日本放送協会 理事会議事録  (平成22年 8月24日開催分)
平成22年 9月10日(金)公表

<会 議 の 名 称>
 理 事 会

<会  議  日  時>
 平成22年 8月24日(火) 午前9時00分〜9時40分

<出   席   者>
 福地会長、今井副会長、永井技師長、金田専務理事、日向専務理事、
 溝口理事、八幡理事、大西理事、今井理事、黒木理事、塚田理事、
 吉国理事

 井原監査委員

<場         所>
 放送センター 役員会議室

<議        事>
 福地会長が開会を宣言し、議事に入った。

付議事項

1 報告事項
(1)「次期電波利用料の見直しに関する基本方針案」に関する意見募集へ
   の対応について
(2)契約・収納活動の状況(平成22年7月末)
(3)財政の現況(平成22年7月末)


議事経過

1 報告事項
(1)「次期電波利用料の見直しに関する基本方針案」に関する意見募集へ
   の対応について
(技術局)
 総務省は、本年4月に「電波利用料制度に関する専門調査会」を設置し、次期(平成23〜25年度)電波利用料の見直しに関して検討を進めてきました。この度、その見直しに関する基本方針案(以下、「方針案」)が取りまとめられ、8月5日から19日までの期間で意見募集が実施されました。この意見募集に対するNHKの意見を、8月19日に総務省に提出したので、報告します。
 本来、意見募集に対して意見を提出する場合は、理事会の審議が必要ですが、今回の意見募集については受け付けが短期間だったこともあり、期間中に理事会の開催がなかったことから、理事会運営規程第8条の規定により、事前に会長の決定を得たうえで総務省に提出し、本日の理事会に報告するものです。
 まず、方針案の概要について説明します。方針案では、4つの項目が述べられています。
 1点目は、「電波利用料の予算規模」です。地上デジタル放送への移行対策経費が年間100億円程度増額することが見込まれる中、既存使途の歳出を効率化することや、22年度の歳入と歳出の差額90億円は地デジ移行対策の後年度負担償還等に支出し、23年度以降は差額が生じないようにすることが必要とされています。
 2点目は、「電波利用料の使途」です。電波の有効利用のいっそうの促進に向けて、周波数再編を加速するための支援スキームの検討、ホワイトスペース(時間的・空間的・技術的条件により本来割り当てられた目的とは別の目的に使用可能な周波数)の活用等を図る施策の実施、研究開発・実証実験・国際標準化の推進といった施策を重点的に推進することが述べられています。
 3点目は、「電波利用料の料額」です。電波の経済的価値をいっそう反映させるため使用帯域幅に応じた負担部分を拡大すること、無線局数での単純な均等割りによる料額体系の簡素化を図ること、また、使用帯域幅ごとの負担のあり方に関して、無線局の使命・責務を勘案した減免措置の特性係数は次期の3か年は存続するものの、中期的には見直すことが述べられています。減免措置について、NHKは現在、国民の電波利用の普及にかかわる責務や国民の生命・財産の保護への寄与が勘案されて、料額を4分の1とする措置を受けています。
 4点目は、「その他」です。“電波利用に関する共益事務に充てる費用”を目的とする電波利用料の性格は、引き続き維持することが適当とされています。また、オークションの導入については、本格的な議論を行うべきとされています。
 この方針案に対して、NHKが提出した意見は次のとおりです。

 1.電波利用料予算規模について
  ・ NHKの電波利用料支出は、平成5年の電波利用料制度導入時から
   10倍近くに増大しています。電波利用料の使途、料額の見直しによ
   り、NHKの負担が増えないよう、適切な予算規模と効率的な事務の
   実施を要望します。
  ・ 地上放送のデジタル化は、視聴者がハイビジョンやワンセグサービ
   スなどを享受できるメリットがあり、また、VHF帯およびUHF帯
   においてテレビ放送以外の他の用途に使用できる130MHz幅の周
   波数を創出しようという国の施策であり、無線局免許人全体の受益に
   適うものであることから、既存使途の歳出の効率化を図りつつ、地デ
   ジ移行対策の後年度負担の償還に支出することは適当と考えます。
 2.電波利用料の料額について
  ・ NHKは、視聴者が負担する受信料によって運営されている公共放
   送であり、電波を利用することによって利益を得る企業とは基本的に
   性格を異にしていることから、電波の経済的価値を料額に一層反映さ
   せるためとして、使用帯域幅に応じた負担部分を一律に拡大適用する
   ことは、そぐわないと考えます。
  ・  NHKは、あまねく全国に豊かで、かつ、良い放送番組を届け、
   また、災害の場合の放送を迅速かつ的確に提供するよう、放送法で規
   定された公共放送としての使命があり、この責務を果しています。こ
   れを勘案した特性係数の適用など、適正な負担の措置について今後も
   継続されることを要望します。
  ・  無線局数で按分して負担する部分を無線局数の単純な均等割りに
   することは、地デジ難視対策用ギャップフィラー等の料額を低廉化す
   ることにつながることから適当であると考えます。

(会 長)   電波利用料の料額について、「経済的価値を料額に一層反
       映させるためとして、使用帯域幅に応じた負担部分を一律に
       拡大適用することは、そぐわない」と述べていますが、あら
       ためてわかりやすく説明してください。
(技術局)   現在、携帯電話とテレビがそれぞれ使用している電波の帯
       域幅の比率は、1対1です。しかし、電波利用料を負担する
       割合は、携帯電話が8割、テレビが2割となっています。こ
       れは、携帯電話は電波を使用することで経済的な利益を上げ
       ているのに対し、テレビは、国民の生命・財産を守る報道を
       はじめとして、電波の使用により公共的な使命を果たしてい
       ることなど、さまざまな事情を勘案した係数が料額にかけら
       れた結果です。方針案では、中期的にこの負担のあり方を見
       直す方向が示されていますので、NHKとしては、それに反
       対することを述べています。
(会 長)   放送、特に公共放送であるNHKは、災害報道等により国
       民生活にとって重要な役割を担っています。その点は引き続
       き評価されるべきです。また、放送局の負担もあって地上デ
       ジタル放送に移行することで周波数に空きが生まれ、携帯電
       話がそれを利用できるという、負担と受益の関係がありま
       す。そうした立場から、電波利用料見直しに関するNHKの
       意見をもっと具体的に強く述べた方がよいと思います。今
       後、さらに端的に強く主張していってください。


(2)契約・収納活動の状況(平成22年7月末)
(営業局)
 平成22年7月末の契約・収納活動の状況について報告します。
 まず、放送受信契約総数の増加状況です。第2期(6月・7月)は、計画の進ちょくに遅れが見られる地域や遠隔地の対策を強化するとともに集中対策期間を設定するなど、契約総数取次に重点的に取り組んだ結果、期間の契約総数増加は4.2万件で、前年度同期を1.7万件上回りました。年度累計の増加は15.0万件(年間計画に対する進ちょく率42.9%)となりました。契約総数の有料契約現在数は3,700万件を超えて、過去最高となっています。一方で、障害者免除や公的扶助受給世帯の増加による有料契約から全額免除への変更は、期間で3.2万件あり、前年度同期より0.4万件増えています。引き続き動向を注視していきます。今後さらに、契約総数増加の確保に重点的に取り組んでいきたいと考えています。
 衛星契約増加については、新規の契約確保や移動世帯の衛星放送受信確認の徹底に取り組むとともに、受信機の買い替えによる地上契約から衛星契約への契約変更対策を強化した結果、第2期の増加は、13.6万件、年度累計で27.6万件(年間計画に対する進ちょく率42.4%)となりました。前年度同期と比較して、期間で3.2万件、年度累計で3.3万件上回っています。
 第2期の当年度の収納額は1,071億円、年度累計では2,112億円で、前年度同期と比較して、期間で21.7億円、年度累計で45.8億円の増収となっています。
 前年度受信料の回収額実績は、期間で13.5億円、年度累計で42.2億円となり、前年度同期とほぼ同水準となりました。また、前々年度以前受信料の回収額実績は、期間で8.5億円、年度累計で15.6億円となり、前年度同期を大幅に上回りました。
 第2期末の支払い拒否・保留数は29.1万件となり、最も多かった時期の17年度11月末から98.9万件の削減となりました。また、未収数は、第2期に新たに14万件発生したのに対し、支払い再開などにより18万件減った結果、年度累計で8万件削減し、現在数は223万件となりました。
 第2期の口座・クレジットカード支払いの増加数は9.8万件、年度累計で22.9万件となり、年間計画に対する進ちょく率は57.2%となりました。
 最後に、21年度決算を受けての当初の減収を早期にばん回することと、景気低迷など厳しい経済状況の中で、契約総数増加の年間計画35万件を確保するため、未収者への文書対策の強化や法人委託を活用した契約取次の強化など6項目の追加施策に新たに取り組みたいと考えます。一部は7月からすでに実施しています。
 この内容は、本日の第1124回経営委員会にも報告します。

(八幡理事)  契約総数増加について、世帯契約と事業所契約の内訳は、
       前年度と比較してどうなっていますか。
(営業局)   今年度累計での契約総数の増加は15万件となっています
       が、このうち世帯契約の増加が12.7万件、事業所契約の
       増加が2.3万件です。前年度同期は、世帯契約の増加が9
       .8万件、事業所契約増加が7万件でしたので、比較すると
       世帯契約増加数は2.9万件増え、事業所契約増加数は4.7
       万件減っています。事業所契約については、前年度第1期
       (4月・5月)に、事業所割引制度の導入などによって件数
       がかなり増えたことから、今年度は比較すると増加数が落ち
       ていますが、年間計画に対する進ちょく状況は、ほぼ計画ど
       おりとなっています。
(会 長)   6項目の追加施策は、当初予算で計画していなかった経費
       により実施するものですが、こうした追加施策は、本来あま
       り好ましいものではありません。営業活動では、基本の活動
       にきっちりと取り組んでいくことで業績を上げることが大事
       です。厳しい状況の中で、緊急避難的に施策を追加するのは
       しかたありませんが、21年度も10項目実施し、今年度も
       またということで、追加施策をとることが常態化するのは疑
       問に感じます。営業経費率の抑制も求められています。今回
       追加する施策が、本当に効果があり実施した方がよいもので
       あれば、今後はあらかじめ予算・事業計画の中に取り込んで
       おくべきだと思います。
(営業局)   そのとおりだと思います。営業活動においては、まず当初
       予算の範囲内で、その時々の状況に応じて効果的な施策を工
       夫しながら、さまざまな活動を展開していますが、今回は、
       それでもなお状況が厳しい中でのギリギリの判断として、追
       加施策を実施せざるを得ないと考えたものです。もちろん営
       業経費率を抑制しなければなりませんので、これからも基本
       の活動に追加して施策を実施しようとするときには、慎重に
       検討したうえで対処していきます。


(3)財政の現況(平成22年7月末)
(経理局)
 平成22年7月末の財政の現況について報告します。
 まず、予算の執行状況です。
 事業収入の実績額は2,275億円で、進ちょく率は33.5%と、7月末時点の標準進ちょく率33.3%(4か月/12か月)を上回り順調です。事業支出は2,180億円で、進ちょく率は標準進ちょく率を下回る31.8%と、堅調に推移しています。その結果、事業収支差金は、今年度予算ではマイナス61億円としていますが、7月末現在で95億円の黒字となっています。
 事業収入、事業支出それぞれのポイントについて説明します。
 事業収入については、受信料は、地域スタッフや外部委託業者等による契約・収納活動を強化したことや、デジタル受信器の普及に伴い衛星契約勧奨活動を強化したことなどにより、標準進ちょく率どおりの進ちょくとなっています。副次収入は、映像商品の売り上げの減や出版不況等の影響などにより、進ちょく率がやや低くなっています。財務収入等は、関連団体から予算額を上回る配当を受けたことや、雑収入に計上する前々年度以前受信料の回収額の増により、実績額が多くなっています。
 事業支出については、国内放送費は、「2010FIFAワールドカップ」の放送や、参議院議員選挙の報道などの支出がありましたが、それも含んで順調に推移しています。管理関係費は、デジタル化に伴う共同受信施設等への経費助成について、施設の管理組合等からの助成申請に遅れがみられることなどにより、支出額が少なくなっています。人件費は、基準外賃金が予算での見込みより若干少なかったことにより、やや低い進ちょく率となっています。
 次に、損益計算書による前年同月末との比較です。
 経常事業収支差金は、前年同月比で30億円減少して97億円の黒字、経常収支差金は、20億円減少して97億円の黒字、事業収支差金は、19億円減少して95億円の黒字となっています。
 経常事業収支差金の減については、経常事業収入が受信料の増等により前年同月比で35億円増加したものの、経常事業支出がそれを上回り65億円増加した結果です。経常事業支出の増加は、「2010FIFAワールドカップ」関連放送や参議院議員選挙の報道、緊急報道体制など取材体制の強化等の経費のため、国内放送費が前年度より増加したことや、デジタル化に伴う共同受信施設等への経費助成が前年度より多かったことなどによる管理関係費の増加等によるものです。
 続いて、貸借対照表による21年度決算との比較です。
 資産合計は8,567億円で、21年度決算から34億円の増となっています。これは、現金預金・有価証券、および長期保有有価証券が、受信料前受金の増加、事業収支差金の発生などにより増加していることによります。一方で、有形・無形固定資産は、減価償却額が取得額を上回ったため減少しています。
 負債合計は2,843億円で、21年度決算から60億円の減となっています。これは、受信料前受金が放送受信契約の契約総数・衛星契約の増加等により増加した一方で、その他の流動負債が、設備整備費関係の未払金が決算時点で大きくなる傾向があり、減少したためです。
 純資産の部では、7月末の事業収支差金の発生に伴い、21年度決算から95億円増加しています。自己資本比率は、事業収支差金の発生等により21年度決算比で0.8ポイント増加し、66.8%となっています。引き続き健全な財務状況を維持しています。
 最後に、受信料の状況です。放送受信契約に基づき収納すべき債権額である、損益計算書上の受信料収入は2,207億円で、前年同月末より32億円増えています。この額から欠損償却額を引いた、事業収支に計上する受信料収入は2,179億円で、前年同月末より34億円増えています。欠損償却額は27億円ですが、これは損益計算書上の受信料収入2,207億円に1.26%という欠損償却率をかけたものです。先月までは欠損償却率を1.39%としていましたが、今月から率を引き下げました。受信料収納額は2,112億円で、前年同月末より45億円の増、回収予定額は66億円で、10億円の減となっています。前年度および前々年度以前の受信料回収額も順調であり、受信料は全体としてほぼ順調に推移しています。
 この内容は、本日の第1124回経営委員会にも報告します。

(八幡理事)  予算の執行状況について、事業収入のうちの受信料が標準
       進ちょく率どおりということですが、前年同月末の進ちょく
       率と比較するとどうですか。
(経理局)   今年度の進ちょく率が33.3%であるのに対し、前年度
       は33.0%でしたので、前年度より0.3ポイント上回って
       います。
(吉国理事)  受信料収入の欠損償却率を変更したのは、どういう理由か
       らですか。
(経理局)   欠損償却率については、決算段階では前年度からさかのぼ
       って3年間の平均値を使いますが、先月までの月次報告で
       は、新年度が始まって間もないことから、21年度決算時の
       実績値である、18〜20年度の平均値を使用していまし
       た。このうち、18年度の実績値は当時の不祥事の影響で非
       常に高い数字でした。しかし、今年度に入って収納改善の傾
       向が着実に表れてきており、19〜21年度の3年間の平均
       値の方がより実態に近いと考えられるため、今月の月次報告
       から、欠損償却率を変更しました。



以上で付議事項を終了した。
上記のとおり確認した。
      平成22年 9月 7日
                     会 長  福 地 茂 雄

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