日本放送協会 理事会議事録  (平成21年12月22日開催分)
平成22年 1月15日(金)公表

<会 議 の 名 称>
 理 事 会

<会  議  日  時>
 平成21年12月22日(火) 午前9時00分〜10時05分

<出   席   者>
 福地会長、今井副会長、永井技師長、金田専務理事、日向専務理事、
 溝口理事、八幡理事、大西理事、関根理事、今井理事、黒木理事

 井原監査委員

<場         所>
 放送センター 役員会議室

<議        事>
 福地会長が開会を宣言し、議事に入った。

付議事項

1 審議事項
(1)「周波数再編アクションプラン」の見直しに係る意見募集に対する
   意見の提出について
(2)中央放送番組審議会委員の委嘱について

2 報告事項
(1)考査報告
(2)契約・収納活動の状況(平成21年11月末)
(3)財政の現況(平成21年11月末)
(4)11月「全国接触者率」「全国個人視聴率」「放送評価」調査の結
   果について
(5)地方放送番組審議会委員の委嘱について

議事経過

1 審議事項
(1)「周波数再編アクションプラン」の見直しに係る意見募集に対する
   意見の提出について
(技術局)
 総務省は、周波数の再編を円滑かつ着実に実施するための具体的な取り組みを示す「周波数再編アクションプラン」を策定し、毎年その見直しを行っています。今回は、平成20年度電波の利用状況調査(770MHz以下の周波数帯を対象)の評価結果や今年7月に総務省が発表した「電波新産業創出戦略」等を踏まえ、「周波数再編アクションプラン(平成22年1月改定版)」(案)を事前に公表し、平成21年12月28日を期限に意見募集を行っています。この意見募集への対応について審議をお願いします。
 今回の見直しのうちNHKにかかわる主な事項としては、次の4点が示されています。

 1  地上テレビジョン放送のデジタル化に伴う空き周波数の割当計画によって新たに導入される「自営通信」、「ITS(高度道路交通システム)」、「携帯電話等の電気通信」について技術基準の策定等に向けた検討を実施する。
 2  800MHz帯のFPUについては、平成18年度から21年度まで進められているハイビジョンFPUの高画質化の研究開発の進捗状況を踏まえ、特定ラジオマイク(いわゆる業務用ワイヤレスマイク)との共用利用を考慮し更なる周波数有効利用方策について検討を行い、平成22年度までに一定の方向性を得る。
 3  素材や番組を放送局と送信所間などを結んで伝送する3.4GHz帯の音声STL/TTL/TSLおよび監視・制御回線については、平成23年に第4世代移動通信システムの標準化が完了した後に同システムの円滑な導入を可能とするため、6.5GHz帯(Mバンド)または7.5GHz帯(Nバンド)に円滑に周波数移行する期限を平成21年度中に決定する。
 4  スーパーハイビジョンに適した衛星放送用周波数の分配として、21.4GHz〜22GHzを候補として研究開発を推進する。

 この内容を検討した結果、NHKとして以下の意見を提出することとしたいと思います。
(1)  地上テレビジョン放送のデジタル化に伴う空き周波数の割当計画によって新たに導入される「自営通信」、「ITS」、「携帯電話等の電気通信」の無線局については、隣接周波数帯に地上デジタルテレビジョン放送や放送事業用無線システムが存在することから、それらの技術基準の検討に際しては、既存の放送事業用の受信設備や無線システムの運用に支障を与えることのないよう十全な方策がとられることを要望します。
(2)  800MHz帯FPUについては、アクションプラン(案)では周波数有効利用方策について検討を行い、平成22年度までに一定の方向性を得るとしています。現在、800MHz帯FPUについては高画質、高効率なデジタルハイビジョン素材伝送技術の研究開発が進められており、平成21年度末には最終結果が得られる予定です。その研究成果を平成23年度の放送の完全デジタル移行までに実用化できるよう、平成22年度中に必要な環境整備が行われることを要望します。
(3)  3.4GHz帯の音声STL/TTL/TSLおよび監視・制御回線の周波数移行にあたっては、移行すべき回線数が膨大であることを踏まえ、設備更新にあわせた移行計画を基本とし、放送事業者に過度な損失が生じることのない円滑な移行方策がとられることを要望します。
(4)  スーパーハイビジョンに適した衛星放送用周波数の配分として、21.4GHz〜22GHz帯を候補として研究開発を推進するとした今回のアクションプラン(案)に賛成します。また、衛星によるスーパーハイビジョン放送の実現に向けた実証実験などにおいて国が積極的に支援を行うことを要望します。

(会 長)   原案どおり決定します。


(2)中央放送番組審議会委員の委嘱について
(日向専務理事)
 中央放送番組審議会委員の委嘱について審議をお願いします。
 田島恵一氏(自治労全国一般評議会特別幹事)に、平成22年1月1日付で再委嘱したいと思います。
 本件が了承されれば、本日開催の第1109回経営委員会において同意を求めたいと思います。

(会 長)   原案どおり了承し、本日の経営委員会に諮ります。


2 報告事項
(1)考査報告
(考査室)
 11月から12月中旬にかけてのニュースと番組について考査した内容を報告します。
 最初に、この期間の概況について報告します。
 ニュースについては、今回の報告事項をはじめ、緊迫した国会の動向や、鳩山首相の資金管理団体の政治資金問題、日本航空の年金減額提示、アフガニスタンへの兵力を3万人増強するというオバマ米大統領の表明、鳥取県の連続不審死の3人の遺体から睡眠導入剤の成分が検出されたことなど、33項目について考査を行いました。鳩山首相の政治資金問題での元秘書の立件の動きや連続不審死については、独自情報を交えて伝えていました。
 景気悪化と経済対策に関しては、4項目について考査を行いました。政府の月例経済報告で日本経済がデフレに陥っていると判断したことをはじめ、14年ぶりの急激な円高、そして政府と日銀が協調して新たな景気対策と金融緩和の措置に乗り出したこと、また、第2次補正予算に7.2兆円をつぎ込んだことなど、視聴者にわかりにくい問題を、コンピューターグラフィックスなども使い、記者の解説や専門家のコメントで補いながら、ていねいに伝えていました。
 米軍普天間基地の移設問題については、日米首脳会談で早期に結論を出すことで意見が一致し、その後、現行案を迫るアメリカ側と、連立与党からの離脱をちらつかせる社民党との間で迷走する鳩山政権の動きや、移設先決定が先送りなったニュースについて考査を行いました。鳩山首相や関係閣僚の発言、地元沖縄の受け止め方などを連日紹介し、また、アメリカ側の反応や今後の課題等についても、記者解説を交えて、きちんと伝えていました。この問題は、今後の報道についても継続して考査を行っていきます。
 また、この期間に起こった事件・事故報道について考査した結果を報告します。英国人女性死体遺棄事件で、整形を繰り返し逃亡していた容疑者が逮捕されました。この事件では、ともすると各メディアが過熱気味になる中、NHKは逮捕に至った経緯などを冷静に伝えていました。韓国の射撃場で起きた火災で、日本人観光客が7人死亡したニュースでは、さまざまな情報が錯綜する中で火災の状況や被害者の情報をきちんと伝えていました。そして、三重県熊野市の沖で大型フェリーが横転した事故では、一報やフェリーの中継映像など初動の対応が素早く行われていました。
 番組については、この期間に、放送考査を35本、事前考査を56本行いました。その中で、12月1日「いのちの日」にあわせて編成された、「命 みんなで守る STOP!自殺」関連番組を集中考査しました。自殺を考えた人に生きる希望を与えたひと言などをテーマに3回シリーズで伝えた「生活ほっとモーニング」や、自殺者を減らすためにどうすればいいかという提言を数多く紹介した「日本の、これから」、そして、イギリスの自殺防止に向けた国家戦略を紹介し、日本の実情に照らして対策が急務であることを訴えた「クローズアップ現代」など、これらの番組を通して、NHKの取り組みが視聴者に十分に伝わったと思います。
 続いて、その他のニュースと番組について報告します。
 11月27日(金)、来年度予算案の概算要求の無駄を洗い出そうという事業仕分けが終わりました。考査室では、前半の仕分けが終わった時点でも考査を行い、このときは「仕分け人」と各省庁の担当者との緊迫感のあるやりとりや、各方面から不満や批判が出ているということなどを伝えていたと考えます。事業仕分けが終わった段階での報道においても、9日間の仕分けの結果や、その後の各方面の反応を、記者解説を交えて整理して伝えていたと思います。
 番組では、スペシャルドラマ「坂の上の雲」について、11月29日(日)放送の第1回「少年の国」を考査しました。ドラマの中心となる秋山好古・真之兄弟と正岡子規の3人の青春群像が魅力的に描かれており、俳優陣の気迫のある演技、町並みをリアルに再現した映像も見応えがありました。大型シリーズの今後を期待させる展開になっていたと評価しています。モニターからも、「ロケを交え壮大なスケール。セットや時代考証も見事。見応え十分」などの好評意見が数多く寄せられました。
 NHKスペシャル「立花隆 思索ドキュメント〜がん 生と死の謎に挑む」(11月23日(月)放送)では、評論家でありジャーナリストである立花さんが、自らがん治療を続けながら、最先端のがん研究を2年間取材しました。“思索の旅”は生きる意味を問いかけており、がんとどう向き合うべきかを深く考えさせられました。がん患者として、がんに対する立花さんの思いや向き合う姿に、モニターからも高い評価が寄せられました。
 「日米開戦を語る 海軍はなぜ過ったのか〜400時間の証言より〜」(12月7日(月)放送)では、夏の特集で放送したNHKスペシャルの内容を生かし、400時間に及ぶ海軍反省会の証言記録を、3人の識者がそれぞれの視点で読み解きました。海軍の構造的欠陥を指摘する発言には説得力があり、それは今の日本の組織にも通じることが伝わり、戦後世代へ強いメッセージを送ったのではないかと思います。
 ETV特集「ピアニストの贈り物〜辻井伸行・コンクール20日間の記録〜」(11月22日(日)放送)では、全盲のピアニスト、辻井伸行さんがハンディを乗り越えて、日本人で初めてヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで優勝するまでの20日間を感動的に描いていました。演奏のすばらしさとともに、素直な人柄も伝わり、出場者や関係者の含蓄のある数々の言葉から、音楽の奥深さも感じられる番組であったと思います。モニターからも「コンクールの価値と過酷さを知るとともに、辻井さんの演奏に魅了された」などの好評意見が寄せられました。
 衛星ハイビジョンのプレミアム8 巨匠たちの肖像「ヒッチコック〜サスペンスの深層」(11月10日(火)放送)では、ヒッチコックの映画技法の解説や当時の撮影手法の再現でサスペンスの神様の秘密に迫り、ヒッチコックの映像と音の表現へのこだわりがよくわかりました。また、生きることに恐怖を抱いたことや、夫人が大きな支えだったことなど、知られざる一面も興味深く描かれていたと思います。


(2)契約・収納活動の状況(平成21年11月末)
(営業局)
 平成21年11月末の契約・収納活動の状況について報告します。
 まず、放送受信契約総数の増加状況についてです。第4期(10月・11月)は、契約・支払再開活動へのパワーシフトの更なる徹底に向けて、全国一斉および各局独自の集中対策期間を設定して取り組んだ結果、契約総数増加が3.3万件、年度累計では22.2万件と前年度同期を上回り、目標の30万件に対して74.0%の進ちょく率となっています。また、障害者免除や公的扶助受給世帯の増加による有料契約から全額免除への変更は3.5万件となりました。なお、契約総数取次数は、前年度同期と比較して89%となっています。
 衛星契約取次数の増加については、契約総数同様に委託契約収納員に対して契約活動へのパワーシフトを徹底する中で、移動世帯の衛星放送受信確認の徹底や地上契約から衛星契約への契約変更対策の強化に取り組みました。また、ケーブル事業者や電器店などとの連携強化などにより、第4期の増加数は11.2万件、年度累計で45.5万件と前年度同期を上回り、目標の60万件に対して75.8%の進ちょく率となっています。なお、衛星契約取次数は、前年度同期と比較して113%となりました。
 次に、当年度収納額については、第4期は1,063億円で、前年度同期より24.6億円増加し、2期連続前年同期を上回りました。年度累計でも前年度同期より14.8億円の増収となり、4,201億円となりました。
 前年度受信料の回収実績は、55.0億円となり、前年度同期(38.8億円)より16.2億円増加し、年度回収予定額を上回りました。また、前々年度以前受信料の回収実績は15.4億円となりました。この結果、各年度分を合計した収納額としては、前年度同期より34.1億円の増収となりました。第4期末の支払い拒否・保留数については、38.9万件で、最も多かった時期から89.1万件減少しています。引き続き、支払いを再開していただけけるように努めてまいります。
 また、口座・クレジットカード増加については、第4期は7.9万件の増加で、年度累計では44.9万件となりました。
 年末年始の番組や新番組のPRなどを足がかりに、取次数を押し上げ、支払い拒否・保留、未収を減らす努力を続けていきたいと思います。

(会 長)  契約取次数を増加させることは、公平負担を進めるという意味で、受信料制度そのものを支える基盤であり、一番大事なことです。次に重要なのが収納額の確保で、今後は口座・クレジットの取次数を増やすことに力を注ぎ、収納を安定させる必要があります。
(営業局)  以前は、口座・クレジットによる支払い額は、訪問集金に比べて月額50円安いことをセールスポイントにしてきましたが、訪問集金を廃止したことで、割安と言えなくなったため、勧奨が難しくなりました。しかし、クレジットカードによる支払いでは、クレジット会社のポイントが加算されるので、その点をアピールして進めていきたいと思います。

(3)財政の現況(平成21年11月末)
(経理局)
 平成21年11月末の財政の現況について報告します。
 まず、予算の執行状況です。
 事業収入の実績額は4,432億円で、進ちょく率は66.2%です。受信料は、放送受信契約の増加件数については前年度を上回り順調に伸びているものの、厳しい経済情勢や事業所割引の影響などにより、進ちょく率が標準(66.7%)をやや下回っています。副次収入は、DVD等の売り上げの減少や出版不況の影響で番組活用収入が伸び悩んでいます。財務収入等は、前々年度以前受信料の回収額の増加や関連団体から予算を上回る受取配当金があったため、11月末時点で予算額を上回っています。
 事業支出は4,219億円で、進ちょく率は62.7%と、標準進ちょく率を下回っています。国内放送費は、堅調に推移しています。今後は、バンクーバー冬季オリンピック、年末年始特集などの支出を予定しています。契約収納費は、文書による請求や電話による勧奨など10項目の追加施策に取り組んでいるため、進ちょく率は標準より若干高くなっており、今後の進ちょくを注視する必要があります。管理関係費は、デジタル化に伴う共同受信施設等への経費助成について、施設の管理組合等からの助成申請に遅れがみられることなどにより、進ちょく率は大幅に低くなっています。
 こうした結果、事業収支差金は、今年度予算ではマイナス29億円としていますが、11月末現在でプラス213億円となっています。
 次に、損益計算書による前年同月との比較です。
 経常事業収入は、放送受信契約の契約総数・衛星契約の増加により受信料収入が増加したことなどから、27億円増加しています。一方、経常事業支出は、15億円増加しています。これは、国内放送費が23億円減少している一方で、国際放送費がテレビ国際放送の充実に伴い番組制作費が増加していることや、人件費が、年金資産運用環境の変化等に伴い退職給付費用が増加したことなどによるものです。これらの結果、経常事業収支差金は250億円で、前年同月と比べて12億円の増加となっています。しかし、関連団体からの受取配当金が前年度より少なかったことなどにより財務収入等が減少したことから、経常事業外収支差金は前年同月より19億円減少しています。その結果、経常事業収支差金と経常事業外収支差金を合わせた経常収支差金は、7億円減少して212億円となっています。
 経常収支差金と特別収支を合わせた事業収支差金は213億円で、前年同月より1億円の減少となっています。
 続いて、貸借対照表による前年度決算との比較です。
 資産の部では、事業収支差金の発生などにより現金預金・有価証券が増加しています。経済情勢の悪化などにより受信料未収金も増加しています。また、固定資産は年度後半に完成となるものが多く、取得額が減価償却額を下回ったため、有形・無形固定資産が減少しています。これらの結果、資産合計は8,499億円で、前年度決算から264億円増加しています。
 負債の部では、受信料前受金が放送受信契約の契約総数・衛星契約の増加により47億円増加しています。また、退職給付引当金も繰入額が取崩額を上回ったことにより増加しています。その他の流動負債は、設備整備費関係の未払金が決算時点で大きくなる傾向があるため減少しています。これらの結果、負債合計は2,781億円となり、前年度決算から51億円増加しています。
 純資産の部では、11月末の事業収支差金の発生に伴い、前年度決算から213億円の増加となっています。
 自己資本比率は、事業収支差金発生による純資産の増加などにより、前年度決算比で0.5ポイント増加の67.3%となっています。
 最後に、放送受信契約の状況は、契約総数の増加件数が22.2万件、衛星契約の増加件数が45.5万件と、ともに前年度を上回って推移しています。しかし、経済情勢の悪化や、事業所割引の影響、免除の適用範囲拡大等による全額免除件数の増加などから、受信料収納額は前年同月比で14億円の増加にとどまっています。


(4)11月「全国接触者率」「全国個人視聴率」「放送評価」調査の結果
   について
(放送文化研究所)
 今年11月に実施した、全国接触者率調査、全国個人視聴率調査、および放送評価調査の結果について報告します。
 今回の調査結果のポイントをまとめました。接触者率は、平成23年度に80%とすることを経営目標としているのに対して、今回は76.8%でした。統計上の誤差を考えれば、前回(今年6月)の76.1%から変化していないということになりますが、それでもこれまでの調査で上から2番目の数値になりました。個人視聴率は、「NHKニュース7」など夜間のニュース番組が好調です。一方で、朝の連続テレビ小説「ウェルかめ」は、前作の「つばさ」に続いて10%を割りました。放送評価では、NHKへの「親しみ」が51%で、2007年(平成19年)に調査を開始して以来、最も高い結果になりました。過去に50%となったことはありましたが、それを超えたのは初めてです。
 では、個別の調査結果について報告します。最初に全国接触者率調査の結果です。
 この調査は、「平成21〜23年度 NHK経営計画」で経営目標の1つの数値としているNHKへの接触者率について、“3−Screens”の観点から調べるものです。録画再生やインターネット、DVDやビデオなど、放送以外の媒体による接触も含めたメディアへの接触状況を測ります。番組関係の出版物は対象に含みません。今回は、11月16日(月)〜22日(日)の1週間、全国の7歳以上3,600人を対象に、1日単位で5分以上の視聴・利用があったかどうかを記入する方法で実施しました。有効数は2,614人、有効率は72.6%で、有効率は前回から0.4ポイント上昇し、過去最高でした。
 今回、NHK全体リーチ(放送・放送外を合わせて、NHKに接した人の割合)は76.8%でした。これは、昨年6月の調査での76.9%に次いで過去2番目に高い数値です。NHKの放送リーチは75.1%、放送外リーチは18.2%でした。放送外リーチの内容を見ると、録画再生が11.7%と最も多く、前回から若干増えています。
 NHK全体リーチを年層別に見ると、50代〜70歳以上のリーチが変わらず高く、10〜40代へのアプローチが必要な状況は変わっていません。ただ、放送外リーチは、世代間にほとんど差がなく、放送リーチが少ない若い世代でも他の世代とそん色のない結果になっています。
 NHK全体リーチのうち、放送への接触と放送外への接触を比べると、「放送のみ」のリーチが58.6%と圧倒的に多いのですが、「放送外のみ」のリーチも1.7%と、1年前の調査から1ポイント伸びました。その分、「放送と放送外両方」のリーチが若干減っています。
 ワンセグ機器を所有している人の割合は、全体の40.7%となり、4割を超えました。13歳以上30代以下の世代では、6割を超えています。ただし、ワンセグ機器によるテレビ視聴はまだ多くありません。
 NHK全体リーチを地域別に見てみました。サンプル数により、全国を北海道・東北、関東・甲信越、東海・北陸、近畿、中国・四国・九州の5つの地域に分けると、北海道・東北と東海・北陸のリーチがこれまで同様に高かった一方、これまでリーチが低い傾向があった近畿も、他の地域に比べて大差がない結果となりました。
 続いて、全国個人視聴率調査の結果について報告します。
 調査は11月16日(月)〜22日(日)の1週間、全国の7歳以上3,600人を対象に、配付回収法による24時間時刻目盛り日記式(個人単位)で実施し、有効数は2,517人、有効率は69.9%でした。今回の調査期間には、大きな事件・事故・災害等は特にありませんでしたが、大河ドラマ「天地人」最終回の放送がありました。
 今回、週平均での1日のテレビ視聴時間は、NHKと民放を合わせて3時間55分、そのうちNHKが1時間3分でした。1年前の調査から大きな変化はありません。年層別に見ると、60代〜70歳以上の男女が5時間以上と、かなり長時間視聴しているのに対し、20代以下の世代の視聴時間が男女とも2時間前後と、たいへん短い傾向も変わっていません。とりわけNHKの視聴時間は、20代男性が1日6分、同女性が14分などと非常に短くなっています。
 総合テレビの視聴率を時間帯別に見ると、朝の8時台は、今回6.0%でした。10年前の調査では10.4%ありましたが、少しずつ落ちてきており、一昨年の7.6%からも有意に下がっています。夜の各時間帯については、大きな変化はありません。19時台は「NHKニュース7」と「クローズアップ現代」が引き続き好調です。
 全国接触者率調査と別に、この全国個人視聴率調査からも各放送波の週間接触者率を出しています。全国接触者率調査での放送リーチが75.1%だったのに対し、本調査によるNHKの各放送波を合わせた接触者率は、73.1%でした。特徴的だったのは、衛星放送3波を合わせた接触者率が過去最高の19.5%となったことです。衛星放送を視聴可能な受信機の普及拡大が要因にあると思われます。
 総合テレビでよく見られている番組は、大河ドラマ「天地人」、「NHKニュース7」などです。「NHKニュース7」をはじめとする夜のニュース・報道番組は、60代〜70歳以上の男女によく見られていますが、40〜50代にも視聴者層の一定の広がりが見られます。また、「天地人」最終回(11月22日放送)の視聴率を年層別に見ると、70歳以上の男性で、前年の「篤姫」、前々年の「風林火山」より視聴率が落ちていますが、逆に20代男性と7〜12歳の男子の視聴率は、有意に増えているのが特徴的です。
 教育テレビでは、夕方の少年少女向け番組、朝の幼児向け番組がよく見られています。今年度後半期から開始した人形劇「新・三銃士」も、よく見られている番組のひとつです。衛星第1では、野球のシーズンが終わり、アジアカップサッカーの予選が最もよく見られました。衛星第2では、韓国ドラマ「イ・サン」のほか、エンターテインメント番組の「ごきげん歌謡笑劇団」が、衛星ハイビジョンでは、「天地人」最終回が、よく見られています。ラジオ第1では、これまでと同様、朝の時間帯の番組がよく聞かれています。
 最後に、放送評価調査の結果について報告します。
 放送評価調査は、NHKの放送に対する視聴者の評価を把握するためのもので、2007年から年4回実施しています。今回は、11月21日(土)〜23日(月)の3日間、電話法(RDD追跡法)により、全国の20歳以上の男女2,218人を対象に実施し、1,326人(59.8%)から回答を得ました。
 調査では、全体評価として「信頼」、「満足」、「親しみ」、「独自性」、「社会貢献」の5項目、側面別評価として「正確・公平」、「生命・財産を守る」、「娯楽性」、「知識・教養」、「実用性」、「地域への貢献」、「文化の継承・発展」、「福祉」、「教育」、「国際理解」の10項目を掲げ、それぞれについて1点から5点で回答してもらいます。結果は、4点以上の肯定的評価があった回答の率で表わしています。
 今回、全体評価では、「親しみ」が51%で、前年度4回の平均から4%増え、過去最高の数値となりました。ただ、今年6月の調査結果が低かったため、今年度3回の平均は48%です。側面別評価では、「正確・公平」(65%)、「知識・教養」(71%)、「教育」(52%)の3つの項目が、前年度平均より高くなっています。
 年層別に見ると、全体評価では、60代と70歳以上の高齢層の評価が高く、60代では「社会貢献」が、70歳以上では「親しみ」が、前年度平均より高くなっています。また、側面別評価では、60代で「正確・公平」、「知識・教養」、「教育」の3項目が、前年度平均より高くなっています。

(会 長)  全国個人視聴率調査での1日のテレビ視聴時間について、過去の調査結果と比較した数字はありますか。
(放送文化研究所)  過去と比較したデータは、いま手もとにありませんが、20代男性の視聴時間について言えば、今回が1時間48分だったのに対して、昨年の調査では1時間38分でした。
(会 長)  では、この数字だけを見ると若者のテレビ視聴時間が短くなったわけではないのですね。
(日向専務理事)  20〜30年前は、若者層でもテレビの視聴時間が1日3時間くらいあったと記憶しています。
(会 長)  それはインターネットなどがなかった時代のことですから比較になりません。いずれにしても、1日24時間のうち、全世代平均で3時間55分、4時間近い視聴時間があるわけですから、“テレビ離れ”が進んでいるとは、いちがいには言えないと思います。ただ、その中で若者層のNHKの視聴時間は少なく、“NHK離れ”は進んでいるようです。今回の調査で接触者率が76.8%に上がりましたが、統計上有意の差はないとしても、少しでも数値を高めていきたいと思います。また、放送評価調査で、「信頼」と「親しみ」の評価を高めることが課題でしたが、前回の調査で「信頼」の評価が高まり、今回は「親しみ」が過去最高となりました。この結果は大事なものです。
(金田専務理事)  全国個人視聴率調査の数字は、世間で報道されている世帯視聴率と違っていますが、どのように読み取ればよいでしょうか。
(放送文化研究所)  世間で一般的に取り上げられているのは、ビデオリサーチ社が調査している関東地区の世帯視聴率の場合が多いのですが、同社の調査は対象地域が限定されているのに対し、私たちは全国くまなく調査しています。また、私たちの調査は個人視聴率を出していますので、世帯視聴率よりも視聴実態をより正確に反映していると考えています。
(八幡理事)  全国接触者率調査も全国個人視聴率調査も、対象が3,600人となっていますが、この数字に意味はあるのですか。
(放送文化研究所)  サンプル数の規模による誤差の発生リスクと、調査を実施する際の効率性、特にコストを勘案した結果、3,600を標準のサンプル数としています。ただし、地域ごとの詳細な比較が求められるときなど、必要に応じてサンプル数を増やして実施します。

(5)地方放送番組審議会委員の委嘱について
(日向専務理事)
 地方放送番組審議会委員の委嘱について報告します。
 四国地方で今川弥生氏( (株)ヘルシープラネット代表取締役)と村上仁士氏(徳島大学名誉教授、徳島大学環境防災研究センター客員教授)に、平成22年1月1日付で新規委嘱します。
 なお、四国地方の田村耕一委員((財)徳島経済研究所専務理事)と藤岡抱玉委員(愛媛女流書家連盟会長)は、任期満了により平成21年12月31日付で退任されます。



以上で付議事項を終了した。
上記のとおり確認した。
      平成22年 1月12日
                     会 長  福 地 茂 雄

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