日本放送協会 理事会議事録  (平成23年 8月 2日開催分)
平成23年 9月 2日(金)公表

<会 議 の 名 称>
 理 事 会

<会  議  日  時>
 平成23年 8月 2日(火) 午前9時00分〜9時25分

<出   席   者>
 松本会長、小野副会長、永井技師長、金田専務理事、大西理事、
 今井理事、塚田理事、吉国理事、冷水理事、新山理事、石田理事、
 木田理事
 井原監査委員

<場         所>
 放送センター 役員会議室

<議        事>
 松本会長が開会を宣言し、議事に入った。

付議事項

1 審議事項
(1)新放送会館の用地取得について

2 報告事項
(1)考査報告
(2)放送番組審議会議事録(資料)

議事経過

1 審議事項
(1)新放送会館の用地取得について
(経理局)
 仙台放送会館は、築後50年が経過し、かねてより放送会館の移転に向けた検討を行ってきましたが、このたび、移転先の用地について、所有者と条件に関する協議を重ねた結果、合意に達しましたので、用地取得についての審議をお願いします。
 取得予定地は、仙台市青葉区本町の敷地面積5,522m2の土地で、現況有姿での取得となります。用途地域は商業地域で、建ぺい率80%、容積率500%です。建設方式は単独建設となります。また、取得予定地は、市営地下鉄南北線の勾当台公園駅から徒歩5分の場所にあり、東側に錦町公園が隣接しています。勾当台公園駅周辺は、オフィスビルやファッションビルなどがあり、にぎわいのある地域です。
 契約額は、不動産鑑定評価や直近の取引事例と照らしながら、所有者と折衝を行い、総額35億円で合意しています。
相手先との契約および支払いについては、経営委員会で議決が得られた後の8月下旬を予定しています。
 その後のスケジュールについては、移転用地取得後、速やかに建物撤去工事を行い、平成24年度中に、新放送会館の整備方針と整備概要をまとめる予定です。25年度に設計に入り、26年度に建設を着工し、29年度に建物の完成を見込んでいます。運用開始は、仙台放送局の開局90周年にあたる平成30年度のはじめを予定しています。
 本件が了承されれば、8月23日に開催される第1149回経営委員会に議決事項として提出します。

(会 長)  契約額35億円は、適正価格といえるのですか。
(経理局)  契約額については、2者の不動産鑑定機関に鑑定を依頼し、鑑定評価を受けるとともに、近隣の取引事例と比較した結果のものですので、適正価格と考えています。
(大西理事)  新放送会館移転後の旧放送会館の跡地は、どうするのですか。
(経理局)  旧放送会館の跡地は売却する予定です。
(今井理事)  建ぺい率が80%で、容積率が500%ですと、どのくらいの規模の建物が建設できますか。
(経理局)  3万m2規模までの建物が建てられます。現在の放送会館の建ぺい率が90%で、容積率が300%ですので、今よりは大きい建物が建てられます。また、今回の取得予定地は、現況有姿での取得となりますので、NHKが残置建物を撤去する必要があります。
(会 長)  撤去費を別にしても、契約額35億円は適正価格ということですね。
(経理局)  そのとおりです。
(会 長)  原案どおり了承し、次回の経営委員会に諮ります。

2 報告事項
(1)考査報告
(考査室)
 6月30日から7月27日までの期間に、ニュースと番組について考査した内容を報告します。
 この期間、松本復興担当大臣の辞任、なでしこジャパン世界一、中国の高速鉄道事故などのニュースと、東日本大震災関連の番組などを中心に、ニュース22項目、番組99本の考査を実施しました。
考査の結果、一連のニュース・番組は、放送法、国内番組基準の観点から「妥当」であったと判断します。
 まず、ニュースのうち7項目の考査結果について報告します。
 はじめは、松本復興担当大臣が自らの暴言で辞任したニュースです。7月3日、松本復興担当大臣は岩手県・宮城県を訪れ、両知事と会談し「知恵を出さないやつは助けない」などと命令的な口調で発言し、被災自治体や被災者、野党などの反発を受け、7月5日、就任からわずか9日で辞任しました。ニュースでは4日の早朝4時台に宮城県の村井知事との会談の内容を伝え、その後、岩手県知事への発言の内容や被災地の反発の声などを紹介していましたが、大臣の発言内容とその問題点を、もっと早い段階で伝えてほしかったと思います。
 次に、九州電力のやらせメールに関するニュースです。九州電力が、佐賀県・玄海原発の安全性について、国が主催した討論会に、一般市民の立場から運転再開を容認するメールを送るよう関連会社などに指示していたことが分かりました。7月6日の国会中継「衆議院予算委員会集中審議」の中で九州電力のやらせメールが取り上げられました。当日の「ニュースウオッチ9」で、九州電力が会見を開いて、自ら指示したことを認め、社長が謝罪したことを伝えました。一連のニュースでは、九州電力の指示内容や地元の反応をはじめ、発覚の経緯や不祥事の背景を分厚く伝えていましたが、衆議院予算委員会でのやり取りについては、九州電力が発表する前にニュースで紹介してほしかったと思います。
 NHKの取材により、東京電力福島第一原発の廃炉に向けた中長期の工程表の案が明らかになりました。7月9日のニュースは、福島第一原発の廃炉に向け、国の原子力委員会などが検討している中長期的な工程表の案を独自取材により他社に先駆けて伝え、原子炉建屋を解体・撤去するまでには数十年におよぶ作業が必要で、作業には多くの課題があることを具体的に指摘していました。
 また、政府と東京電力は、福島第一原発の事故の収束に向け、半年後までに放射性物質の放出を抑えることを目標にした新たな工程表を発表しました。7月19日のニュースでは、工程表のステップ1が、計画変更を重ねてようやく達成されたことを指摘するとともに、ステップ2の内容と課題を伝えていました。政府と東京電力が、原子炉建屋から今も放射性物質が放出されており、放出量は事故直後の200万分の1であると説明したことを紹介していましたが、具体的な数値と環境への影響について、詳しく説明してほしかったと思います。
 電力使用制限関連のニュースについてです。震災による電力不足に対応するため、7月1日から東京電力と東北電力の管内で、法律に基づく電力使用制限が始まり、企業など大口利用者の節電対策が本格化しました。ニュースでは、日中に工場を停止するため、午前5時30分から操業が始まった自動車工場の紹介をはじめ、土日にも子どもを受け入れることにした保育園、節電のために機械を止めた鉄工所などのほか、震災からの復旧作業が進むなか、節電しながら生産を回復させるため、自家発電をフル稼働させた結果、燃料コストが増えた福島県いわき市の化学薬品工場を紹介していました。節電対策により、影響を受けた企業や従業員への対策が十分取られているのか、被災地でどのような影響があったのかなどについて、もっと詳しく知りたいと思いました。
 中国では、国の威信をかけて進めてきた高速鉄道が追突事故を起こし、一部車両が高架橋から転落するなど、安全性への不安が高まっています。この事故については、7月24日午前0時29分に、「中国・浙江省で高速鉄道が脱線 11人死亡 89人病院搬送」とスーパーで速報した後、「NHKニュース おはよう日本」で、「建設を急いだ結果、安全対策が十分でなかったのではないか」と、現場からいち早く記者が電話でリポートしていました。25日の正午の「ニュース」では、現場近くに掘った穴の中に、事故車両の一部を埋めている映像を紹介していましたが、もう少し早く伝えてほしかったと思います。
 7月18日の「FIFA女子ワールドカップドイツ2011」の決勝戦で、ドイツやスウェーデンなどの強豪を破って決勝に進出した日本女子チーム“なでしこジャパン”が、これまで一度も勝ったことのないアメリカを破り初優勝しました。この快挙については、緊迫した決勝戦、選手たちの喜び、活躍をたたえる各地の声、および選手を支えた家族の姿などを幅広く紹介し、被災地を含め、日本中に元気を与えてくれた優勝として伝えていました。
 続いて、番組の考査結果です。
 7月9日に放送したNHKスペシャル シリーズ原発危機 第3回「徹底討論 どうする原発」では、福島第一原発事故から4か月が経過し、原発とどう向き合えばいいのか、生放送で討論しました。原発政策に注目が集まる中、「原発維持」と「脱原発」の立場をそれぞれ明確にした専門家が、安全性やコストなどについて、本格的に意見を交換したことは有意義でした。しかし、出演者が自分の考えを述べるにとどまり、議論が深まらなかったことが残念でした。また、放送中に寄せられた視聴者からの1万件を超える意見について、番組中にもっと紹介する工夫がほしかったと思います。次回は、討論の材料となるデータを盛り込むなど、より深みのある議論が展開されることを期待します。
 東日本大震災で発生した液状化現象は、東北だけでなく首都圏にも広範囲に被害をおよぼしました。7月10日に放送したNHKスペシャル 東日本大震災「“世界最大”の液状化」は、液状化はどのように起き、どう広がったのか、新たに分かった事実をもとに、液状化の脅威に迫る内容でした。番組では、液状化被害の実態と発生メカニズムを、科学的な分析で詳しく示すとともに、安全なはずの鉄筋ビルが、液状化によって、避難場所として役に立たなくなることや、東京湾岸のコンビナート群も、このままでは大規模に倒壊するおそれがあることなど、現在の防災対策の見直しを迫る、示唆に富んだ内容でした。モニターの番組評価も高く、満足度88%と好評でした。
 最後に、7月14日午後8時に放送した総合テレビの新番組「セカイでニホンGO!」についてです。世界が今、日本をどう見ているのかをきっかけにして、この先、日本はどこへ進んで行くのかを視聴者とともに考えて行こうというスタジオ番組です。番組は、テーマの設定に新しさがなく、とりとめのないおしゃべりに終始していた感がありました。毎週、ゴールデンタイムで放送するには、テーマの選択や構成、出演者の人選など、番組の魅力を高めてほしいと思います。また、「ニホン人は世界一の“ビビリ”」をテーマにした議論で、特定のスポーツ選手の試合の映像を、“ビビリ”の代表的な例として、繰り返し使用したことは適切でなかったと思います。

(会 長)  考査室による考査内容が、深みを増してきていると多くの人が評価しています。人事異動により、考査室のメンバーも新しくなったと思いますが、引き続き適正な考査を行ってほしいと思います。

(2)放送番組審議会議事録(資料)
 編成局および国際放送局から、中央放送番組審議会、国際放送番組審議会、全国の地方放送番組審議会(関東甲信越、近畿、中部、中国、九州、東北、北海道、四国)の平成23年6月開催分の議事録についての報告(注)。

 注:

放送番組審議会の内容は、NHKホームページの「NHK経営情報」のなかに掲載しています。


以上で付議事項を終了した。
上記のとおり確認した。
      平成23年 8月30日
                     会 長  松 本 正 之

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