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◆長野オリンピックで活躍する新機材(平成9年12月11日)
●氷中マイクロホン
●新リニアカム
●バードカム
●自動ミキシングシステム
●仮想対決システム
●ハイビジョン小型カメラ
(1)HD−eye
(2)リモコンカメラ
●ハイビジョンワイヤレスカメラ
●HV/NTSC一体型スポーツコーダー
●ハイビジョンスーパースロー装置
●ハイビジョン一体型カメラ
●タイムラグ・アジャスター
第18回冬季オリンピック長野大会は、1998年2月7日(土)から2月22日(日)まで16日間にわたって、83の国と地域から選手・役員約3000人が参加し7競技68種目が競われます。
NHKは、国際信号制作やハイビジョン番組制作などに使用する新機材を、関係メーカーの協力を得て開発しました。これらにより、迫力あるオリンピック番組をお茶の間の皆様にお届けします。
●氷中マイクロホン
NHKは、スケート競技などで、臨場感あふれ、迫力のある滑走音を氷の中でとらえる氷中マイクロホンを初めて開発しました。
このマイクロホンは、以下の特徴があります。
(1)氷の中を伝わる音を、高感度で低音から高音まで一様にピックアップできるマイクロホンです。大歓声の中でも滑走音だけを鮮明に収音することができます。
(2)マイクロホンの外側のケースは完全防水で、荷重8トンに耐える機械的強度を持たせています。重い整氷機械が通 過しても破損しません。
(3)氷の表面への影響を与えないように、厚さわずか1cmの偏平な形状にしています。
●新リニアカム
NHKは、クロスカントリーなどで選手に平行して移動し、選手たちの競い合う状況や特定の選手の横顔などをクローズアップして撮ることが出来る新しいカメラシステムを開発しました。
このシステムは、平行して張った2本のワイヤで支持された、自動走行が可能な台車に、リモコンカメラ、ミニFPU(小型無線伝送装置)およびバッテリーが搭載されています。台車は別
に設けた駆動用ロープを操作することにより、最大50km/hのスピードで移動可能です。
カメラからの映像は、ミニFPUで取材拠点に伝送されます。また、台車やカメラの制御はすべて無線で行います。
〔仕様概要〕
移動距離 : 今回は150m
最大移動速度 : 50km/h
無線制御項目 : 走 行系 台車の進行方向および速度
機 構系 上下および左右のカメラの向き
レンズ系 ズーム、フォーカス、アイリス
●バードカム
NHKは、長野オリンピックでスキーの滑降選手と併走して撮影するシステムを開発しました。
このシステムは、ワイヤーをガイドとするグライダーにカメラを載せ、スキー滑降のスタート直後から、選手が加速する約150mの間を併走し、撮影するものです。
バードカムの仕組みは、滑降コースに沿って始点と終点に約8m高の支柱を立て、その間に8o径のピアノ線を張ります。機体(グライダー)は動力を持たず、自重に任せて落下していきます。カメラ及び雲台は、無線でコントロールし、撮影された映像は小型のFPU(無線映像伝送装置)で伝送します。また、機体はコンピュータープログラムですべて制御します。非常の場合は手動でブレーキをかけることも可能です。
<オリンピック用のバードカムの基本仕様>
機体の全長・・・145cm 仕様カメラ・・・SONY DXC−950
翼 長・・・128cm レ ン ズ・・・CANON YH13×7.5
総 重 量・・・32.0kg
F P U・・・HITACHI FR10G01−Z4F
●自動ミキシングシステム
(1)スキージャンプ用自動ミキシング
NHKは、移動する選手の競技音声をカメラ映像に合わせて自動収音するミキシングシステムを開発しました。
このシステムは、選手が早いスピードで移動するスキージャンプ競技などで、カメラのパン角度を検出してカメラ映像にマッチした音声が収音できるようマイクロホンを自動的に切り替えたり、光センサーを利用し、選手の通
過タイミングに合わせマイクロホンを制御するものです。
(2)氷中マイク用自動ミキシング
NHKは、スケート選手の滑走に合わせて、リンクに埋め込まれた40本のマイクロホン出力を自動的にミキシングするシステムを開発しました。
各マイクの制御は選手が近づいてくる時の音のレベルに合わせ、オン/オフします。また、選手の進む方向は一方向・選手はリンク上に2人等、スピードスケート特有の条件を基にプログラムを作り、選手が滑っている近傍のマイクのみをオンとするようガードをかけているため、練習走行している選手やリンクサイドのコーチの滑走音を拾うことなく、希望する選手の滑走音のみを連続して収音することが出来ます。
●仮想対決システム
NHKは、スピードスケートで異なる出走順で出走した選手が、あたかも競争しているかのように映像化するシステム「仮想対決システム」を開発しました。
このシステムはリモコンカメラと動画ファイル及び画像合成器で構成されています。
まず、基準となる選手の出走する組の映像を、カメラマンがリモコンカメラをマニュアル操作して撮影し、動画ファイルに記録します。このとき、カメラマンのカメラ操作データをコンピューターに蓄えます。
次の組以降は、先のカメラマンの蓄積した操作データをもとに、自動的にリモコンカメラを動かして撮影し、同じように動画ファイルに記録します。
最終的に、動画ファイルから希望する2組の出走映像を合成し出力することにより、あたかも競争しているかのように見せることが可能となります。
このシステムを用いることにより、実際には同時に滑らない有名選手同士の夢の対決が実現します。
●ハイビジョン小型カメラ
(1)HD−eye
NHKは、世界で初めて手のひらに載る超小型なハイビジョンカメラ、HD−eyeを開発しました。
単板でハイビジョンカラー出力が可能な2/3インチ200万画素CCDを世界で初めて開発し採用したほか、CCD駆動回路の一部をカメラコントロール部に内蔵したため、カメラヘッドの小型・軽量
化が可能となり、重量が150g、大きさ4cm×3cm×6cmと手のひらに載るコンパクトなカメラが実現しました。
長野オリンピックでは、ジャンプの踏み切り板の脇に設置し、選手のジャンプ姿勢を下からとらえます。
(2)リモコンカメラ
NHKは、3板式CCD小型カメラと小型リモコン雲台を組み合わせて現行方式(NTSC)と同様の演出が可能な小型リモコンカメラも開発しました。
長野オリンピックではアイスホッケー競技の天井俯瞰リモコンカメラとして使用し、多彩 なハイビジョン映像を制作する予定にしています。
●ハイビジョンワイヤレスカメラ
NHKは、世界で初めてカメラケーブルのいらないハイビジョンワイヤレスカメラシステムを開発しました。新開発のハイビジョン無線伝送装置とハイビジョンカメラにより構成されています。
スポーツ中継において、カメラケーブルを布線できない場所での撮影や選手と共に移動する撮影に威力を発揮します。
カメラ映像は42GHz帯の電波で送信します。カメラ側の送信アンテナは、受信側から送られる制御電波で自動調整されます。
カメラ側送信部の総重量は12.5kgと軽量で、一人で扱うことが出来るため、システムの運用はカメラマン・アンテナマンの2名で可能となります。また、送信部の電源にはリチウムバッテリを3個使用しており、電源を切らずにバッテリを1個ずつ交換することで長時間連続が可能です。
長野オリンピック大会では開会式およびジャンプ競技での使用が予定されています。
〔カメラ側送信部 諸元〕
42GHz送信出力 0.1W
伝送距離 500m以内
送信部消費電力 73W(DC12V)
送信部総重量 12.5kg
●HV/NTSC一体型スポーツコーダー
NHKは、スポーツ中継で一体化制作を効率的に行えるハイビジョン/NTSC同時出力スポーツコーダーを開発しました。
従来、ハイビジョンとNTSCの一体化番組制作ではアスペクトの違いにより別 々のスポーツコーダーを使用する必要がありましたが、このシステムにより設備・スペースの軽減がはかられ、効率的な一体化制作が可能になりました。
このシステムは、CG処理用コンピュータの高速化によって、ハイビジョン、NTSC両方式に適切なアスペクトで信号を同時に出力できます。運用は、演出に合わせて1台の端末でハイビジョン、NTSC出力を同時に制御することも、2台の端末で別
々に制御することも可能です。
また、これまでにない3次元エフェクトや、効果的なアニメーション機能を有しています。
長野オリンピックでは、スキージャンプ、クロスカントリー、スピードスケートほかに使用する予定です。
●ハイビジョンスーパースロー装置
NHKは、通常のハイビジョンに比べて3倍のコマ数で撮影・収録できるハイビジョンスーパースロー装置を開発しました。動きの速いスポーツなどに使用すると、従来よりも動きが滑らかで、動きボケも少ない再生画像が得られます。
カメラ部は、CCDの駆動を高速にして通常の3倍の速度(毎秒180フィールド)でハイビジョン画像を出力します。VTR部では、ハイビジョンのカセットレコーダ3台に信号を振り分けて、記録・再生します。
長野オリンピックではこの装置を使って、ジャンプ競技などの決定的な瞬間をシャープな映像のスローモーションで捉える予定です。
●ハイビジョン一体型カメラ
NHKは、2/3インチ200万画素CCDカメラと、ハイビジョン信号を約1/7に圧縮してデジタル記録・再生出来るVTRを一体にした、フルデジタルのコンパクトなハイビジョン一体型カメラを世界で初めて開発しました。
ハイビジョン一体型カメラは、現行放送と同じ取材体制でハイビジョン番組の取材やVロケが出来るため、オリンピックやハイビジョン情報番組など機動性が要求される番組に使用する予定です。
〔主な特徴〕
外形寸法 : 現行放送用一体型カメラと同程度
重 量 : 8.5kg程度(レンズ、バッテリーを含む)
カセットテープ : サイズはβカムカセットと同じ、最大40分記録可能
新たに開発したハイビジョン用テープを使用
消費電力 : 約45W
●タイムラグ・アジャスター
NHKは、長野オリンピック冬季競技大会総合プロデューサー事務局の要請を受けて長野オリンピック開会式に企画されている、5大陸の都市を衛星回線で結んだ「ベートーベンの第九」同時合唱を実現するための映像音声遅延装置(タイムラグ・アジャスター)を開発しました。
開会式では、長野県民文化会館の小澤征爾氏の指揮の映像が5大陸の都市へ送られ、現地の合唱がオリンピック会場に戻ってきます。この場合、到着時間に1.5〜4秒のズレが生じます。そこで、このタイムラグ・アジャスターを用いて、一番遅れて戻ってくる都市の合唱に他の都市の合唱を合わせます。
本装置は阪神大震災の際、激しい揺れでNHK神戸放送会館内の書棚やテレビが転倒する映像を映したスキップバックレコーダーを機能アップしたもので、映像と音声を一旦メモリーに蓄え、設定された時間の後、出力するものです。
〔タイムラグ・アジャスターの諸元〕
遅延時間 : 最大5秒
映 像…フレーム単位
音 声…1ms単位
映 像 : 入出力信号…NTSCコンポジット
量 子 化…10ビット(直線)
音 声 : 入出力信号…ステレオ2ch
量 子 化…20ビット(直線)
そ の 他 : 電 源…AC100V
消費電力…85W
寸 法…W480mm,H132mm,D500mm
重 量…15Kg
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