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◆ハイビジョン素材伝送用“高性能誤り訂正符号”を開発!
〜マラソンなど移動中継で、より高品質な映像をお届け 〜
(平成21年5月18日)


○ NHKはこのたび、マラソン、駅伝など移動中継に用いるハイビジョン番組素材無線伝送装置(FPU)の高性能誤り訂正符号を開発しました。これにより、移動しながらでもハイビジョン映像をより高品質で安定に伝送することができるようになります。

○ 移動中継では、中継車から送る電波が周囲の建物などで遮られたり反射するため、映像が乱れたり途切れる可能性があります。それを軽減する一つの手法として誤り訂正技術がありますが、今回その誤り訂正能力をより高めるため、LDPC符号*1をベースとした新しい誤り訂正符号を開発しました。

○ 本誤り訂正符号では、LDPC符号の中でも演算量が比較的少ないLDGM符号*2を用いて、特性の異なる2つのLDGM符号を接続した構成とすることにより、誤り訂正の性能を大きく向上させることに成功しました。従来の誤り訂正符号*3と比べて、約2dBの改善が得られています。

○ 一般的なLDPC符号では、ある程度以上受信レベル(CN比)が向上しても、訂正後の誤りが減少しなくなる現象が起きますが、本方式では、この問題が発生せず、より低い受信レベル(CN比)でも誤りを訂正できます。

○ また、演算量が少ない符号を用いたことにより、従来のLDPC符号では難しかった高ビットレートの高画質な信号の伝送も可能となりました。本誤り訂正符号を実装したマラソン中継用の800MHz帯FPUの試作装置では、約100Mbpsの高ビットレート信号をリアルタイムに伝送できます。

○ 5月21日(木)〜24日(日)に開催する放送技術研究所の一般公開で、今回開発した“高性能誤り訂正符号”を実装した試作装置をご覧いただけます。

*1 LDPC(Low-Density Parity-Check)符号。優れた誤り訂正性能から近年注目されている誤り訂正符号。低い受信レベル(CN比)でも高いビット誤り訂正効果が得られることが特長。
*2 LDGM(Low-Density Generator-Matrix)符号。LDPC符号の一種で、比較的演算量が少なく、ハードウェア実装に適している。
*3 畳込み符号とリードソロモン(RS)符号を組み合わせた誤り訂正符号。
本研究の一部は、総務省の電波資源拡大のための研究開発「800MHz帯映像素材中継用移動通信システムの高度化のための研究開発」による委託研究として実施した。

(参考)

図1 今回開発した符号の構成

 開発した誤り訂正符号(SCLDGM:Serially Concatenated Low-Density Generator-Matrix)は、特性の異なる2つのLDGM符号を接続した構成にすることで、従来の方式と比べて誤り訂正の性能が向上しています。


図2 符号の特性比較

 本開発のSCLDGM符号は、従来多く使用されてきた畳込み符号とリードソロモン(RS)符号を組み合わせた誤り訂正符号と比較して、約2dB改善でき、より悪い受信状況でも誤り訂正が可能です。
 また、一般的なLDPC符号では、ある程度以上受信状況が向上しても訂正後の誤りが減少しなくなる現象が現れますが、本開発のSCLDGM符号では現れません。
〔グラフの横軸は受信状況を表し、縦軸は誤り訂正した後に残る(訂正しきれなかった)誤りを表しています〕




図3 試作した受信装置の外観

 本開発のSCLDGM符号を実装して試作した受信装置。(右下の赤ペン=約12cm)



 
 
 
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