日本放送協会 理事会議事録  (平成22年 6月22日開催分)
平成22年 7月9日(金)公表

<会 議 の 名 称>
 理 事 会

<会  議  日  時>
 平成22年 6月22日(火) 午前10時30分〜10時55分

<出   席   者>
 福地会長、今井副会長、永井技師長、金田専務理事、日向専務理事、
 溝口理事、八幡理事、大西理事、今井理事、黒木理事、塚田理事、
 吉国理事

 井原監査委員

<場         所>
 放送センター 役員会議室

<議        事>
 福地会長が開会を宣言し、議事に入った。

付議事項

1 審議事項
(1)日本放送協会平成21年度業務報告書について
(2)日本放送協会平成21年度財務諸表について
(3)平成21年度NHK連結決算について
(4)「視聴者視点によるNHK評価委員会」の平成21年度評価報告
   書を受けて
(5)ラジオと地域情報メディアの今後に関する研究会報告書素案に対
   する意見募集への対応について


議事経過

1 審議事項
(1)日本放送協会平成21年度業務報告書について
(経営企画局)
 平成21年度業務報告書について、審議をお願いします。
 業務報告書は、放送法第38条の規定に基づき、NHKが各年度に行った業務の内容を取りまとめ、総務大臣に提出するものです。放送法施行規則第11条で定められている記載事項に沿った章立てで作成しており、年度の業務全般について、11の章立てにより記述しています。
 21年度の業務報告書の内容を説明します。
 第1章は、事業活動全体の総論と、第2章以下の各論のサマリーとなっています。総論では、「平成21〜23年度 NHK経営計画」を踏まえ、その初年度として事業計画を着実に実施したことを記述しています。
 第2章は、国内、国際放送の放送番組の概況を記述しています。21年度の新規事項としては、「ワンセグ」独自放送の開始や、インターネットを使ってNHKが蓄積してきた映像・音声素材を一般に提供しコンテンツ制作に活用してもらう「NHKクリエイティブ・ライブラリー」の開始について記述しています。
 第3章は、放送番組に関する世論調査および研究について記述しています。第4章は、営業および受信関係業務の概況です。営業関係では、ホテル・旅館等の事業者団体への契約・収納業務の委託を開始したことや、民事手続きによる支払督促に加え、新たに未契約者に対する訴訟を提起したことなどを記述しています。受信関係の業務では、NHK共聴のデジタル化改修や自主共聴等に対する経費助成など、地上デジタル放送への円滑な移行に向けたさまざまな取り組みについて記述しています。
 第5章は、広報活動、情報公開、公開番組など視聴者関係業務の概況、第6章は、地デジの総合および教育の中継局604局を開設したことをはじめ放送設備の建設改修および運用の概況です。第7章は、放送技術の研究について、第8章は、経営委員会、監査委員会、執行部、内部統制の推進、内部監査の実施など業務組織の概要および職員の状況です。ここでは、「視聴者視点によるNHK評価委員会」を新たに設置したことも記述しています。第9章は、財政の状況、第10章は、子会社等の概要です。子会社等の再編成のほか、子会社等からの配当や副次収入についても触れています。第11章は、その他の事項について記述しています。
 また、関連する資料も58点掲載しています。
 本報告書の内容が了承されれば、本日の第1121回経営委員会に議決事項として提出します。その議決を得たうえで、監査委員会の意見書を添えて、21年度の財務諸表とともに総務大臣に提出することにしています。

(会 長)   原案を了承し、本日の経営委員会に諮ることとします。


(2)日本放送協会平成21年度財務諸表について
(経理局)
 日本放送協会平成21年度財務諸表について、審議をお願いします。これはNHK単体決算の財務諸表で、「日本放送協会平成21年度財産目録、貸借対照表、損益計算書、資本等変動計算書及びキャッシュ・フロー計算書並びにこれらに関する説明書」が正式名称です。
 この財務諸表には「独立監査人の監査報告書」が添えられています。これは、放送法第40条の2で義務づけられている会計監査人による監査の報告書で、財務諸表について「適正に表示しているものと認める」との報告を受けています。
 決算の概要について説明します。
 事業収入は、受信契約件数の増加等により受信料が前年度(20年度)と比較して56億円の増収になるなど、全体では前年度6,644億円に対し54億円増収の、6,699億円となりました。事業支出は6,575億円で、放送サービスの充実やデジタル化に向けた対応経費の増等により、前年度比206億円の増加となりました。事業収支差金は124億円で、全額を財政安定のための財源として翌年度に繰り越します。また、21年度予算と比較すると、事業収入は予算を1億円下回っています。内訳では、受信料が予算を下回った一方で、特別収入が予算を上回っています。事業支出はいっそうの圧縮を図った結果、154億円の予算残額が出ています。
 資本収支では、競争契約によるコストの削減等により、建設費の決算額が783億円となりました。
 番組アーカイブ業務勘定は、事業収入が予算23億円に対し、3億円、事業支出が予算40億円に対し、25億円となり、その結果、事業収支差金は、マイナス21億円となりました。
 協会全体の損益計算書における当期事業収支差金は、一般勘定の124億円と番組アーカイブ業務勘定のマイナス21億円をあわせた102億円となっています。協会全体の貸借対照表については、自己資本比率は60%台で、引き続き健全性を維持しています。
 この内容が了承されれば、本日の第1121回経営委員会に議決事項として提出します。経営委員会での議決を得たうえで、監査委員会および会計監査人の意見書を添えて、総務大臣に提出することにしています。

(会 長)   原案を了承し、本日の経営委員会に諮ることとします。


(3)平成21年度NHK連結決算について
(経理局)
 平成21年度NHK連結決算について、審議をお願いします。
 NHKグループの連結決算は、平成14年度からNHKの自主的な取り組みとして実施しています。21年度の連結決算の範囲は、NHKおよび子会社15社すべてと関連会社のうち持分法適用会社2社が対象となります。
 連結財務諸表に対しても単体決算の財務諸表と同様に、会計監査人による「独立監査人の監査報告書」が添えられています。これは監査法人が、放送法、放送法施行規則および我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準じ、NHKグループの連結財務諸表を監査した結果、これらが「適正に表示しているものと認める」と示したものです。
 最初に、連結損益計算書について説明します。経常事業収入は7,209億円で、受信料の増加等により前年度(20年度)比62億円の増収となりました。経常事業支出は7,125億円で、デジタル化対応経費の増等により、前年度比224億円の増加となりました。また、特別収入は、NHKでの非現用不動産の売却件数の増等に伴い固定資産売却益が増えたことなどにより、前年度比31億円の増収となりました。これらの結果、当期事業収支差金は109億円となりました。
 次に、連結貸借対照表について説明します。資産合計は9,639億円で、有価証券の増加等により前年度末比325億円の増加となりました。負債合計は3,274億円で、退職給付引当金の増等により前年度末比219億円の増加となりました。連結剰余金は1,834億円で、当期事業収支差金の発生等により前年度末比46億円の増加となりました。これにより資本は6,202億円となり、自己資本比率は、前年度末比1.1ポイント減少の64.3%と、安定した財政状態を継続しています。
 最後に、連結キャッシュ・フロー計算書について説明します。事業活動(当期事業収支差金、減価償却費などの内部留保資金)により1,097億円のキャッシュを生み出し、投資活動(長期の公社債等を主とした有価証券の取得、固定資産の取得など)で1,323億円、財務活動(放送債券の償還など)で66億円のキャッシュを使用したことにより、21年度末の現金等の残高は、1,277億円となりました。引き続き、健全なキャッシュ・フローを維持しています。
 この内容が決定されれば、本日の第1121回経営委員会に報告事項として提出します。

(会 長)   原案どおり決定します。


(4)「視聴者視点によるNHK評価委員会」の平成21年度評価報告
   書を受けて
(経営企画局)
 NHK“約束”評価委員会の活動を引き継ぎ、NHKの事業運営について、より視聴者の視点に立って評価し、公共放送の価値の向上に向けた提言等を行うことを目的に、外部の有識者からなる「視聴者視点によるNHK評価委員会」を、平成21年度に設置しました。同委員会は、「放送の信頼性」と「経営の信頼性」の2項目、8ポイントの指標を設定し、評価の作業を続けてきましたが、本日、その平成21年度の評価報告書が会長に提出されました。
 それを受けて、NHK執行部の見解を取りまとめ、公表することとしたいので、審議をお願いします。
 見解の本文は次のとおりです。

  NHKは、視聴者の意向をより的確に事業運営に反映するため平成21
 年4月、「視聴者視点によるNHK評価委員会」を設置しました。
  この委員会は、前身のNHK“約束”評価委員会の活動を引き継ぎ、全
 国3,600人の視聴者調査などをもとに、公共放送に対して視聴者の皆
 さまが何を期待しているか、また、その期待にどの程度応えているかを評
 価することをねらいとしています。
  本日、21年度の評価結果が福地会長に答申されました。
  報告書によると、評価は5段階評価で行われ「放送の信頼性」について
 は、緊急報道の実績や大型番組の反響などを踏まえ、NHKが達成しなけ
 ればならない水準の3点を上回る3.6点とされています。
  また、NHKの放送サービスについて、視聴者に支払い意思額(WTP)
 を尋ねた結果、地上波・衛星波ともに現行の受信料額を上回り、地上波に
 ついては、過去2回の“約束”評価の結果に比べて上昇したと報告されて
 います。
  一方、NHKの「経営の信頼性」については、3点にとどかない2.5
 点と評価され、組織の硬直化や人材育成などへの課題が指摘されました。
  NHKとしては、3点を超える評価をいただいた「放送の信頼性」に
 ついては、これに安住することなく、今後とも良質な番組の提供に努めて
 まいります。厳しい評価をいただいた「経営の信頼性」については、評価
 結果を真摯(しんし)に受け止め、改善に向けて組織の活性化などに一層
 努めてまいりたいと考えています。
  評価報告書および概要版は、NHKのホームページに掲載し公表しま
 す。

 以上の内容が決定されれば、本日の第1121回経営委員会に報告した後、評価報告書およびその概要版と合わせて公表します。

(八幡理事)   見解本文の中で、「経営の信頼性」について評価報告書
        が指摘した課題として、「組織の硬直化」と述べています
        が、この文言は本当に適切なものでしょうか。
(会 長)    評価に対するそれぞれの意見はあるでしょうが、報告書
        の指摘は尊重すべきだと思います。組織風土の改革は、困
        難で時間がかかる課題です。私も会長に就任して以来、N
        HKの組織をより風通しの良いものにすることを第一に取
        り組んできました。これからも絶えず取り組んでいかなけ
        ればならないと考えます。
(日向専務理事) しかし、NHK執行部が発表する見解に盛り込む文言と
        しては、より適切なものが評価報告書の中に記載されてい
        ると思います。
(会 長)    報告書の趣旨に沿った内容であれば、よりよい表現に書
        き換えてよいのではないでしょうか。
(経営企画局)  評価報告書には、「変化への対応力・柔軟性」について
        課題があると記述されています。NHK執行部の見解も
        「変化への対応力や人材育成などへの課題が指摘されまし
        た」と修正したいと思います。
(会 長)    原案を一部修正したうえで、決定します。


(5)ラジオと地域情報メディアの今後に関する研究会報告書素案に対
   する意見募集への対応について
(経営企画局)
 総務省は、今年2月から「ラジオと地域情報メディアの今後に関する研究会」を開催し、ラジオをはじめとした地域情報メディアの将来像について検討を行ってきましたが、同研究会では、6月7日の会合で報告書素案を取りまとめ、公表しました。これを受けて総務省は、6月9日から22日まで、報告書素案に対する意見募集を行っています。
 NHKは、研究会の第6回会合(5月10日)でプレゼンテーションを行いました。それを踏まえ、以下により総務省の意見募集に対して意見を提出することとしたいので、審議をお願いします。
 研究会では、テレビ放送がデジタル放送に完全移行した後、アナログテレビ放送に使用していたVHF波1〜12CHのうち1〜3CH(VHF−Low帯)を活用して実施するマルチメディア放送について検討しています。NHKとしては、5月10日のプレゼンテーションで、VHF−Low帯マルチメディア放送(以下、「V−Low」)について、(1)現在の音声放送サービスを基本に、ダウンロードなど新たな機能の実現が必要、(2)全国にサービスを届けるインフラを構築するとすれば、1,000億円を超える送信設備投資が必要とされ、これをどこが負担するのかが大きな課題、(3)携帯電話端末や車載情報端末への搭載が必須、(4)仮にNHKが参入するとすれば、県域、広域、全国向けサービスを柔軟に実施できる環境が必要、という4点の基本認識を示しました。
 今回公表された報告書素案では、NHKが示した基本認識のうち、(1)について、V−Lowでの現行ラジオ放送のサイマル放送を認めるべきとするとともに、(4)について、V−Lowの放送対象地域は、各県域と首都圏、中京圏、近畿圏のブロックの混合とすべきであるとして、これまでの総務省の基本的な方針の修正を提言しています。一方で、(2)については、インフラ構築の主体が依然として不透明な中で、ハード整備の開始から5年で全国の世帯カバー率90%以上を確保することを提言しています。
 NHKとしては、こうした経緯を踏まえ、以下の3点の内容で意見を提出したいと考えます。
 第1点として、現在の音声放送サービスのサイマル放送を認めるべきとの提言、および放送対象地域として県域を認めるべきとの提言は、音声放送サービスの現状を踏まえたものとして評価できます。ただし、首都圏、中京圏、近畿圏の放送対象地域をブロックとしている点については、今後も引き続き検討が必要と考えます。
 第2点として、インフラ構築の主体については依然として不透明な状況にあります。インフラ構築のあり方については、昨年の参入希望調査の結果も踏まえ、ハード事業のリスクを軽減し、参入しやすい環境を整備することを含め、引き続き検討が必要と考えます。
 第3点として、受信端末の動向については依然として不透明な状況にあります。受信端末のあり方については、端末供給者の考え方を含め、引き続き検討が必要と考えます。なお、検討にあたっては、放送、通信を問わず多機能端末が今後いっそう普及していくことが予想される中で、災害時の情報は平時に利用している端末で入手できることが重要であることに留意する必要があると考えます。
 以上の内容が決定されれば、すみやかに総務省に意見を提出します。

(会 長)  原案どおり決定します。



以上で付議事項を終了した。
上記のとおり確認した。
      平成22年 7月 6日
                     会 長  福 地 茂 雄

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