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◆60GHz帯を用いたハイビジョン素材伝送システムを開発
〜遅延の無いハイビジョン映像の移動伝送が可能に〜
(平成17年8月9日)

 

○ NHKは、60GHz帯のミリ波を用いた非圧縮ハイビジョン信号*1の素材伝送システムを開発しました。これにより、映像遅延を生じることなくハイビジョン映像の移動伝送が可能になりました。

○ 現在、ハイビジョンの無線伝送に用いているFPU*2装置は、主に800MHz帯や3G〜13GHz帯などの周波数を利用しており、限られた周波数帯域で映像伝送するために信号を圧縮しています。このため、映像遅延が避けられず、遠隔地からカメラのフォーカスやアイリスを制御する場合や、無線方式と有線方式の複数カメラを使用する番組制作などでは、遅延を十分に考慮したうえでシステム構築し、運用をする必要がありました。

○ 今回、開発した伝送システムは、2.5GHzという広い周波数帯域幅を利用できる 60GHz帯を用いており、ハイビジョン信号を非圧縮のまま伝送するため映像遅延が発生しません。

○ 60GHz帯の電波は、直進性が強く、建物や人などの遮蔽により大きく減衰するほか、移動伝送*3に弱いという欠点がありましたが、開発したシステムでは、3台の受信機のうち受信状態の良い信号を選択するダイバーシティ機能を有しています。また、受信信号に誤りが多い場合には、多数決判定方式の誤り訂正処理を行うため、安定した伝送が可能となり、ミリ波による非圧縮ハイビジョン信号の移動伝送を実現しました。

○ 開発したシステムは「第89回日本陸上競技選手権大会」(平成17年6月放送)において、ハイビジョン空中走行カメラ*4に搭載し、トラック競技の選手を上空から撮影したダイナミックな映像を生中継でお茶の間にお届けしました。NHKは今後も、視聴者の皆さまに質の高い番組をお届けするために、ハイビジョン番組制作機器をはじめとした、さまざまな放送機器の研究・開発を進めていきます。

※1: HD-SDI信号(ハイビジョン−シリアルディジタルインターフェース信号)、伝送ビットレートは約1.5Gbps。
※2: FPU(Field Pickup Unit):テレビジョン放送用の無線中継伝送装置。
※3: ミリ波の移動伝送:ミリ波帯の電波は波長が短いため、移動伝送を行うと最大ドップラー周波数が数百Hz〜数kHzに及ぶ激しいマルチパスフェージングが生じる。このため、受信信号が激しく変動し、これまでは、安定した映像伝送ができなかった。
※4: ハイビジョン空中走行カメラ:空中にワイヤーを張り、そのワイヤーに吊り下がりながら自走して撮影するカメラ。



図 非圧縮ハイビジョン信号のミリ波移動伝送システムの系統

※多数決判定方式: 受信機から出力される3系統のHD-SDI信号について、1ビットごとに多数決を行い、その結果を用いてHD-SDI信号の伝送誤りを訂正する。



ハイビジョンワイヤレス空中走行カメラ
(第89回日本陸上競技選手権大会にて)


 
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