日本放送協会 理事会議事録  (平成23年10月24日開催分)
平成23年11月11日(金)公表

<会 議 の 名 称>
 理 事 会

<会  議  日  時>
 平成23年10月24日(月) 午後1時30分〜2時00分

<出   席   者>
 松本会長、小野副会長、永井技師長、金田専務理事、大西理事、
 今井理事、塚田理事、吉国理事、冷水理事、新山理事、石田理事、
 木田理事
 井原監査委員

<場         所>
 放送センター 役員会議室

<議        事>
 松本会長が開会を宣言し、議事に入った。

付議事項

1 審議事項
(1)次期経営計画について
(2)平成23年度第2四半期業務報告
(3)「放送法第20条第2項第2号の業務の基準」の見直しについて
(4)特定失踪者問題調査会による八俣送信所の送信設備等の使用の期 
   間延長について

2 報告事項
(1)契約・収納活動の状況(平成23年9月末)

議事経過

1 審議事項
(1)次期経営計画について
(経営企画局)
 平成24〜26年度のNHK経営計画について、審議をお願いします。
 次期経営計画の検討にあたっては、現在および将来のNHKを取り巻く状況について、社会・経済情勢をはじめメディア環境の変化など、さまざまな観点から検証し、今後、公共放送NHKに求められる役割、果たすべき使命、そのための安定した財政基盤の在り方などについて、多角的かつ慎重な議論を重ねてきました。その結果、豊かで安心して暮らせる社会、夢と希望の持てる確かな未来の実現に、公共放送として貢献しなければならないという、私たちNHKの決意を込めて、「豊かで安心、たしかな未来へ 平成24〜26年度 NHK経営計画」を取りまとめました。
 次期経営計画の柱となるのは、「公共」、「信頼」、「創造・未来」、「改革・活力」の4つの重点目標です。「公共」では、未曾有の被害をもたらした東日本大震災でのさまざまな体験や教訓を生かし、いかなる時にも国民の安全・安心を守るための情報を、いち早く正確に提供し続けられるよう、放送機能を強化します。「信頼」では、世界に通用する質の高い番組、および日本と各地域の発展につながる放送・サービスを充実させます。「創造・未来」では、放送と通信が融合する時代に対応し、新しいサービスの開発や、さまざまな伝送路を活用したサービスを充実させます。そして「改革・活力」では、効率的な経営に向けた諸施策、受信料の公平負担を推し進めるための営業改革への取り組み、活力ある職場作りを進めます。
 また、次期経営計画では、現在の「平成21〜23年度 NHK経営計画」で約束した、受信料収入の「10%の還元」をどのように実施するかが大きな課題となりました。現計画の策定時からの大きな社会的・経済的変化を受け止めながら、“還元は値下げを軸に”という考え方のもと、経営委員会や視聴者の皆さまからの意見を踏まえ、熟慮を重ねてきました。その結果、地上契約の受信料の値下げ幅を、口座・クレジット支払で120円にするとの判断に至りました。これは、不透明な社会・経済情勢の中で、テレビ受信機のみを対象とする受信料体系に移行した昭和43年以降、初めての値下げに踏み切ることの経営上のリスクと、約束となっている視聴者の皆さまへの還元の在り方などを総合的に検討した結果であり、極めて重い決断を下したものです。これにより、収支の面で向こう3か年は大変厳しい状況が続き、非常に難しい財政運営を求められることになります。
 今後、より効率的な経営による経費の抑制に努め、新しい経営計画を着実に実行することで、公共放送としての使命を果たし、視聴者の皆さまの期待と信頼に、これまで以上に応えていく決意です。
 なお、この経営計画は、社会・経済情勢が変化すれば、それに応じて見直します。また、各年度の計画は、放送法の規定に従い、収支予算・事業計画が国会の承認を得ることで確定します。
 本議案が了承されれば、あす10月25日開催の第1153回経営委員会に議決事項として提出します。

(会 長)  この経営計画は社会・経済情勢の変化に応じて見直すことと、各年度の計画は収支予算・事業計画が国会の承認を得ることで確定することについては、計画の中に明記してあるのですね。
(石田理事)  計画本編の冒頭に注記する形で記載しています。
(塚田理事)  本議案に賛成の立場として、2点、意見があります。1点目は、この計画は収支の面でかなり厳しいものになっています。社会・経済情勢が変化すれば、それに応じて見直すことを明記してあるように、今後、実際に社会・経済情勢の大きな変動や、大きな災害が発生した場合には、公共放送の使命を果たすため、経営委員会にも諮ったうえで、機動的で柔軟な対応をとっていくべきだと考えます。大きな変動があった際には、経営計画で収支が決まっているから対応できないというのではなく、視聴者のために公共放送としての責務を果たせるよう、“なすべきことはなす”という心構えが必要だと思います。2点目は、経営計画の議論に影響を与えないよう、審議過程では計画の内容は公表せず、経営委員会の議決を得てから公表・説明することとして取り扱ってきました。しかし、そのために、「10%還元」をどのように実施するのかという点にマスコミの注目が集まってしまい、NHKが今後3年間で取り組む、放送サービスの内容や公共放送の役割については、視聴者の皆さまにこれまで伝えることができていなかったという反省点があります。そこで、計画の議決後には、こうした点について視聴者の皆さまにきちんと説明し、ご理解いただけるよう、広報に努めたいと思います。併せて、NHKおよび関連団体の職員にも、計画の内容を説明することがこれまでできませんでしたので、今後は部内および関連団体への周知を徹底し理解浸透に努め、NHKグループの総力を挙げて計画の実行に取り組むようにしたいと考えます。
(石田理事)  経営企画および財務・経理担当理事として申し述べます。この計画に基づき受信料の値下げを実施すれば、NHKの財政は、24年度からの3か年、事業収入・事業支出が23年度より減となり、厳しい財政運営を迫られる状況になると想定しています。しかし、視聴者の皆さまに「10%還元」を行うとして、これまで部外に説明してきた経緯や、経営委員会の議論等も踏まえたうえで、値下げを決断したものです。厳しい内容ですが、効率的な事業運営に努めていけば、4つの重点目標を実行し、公共放送の使命を果たしていけるものと考えます。執行部全員が結束して、この計画をしっかりと推進していくことが重要ですので、どうぞよろしくお願いします。
(新山理事)  この計画では、最初の原案から、ぶれることなく貫いてきた内容が大きく2つあります。1つは、東日本大震災の経験・教訓を受けて、今後も大災害が発生した場合は、公共放送として求められる役割をしっかりと果たしていくという決意を、非常に明確に打ち出した点です。もう1つは、グローバルブランドとしてのNHKの発信力をさらに高め内外に示していこうという、強い決意の表明です。これらについては、実行する段階でもぶれることなく推し進めていくべきだと考えます。それに基づき、制作部門としても、自信を持ってしっかりと良質なコンテンツを作っていきたいと思います。
(副会長)  値下げという非常に大きな決断に踏み出しましたが、それによって、特に収入の確保が非常に重要なポイントになります。この計画では営業経費の削減に取り組みますが、今後3か年の間に社会・経済情勢がどうなるか不透明ですので、状況によっては収入確保のために、経費が膨らむことになっても臨機応変の措置を取らなければならないこともあると思います。計画では、職員の士気の向上にも努めることにしていますので、適正な経費で運営することに努める一方で、営業現場の士気の向上についても、きちんと考慮する必要があります。その点ぜひ、“収入の確保”と“士気の向上”にしっかりと目を配りながら、進めていきたいと思います。
(会 長)  原案どおり了承し、次回の経営委員会に諮ります。

(2)平成23年度第2四半期業務報告
(経営企画局)
 放送法第39条第3項に定める会長の職務の執行状況を、「平成23(2011)年度第2四半期業務報告」のとおり取りまとめましたので、審議をお願いします。
 この第2四半期は、東日本大震災について、多角的な検証番組を含め、分厚く放送してきました。また、7月24日には、テレビアナログ放送が、東北の3県を除いて終了するという歴史的な出来事もありましたが、この日に向け長い期間をかけて準備を重ねてきた結果、大きな混乱もなく完了させることができました。
 「平成21〜23年度 NHK経営計画」の残り半年は、「接触者率の向上」、「受信料の支払率の向上」という経営2目標をはじめとする各目標の達成に向けた、最終の追い込み期間と位置づけ、全力で取り組んでいきます。
 収支については、NHKでは、今年度から「中間決算」を作成することにし、現在取りまとめの作業を進めています。そのため、今期の四半期業務報告には掲載していませんが、11月には経営委員会に報告する予定です。
 「今期の概況」について説明します。
 まず、経営2目標の1つ、接触者率向上の取り組みについてです。接触者率の調査は6月と11月に実施のため、今期は新たなデータはありませんので、上半期の取り組みについて説明します。上半期を総括すると、総合テレビでは、朝8時台の「連続テレビ小説」、「あさイチ」などが女性視聴者に支持され好調なほか、「ニュースウオッチ9」では、男女40代の個人視聴率が伸びており、視聴者層の幅が広がりつつあります。衛星放送は、国際・スポーツを軸としたBS1の女子サッカー「なでしこジャパン」の試合、BSプレミアムの「コズミック フロント」など、多彩な編成を行うことで、放送波それぞれの個性化に成果をあげつつあります。9月からは、ラジオ番組を放送と同時にインターネットで提供するサービスを開始するなど、今後もさまざまなメディアやツールを活用して接触者率の向上をめざしていきます。
 次に、「受信料支払率の向上」について説明します。
 まず、7月24日にアナログ放送を終了しましたが、それに伴う受信契約の解約は、9月末までの確定数で9.5万件に上りました。また、東日本大震災に関して、災害免除期間を8月末から10月末へと2か月延長しましたが、9月末時点の災害免除適用件数は20.5万件に上っています。震災に伴う受信契約の解約は、上半期で3.1万件となっています。契約総数は8月に3.7万件の減少となり、第2四半期計で2.8万件増加にとどまりました。上半期の契約総数の増加は累計18.6万件で、年間増加目標の40万件に対する進捗率は46.5%、また、衛星契約増加は、累計36.3万件で目標に対する進捗率は48.4%と、いずれも厳しい結果となっています。こうした状況のもと、現経営計画の最終年度となる23年度は支払率75%を目標としているのに対し、上半期末の支払率は推計で74.5%となっています。
 今後は、さらに営業活動を強化し、アナログ放送終了に伴う契約の減少を上回る取次数を確保し、今年度末での支払率75%の達成を目指します。
 3つ目は、この四半期の大きな出来事となった、アナログ放送の終了についてです。
 岩手・宮城・福島の東北3県を除き、44都道府県向けのアナログ放送を終了したことで、NHKが昭和28年にテレビ放送を開始して以来、およそ60年のアナログ放送の歴史に幕を閉じました。NHKでは、この日に向けて、2,126局のデジタル中継局の建設や、約8千か所のNHK共聴と約1万2千か所の自主共聴のデジタルへの移行、また暫定対策としての衛星セーフティネットへの移行などについて、長い時間をかけ計画的に準備を進め、公共放送NHKとしての責任を果たしました。
 最後は、受信料収入の概況についてです。
 契約総数、衛星増加ともに目標に対する進捗率は厳しい情勢ですが、受信料収入については、上半期の累計が3,361億円と、前年同時期を上回っています。
 今後は、アナログ放送終了や東日本大震災により減少した契約の再契約勧奨活動や、衛星放送の「設置確認メッセージ」の活用などを推進することで、契約総数・衛星契約の増加を図り、受信料収入を確保するよう全力を挙げていきます。
 以上の報告内容が決定されれば、あす10月25日の第1153回経営委員会に報告事項として提出します。

(会 長)  原案どおり決定し、次回の経営委員会に報告します。

(3)「放送法第20条第2項第2号の業務の基準」の見直しについて
(NHKオンデマンド室)
 平成20年4月1日に施行された、放送法第20条(当時 第9条)第2項第2号では、NHKが「放送した放送番組及びその編集上必要な資料(既放送番組等)を電気通信回線を通じて一般の利用に供する業務を行うこと」ができるとなっています。それに基づき、同年12月にインターネットを通じて既放送番組等を視聴者に提供するNHKオンデマンドサービスを開始しました。サービスの開始にあたっては、同条第9項にのっとって、「放送法第20条(当時 第9条)第2項第2号の業務の基準」を定め、総務大臣の認可を受けていますが、その基準の第4に「20年11月20日から3年後を目途に必要な見直しを行うこととする」とあることから、社会経済情勢や周辺状況の変化を踏まえ、同基準の内容を見直したいと思いますので、審議をお願いします。
 見直しの主な項目は、以下のとおりです。(条項は改正後を記載)
 「第2 本業務のうち、専ら受信料を財源として行うもの以外のもの」について、以下の7点を見直します。

(1) 「3 サービスの種類」については、「見逃し番組サービス」の配信期間の一定幅を確保します。
(2) 「4 本サービスの提供態様」については、NHKが利用者に直接提供する「直接提供型」と外部の動画配信等の事業者を仲介して提供する「プラットフォーム経由型」に大別し、「プラットフォーム経由型」でのマルチデバイス提供を可能とします。
(3) 「5 提供端末」については、提供端末の急速な進展・変化に対応できるよう、各種の受信設備を「電子機器」と一括し、具体的要件はNHKのホームページで明示することとします。
(4) 「9 利用料金の考え方」については、事業収支が相償するように中心料金を設定する要件を廃止し、料金設定の弾力性や機動性を確保します。
(5) 「10 利用促進目的の料金の特例」については、料金面での利用促進策の柔軟な実施を可能とします。
(6) 「12 区分経理」については、「見逃し番組サービス」の経費をアーカイブ勘定に全額配賦するのではなく、提供番組数の実績に応じて配賦することとします。
(7) 「13 番組アーカイブスの事業計画の策定」については、中心料金の設定で求められていた事業収支の相償を、単年度または複数年度の事業計画の策定で担保することとします。

  このほか、「第1 本業務のうち、専ら受信料を財源として行うもの」について、「4 既放送番組等の提供期間」に定める、提供期間の制限(放送後1か月程度)の例外となるものとして、「防災に役立つもの」を追加します。
  この基準については、NHKオンデマンドサービスが、25年度末に収支差益が発生しない等の場合、事業の継続について検討することとしているのに対応し、2年後を目途に必要に応じて見直しを行うこととします。
本議案が了承されれば、10月25日開催の第1153回経営委員会に議決事項として提出し、経営委員会の議決を得たうえで、総務大臣に認可を申請します。

(会 長)  原案どおり了承し、次回の経営委員会に諮ります。

(4) 特定失踪者問題調査会による八俣送信所の送信設備等の使用の期間延長について

(永井技師長)
 KDDIが所有しNHKが包括的使用権を有する八俣送信所の送信設備等については、特定失踪者問題調査会の行う北朝鮮拉致被害者向け短波送信「しおかぜ」のために、同調査会に使用を認めてきました。引き続き使用を認めることとしたいので、審議をお願いします。
 送信設備等を「しおかぜ」に使用させることについては、NHK、KDDI、同調査会の3者の合意に基づき、平成19年3月26日から23年10月30日までの4年半にわたり、毎年3月と10月の国際的に割り当て周波数の変更が行われる時期に期間を延長することによって、これを認めてきました。このほど、同調査会からあらためて、送信設備等の使用期間を延長させてほしいとの申し出がありました。これについては、NHKの業務に支障はなく、費用負担等も生じないことが確認されたことから、人道上の見地により可能な範囲での協力として、これまでと同様に、24年3月25日まで使用を認めたいと思います。
 万一、NHKの業務に支障が生じたときは、3者で締結した確認書に基づき、NHKはいつでも「しおかぜ」の送信停止を求めることができます。これを担保するための覚書を、あらためて3者で締結することとします。

(会 長)

 従来の対応を変更するものではありませんね。
 原案どおり決定します。


2 報告事項
(1)契約・収納活動の状況(平成23年9月末)
(営業局)
 平成23年9月末の契約・収納活動の状況について報告します。
 まず、第3期(8・9月)の収納額は1,115.4億円で、前年度同期を18.6億円上回りました。年間累計は、3,270.1億円で、前年度同時期を60.7億円上回っています。
 一方、前年度受信料の回収額実績は6.6億円となり、前年度同期を1.4億円下回り、年間累計も49.4億円と前年度同時期を0.9億円下回っています。また、前々年度以前受信料の回収額実績は、5.6億円と前年度同期を0.2億円下回り、年間累計も、19.0億円と前年度同時期を2.4億円下回っています。
 放送受信契約総数の増加状況については、第3期は、取次は49.6万件と前年度同期を4.2万件上回ったものの、東日本大震災やアナログ放送終了に伴う解約の影響で、減少が49.2万件と前年度同期に比べ12.8万件上回ったため、増加は差し引き0.4万件となり、前年度同期を8.6万件下回りました。年間累計も差し引き18.6万件と、前年度同時期を5.4万件下回っています。
 第3期の衛星契約増加については、取次は前年度同期に比べ3.5万件上回ったものの、東日本大震災やアナログ放送終了の影響に加え、セーフティネットの申し込みに伴う衛星契約から地上契約への変更などにより、減少が前年度同期を9.8万件上回ったため、増加数は前年度同期を6.3万件下回る7.7万件となりました。また、年間累計も、前年度同時期に比べ差し引き5.3万件下回っています。
 第3期末の未収数については、前年度同期を0.1万件上回る3.7万件の削減となり、年間累計は前年度同時期を2.0万件上回る13.7万件の削減となりました。なお、23年9月末の未収現在数は190.6万件となり、前年同時期から28.3万件減っています。
 最後に、口座・クレジットカード支払い数については、前年度同期を3.9万件下回る7.7万件の増加となっていますが、年間累計では、前年度同時期を0.4万件上回り34.4万件の増加となりました。
 以上の内容は、10月25日開催の第1153回経営委員会に報告事項として提出します。

以上で付議事項を終了した。
上記のとおり確認した。
      平成23年11月 8日
                     会 長  松 本 正 之

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