日本放送協会 理事会議事録  (平成21年 7月28日開催分)
平成21年 9月 4日(金)公表

<会 議 の 名 称>
 理 事 会

<会  議  日  時>
 平成21年 7月28日(火) 午前9時00分〜9時20分

<出   席   者>
 福地会長、今井副会長、金田専務理事、溝口理事、八幡理事、
 大西理事、関根理事、今井理事、黒木理事

 井原監査委員

<場         所>
 放送センター 役員会議室

<議        事>
 福地会長が開会を宣言し、議事に入った。

付議事項
1 審議事項
(1)平成21年度第1四半期業務報告

2 報告事項
(1)総務省「通信・放送の総合的な法体系の在り方 答申(案)」に
   対する意見の一部修正について
(2)考査報告
(3)放送技術審議会委員の委嘱について
(4)日本放送協会共済会ならびに日本放送協会健康保険組合の平成
   20年度決算について
(5)放送番組審議会議事録(資料)

議事経過

1 審議事項
(1)平成21年度第1四半期業務報告
(総合企画室)
 放送法第22条の2第3項に定める会長の職務の執行状況を、「平成21(2009)年度第1四半期業務報告」のとおり取りまとめたので、同項の規定により、本日の第1099回経営委員会に報告することとしたいと思います。ついては、取りまとめた報告内容について、審議をお願いします。
 第1四半期業務報告の項目は、「今期の概況」、「今期の主な検証ポイント」、「事業計画の執行状況」、「参考資料 予算執行状況等」です。
 最初に「今期の概況」について説明します。ここでは、「事業運営の概要」と「収支概況」について、第1四半期がどのような状況であったのかをまとめました。
 まず、「事業運営の概要」について説明します。
 「平成21〜23年度 NHK経営計画」の初年度がスタートし、経営計画に掲げた経営2目標と経営9方針に基づいてPDCAの仕組みを整えたことを最初に記しています。報道・ジャーナリズムの取り組みでは、新型インフルエンザ、北朝鮮による弾道ミサイルの発射や地下核実験等についても動きや背景をいち早く伝え、国際放送で海外にも情報発信しました。新たな報道プロジェクト「あすの日本」では、日本の課題、地球規模の課題に取り組み、視聴者の高い評価を得ました。また、世界の中の日本を考える大型企画「プロジェクトJAPAN」もスタートし、大きな反響を呼んでいます。4月からの番組改定では、3−Screens展開に取り組むとともに、ワンセグ独自サービスも開始し、経営目標の接触者率の向上をめざして、積極的な展開を図っています。国際放送については、英語独自番組の新設など発信力の強化と受信環境整備に努め、世界でNHKワールドTVを受信できる世帯が1億1,000万余になりました。受信料については、今期は前年を上回る受信契約の増加となりました。一方、経済状況の悪化の影響で、受信料収入の伸び悩みの傾向が出ているため、追加施策に着手し、支払率の向上をめざして、契約・収納活動を推進していきます。全国の放送局については、「地域を元気にするための拠点」を実現するため、新たな取り組みを開始し、地域に貢献するための放送やイベントを多彩に展開しています。
 次に、「収支概況」について説明します。
 6月末の実績で、事業収入は1,667億円、事業支出は1,568億円、事業収支差金は99億円となり、収支全体としては概ね順調です。しかし、次期以降の受信料収入の推移を注視し、年間収支を厳しく見通していく必要があります。受信料収入は、契約総数の増加が14万件(年間目標の進ちょく率48%)、衛星契約の増加が19万件(年間目標の進ちょく率31%)で、契約件数ベースでは、前年同期の実績を上回っていますが、厳しい経済情勢の影響で口座振替率が低下していることなどから、収入額ベースでは伸び悩みの傾向が出ています。事業支出は、予算に対する進ちょく率が23%で、圧縮基調にありますが、来年2月のバンクーバー冬季五輪の放送実施経費など、年度後半に支出が増加する見込みです。
 2つ目の項目「今期の主な検証ポイント」では、「平成20年度決算を踏まえた検証」、「経営改革・人事制度改革の点検」、「平成21年度番組改定の総括と接触者率の点検」の3点について記しています。
 最初に、「平成20年度決算を踏まえた検証」について説明します。事業収入については、契約総数・衛星契約数は順調に増加していますが、20年度下半期以降の経済情勢を反映した口座振替率の低下、事業所割引の導入や免除適用範囲拡大による減収の影響が出ており、受信料収入は伸び悩んでいます。21年度予算を確保するためには、受信料の契約・収納活動の一層の強化が必要であり、追加施策に取り組んでいます。20年度決算の事業支出は、すべての業務について見直しを行い、一層効率的な業務運営を徹底したことなどから105億円の予算残となりました。21年度は、事業計画の重点事項として、多様で質の高い番組の充実、NHKコンテンツの3−Screens展開、地域放送・サービスの強化、国際放送の強化、地上テレビ放送の完全デジタル化に向けた施策の実施などを着実に進めていかなければなりません。事業運営にあたっては、着実な業務推進に努めるとともに、徹底した経費の削減、効率的な運営が必要です。
 次の検証ポイント、「経営改革・人事制度改革の点検」は、「改革推進体制の整備」と「人事制度改革」の2点に分けて記しています。まず、「改革推進体制の整備」についてですが、3か年経営計画のスタートにあたり、組織全体で計画を推進していくために、一貫した目標・方針管理とPDCAを回す仕組みを構築しました。これに基づいて、全局体制で経営目標の実現をめざす取り組みを始めました。「人事制度改革」については、風通しのよい活力ある組織の実現と高い専門性と広い視野を持った公共放送人・ジャーナリストの育成に重点を置き、異動・採用を中心に人事制度の運用を見直しました。部局を越えた交流異動の拡大や、広い視野を備えたマネジメント層の育成により、縦割り構造の弊害を取り除くことなどの組織風土の改革を着実に推進していきたいと考えています。
 3つ目の検証ポイント、「平成21年度番組改定の総括と接触者率の点検」では、経営目標に掲げた「NHKへの接触者率80%」をめざして行った平成21年度番組改定の進ちょく状況を各放送波ごとに総括するとともに、6月に実施した「全国接触者率調査」「全国個人視聴率調査」「放送評価調査」などの調査結果の検証も行っています。平成21年度番組改定は、幅広い視聴者層に向けたニュース・番組作り、日本と世界にインパクトを与えるパワーコンテンツの制作、“激変の時代”に必要とされる報道の強化などを基本方針として行いました。6月に実施した「全国接触者率調査」「全国個人視聴率調査」「放送評価調査」では、数値の大きな変化はまだ表れていませんが、個別の番組については好評意見も多く寄せられており、今後は新番組の定着を図り、接触者率の向上につなげていきたいと考えています。
 3つ目の項目「事業計画の執行状況」では、経営9方針のそれぞれについて「主な実績・継続課題の改善」、「分析・評価」、「課題・今後の取り組み」を書き出し、遂行状況をまとめています。9方針のうち、「地域を元気にするための拠点となります」では、全国の放送局が目標として掲げた「放送局のちから」を広く発信し、地域の拠点としての存在感をアピールする取り組みや、地域放送の充実、取材・制作者の拡充、地域放送番組費の拡大の具体化、地域限定型職員制度の導入、放送局支援強化のための本部の取り組みなどについて遂行状況を記しています。そして、全国53放送局が「放送局のちから」の実現に向けて取り組んでいる事例の遂行状況や分析の報告をブロックごとに記載しています。
 最後に、「参考資料 予算執行状況等」として、事業収支(一般勘定)、番組アーカイブス業務勘定、受託業務等勘定、受信料、建設費、損益計算書、貸借対照表を記載しています。
(会 長)   原案どおり決定し、本日の経営委員会に報告します。


2 報告事項
(1)総務省「通信・放送の総合的な法体系の在り方 答申(案)」に
   対する意見の一部修正について
(総合企画室)
 総務省の「通信・放送の総合的な法体系の在り方 答申(案)」に対する意見について、会長の指示に基づき、第13回理事会に提出した案を一部修正のうえ、提出したので、報告します。
 なお、総務省には152件の意見が寄せられました。うち、団体が72件、個人が80件でした。NHKの意見を含め、すべての意見の内容については、総務省のホームページで公表されています。


(2)考査報告
(考査室) 
 6月から7月下旬にかけてのニュースと番組について考査した内容を報告します。
 最初に、この期間の概況を報告します。
 ニュースについては、臓器移植法改正案のA案が参議院で可決され、成立したこと、時効廃止に向けた法務省の最終報告、中国・新疆ウイグル自治区の暴動、マイケル・ジャクソンさんの急死、静岡県知事選挙で民主党が推薦した候補者が勝利したことや、自民党の役員人事が見送られたニュースなど、28項目について考査を行いました。
 衆議院解散・総選挙に向けた政局の動きでは、東京都議会議員選挙の開票速報で、当確の訂正が1件あったことは残念でしたが、民主党が躍進し、自民党が大敗した流れを的確に速報していたと思います。また、衆議院の解散と投票の日程で与党側が合意した一報も早く、麻生総理が解散を決断するに至った背景についてもよく伝えていたと評価します。考査室としては、政局の流れを分厚く伝え、選挙に臨む各党の決意や来るべき総選挙のポイントについて、記者解説などできちんと伝えていたと思います。
 番組については、6月に「SAVE THE FUTURE」関連の集中考査を実施しました。このうち、3本について報告します。日本の、これから「15%排出削減・あなたの暮らしを変えられますか?」(6月20日(土)放送)では、環境対策を実施すると国民の負担が増えるという政府の試算を提示したことで、番組の論点が明確になり、市民と識者のじっくりとした討論が行われていたと思います。クローズアップ現代「密着 CO2削減交渉」(6月15日(月)放送)では、先進国と発展途上国の対立だけでなく、先進国同士の主導権争いも絡み、難しい外交交渉であるということがよく伝わっていたと思います。6月20日(土)放送の「週刊こどもニュース」では、絶滅が危惧されている動物の保護センターを訪ねたり、里山のように人が手を入れることでたくさんの生き物が集まる豊かな海を守る「里海」という取り組みに参加しながら、環境問題を身近に考えるきっかけになったのではないかと思います。このほかにも、「SAVE THE FUTURE」と前後して、「生活ほっとモーニング」など多くの定時番組でも、環境関連のテーマを取り上げており、考査室ではこうした番組についても集中考査を行いました。全体を通して、環境問題について継続的に考えて行動していくことの重要性について、アピールできていたのではないかと思います。
 続いて、この期間に考査したいくつかのニュースについて報告します。
 まず、7月21日(火)に山口県で発生した記録的豪雨に関するニュースについてです。防府市の老人ホームや住宅が土石流に襲われた状況や、赤ちゃん連れの家族が消防のヘリコプターで屋上から救出される様子など、生々しい映像で、土砂災害のすさまじさを伝えていました。また、雨量データやレーダー画面を駆使して、豪雨の理由をわかりやすく説明していたと思います。
 7月16日(木)に大雪山系で登山ツアー客の遭難が相次ぎ、10人が死亡したニュースについてです。NHKでは、トムラウシ山と美瑛岳の両方の登山口から中継するなど、迅速に対応ができていたと思います。また、ツアー参加者とツアー会社の証言から、両者の意識のずれを明らかにし、専門家のコメント等から、気象条件で大きく変わる夏山の怖さについても正確に指摘していたと思います。
 続いて、いくつかの番組について報告します。
 まず、総合テレビでは、NHKスペシャル シリーズ「エジプト発掘」第1集「ピラミッド 隠された回廊の謎」(7月5日(日)放送)は、10年間にわたりピラミッドの謎に挑んできたフランス人建築家の仮説について、著名な考古学者や物理学者らが自らの研究成果を重ね合わせて、検証を行いました。考査室としては、大ピラミッドがどのように造られたのか、60トンの石をどう引き上げたのかという謎解きが楽しめ、仮説を軸にこれまでの研究成果や考古学者の調査も紹介されていて、興味深かったと思います。また、番組内で使われていたCGも非常に効果的であったと思います。モニターからは、「建築家独特の視点での解明にわくわくしながら見入った」など、好評意見が寄せられています。
 7月4日(土)放送の、追跡!AtoZ「虐待の傷は癒えるのか」は、長期取材を通して情緒障害のある子どもたちの心の傷を、プライバシーに配慮しながら、丁寧に描いていました。また、スタジオのゲストの解説も説得力があり、非常にわかりやすかったと思います。モニターからは、「虐待や育児放棄に遭った子どもたちの現実に衝撃を受けた」などの声が寄せられています。
 教育テレビでの新番組、佐野元春のザ・ソングライターズ「小田和正」(7月4日(土)放送)では、全2回放送のうち、Part1を考査しました。番組では、佐野元春さんが母校の立教大学で、学生を前に小田さんと「歌詞」をテーマに語り合い、小田さんが建築を学んでいたことや、曲を発表する際のレコード会社との思惑の違いなど、意外性のある興味深い話を聞くことができました。考査室としては、佐野さん自身の歌詞へのこだわりは伝わってきましたが、小田さんの歌詞にまつわる話を、ソングライターならではの視点から、このPart1でももう少し引き出してほしかったと思います。
 最後に、7月11日(土)に衛星第1で放送した、BS世界のドキュメンタリー「新聞が消えた日〜ジャーナリズム 未来への問いかけ」では、アメリカで150年の歴史を誇る名門の地方紙「ロッキー・マウンテン・ニュース」が、インターネットの普及などにより、廃刊に追い込まれるまでの背景を、克明に伝えました。廃刊となった事情やその意味を検証し、ジャーナリズムが直面する問題を浮き彫りにしていたと評価しています。


(3)放送技術審議会委員の委嘱について
(技術局) 
 放送技術審議会委員の委嘱について報告します。
 半田力氏(社団法人 電子情報技術産業協会 専務理事)に、平成21年8月1日付で再委嘱します。


(4)日本放送協会共済会ならびに日本放送協会健康保険組合の平成
   20年度決算について
(関根理事) 
 日本放送協会共済会評議員会ならびに日本放送協会健康保険組合組合会において、平成20年度決算が承認・議決されましたので報告します。
 まず、日本放送協会共済会の決算概要について報告します。共済会の会計は、一般会計と特別会計に分かれています。一般会計の収入は、予算に対して8,800万円下回りました。一方、支出は2億1,800万円下回り、その結果、収支差金が1億3,000万円となりました。次に、特別会計は、転勤者用住宅の効率的な運用等により、支出は3億7,200万円の減少となりました。なお、特別会計はNHKからの委託業務のため、収支の過不足については決算段階で精算することになっています。
 次に、日本放送協会健康保険組合の決算概要について報告します。一般勘定は、収支差金が3億5,900万円の黒字となりました。これは、支出項目のうち、前期高齢者納付金が予算に対して4億4,800万円減少したことが主な理由です。厚生労働省が作成したデータをもとに予算を組みましたが、その後、減額に至ったという通知を受け、決算段階で金額を修正しました。なお、介護勘定の決算残金は3,300万円でした。


(5)放送番組審議会議事録(資料)
(編成局) 
 編成局および国際放送局から、中央放送番組審議会、国際放送番組審議会、全国の地方放送番組審議会(関東甲信越、近畿、中部、中国、九州、東北、北海道、四国)の平成21年6月開催分の議事録についての報告(注)。


注:

放送番組審議会の議事概要は、NHKホームページの「NHK経営情報」のなかに掲載しています。



以上で付議事項を終了した。
上記のとおり確認した。
      平成21年 9月 1日
                     会 長  福 地 茂 雄

戻る

Copyright NHK (Japan Broadcasting Corporation) All rights reserved. 許可なく転載を禁じます。