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会長 年頭挨拶 2012/01/04
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(松本会長)
新年明けましておめでとうございます。健やかに平成24年の初春を迎えられたことと思います。
東日本大震災の一連の放送・報道を支えたのは何であったのか、年頭にあたってもう一度整理しておきたい。
3月11日の発災直後、NHKは国会中継を中断して圧倒的に早く震災報道に入った。津波が押し寄せる様子をヘリコプターがキャッチし生中継した。初めて津波の規模がわかり、映像を通してすさまじい破壊力が伝わったと思う。それから1か月にわたって震災対応の終夜放送が続いた。これを支えたのは全国からの応援体制など組織の総合力だ。特筆しておきたいのは、「全員の心、価値観が公共放送の使命に基づいてひとつになったこと」、そして「日ごろの訓練の成果である」ということだ。
今でも宮城県、岩手県、福島県で7か所の前線基地を維持し、全国から200人規模の応援態勢で取材・放送にあたっている。災害はいつ起こるかわからない。体制と人員を整えておくことは、公共放送として最も重要な責務であると考える。
あと2か月余りで、東日本大震災の発生から1年になろうとしている。震災1年の様々な取り組みが今月から始まる。いくつかのテーマでミニ番組を放送し、被災地のいまの声や各地の支援の動きなどを伝える。
3月10日(土)から11日(日)にかけては、総合テレビを中心に、ほぼ丸2日間、震災関連の番組を放送し、生放送をベースに、NHKスペシャルやその他の定時番組も震災に関わるテーマをお送りする予定だ。
ラジオでも11日(日)に震災関連特集を集中編成するなど、それぞれのチャンネルの特性を生かしながら、立体的に展開していく考えだ。
放送以外の取り組みでは、全国で行われるNHKの様々なイベントで、この期間は震災関連の動画やパネルの展示などを行う。
今回の震災一年キャンペーンは、被災地を抱える放送局はもちろんのこと、全国をあげての取り組みにすることが大事だ。
さらに、東京電力・福島第一原子力発電所の事故では、避難されている方々の帰宅の実現や本格的な除染の実施など、課題が山積している。これらの課題や被災地の復興に向けた動き、国民生活への影響などを引き続き、きめ細かく取材し、風評被害などが起こらないよう、正確で迅速に放送していかなくてはならない。
NHKならではの放送の充実ということでは、視聴者の声に耳を傾けながら取材や制作の能力を高め、様々なジャンルの番組をバランスよく編成し、放送を充実させることがNHKの存在感に直結すると思う。一方、節度を欠く放送は厳しい批判にさらされる。誤報、事実誤認、著しくバランスを欠く、放送倫理にもとるというようなことは避けなければならない。常に視聴者の期待に応え、公共放送の原点に基づく、NHKらしい、質の高い、役に立つ放送の提供に努めていく必要がある。良い所を充実させるというプラス面を増やし、視聴者の声に耳を傾けつつマイナス面を減らしていくこと。この両面が相まって、NHKに対する信頼が得られ、期待に応えることができる。次期経営計画のキーワードの中に「公共」と「信頼」を掲げているのも、そのことを目指そうということだ。
1月8日(日)から大河ドラマ「平清盛」がスタートする。平安時代を舞台に貴族社会から武士社会へと移り変わる激動の時代をたくましく生き抜いた人々を描いていく。若き時代の清盛のダイナミックな生き方や躍動感を描くことで現代を生きる人々に勇気を与えるドラマにしたいという意気込みを現場から聞いている。
また、連続テレビ小説は「カーネーション」が好調で、新年度からの「梅ちゃん先生」もすでに撮影に入っている。どちらも復興していく人々の力強い姿が登場する。このことは東日本大震災からの復興に挑む人々へのエールになる。
ラジオ第1は、「いつでもどこでも安心ラジオ」、「1人1人に語りかけるパーソナルメディア」をキャッチフレーズに掲げており、震災を境にその存在感が高まっていると受け止めている。平成24年度は若い世代に向けた番組を新設し、拡充する予定。FMでも週末の午後を中心に番組の新設を検討している。より幅広い聴取層に接触していただくための環境整備や番組づくり、演出方法などに力を入れ、ラジオの充実を図ってほしい。
今年最大のスポーツイベントはロンドンオリンピック。およそ200の国と地域から選手が参加し、26競技302種目で競われる。日本選手の活躍はもちろん、世界のトップアスリートによる熱い戦いを伝え、スポーツのすばらしさとともに、感動、希望、勇気を届けたい。多彩な放送を総合テレビと衛星でたっぷりご覧いただきたい。
インターネットを活用したサービスにも力を入れる。注目選手や注目競技のハイライト映像、メダル獲得などの速報ニュースを伝え、テレビとパソコン、モバイルとの連携をとっていく。テレビで生中継を行っていない競技の映像をインターネットでどのように活用できるか知恵を絞っているところだ。
スーパーハイビジョンにも取り組み、BBCやオリンピック放送機構と協力してパブリックビューイングを実施する。生中継を含む競技映像を大画面シアターで上映する。実用化に向けた研究開発やコンテンツ制作を推進するチャンスにしたい。
国際放送は東日本大震災の放送で海外から高い評価を受けているが、引き続き充実させていく。国内放送との連携を深め、震災からの復興に取り組む日本の姿を継続的に世界に発信し、日本についての正しい理解促進に貢献していくことが重要だ。加えて、受信環境の整備にも取り組む。NHKワールドTVの受信可能世帯は世界中で1億4500万を超え、インターネットのアクセス数も23年度の上半期の累計で8500万ページビューを超えた。双方で目標値を上方修正し、質量の両面で着実なサービスの向上を目指していく。
NHKの強みのひとつは全国のネットワーク。視聴者の皆さまと直接接点を持つ地域放送局の充実は極めて重要だ。次期経営計画では、各放送局のホームページを「地域の安全・安心のポータルサイト」と位置づけた。災害情報、避難情報、生活安全情報などの役立つ情報を省力化を考えつつ提供していく。可能な限りワンソース・マルチアウトプットできる仕組みを作り、25年度から様々なメディアで同時にNHKの防災・減災情報をお伝えできるようにしたい。
デジタル化については、東北3県で3月末に完了する予定。これまで10年間、約4000億円を投じて行ってきた。まだ難視聴世帯が残っているし、東北3県の対応もある。衛星によるセーフティーネットの利用を継続しつつ、完全移行に向けて着実に努力したい。
群馬、栃木両県の県域放送を4月に開始する。地域のニュースや話題、気象情報をお伝えすることになる。災害時のきめ細かい防災報道や選挙、高校野球など色々な放送が想定され、データ放送も始める。視聴者との接点が増える。地域の実情や視聴者の要望をしっかりと踏まえた放送サービスに取り組んでほしい。
去年9月から、ラジオ第1、第2、FMの放送をインターネットで聴くことができるようになっている。音質が良いということで好評をいただいている。スマートフォンのアプリケーションの提供も行われている。1日平均5万人の方々が利用するなどラジオの幅が広がっている。今後は、新しいラジオの楽しみ方を開拓するなど、リスナーとの結びつきを強めていくことを検討していると聞いている。可能な範囲で取り組んで行ってほしい。
「V−LOW」は公共放送にとっても有用なメディアに発展する可能性があると聞いている。ただし、発展・普及していくためには、ネットワークの構築と費用負担、利用者の需要動向など、様々な課題があると思っている。
また、通信大手と民放が組んだ、高い周波数帯を使ったスマートフォンなどの携帯端末向けの放送が4月から始まる。どのように普及していくのか関心を持って見ていきたいと思う。
「ハイブリッドキャスト」については、アメリカで放送番組とインターネットの映像を一つの受像機で見ることができるテレビが普及しつつあるが、日本では、放送技術研究所で研究開発を進めている。テレビの機器を中心に開発・進展させることが必要だと考えている。放送と通信が融合・連携して端末が進化する時代において、デジタルが私たちの暮らしを支えていく技術であることは間違いない。インターネット展開に迅速かつ柔軟に対応できる組織と体制を整備していく必要がある。NHKは日本の放送を開拓・発展させ、リードしてきた歴史を持つ。今、こういう時代のなかでNHKのチャレンジングな創造が日本の放送とNHKの未来を拓く。
新しい経営計画には値下げが入っている。これについてはまず、NHK予算を国会で承認していただく必要があるが、3年間の累計で810億円の増収を図ることが必須になり、それに向けた「プロジェクト810」には全員参加で取り組むことになる。受信料制度の理解促進と衛星契約の増加、そして地域放送局の営業活動を機動的かつ効率的に実施する。
このほか、次期経営計画にはいろいろな施策を盛り込んでおり、その達成状況を評価していただく。計画の基本方針を指標化して提示し、視聴者の皆さまの期待度、そして実現度をはかって、期待に沿う実現というものを行っていく。これがNHK全体の最大の目標になる。
新しい年は、明るい、活力ある年にしていこうと考えているが、いくつかの試練がある。しかし私は、「試練は組織と体質を変革し、強くする」と確信している。改革や試練を皆で乗り越えたときに、それが自信というエネルギーに変わり、活力を生む。一年先には、NHKがテレビの本放送を開始して60年、還暦を迎える。今年1年、公共放送としての原点に立ち返り、視聴者の皆さまの期待に応えることにより、NHKが次に向かって飛躍する土台を作る年にしたいという決意を申し上げて年始の挨拶とする。

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