の低いフィルムを組み合わせることで、再撮時に発生するモアレを解消しつつ、照明の反射も抑えることが可能になります。

○ 一般的に映像モニタを再撮する場合、カメラをズームすると干渉縞が変化し、更に見苦しい映像となりますが、今回開発したフィルタは、カメラをズームイン、ズームアウト、パン、チルト*3)してもモアレ解消の効果があります。映像モニタに対して大きくズームでき、演出の自由度が広がります。プラズマや液晶などの映像モニタの他、パソコン画面などさまざまなモニタやサイズに対応しています。

○ 現在、NHK放送センターのニューススタジオや札幌放送局のスタジオで使用し、効果を発揮しています。

*1) (株)東京シスコン(本社:東京都港区赤坂)と共同開発
*2) 空間周波数の高周波数成分を除去するフィルタ
*3) パン:カメラを水平方向に動かす動作、 チルト:垂直方向に動かす動作

(参考)



図1 再撮時のモアレ解消 イメージ図

* モニタを再撮すると、図のようなモアレと呼ばれる干渉縞が発生します。フィルタを取り付けた所だけモアレが解消しています。


図2 フィルタによるモアレ解消の様子


(参考)
(1) モアレとは
 干渉縞のことで、周期が異なる周期的な模様同士を重ね合わせた時に発生する縞模様のことです。カメラでモニタを撮影した際に、同様の干渉縞が発生します。

(2) なぜ発生するのか
 モニタの画素ピッチとカメラのCCDの撮像素子のピッチが、ズームサイズや距離により必ずしも1対整数倍にならないために周期的な干渉縞が発生します。
 再撮映像におけるモアレは、カメラのCCDの撮像素子のピッチとそのCCD上での再撮モニタの画素ピッチの関係が、ズームサイズや距離により1対整数倍(または整数倍対1)にならないために周期的な干渉縞が発生します。CCD上でのモニタの画素ピッチmと、CCDの画素ピッチnは異なります。この画素ピッチmの整数倍(p倍)と画素ピッチnの整数倍(q倍)が等しいとき(k=mp=nq)、間隔kで干渉縞が観察されます。下図に示す1周期の繰り返しがモアレとなります。(濃く見える部分と薄く見える部分)




(3) なんでモアレが解消するのか
 本フィルタを貼り付けることで、モニタの画素表示を、解像度が低下しない程度に僅かに拡げることにより、濃淡が薄まり干渉縞が解消されます。
 カメラがモニタではなく自然映像を撮影した場合、モアレは発生しません(自然映像に縞模様を含む場合は除く)。つまりモニタのように離散的な映像ではなく、連続的な映像の場合、モアレは発生しません。低域通過機能を有する本フィルタをモニタに取り付けることでモニタの画素が若干ぼやけて連続的な映像に近づくために干渉縞が解消されます。



 
 
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