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◆次世代のテレビ「インテグラル立体テレビ」の研究が文部科学大臣表彰を受賞!
(平成21年4月8日)
 

○ NHK放送技術研究所 岡野文男(おかの ふみお)が、平成21年度文部科学大臣表彰 科学技術賞を受賞することになりました。授賞式は4月14日、虎ノ門パストラルホテルで行われる予定です。

○ 同賞は科学技術分野における顕著な功績に対して与えられるものです。今回の受賞では、岡野らが光ファイバーを用いた立体映像表示に世界で初めて成功し、高画質で歪みの少ない実用的な立体テレビの実現に向けた基盤技術を確立したことが評価の対象になりました。

○ 現在、映像を立体に見せる手法として、特殊な眼鏡をかけて見る方式が広く用いられています。最近、アメリカの映画界では、この手法で立体映像のコンテンツが多く製作され始めています。しかし、この特殊な眼鏡をかける方式では、長時間見続けていると眼が疲労したり、頭の角度によっては立体に見えないなど、テレビとして実用化する上で課題があります。  

○ NHKでは、このような課題を解決するため、特殊な眼鏡をかけなくても立体映像を見ることができる「インテグラル・フォトグラフィー」という技法の研究を進め、スーパーハイビジョン*1)の次の世代のテレビとして、立体テレビ技術の開発を進めています。

○ 岡野らの研究により、この立体テレビの基盤技術がほぼ確立しました。今後、次のステップとして、撮影や表示装置の高精細度化、光学系レンズの細密化や高精度化などの課題について研究開発を進め、今までにない高い臨場感をもたらす新しいテレビの研究開発を進めていきます*2)

○ この成果の一部は、NAB2009(4月20〜23日、米国ラスベガスで開催)、NHK技研公開(5月21〜24日、世田谷区砧のNHK技研で開催)で展示します。また、本成果は、放送以外にも医療など幅広い分野への応用が期待されます。

*1) 現行のハイビジョンの16倍にあたる3,300万画素からなる走査線4,320本の映像と、22.2マルチチャンネル音響システムからなるハイビジョンの次の世代のテレビ
*2) 現在、インテグラル立体テレビの研究の一部は情報通信研究機構(NICT)の委託研究を受託して実施しています

インテグラル立体テレビ
○ スーパーハイビジョンの次の世代テレビとして開発を進めているものが、「インテグラル立体テレビ」です。特殊な眼鏡をかけなくても自然な立体映像を見ることができます。

○ 立体像の撮影や表示を行うため、微小なレンズを多数配列したレンズ板を用います。このレンズ板により、多方向からみた多数の小さな画像の群が得られ、それを介して立体表現することができます。撮影時にはテレビカメラのレンズの前にレンズ板を置いて撮影し、表示する時には液晶テレビやプロジェクターで表示画面の前にレンズ板を置いてそれを通して見ます。

○ 撮影用レンズ板には、岡野らが考案した微細な光ファイバーを多数束ねた構造の「ファイバーアレイ」を用います。これにより、奥行きの凹凸が逆転した像になることなく、リアルタイムで立体映像が得られます。

○ インテグラル立体テレビは、家庭で見るテレビに適した以下の特徴があります。
 ・立体用の特殊な眼鏡がいらない
 ・実物を見る場合と同様、視聴者の見る位置に応じて映像が自然に変化する
 ・横になって見ても立体映像が見られる
 ・像の見かけの位置と光学的な位置が一致しているため、眼の疲労が少ない

インテグラル立体テレビシステム

岡野 文男(おかの ふみお) <生年月日 昭和27年8月15日(56歳)>  
 昭和53年NHK入局。名古屋放送局を経て、昭和56年よりNHK総合技術研究所 (現在の放送技術研究所)勤務。ハイビジョンシステムの研究開発をカメラを中心に進める。その後、高臨場感映像システムの研究、インテグラル・フォトグラフィーやホログラムなどの立体映像や超高精細映像の研究に従事。平成11年に立体映像音響部長、テレビ方式研究部長を経て、現在、放送技術研究所(人間・情報)研究主幹。平成17年 逓信協会前島賞受賞、平成18年 電子情報通信学会業績賞受賞、平成18年 東京都功労賞受賞。工学博士。
 
 
 
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