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◆近赤外線を利用した新しい映像合成技術「IRマット」を開発
〜どんな照明、服の色でもOK!〜
(平成20年5月13日)

○ NHKは、スタジオの照明条件や被写体の色に影響されず、リアルタイムに映像合成できる画期的な技術「IR*1)マット」を開発しました。この技術により、映像合成の状態に影響されることなく演出効果の高い照明設計が可能になるほか、出演者の衣装や装飾品の色を制限することがなくなり、豊かな映像表現が可能になります。

○ これまで放送局で一般的に用いられてきた合成手法「クロマキー」では、背景に青色など単色のスクリーンを用意し、この青色を検出することにより被写体と背景を分離していました。しかし、安定な青色の検出のためには背景スクリーンを均一に明るく照明する必要があり、出演者などの被写体に対し演出効果の高い照明設定が困難でした。また、被写体が背景と同じ色を含むと、その部分が背景と誤って検出されるため、出演者の衣装などに制限が生じることもあります。さらに、比較的広大なスタジオスペースや多くの照明装置が必要となります。

○ 今回開発した「IRマット」は、通常のテレビカメラに写らない近赤外光と「再帰性反射材」*2)を利用した映像合成手法で、専用のレンズを使用することにより通常のカラー映像と併せて被写体のシルエット映像を撮影することができます。このシルエット映像を用いてカラー映像から被写体領域を抜き出し、CGの背景映像などに嵌め込んで合成映像を作成します。

○ 再帰性反射材を用いたスクリーンは、光線を光源方向に反射する性質があります。これを被写体の後ろに設置し、テレビカメラの専用レンズに取り付けた近赤外LEDで照明すると、その光線をカメラ方向に強く反射します。専用レンズにテレビカメラと光軸が一致するように設置した別の赤外カメラでスクリーンから反射する近赤外光のみを撮影することで被写体のシルエット映像が得られるという仕組みです。

○ IRマットでは、可視光の照明が映像合成に影響を与えないため、より高度な演出照明が可能になるほか、クロマキー合成のように背景スクリーンからの反射光が被写体に影響することがないため、自然な合成映像となります。さらに,クロマキー合成のように背景スクリーンへの明るい照明が必要ないことから省電力化も期待できます。

○ この技術は、平成20年5月22日から25日に開催する放送技術研究所の一般公開で展示します。

※1 IR: infrared rays(赤外線)
※2 再帰性反射材: 微小なガラスビーズにより光を入射して来た方向に強く反射する素材


近赤外線を利用した新しい映像合成技術「IRマット」の原理


 
 
 
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