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平成23年度入局式 松本会長講話 要旨
 
 今日から皆さんも公共放送NHKの一員。一人ひとり、これから公共放送の役割を担っていくという希望に燃え、高い志を持って今日この日を迎えたことと思う。次の時代を担う若い力を迎えることを喜び、また期待している。

 入局にあたり、まずは、3月11日に発生した東北関東大震災について触れたい。今回の大震災は、かつて日本が経験したことのない大地震だ。被害にあわれた方々に心からのお悔やみとお見舞いを申し上げたい。
 NHKは、地震発生時の緊急地震速報から直ちにテレビとラジオすべてのチャンネルで報道を開始した。事実関係を正確かつ迅速に伝えること、必要な生活情報を丁寧に伝えること、被災地と被災された方々を力づけ、勇気づける情報を紹介することなどを心がけ、国民の生命と財産を守るため、皆さんの先輩が持てる機能を最大限に発揮して震災報道に全精力を注いでいる。より多くの方々にきめ細かく情報が行き渡るよう、インターネットによるテレビ、ラジオの同時配信も新たな取り組みとして行った。
 避難所でのテレビの設置やラジオの配付、義援金の受け付けや被災者の方々への受信料免除など、国民が現在、直面している困難に立ち向かうことができるよう、放送、技術、管理、営業などNHKの全部門が一致団結し、公共放送の使命と役割を全力で果たしている。
 そして、この震災報道を通じて、NHKの役割がいかに重要、大切かということが世の中から改めて見直されている。

 皆さんがこれからNHKで仕事をしていく中で大事にしてほしい基本姿勢は、「公共放送 NHKの原点に立つ」ということだ。NHKの原点とは、ひとつはNHKが依って立つ放送法の目的。その趣旨は、「放送が国民に最大限に普及されて効用をもたらす」「不偏不党、真実及び自律を保障することによって、表現の自由を確保する」「健全な民主主義の発達に資する」ということ。さらに、取材・制作の基本的な姿勢として、正確、公平・公正、人権の尊重、そして国民の生命・財産を守るといったことが重要。こうした公共放送NHKの原点をしっかり認識して仕事にあたってほしいと思う。

 今日、4月1日は衛星放送が「BS1」と「BSプレミアム」の2波となる記念すべき日でもある。NHKはこれまで、放送の歴史の中で日本と世界をリードしてきた。ラジオからテレビ、白黒からカラー、衛星放送、さらにはデジタルへと進み、今年7月24日にはいよいよテレビ放送が完全デジタル化となる。この完全デジタル化ということは、私たち放送事業者にとっては、これまでテレビ放送の開始から半世紀以上にわたって続いてきたアナログ放送の時代を終焉させるという一大事業となる。受信側である視聴者の方々にとっても、テレビやアンテナを交換するなど、デジタル放送の受信環境を整える必要がある。NHKは放送法において、「あまねく日本全国において受信できるよう」にすることが義務づけられている。公共放送の使命を果たすためにも、テレビ放送の送信だけでなく、受信についてもすべての視聴者の方々が円滑にデジタル放送へ移行できるよう、万全の態勢で臨まなくてはならない。
 完全デジタル時代において、私たち放送事業者は新しい放送サービスのあり方を模索していくことになる。これまでも放送技術によってハイビジョンやワンセグ、データ放送など、放送サービスをより高度かつ利便性の高いものに変えてきた。今後は、さらなる技術革新やインターネットなどメディア状況の変化に対応し、チャレンジ精神を持って新たな放送サービスの開発に取り組んでいかなければならない。

 NHKで仕事をするうえで強く自覚してほしいことは、「公共放送で働く者には、高い倫理観と厳しい行動規範が求められる」ということだ。日常の仕事ではもちろん、私的な場面においても、社会的責任を持って自己を厳しく律しながら節度をもって行動することが必要だ。NHKは、視聴者の方々からいただく貴重な受信料で運営されている公共放送で、受信料制度は視聴者の方々からの期待や信頼があって成り立つ。その信頼は、放送の質に加え、重要なことは、放送を作り出すNHKの職員一人ひとりに対する幅広い信頼だ。そのことが同時に問われるのであり、そのために各職員が高い倫理観を持ち、誠実に職務を行っていくことが必要となる。皆が、視聴者・国民のため、あるいはNHKのために情熱を燃やし、信頼や期待を積み重ねたとしても、たった一人の行為がすべてを崩壊させることがある。自分ひとりの行為は、全体に繋がっているということを常に考えてほしい。
 ほとんどの皆さんは、今後、各地域の放送局に配属され、一定の研修を受けた後にさまざまな仕事を担当していくことになる。仕事における自らの夢や明確な目標を持って入局してきたと思うが、それぞれの職場でそうしたことを即座に実現できるということはないかもしれない。しかし、先輩の仕事の仕方を謙虚に学び、職場内で議論し、また職種を超えた仲間と意見を交わすことによって少しずつ自分自身の仕事の方法を身につけることができると思う。そうすることで、徐々に自らの夢や目標が実現できるようになるはずだ。
 私が入社したのは、公共企業体である日本国有鉄道だった。公共的な仕事をしたいと思ったからだ。初任地は仙台だった。その当時の仲間は今でも私的に交流を続けているし、その当時の体験がその後の私の仕事の基礎になっている。しかし、入社した国鉄は20年後に破綻し、消滅した。エネルギー革命や世の中の変化の中でそのままの形での存続が困難となった。その後、お客様からの収入だけが頼りの民営JRの立ち上げと経営体質の強化に携わってきた。私にとってこれらのことは、組織は常にその存在意義を世の中に問われている、そして、その存在意義をきちんと実現することが重要であるという大事な教訓となっている。

 放送と通信の融合など、今後、放送をめぐる環境はますます劇的に変化していくと思う。しかし、環境がどのように変わっていこうとも、視聴者ニーズを的確に捉え、質の高いニュース・番組を作り、送り届けるということが、公共放送NHKにとって何よりも重要であることに変わりはない。視聴者の方々から信頼され、期待されるNHKであり続けるため、私たちは未来に向かってしっかりと歩んでいかなければならない。
 公共放送の原点に立ち返り、NHKが果たすべき責任と役割を重く受け止め、自覚と誇りを持ってNHKを前進させよう。
 
 
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