日本放送協会 理事会議事録  (平成22年 3月29日開催分)
平成22年 4月16日(金)公表

<会 議 の 名 称>
 理 事 会

<会  議  日  時>
 平成22年 3月29日(月) 午前9時00分〜9時40分

<出   席   者>
 福地会長、今井副会長、永井技師長、金田専務理事、日向専務理事、
 溝口理事、八幡理事、大西理事、今井理事、黒木理事、塚田理事、
 吉国理事

 井原監査委員

<場         所>
 放送センター 役員会議室

<議        事>
 福地会長が開会を宣言し、議事に入った。

付議事項

1 審議事項
(1)考査報告
(2)関連団体の事業運営状況について
(3)平成22年度 非常災害対策等業務実施方針
(4)放送技術審議会委員の委嘱について
(5)放送番組審議会議事録(資料)

議事経過

1 審議事項
(1)考査報告
(考査室)
 平成22年2月から3月下旬にかけてのニュースと番組について考査した内容を報告します。この期間に、ニュースは30項目、番組では事前考査として43本、放送考査として30本を考査しました。その結果、これらの一連の報道や番組は、放送法や国内番組基準などにのっとって「妥当」でした。
 最初に、この期間の概況を報告します。
 ニュースについては、「チリ巨大地震で日本に津波」、「核持ち込みで広義の密約」、「バンクーバー冬季五輪」の3つの大きな動きがありました。そのほか、「トヨタ社長が米議会の公聴会で証言」、「日産・ルノー、ダイムラーと提携交渉」、「社民党、国民新党が普天間基地の移設案を提示」、「グーグル、中国から撤退」、「クロマグロの国際取引禁止提案が否決」などの項目を考査しました。
 まず、17年ぶりに大津波警報が発令されたニュースについてです。日本時間の2月27日(土)、午後3時30分過ぎにチリでマグニチュード8.8の巨大地震が発生し、28日(日)、日本列島の太平洋沿岸に17年ぶりに大津波警報が発令されました。この津波については、警報が出る前から特設ニュースで情報を伝え、警報が発令された後は緊急警報放送を全放送波で開始しました。各地の状況を中継などで紹介し、繰り返し津波への注意を喚起するなど、関係情報をほぼ1日中伝えていました。また、チリの様子についても、地震発生の翌日に現地入りした記者が、「NHKニュース7」で中継リポートを行い、次第に明らかになる地震と津波による被害の状況や救援活動などについて伝えていました。
 次に、日米両国間の密約が相次いで明らかになった問題についてです。米艦船による核の持ち込みについて検証してきた有識者委員会が、日米ともに問題をあいまいなままにしておくという暗黙の合意を、広い意味での密約であると結論づけた報告書を岡田外務大臣に提出しました。この問題については、核持ち込みの密約を中心に、当時の総理大臣の発言や映像などを交えて、報告書の内容を丁寧に伝えるとともに、自民党関係者の反応もきちんと紹介していました。また、その3日後、菅副総理兼財務大臣が、沖縄返還の際、日本がニューヨーク連邦銀行に無利子でおよそ1億ドルの預金をしていた事実について、広義の密約があったとの見解を明らかにしました。これに関するニュースでも、新たな密約の存在と、財務省の文書管理に問題があったことなどを、会見や当時の映像などを交えて丁寧に伝えていました。ただ、入り組んだ内容であったことから、たとえば、無利子で預けることの日米の狙いなどについて、もう少しわかりやすく伝えてほしかったと思います。
 バンクーバー冬季オリンピックが、日本時間の3月1日に閉会式を迎え、17日間にわたる大会の幕を閉じました。日本は5個のメダルを獲得しましたが、その中で、最も注目を集めた女子フィギュアスケートでは、フリーの演技を中継し、「NHKニュース7」や「ニュースウオッチ9」などでは、これまでの浅田真央選手とキム・ヨナ選手の戦いの歩みや今回の勝敗の決め手、国内の反応など見応えのある内容を分厚く伝えていました。また、公開ホームページ「NHKオンライン」や携帯サイト、データ放送などでもオリンピックの情報を詳しく伝え、全体的にも視聴者にさまざまな接触の機会を持ってもらえる、充実した内容であったと評価しています。
 番組については、NHKスペシャル「MEGAQUAKE 巨大地震」や、新年度から衛星放送の定時番組となる「地球ドキュメント ミッション」、「いのちドラマチック」、「MAG・ネットβ」などの考査を実施しました。
 まず、NHKスペシャル「MEGAQUAKE 巨大地震」について報告します。今回の考査期間には、第3回「巨大都市を未知の揺れが襲う 長周期地震動の脅威」(3月7日(日)放送)と第4回「TSUNAMI 襲来の悪夢」(3月14日(日)放送)の考査を行いました。1月に放送した第1回、第2回も合わせた、シリーズ全体の考査結果として、巨大地震のメカニズムを地球規模でとらえわかりやすく可視化して伝えており、都市化したことで増大したリスクを抱える現代社会に警鐘を鳴らした番組であったと評価しています。また、シリーズを通して、地震発生時の再現映像や挿入ドラマなどが、効果的に使われていたと考えます。
 今回の考査期間に、衛星放送の22年度新番組のパイロット版を、いくつか放送していました。衛星ハイビジョンの「地球ドキュメント ミッション」(2月24日(水)放送)は、挑戦者がミッションマスターのアドバイスを受け、困難を克服していくという内容の番組ですが、このミッションマスターと挑戦者をどのように結びつけていくのかをさらに工夫して、困難を克服するために必要なノウハウを伝える番組を目指してほしいと考えます。同じく衛星ハイビジョンの「いのちドラマチック」は、人間が手を加えてきた動植物を紹介する科学番組で、2月23日(火)の放送では、絹を得るために改良を重ねてきたカイコの歴史をわかりやすく紹介していました。生命の不思議さを実感でき、ゲストの解説は平易でわかりやすく、理解を助けました。今後も、遺伝子の研究など、十分にリサーチを行い紹介のしかたを配慮した上で伝えていってほしいと思います。衛星第2の「MAG・ネットβ マンガ・アニメ・ゲームのゲンバ」(3月8日(月)放送)は、新しい文化の情報を発信していく番組で、今回は恋愛コミュニケーションゲームを取り上げていました。今後番組でどのように社会現象としてとらえていくのか、これからの方向性について明確に打ち出していってほしいと考えます。また、ゲームというまだ評価の定まっていないジャンルをマンガやアニメと同列に論じることについては、慎重な対応が必要であると思います。さらに、商品の宣伝や広告と見られないような配慮も引き続きお願いします。
 次に、その他の個別のニュースについて報告します。
 2月25日(木)、午前4時19分からニュースを特設し、トヨタ自動車の社長がアメリカ下院の公聴会で証言をした模様を同時通訳付きで中継しました。この公聴会については、「NHKニュースおはよう日本」や「NHKニュース7」などでも取り上げ、多くの議員からの質問や激しい批判の声など、厳しかった議場の状況をよく伝えていました。
 3月17日(水)、「NHKニュースおはよう日本」の中で、資本提携にある日産とルノーがダイムラーとの間で包括的提携に向け、交渉に入ったことを他社に先駆けて伝えていました。実現すれば世界第3位の巨大グループになるということで、自動車業界の新たな世界再編への動きについて、「NHKニュース7」や「ニュースウオッチ9」でも詳しく報道していました。
 3月13日(土)の早朝に札幌市内の高齢者施設で火災が発生し、7人が死亡したニュースについては、速報スーパーで一報を伝えた後、「NHKニュースおはよう日本」で記者が現地から中継でリポートするなど、素早く対応していました。記者リポートでは、現場の状況などを詳しく伝えていたと評価しています。
 続いて、いくつかの番組について報告します。
 NHKスペシャル「権力の懐に飛び込んだ男 100日の記録」(2月28日(日)放送)では、内閣府参与として失業者支援対策に取り組んだ “年越し派遣村” 元村長の男性に密着していました。各種の行政の手続きが1つの窓口でできるワンストップサービスや緊急宿泊施設開設などに向けて奔走する男性の姿を通して、横並びを気にする自治体や縦割りの官僚機構の問題点が浮き彫りとなり、理想と現実とのギャップを前にした男性の苦悩もよく伝わりました。
 教育テレビで2月16日(火)に放送した、トラッドジャパン「Ink Brushes 筆」は、NHKワールドTVの「BEGIN Japanology」を短く再編集して、国内向けに展開したものです。何気なく使っている筆が日本に伝わってきた歴史や、繊細な作業によって作られていることがよくわかり、言葉の背景にある文化の違いにも触れ、英語の習得だけでなく、日本文化を学ぶ上でも参考になる番組でした。モニターの番組評価でも、「新しい知識や情報を得た」と評価した人が80%を超えており、番組の構成や演出についても高い評価を得ていました。
 ハイビジョン特集「鬼太郎 幸せ探しの旅〜100年後の遠野物語」(3月13日(土)放送)については、柳田国男が「遠野物語」で伝えようとした自然と共存することの大切さは今でも価値のあることであり、遠野物語が水木しげるさんの「ゲゲゲの鬼太郎」の原点の一つであるという話は、興味深いと思いました。鬼太郎や目玉おやじなど、水木さんの漫画のキャラクターたちが、幸せ探しの旅に効果的に登場していたと考えます。ただ、水木さんと遠野物語の結びつきを知るうえで、水木さんが「遠野物語」を漫画化した作品をもう少し紹介して、説明を加えたほうがよかったように思いました。

(会 長)  放送法、国内番組基準等にのっとって考査した結果「妥当」であったと、考査室としての評価を最初に示しており、このような報告のしかたが明快で良いと思います。

(2)関連団体の事業運営状況について
(関連事業局)
 関連団体運営基準第15条に基づき、関連団体の事業運営状況について、概要を報告します。
 まず、平成21年度の関連団体の決算見込みです。
 NHKが直接出資する子会社13社の全般的な傾向としては、減収減益が基調となっています。13社の売上高の単純合計は2,399億円を見込んでおり、20年度に比べ49億円の増収となる見通しですが、増収となるのは、地上デジタル関連業務を受注しているNHKアイテックのほか、NHK営業サービスなど一部のみで、それ以外は減収となっています。
 売上高のうち、NHKとの取引額は1,318億円で、20年度から19億円増加しています。ただ、実際にNHKからの委託業務が増加したのは、地域放送局の番組技術業務委託が拡大するとともに、システム設計開発業務が増加したNHKメディアテクノロジーと、後半期から営業事務情報処理等の業務委託が増加したNHK営業サービスといった一部のみで、大半は減収となっています。
 NHK以外との取引については、1,081億円で、20年度から30億円増収しています。これについても、地上デジタル関連業務を受注しているNHKアイテックが大きく増収したことによるもので、大半は景気後退や競争激化の影響で減収となっています。
 これらの結果、13社全体の売上高のうち、NHKとの取引額の比率は54.9%で、20年度と比べて0.4ポイント減少しています。
 当期の利益見込は51億円で、前年度より6.7億円の減益となります。その中でも、日本国際放送は、景気後退の影響等により、独自番組やインターネット事業など、NHK以外との取引の売上が計画したとおりに伸びないことなどから、事業計画を上回る赤字となる見込みです。現在、22年度以降の事業再構築に向けて、関係者間で検討を行っています。
 22年度の配当見込については、配当総額は25億円、うちNHKの受取額は17.5億円とした目標額の実現に向けて、現在調整中です。
 孫会社、関連会社、関連公益法人についてはNHKサービスセンター、日本放送協会学園の2団体が最終赤字となる見込みです。
 続いて、直接出資子会社13社の22年度の事業計画です。
 13社の売上高の単純合計は2,346億円で、21年度の決算見込に比べて53億円の減収を見込んでいます。ただし、この売上高総額には、NHKエンタープライズの、国際メディア・コーポレーションとの合併による事業吸収に伴う増収分55億円が加算されているため、これを除外すると、21年度と比べて実質100億円以上の大幅な減収を見込んでいることになります。
 売上高の減少のうち、NHKとの取引額の減少は、地上デジタル設備関連工事の小規模化や番組制作受託本数の減少などが主な要因としてあげられます。なお、売上高全体の見込額に占めるNHKとの取引見込額の割合は55.3%で、21年度とほとんど変わっていません。


(3)平成22年度 非常災害対策等業務実施方針
(報道局)
 平成22年度の非常災害対策等業務実施方針について報告します。
 災害報道においては、平成23年7月に迫った完全デジタル化に向け、災害・気象情報を迅速・正確に提供するための対応を進めることと、パソコンや携帯端末向けに情報を送る3−Screens展開の取り組みをよりいっそう充実させることが課題になっています。また、ここ数年間に新しい防災情報が次々と導入されたことで、情報の内容が詳細化、高度化しており、これを視聴者にいかにわかりやすく伝えていくかも課題です。公共放送としての使命を果たすため、災害報道について検証を重ね、災害報道の体制・システム強化をいっそう推進していきます。
 平成22年度の業務にあたっては、(1)完全デジタル化に向けた対応、(2)3―Screens展開にあわせた災害報道の整備、(3)「市町村警報」への的確な対応と気象関連報道の強化、(4)緊急地震速報をはじめ災害緊急報道の的確な放送と検証、(5)大規模地震対策の推進、(6)国際貢献の推進と防災・減災意識の向上、(7)実践的な総合訓練と職員研修の充実の7項目に重点を置き、視聴者の期待に応えていきます。
 各項目のおもなポイントについて説明します。
 「完全デジタル化に向けた対応」では、デジタル時代にふさわしいシステム、画面、対応基準などを検証しながら、より的確に伝えることができる災害報道を実現していきます。気象情報についても、より情報性が高く見やすい画面の開発を進めます。また、完全デジタル化とBS2波化に対応する災害対策マニュアルの見直しも進めます。
 「3―Screens展開にあわせた災害報道の整備」では、平成22年度にホームページ上の「NHKニュース」のページを一新するとともに「気象・災害情報」のページを開設します。また、各放送局の災害時のホームページやデータ放送の充実に向け、本部の支援機能の強化を図ります。
 「『市町村警報』への的確な対応と気象関連報道の強化」では、現在、地域単位で出されている気象警報・注意報が平成22年5月末から市町村単位で発表されるのに伴い、大量の情報を的確に処理するシステムを各放送局に整備します。また、近年増加している局地的な大雨や突風などに対し、適切な警戒を呼びかけて被害の軽減を目指します。
 「緊急地震速報をはじめ災害緊急報道の的確な放送と検証」では、緊急地震速報が、地上デジタル放送で、アナログ放送より若干の遅延が生じることから、これまでの地図付きスーパーに加え、文字だけの緊急地震速報スーパーを新たに出すシステムを平成22年度に整備し、迅速化を実現させます。
 「大規模地震対策の推進」では、首都直下地震の際に、東京をバックアップする大阪放送局で衛星デジタル放送の送信設備の整備を進めており、今後は運用に向けて準備を進めます。東海、東南海・南海地震などについても、取材や安全確保のための通信手段、放送のための伝送手段の強化など、態勢強化に引き続き取り組みます。
 「国際貢献の推進と防災・減災意識の向上」では、海外のメディア・防災関係者に向けた、災害防止啓発のための映像提供や、研修・講演を通じたノウハウの伝達などにより、国際貢献に努めます。国内についても、外部向けの研修や講演会等により、NHKの災害報道への理解を促進するとともに、「NHK防災キャンペーン」と連携し、防災への住民意識のいっそうの向上に資する施策を推進します。
 「実践的な総合訓練と職員研修の充実」では、平成22年度も、さまざまな災害を想定して、各地で実践的な総合訓練を行い、具体的対策の検討や設備の充実を図ります。さらに、NHK放送研修センターなどとも連携して、職員研修の充実・強化を進めます。


(4)放送技術審議会委員の委嘱について
(永井技師長)
 放送技術審議会委員の委嘱について報告します。
 笹瀬巌氏(慶応義塾大学理工学部情報工学科教授)、佐藤誠氏(東京工業大学精密工学研究所教授)、長谷山美紀氏(北海道大学大学院情報科学研究科教授)に、4月1日付で新規委嘱します。
 また、工藤俊一郎氏(社団法人 日本民間放送連盟常務理事)、宮原秀夫氏(独立行政法人 情報通信研究機構理事長)に、4月1日付で再委嘱します。
 中川正雄氏(慶応義塾大学理工学部情報工学科教授)、中嶋正之氏(東京工業大学大学院情報理工学研究科教授)、中村慶久氏(岩手県立大学学長)は、任期満了により3月31日付で退任されます。


(5)放送番組審議会議事録(資料)
 編成局と国際放送局から、中央放送番組審議会、国際放送番組審議会、および全国の地方放送番組審議会(関東甲信越、近畿、中部、中国、九州、東北、北海道、四国)の平成22年2月開催分の議事録についての報告(注)。

 注:放送番組審議会の議事概要は、NHKホームページの「NHK経営情
   報」のなかに掲載しています。


以上で付議事項を終了した。
上記のとおり確認した。
      平成22年 4月13日
                     会 長  福 地 茂 雄

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