日本放送協会 理事会議事録  (平成24年 7月24日開催分)
平成24年 8月31日(金)公表

<会 議 の 名 称>
 理 事 会

<会  議  日  時>
 平成24年 7月24日(火) 午前9時00分〜9時35分

<出   席   者>
 松本会長、小野副会長、塚田専務理事、吉国専務理事、冷水理事、
 石田理事、木田理事、新山理事、久保田技師長、板野理事、上滝理事、
 福井理事
 井原監査委員

<場         所>
 放送センター 役員会議室

<議        事>
 松本会長が開会を宣言し、議事に入った。

付議事項

1 審議事項
(1)平成24年度第1四半期業務報告
(2)視聴覚障害者向け放送普及行政の指針見直し(案)に対する意見
   提出について
(3)総務省「電波有効利用の促進に関する検討会 中間とりまとめ
   (案)」意見募集への対応について

2 報告事項
(1)考査報告
(2)契約・収納活動の状況(平成24年6月末)


議事経過

1 審議事項
(1)平成24年度第1四半期業務報告
(経営企画局)
 放送法第39条第3項に定める会長の職務の執行状況を「平成24(2012)年度第1四半期業務報告」(注)のとおり取りまとめましたので、審議をお願いします。
 はじめに今期の概況について報告します。
 まず、今期の総括についてです。
 「平成24〜26年度 NHK経営計画」の初年度にあたる平成24年度第1四半期は、一貫した目標管理方法を新たに設け、全部局が計画達成に向けて具体的な取り組みをスタートしました。3か年の基本方針の達成状況を測るため、NHK独自の14の指標を設けたほか、基本方針のもとに置いた「公共」、「信頼」、「創造・未来」、「改革・活力」の4つの重点目標などにも複数の指標を設定し、多角的に業務の評価を進めていきます。
 第1四半期では、災害に備えた放送設備や体制の強化を図るとともに、地域においても台風4号や北関東の竜巻被害等に迅速に対応し、安全・安心の放送に力を入れました。
 さらに「NHKスペシャル」や「連続テレビ小説」などで、幅広い世代の反響を呼ぶなど、年4回実施するインターネットによるチャンネル別の調査などで、放送の質的評価が全体的に上がっています。
 営業業績についても堅調な滑り出しとなるなど、第1期は全体としておおむね良いスタートが切れたと考えています。
 続いて、4つの重点項目の今期の総括についてです。
 「公共」については、「災害体制整備推進委員会」を発足させるなど、本部、大阪放送局の放送設備と体制の強化を進めました。地域においても台風4号をはじめ災害報道の充実に努めました。番組では、NHKスペシャル「MEGAQUAKEU 巨大地震」や「クローズアップ現代」などが反響を呼びました。こうした取り組みが、チャンネル別の調査などの評価に結びついたと思われます。
 「信頼」については、総合テレビで放送したNHKスペシャル「未解決事件File.02 オウム真理教」や連続テレビ小説「梅ちゃん先生」などが幅広い世代の反響を呼びました。衛星放送では、「大リーグ中継」や「新日本風土記」などの大型企画番組が注目を集め、接触者率も伸びています。今後、視聴者層の拡大など浮かび上がってきた課題については、改善を進めるとともに、来年度の番組改定の議論にも生かしていきます。国際放送では、震災復興番組の全米における配信や視聴可能世帯の拡大などに取り組み、発信力を強化しました。
 「創造・未来」については、ウェブニュースの充実強化や「ハイブリッドキャスト(新しい放送通信連携サービス)」の標準化に向けた準備などに取り組みました。また、スーパーハイビジョンの145インチプラズマディスプレイの開発に世界で初めて成功しました。東京スカイツリーに地上デジタル放送の送信設備を移転するための準備や、衛星セーフティネット利用者への恒久対策など、完全デジタル放送移行後の課題に取り組みました。また、放送技術研究所は長年の国際貢献を評価され、研究機関として世界で初めて「IBC国際栄誉賞」を受賞しました。
 「改革・活力」については、公共放送の使命を確実に達成するため、NHK独自の目標管理をスタートさせました。業務の効率的な運営や繁忙感の解消に向けた「業務の棚おろし」については、全国18のモデル職場で、試行をはじめました。また、営業目標の達成状況は堅調な滑り出しとなっています。6月には、放送受信規約を変更するなど、営業改革の取り組みも進めています。今後は、オリンピック・ロンドン大会や受信料値下げの周知とあわせ、公平負担の徹底に向けた活動を進めていきます。
 次に、営業目標の達成状況と収支概況について報告します。
 第1四半期の契約総数は18万件増加し、年間増加目標45万件に対し、進捗率が40.1%となりました。また、衛星契約は23.2万件増加し、年間増加目標72万件に対し、進捗率が32.2%となりました。契約総数増加、衛星契約増加とも、前年度同期を上回る業績を確保し、堅調なスタートとなりました。
 事業収支については、第1四半期は収入が1,709億円、事業支出が1,554億円で、事業収支差金は155億円となりました。受信料収入は1,642億円で、前年同時期を45億円上回る増収となりました。東日本大震災やアナログ放送終了による解約が24年度以降も発生していますが、衛星契約の増加等により、収入を確保しています。支出は堅調ですが、今後は、オリンピック・ロンドン大会関連の支出増が見込まれるため、引き続き推移を注視していきます。
 最後に、4つの重点目標の達成状況について報告のうち、3点についてご説明します。
 1点目は「NHKオンデマンド」についてです。NHKオンデマンドは、「特選見放題パック」を充実させました。4月からスマートフォンやタブレット端末向けの新しいサービスを開始したこともあり、視聴料収入が第1期3億円と前年同期に比べて158%となりました。パソコン系無料登録会員数も88万人となっています。
 2点目は群馬、栃木の両県で、4月1日にテレビの県域放送を開始しました。
 3点目は公平負担と営業経費抑制に向けた4つの営業改革についてです。6月に放送受信規約を変更し、「書面による放送受信契約書の提出の省略」や「公共機関への調査等による住所変更届等の省略」に関する条項を新設しました。今年の10月1日から実施します。
 以上の内容が決定されれば、本日開催の第1171回経営委員会に報告事項として提出します。

 注:

「平成24(2012)年度第1四半期業務報告」は、NHKホームページの「NHK経営情報」のなかに掲載しています。

(会 長)  原案どおり決定します。

(2) 視聴覚障害者向け放送普及行政の指針見直し(案)に対する意見提出について

(編成局)
 総務省は、平成24年1月から「デジタル放送時代の視聴覚障害者向け放送の充実に関する研究会」を開催し、5月23日に報告書を公表しました。この報告書の提言を踏まえ、総務省では、「視聴覚障害者向け放送普及行政の指針見直し(案)」(以下、「指針見直し(案)」)を作成し、6月28日から7月27日まで、意見募集を行っています。これに対してNHKの意見を提出したいと思いますので、審議をお願いします。
 今回示された「指針見直し(案)」のうち、NHKに関する主な内容は、次のとおりです。
(1)字幕放送
 NHK、地上系民放及び放送衛星の放送(NHKの放送を除く)において、大規模災害等緊急時放送については、できる限り全てに字幕付与することを新たに目標とする。
 また、NHKにおいて、災害発生後速やかな対応ができるように、できる限り早期に、全ての定時ニュースに字幕付与することを新たに目標とする。
(2)解説放送
 普及目標の対象番組(権利処理上の理由等により解説を付すことができない放送番組を除く全ての放送番組)について、明確化を行う。
(3)手話放送
 これまで目標が無かった手話放送について、新たに「NHKにおいては、手話放送の実施時間をできる限り増加させる」という目標を策定する。
 これらの「指針見直し(案)」に対して、NHKとして次の趣旨の意見を提出したいと思います。
 放送の完全デジタル化を踏まえ、視聴者のみなさまが情報社会の恩恵を受けられるよう、字幕放送や解説放送などのさらなる充実を図ることが必要であると考えます。また、東日本大震災では、正確な情報を迅速に視聴者のみなさまにお届けすることがきわめて重要であることをあらためて認識しました。
 意見募集に付された「指針見直し(案)」は、そうした視点から検討された「デジタル放送時代の視聴覚障害者向け放送の充実に関する研究会」の提言を踏まえたものであり、全体としておおむね妥当であると考えます。
 各論に対する意見の主な内容は次のとおりです。
1.字幕放送について
 NHKは、平成19年10月の行政指針をふまえて策定した「字幕放送拡充計画」に基づき、これまでも自主的に字幕放送の拡充を図ってまいりました。
 「指針見直し(案)」において、新たに目標に盛り込まれた大規模災害等緊急時放送におけるできる限り全ての字幕付与ならびに全ての定時ニュースへのできる限り早期の字幕付与については、ニュースなどの生番組への字幕付与に積極的に取り組み、定時ニュースへの拡充を進めています。平成24年3月には、音声自動認識装置とリスピークを組み合わせた字幕付与方式の試行をスタートさせるなど、新たな取り組みも進めています。
 29年度の目標達成に向けて着実に字幕放送を増やしていく方針で、おおむね妥当と考えます。
2.解説放送について
 解説放送については、放送の完全デジタル化をふまえ、平成23年度から29年度までの「解説放送拡充計画」を策定し、拡充に取り組んでいます。「指針見直し(案)」で示された「権利処理上の理由等により解説を付すことができない放送番組」の明確化を踏まえ、これを除く全ての放送番組を対象に、取り組みを進めていく方針で、妥当と考えます。
3.手話放送について
 東日本大震災では、発災直後に手話ニュースの放送回数を増やすなど、手話放送を強化しました。ただ、手話放送の実施時間の増加には専門技術者の確保などさまざまな課題があります。したがってNHKとしてはそうした課題や今後の技術の進展などを踏まえつつ、手話放送の実施時間をできる限り増加させていく方針であり、おおむね妥当と考えます。
 以上の内容が決定されれば、NHKの意見を総務省に提出します。

(会 長)  提出する意見の内容は、実務面においても特に問題はありませんね。
(編成局)  この行政指針は、平成20年度から29年度までの目標値を定めたもので、技術動向等を踏まえて、策定から5年後をめどに見直しを行うこととしています。前回は、5年前の平成19年に意見募集が行われ、NHKとしては、「全体として、おおむね妥当」とする意見を提出しました。また、今回のNHKの意見としては、字幕放送と手話放送が「おおむね妥当」、解説放送については「妥当」と表現を変えています。例えば字幕放送については、深夜・早朝に緊急災害報道を放送する必要がある場合、全ての放送に字幕を付けることが困難なこともあると想定されることから、「おおむね」という表現を使用しています。また、手話放送については、専門技術者の確保など、いくつか課題があることから、同じく「おおむね」という表現にしています。一方、解説放送については、今後5年間で対象番組の10%を解説放送とする目標を達成できる見込みであることから、「妥当」という表現にしています。
(上滝理事)  先日、地域の視聴者の方々との懇談の場で、聴覚に障害のある方から、緊急災害時の放送には、できる限り字幕を入れてほしいという声が寄せられました。災害時の情報は非常に重要ですので、可能な限り字幕放送化を行うよう、取り組んでほしいと思います。また、全国放送に限らず、県域放送の字幕化を要望する声も寄せられていますが、今回の「指針見直し(案)」については、その点について見直しが行われる予定ですか。
(編成局)  今回の「指針見直し(案)」では、地域放送についての言及はありませんが、NHKでは、首都圏を対象に、「首都圏ニュース845」は、10月から開始し、「首都圏ネットワーク」は、当初の平成25年4月からの開始予定を繰り上げ、10月から字幕放送をスタートします。
(石田理事)  地域放送の字幕化については、首都圏で開始した後、対応する人材の育成や必要な体制を整え、大阪放送局・名古屋放送局などで順次、開始する予定です。
(会 長)  原案どおり決定します。

(3) 総務省「電波有効利用の促進に関する検討会 中間とりまとめ(案)」意見募集への対応について

(技術局)
 総務省は「電波有効利用の促進に関する検討会」(以下、「検討会」)を開催し、電波の有効利用のための諸課題や具体的方策について検討を進めています。この度、「検討会」における論点と今後の議論の方向性をとりまとめた「中間とりまとめ(案)」を公表し、平成24年7月6日から7月31日までの間で意見募集を行っています。これに対してNHKの意見を提出したいと思いますので、審議をお願いします。
 「中間とりまとめ(案)」の概要は、次のとおりです。
(1)周波数再編の加速
 新規事業者が移行費用を負担する「終了促進措置」や、周波数を競売する「周波数オークション制度」などの方策により、周波数再編を促進する。
(2)電波利用料の活用
 使途としてこれまで電波法に明記されていなかった、自治体の防災無線システムのデジタル化の加速や、将来的に電波資源の拡大に資する基礎研究など、新たな使途へ電波利用料を活用する。
 この「検討会」の中間とりまとめ(案)に対して、NHKとして次の趣旨の意見を提出したいと思います。
(1)周波数再編の加速
 周波数の再編に当たっては、既存の無線システムの設備やサービスの状況を十分考慮し、慎重に進めることが必要と考えます。また、新たに周波数を割り当てられた無線システムが、既存の無線システムの運用に支障を与えない技術基準の策定が必要と考えます。
(2)電波利用料の活用
 電波利用料は、費用を負担している無線局免許人全体の受益を目的として運用されるべきであり、使途については厳正に審査・判断することが必要と考えます。
 また、電波利用料を活用して、スーパーハイビジョンのような放送システムの高度化等にも不可欠な電波資源の拡大に向けた基礎的な研究を支援することは、無線局免許人全体の受益拡大に資するものであり、必要と考えます。
 以上の内容が決定されれば、NHKの意見を総務省に提出します。

(会 長)  原案どおり決定します。

2 報告事項
(1)考査報告
(考査室)
 平成24年6月25日から7月18日までの間に放送した、ニュースと番組について考査した内容を報告します。この期間に、ニュース15項目、番組73本の考査を実施しました。
 ニュースの主な項目としては、気象庁が「これまでに経験したことのないような大雨」という新たな表現で警戒を呼びかけた九州北部豪雨や、消費税率引き上げ法案をめぐる小沢一郎元代表らの離党届提出による民主党分裂のほか、日本の海底にレアアースが大量に存在することの判明や、「ヒッグス粒子」とみられる素粒子の発見などがありました。
 また、番組では、3人の研修医が、ドラマで再現された「問診」の様子を見て総合診療医との検討を通じて病名を探り当てていく、医療をテーマにした知的エンターテインメント番組、「総合診療医 ドクターG 体が思うようにならない」(6月28日放送)、10代の若者を対象に、性についての基本的な知識を3回シリーズで伝える、「オトナへのトビラTV ココだけの“性”のはなし」(7月5日放送)や、歴史上の人物に着目して最新の研究や分析でその人物像を改めて描き出し、現代に投げかけるものを考える、「追跡者 ザ・プロファイラー アドルフ・ヒトラー 独裁者という名の怪物」(7月7日放送)などの番組を中心に考査しました。
 考査の結果、これらの一連のニュース・番組は、放送法、国内番組基準に照らし、「妥当」であったと判断します。

(石田理事)  九州北部の豪雨について、気象庁が「これまでに経験したことのないような大雨」という新たな表現で警戒を呼びかけていましたが、今後もさまざまな表現を使用していくとのことですので、その表現のとおりに視聴者に伝えていき、できるだけ丁寧に説明していきたいと思います。
(会 長)  気象庁が使用した新たな表現は、どのような状況のときに使用するのですか。
(考査室)  「これまでに経験したことがないような大雨」という表現は、6月に気象庁が設けたもので、特定の地域にとって、50年に一度程度という極めてまれな大雨が降った場合に、災害への強い危機感を簡潔に伝える表現として使用するとしています。

(2)契約・収納活動の状況(平成24年6月末)
(営業局)
 平成24年6月末の契約・収納活動の状況について報告します。
 まず、6月の収納額は499.1億円で、前年度同月を7.1億円上回りました。年間累計は、1,543.7億円で、前年度同時期を41.6億円上回っています。
 一方、前年度分回収額実績は5.9億円と、前年度同月を0.8億円下回りました。年間累計は36.0億円と前年度同時期を0.3億円上回っています。また、前々年度以前分回収額実績は、2.9億円と前年度同月を0.5億円下回り、年間累計も、9.0億円と前年度同時期を0.5億円下回っています。
 放送受信契約総数の増加状況について、6月は、取次が22.6万件と前年度同月を2.0万件下回っているものの、減少も2.8万件下回っているため、増加数は前年度同月を0.8万件上回る3.3万件となりました。年間累計増加数は、18.0万件と前年度同時期を2.2万件上回っています。
 6月の衛星契約増加については、取次が前年度同月に比べ1.1万件下回り、減少も前年度同月を0.9万件下回ったため、増加数は前年度同月を0.2万件下回る6.8万件となりました。年間累計増加数は、23.2万件と前年度同時期を2.2万件上回っています。
 以上の内容は、本日開催の第1171回経営委員会に報告します。



以上で付議事項を終了した。
上記のとおり確認した。
      平成24年 8月28日
                     会 長  松 本 正 之

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