日本放送協会 理事会議事録  (平成21年 6月16日開催分)
平成21年 7月10日(金)公表

<会 議 の 名 称>
 理 事 会

<会  議  日  時>
 平成21年 6月16日(火) 午前8時30分〜9時20分

<出   席   者>
 福地会長、今井副会長、金田専務理事、日向理事、八幡理事、
 永井理事、大西理事、関根理事、今井理事、黒木理事

 井原監査委員

<場         所>
 放送センター 役員会議室

<議        事>
 福地会長が開会を宣言し、議事に入った。

付議事項
1 審議事項
(1)第1097回経営委員会付議事項について
(2)「電波政策懇談会報告書(案)」に係る意見募集に対する意見
   の提出について
(3)視聴者対応報告(平成21年5月)について

2 報告事項
(1)21年5月の視聴者満足(CS)向上活動報告
(2)財政の現況(平成21年5月末)
(3)財団法人放送文化基金の平成20年度事業報告および収支決算
   について
(4)地方放送番組審議会委員の委嘱と任期途中の退任について

議事経過

1 審議事項
(1)第1097回経営委員会付議事項について
(総合企画室)
 6月23日に開催される第1097回経営委員会付議事項について審議をお願いします。
 付議事項は、議決事項として「日本放送協会平成20年度業務報告書について」、「日本放送協会平成20年度財務諸表について」、「国際放送番組審議会委員の委嘱について」、および「NHK情報公開・個人情報保護審議委員会委員の委嘱について」です。また、報告事項は、「平成20年度NHK連結決算について」、「平成20年度“約束”の評価を受けて」、「視聴者対応報告(平成21年5月)について」、「契約・収納活動の状況(平成21年5月末)」、「財政の現況(平成21年5月末)」、「財団法人放送文化基金の平成20年度事業報告および収支決算について」、および「地方放送番組審議会委員の委嘱と任期途中の退任について」です。

(会 長)   原案どおり決定します。


(2) 「電波政策懇談会報告書(案)」に係る意見募集に対する意見の提出について

(技術局)
 総務省は、2010年代における電波利用ビジョンを策定するため、昨年10月に電波政策懇談会を設置し検討を続けてきましたが、このほど、その「報告書(案)」が公表されました。「報告書(案)」は、2010年代の電波利用システムの将来像を描き、それを実現するための電波新産業創出戦略に向けた5つのプロジェクトを提案するとともに、プロジェクトを円滑かつ着実に進めるための5つの推進プログラムを設定しています。この「報告書(案)」について、現在、6月19日を期限として意見が募集されています。その内容には、NHKに深くかかわる事項が2点あり、放送の継続と発展の観点から意見を提出したいと思いますので、審議をお願いします。
 1点目は、「スーパーハイビジョンを一般家庭へ配信するための有効な手段の一つとして、衛星放送が期待されていることから、必要な周波数帯幅及び国際分配を考慮し、スーパーハイビジョンに適したデジタル放送周波数帯として、21.4−22GHzを候補として配分を検討することが適当である」とされている点についての意見です。
 これについては、スーパーハイビジョン衛星放送は、広い周波数帯幅を必要とすることから、国内においても21.4GHzから22GHzの帯域を衛星によるデジタル放送周波数として配分検討することを支持したいと思います。あわせて、21.4GHz−22GHz衛星放送の実現には、いくつかの技術的課題があることから、テストベッド(実際の運用環境に近づけた試験用システム)等の具体施策の検討を要望するとともに、降雨減衰による影響の少ない12GHz帯など、21.4GHz−22GHz以外の周波数・軌道によるスーパーハイビジョン放送の可能性を検討することも要望したいと思います。
 2点目は、「放送用などある目的のために割当てられているが、時間的・空間的・技術的条件によって他の目的にも利用可能な周波数(いわゆるホワイトスペース)を活用するため、その具体的なニーズ、利用形態、共用する技術的条件に関する技術的検証を行い、その活用可能性を踏まえ、技術基準の策定等の制度整備を行うことが適当である」とされている点についての意見です。
 ホワイトスペースの活用については、放送業務に支障を与えないことが大前提とされるべきです。このことは、現時点のみならず将来にわたっても担保されなければならない要件と考えます。
 時間的・空間的・技術的な条件により、放送用周波数をイベントなど他の目的に利用することは、現在でも行われていますので、こうした無線局の運用については、現行制度の下で実験局免許を柔軟に適用することにより対応が可能と考えます。
 仮に、現行の放送業務に支障を与えないという条件で、ホワイトスペースが放送以外の目的に利用されたとしても、その利用により新たに開かれた市場における電子機器の財産権や免許人の周波数利用の権利は保障されるべきものではなく、また、その利用が、将来において放送のイノベーションや視聴者ニーズに対応するための新たな周波数利用を妨げてはならないと考えます。
 また、無線の放送においては、そのシステムの特性上、受信者および利用者の特定把握が不可能です。その周波数の有効利用については、長期的な視点に立って検討を行うことが肝要であり、放送という数十年以上に及ぶスパンでイノベーションが繰り返されるインフラ・メディアの特徴を十分考慮することが重要です。
 以上により、放送用周波数におけるホワイトスペースの活用については、国民の生命および財産を守るという放送本来の公共的使命を踏まえ、放送の継続と発展を保障し、それを妨げることがあってはならないという意見を述べたいと思います。
 なお、ホワイトスペースについては、放送と通信の連携に向けた総合法制の検討においても、検討事項に取り上げられています。これに関する意見募集があった際には、今回の意見と整合する意見を提出したいと考えています。
 以上の意見内容が了承されれば、字句・表現について精査をしたうえで、意見を提出します。

(会 長)   原案どおり決定します。


(3)視聴者対応報告(平成21年5月)について
(視聴者サービス局) 
 放送法第12条に定める視聴者対応の状況について、平成21年5月分を以下のとおり取りまとめました。ついては、放送法第22条の2第3項の規定に基づき、経営委員会に報告したいので、審議をお願いします。
 5月にNHKに寄せられた視聴者の声の総数は37万8,654件でした。これを内容別に分類すると、苦情や要望等を含めた意見が8万9,369件(24%)、問い合わせが25万7,901件(68%)、その他が3万1,375件(8%)でした。4月に比べると意見・要望が増え、問い合わせが減っています。また、分野別に見ると、放送関係が増加し、受信料関係が減少しました。また、全体の65%は視聴者コールセンターで受け付けたものです。受付方法では、電話が全体の83%を占めています。
 5月については、新型インフルエンザの世界的な大流行の恐れが差し迫っているとして日本時間の4月30日にWHO(世界保健機関)が警戒レベルを“フェーズ5”に引き上げてから、海外からの帰国者の感染確認、国内での感染者確認など、状況の進展に合わせてさまざまな反響が寄せられました。4月27日から5月31日までの5週間に、新型インフルエンザ関連で寄せられた反響は3,507件に上っています。警戒レベルが“フェーズ5”に引き上げられた当初は、「新型インフルエンザの症状・潜伏期間などの情報がないので、ニュースの中でもっと詳しい情報を放送してほしい」「ニュースで案内していた厚生労働省の問い合わせ番号を教えてほしい」など、基本的な情報についての問い合わせや要望が多かったのですが、首都圏で初めて感染が確認された5月下旬ごろには、「感染者が出た学校がインターネットで中傷を受けている。感染者が出たことだけを過剰に放送し、その後のフォローがない」「現在のり病者総数が報道されているが、そのうちの治癒者数が不明なのが気になる。きちんと把握して報道すべきだ」など、報道の内容についての意見が目立つようになりました。放送以外についても、「NHKスタジオパークに行きたいが、NHKの施設ではどのような対策をしているのか」「『おかあさんといっしょ』の公開収録に行く予定にしているが、新型インフルエンザの影響で何か条件や変更が出ていないか」といった問い合わせがあり、NHKの対応について説明しました。なお、NHKの新型インフルエンザ対策については、5月14日に福地会長が記者会見で説明した考え方をホームページに掲載して広く公表しました。
 5月の放送番組に寄せられた反響総数は、14万8,801件で、意見は6万6,124件、問い合わせは8万2,677件でした。
 そのうち、5月3日に放送したNHKスペシャル シリーズ JAPANデビュー 第2回「天皇と憲法」に対し、「憲法記念日にふさわしい番組だった。天皇を扱うのはかなりの慎重さが必要かと思うが、歴史上の人物の言葉や初めて知る資料に基づいた構成には説得力を感じた」などの好評意見や、「天皇の役割を政治家に利用される卑小な存在としてしか見ていない。天皇制に疑問を抱かせるような内容は容認できるものではない」といった厳しい意見など、合わせて550件の反響が寄せられました。5月の放送番組の中で4番目に多い件数です。「NHKスペシャル シリーズ JAPANデビュー」については、4月5日に放送した第1回「アジアの“一等国”」に対して、4月に3,000件近い反響がありましたが、5月以降も1,420件の反響が寄せられています。また、憲法記念日の関連特集としては、5月3日に総合テレビで憲法記念日特集「いま問われる25条“最低限度の生活”」を、教育テレビでETV特集「いま憲法25条“生存権”を考える〜対論・内橋克人・湯浅誠〜」を放送し、未曽有の経済危機の中、「最低限度の生活」を保障した憲法第25条について考え、いずれも100件以上の反響が寄せられました。
 5月2日、日本のロックミュージックの第一人者として活躍してきた忌野清志郎さんが亡くなりました。追悼関連番組を3本放送したところ、「民放がどこもやらない中、このような企画に感謝する。初めて受信料を払っていてよかったと思った」「葬儀の翌日にすぐに放送してくれて非常によかった。自分は葬儀に行けなかったが、NHKが取り上げてくれたので気持ちの整理がついた」などの好評意見が多数寄せられました。
 4月18日から5月23日にかけて放送した土曜ドラマ「遥かなる絆」には、4月13日から5月25日の期間に総計929件の反響が寄せられました。1回あたりの件数では155件で、平成20年度のすべての「土曜ドラマ」を上回っています。意見の内容については、平成7年に放送し、同様に中国残留孤児の人生を描いて大きな反響があったドラマ「大地の子」に重ねて視聴したという意見が多く寄せられました。
 深夜時間帯に若い世代に向けた番組を編成する「EYESゾーン」で4月に開始した新番組の中で、新しいタイプの歴史番組「タイムスクープハンター」に、特に多くの好評意見が集まりました。「どんな歴史ドラマや時代劇よりリアルに表現されていて、当時の人間模様が描かれていた点も興味深かった」などの意見と合わせて、再放送の要望も多く寄せられました。その理由の内訳を見ると、一般的には「見逃したので」というものが多い中で、この番組については「内容がよかったので」という理由が最も多かったのが特徴的でした。
 5月に視聴者から寄せられた、再放送を希望する要望や問い合わせは1万4,898件あり、適宜再放送を行いました。なお、受信契約者を対象としたインターネットサービス「NHK+ID」では、見逃した番組などをあらかじめ登録しておくと再放送予定が決まった時にメールでお知らせする「再放送ウオッチ」というサービスを行っています。「再放送ウオッチ」の登録者数は、5月27日現在の累計で1万5,589人となっていますが、そのうち再放送が決まって5月にメールでお知らせしたのは1,491件でした。
 番組ホームページへのアクセス数の増加から、番組情報を得るためにホームページを活用するケースが増えていることが推測されます。それに伴い、ホームページに関する問い合わせや、サイト内での誤記・間違い・情報未更新への指摘も増加しています。5月には、「『NHKニュース おはよう日本』の『まちかど情報室』のホームページで、おそらく別の会社なのにURLが同じになっている」「『BSオンライン』の『映画カレンダー』の6月の内容がおかしい(5月の内容を掲載)」などの指摘があり、確認してすぐに訂正しました。
 視聴者からの意見や要望を受けて、改善などの対応をとった事例を紹介します。
 「地上デジタル放送の時報スーパーの表示が小さくて見にくい」という意見が寄せられました。これを受けて、東京から放送する関東向けの地上デジタル放送では、5月11日から時報スーパーの文字をアナログ放送と同程度に大きくしました。「見やすくなった」という反響が寄せられている一方で、アナログテレビにデジタルチューナーを接続して見ている場合、画面のサイズによっては時報表示が画面からはみ出すことについて指摘も受けています。その際には、テレビのリモコンで画面のサイズを調整すれば表示できることを案内しています。
 ニュースで字幕放送を利用すると、字幕がニュースの内容を表すテロップと重なってしまい、テロップが見えなくなってしまう場合があります。それに対して「テロップが非常に見にくい、表示方法を変えられないか」といった要望が寄せられていました。これを受けて、テロップとできるだけ重ならないよう、字幕をおよそ2行分上にずらして表示することにしました。また、これにより字幕が画面中央付近に来て映像が見づらくなるため、字幕の背後につけている黒い帯を半透明に変えました。こうした措置を5月11日の正午のニュースから実施しています。
 新しい取り組みに対しても反響が寄せられています。全国向けのニュース速報や震度3以上の地震・津波速報を、インターネットや携帯のメールで視聴者に即時に配信するサービスを2月に開始したところ、「すばらしいサービスで、今後も利用したいが、公共交通機関の事故や遅延情報は地震・津波情報のように自分に関係する地域・路線を選べるようにしてほしい」などの意見がありました。
 テロップなどの誤記や原稿などの誤読については、視聴者からの指摘に基づき確認した結果、52件の表記のミスや読み間違いなどがありました。いただいた指摘については、番組担当者に連絡し放送の中で訂正するように努めるとともに、再発防止に向けて放送関係の部局に周知し、現場に注意を喚起しました。
 経営関係の意見について報告します。
 8年前に放送したETV2001 シリーズ 戦争をどう裁くか 第2回「問われる戦時性暴力」について、BPO(放送倫理・番組向上機構)の放送倫理検証委員会が、「NHKの番組制作部門の幹部が放送前に有力政治家と面談し改編指示を行ったことなどは公共放送にとって最も重要な自主・自律を危うくし視聴者に重大な疑念を抱かせる行為だった」などとする意見を公表しました。NHKがそれに対する見解を発表したことなどについて、4月28日から6月10日までの間に意見が140件寄せられました。おもな意見としては、「NHKはBPOの委員会の意見を真摯(しんし)に受け止めていると言いながら、その反面政治家からの圧力や影響については受けていないといまだに否定し続けているのはおかしい。テレビで時間を割いて納得のいく説明をすべきだと思う」「この4年間受信料の支払いを止めていたが、NHK会長が『番組について政治家に事前に説明しない』と明言したことで支払い再開の手続きをした。今回の明言を待っていた」などの声がありました。

(会 長)   原案どおり決定し、次回の経営委員会に報告します。

2 報告事項
(1)21年5月の視聴者満足(CS)向上活動報告
(視聴者サービス局) 
 21年5月の視聴者満足(CS)向上活動について報告します。
 まず、「平成21〜23年度 NHK経営計画」に基づき、全国53の放送局が自分たちの取り組みを掲げた“放送局のちから”についての報告です。5月は、全国から153件の報告がありました。
 広島放送局では、視聴者が携帯電話やパソコンから地元プロスポーツチームへの応援などのメッセージを投稿し、それを放送(画面へのスーパーとデータ放送)・携帯・パソコンの“3−Screens”で同時に紹介する「応援メッセージシステム」を、全国に先駆けて開発しました。3月にJリーグのサンフレッチェ広島の試合中継に合わせて初めてサービスを行い、70通の応援メッセージが寄せられました。さらに、5月2日にプロ野球「広島」対「ヤクルト」を広島県域で中継した際には、スポットでの周知に加え地域ニュースでも告知し、当日球場でも二次元バーコード付のチラシを5,000枚配布したところ、270通のメッセージが寄せられ、そのすべてを“3−Screens”で紹介しました。メッセージの8割は携帯から送信され、また、7割が10〜30代から寄せられるなど若者層の関心を集める取り組みとなりました。
 仙台放送局では、4月に放送会館の見学コースをリニューアルしたのに合わせて、地域の放送局では初めて声優の体験ができるアフレココーナーを新設しました。人気アニメ「おじゃる丸」の映像に合わせて、自分の声でセリフを録音できるもので、親子連れや小中学生が体験し、「自分の声でおじゃる丸が会話しているのは面白い」「アニメやテレビの作り方がわかった。また来たい」などの声が寄せられ、人気を集めています。
 松江放送局では、自然豊かで文化や歴史の面でも魅力あふれる隠岐島の話題を伝えるため、平成9年に簡易スタジオブースを島に設置し、夕方の地域ニュース番組内に「隠岐島通信」のコーナー(隔週火曜日)を設けて、島のトピックスを紹介してきました。さらに情報発信を強化し、隠岐のすばらしさを島内外にいっそう伝えようと、5月から松江放送局の携帯サイトやホームページに、「隠岐島通信」の動画を掲載しました。視聴者からは、「島からの元気なメッセージは、私の元気の源です」などの声が寄せられています。
 高松放送局では、県民が楽しめる地域に密着した歌番組「笑ってうたってしあわせ家族」を、平成19年度から香川県域で放送しています。県内各地を訪ねてそこで暮らす人々を紹介し、最後にゲストが歌をプレゼントするという内容で、2年間に県内の全17市町を訪問し、5,000人を超える人々が番組に参加してきました。そうした中で、後藤次利さんが作詞・作曲し、山本譲二さんと鳥羽一郎さんが歌う、番組のオリジナルテーマソング「しあわせさんよありがとう」が話題になっています。視聴者から、「ほのぼのとしたよい歌だ。CD発売しないのか」という問い合わせや、「祭りで曲に合わせて踊りたい」という要望などが寄せられており、昨年末にはこの曲が2人の歌手それぞれのCDに収録され、今年5月からは携帯着メロサイトでの配信サービスを開始しました。
 その他の取り組みとして、本部の関係部局とさいたま放送局が合同で、連続テレビ小説「つばさ」のファンミーティングを開催しました。番組に登場する和菓子“あまたま”の試食コーナーも設け、参加者へのアンケートでは95%の方から“満足”との回答が得られました。また、“3−Screens”に関する意見や要望、問い合わせが増えていることから、編成局と視聴者サービス局とが合同で、放送コールセンターのコミュニケーターを対象にした勉強会・意見交換会を実施しました。
 視聴者からの意見や要望などに基づく業務の改善については、5月の改善件数は88件でした。
 おもな改善事例として、首都圏放送センターでは、平日昼前の関東地域向け情報番組「こんにちはいっと6けん」で毎日放送している料理コーナーのレシピの問い合わせが多いことから、レシピをFAXで送信するサービスを4月から開始しました。しかし、「利用方法が難しくてわからない」「なかなかつながらない」などの意見があったため、利用方法を1分間で説明するVTRを番組内で放送するとともに、回線を2回線から8回線に増やしました。当初は1日100件程度だったFAXサービスは、これらの改善によって利用数が1日2,000件に上るほどになりました。
 また、札幌放送局では、“再撮”映像の見づらさを解消するフィルターを開発しました。スタジオ収録番組などで、スタジオ内に設置したテレビモニターの画面を、放送用のテレビカメラで撮影(再撮)すると、モニターとカメラの画素の間隔にずれが生じることから、“モアレ”と呼ばれるしま模様が発生し、放送ではモニター画面が見づらくなります。札幌放送局は民間企業と共同で、モニターに取り付けるだけでこのモアレを解消できるフィルターを開発し、特許を申請中です。今年3月から北海道向けのニュースや情報番組で使用を開始し、現在は本部のニュースセンターでも使用して、効果を上げています。
 ふれあいミーティングの実施状況については、5月は全国で181回開催し、3,843人が参加しました。
 おもな実施事例として、青森県で実施した出前型ふれあいミーティングについて紹介します。今年1月、青森県十和田市在住の視聴者から、「昨年の『NHK紅白歌合戦』に孫娘がマーチングバンドの一員として出演するというので楽しみにしていたが、非常に短い時間だったため画面で確認できなかった」というお叱りの手紙が寄せられました。その後、番組を担当した部署と視聴者サービス局から手紙や電話を通じて説明を重ねてご理解をいただきましたが、その方と対話する中で、NHKに対して多くのご意見・ご要望をお持ちであることがわかり、周囲の住民の方も交えて、ふれあいミーティングを実施することになりました。5月16日、十和田市で開催したミーティングには、エンターテインメント番組や視聴者サービス局、青森放送局の責任者が出席し、地元の11人の方から意見や要望を伺いました。実施後、「NHKに手ごたえを感じた」という意見が寄せられるなど、参加者の8割が、NHKに対する好感度・満足度が向上したということでした。そのほかに、「NHKニュース おはよう日本」では、参加者を公募し、阿部渉キャスターも出席してふれあいミーティングを実施しました。アンケートでは、参加者の95%の方から“満足”との回答が得られました。


(2)財政の現況(平成21年5月末)
(経理局) 
 平成21年5月末の財政の現況について報告します。
 まず、予算の執行状況です。
 事業収入の実績額は1,092億円で、進ちょく率は16.3%と、5月段階の標準進ちょく率16.7%(2か月/12か月)をやや下回っています。事業収入のうち受信料は、契約取次の業績が前年度を上回るものの、事業所割引導入の影響などにより、進ちょく率が標準より低くなっています。副次収入は、放送番組の二次使用料などが年度末に計上されることから、現段階での進ちょく率は、標準より低くなっています。財務収入等は、前々年度以前の受信料が順調に回収できていることから、進ちょく率は標準より高くなっています。特別収入は、非現用不動産の売却時期が年度後半に予定されていることから、進ちょく率は標準より低くなっています。
 また、事業支出は1,050億円で、進ちょく率は15.6%と、標準を下回っています。これは、国内放送費については、現時点で大規模な事件・事故がなく、また、バンクーバー冬季オリンピックの放送実施経費の支出が来年2月になること、国際放送費では、マレーシア・北米等における受信環境整備が若干遅れていること、管理関係費では、地上テレビ放送のデジタル化に伴う自主共聴等への経費助成が始まって間もないことなどによります。
 こうした結果、5月末の事業収支差金は41億円となりました。
 これを損益計算書で前年度同期との比較を見ると、経常事業収入では、放送受信契約の契約総数・衛星契約の増加により受信料収入が増加しました。経常事業支出では、昨年の北京オリンピックのような多額の支出を伴うイベントがなかったことから、国内放送費が減少しています。また、年金資産運用環境の変化に伴う退職給付費用の増加により人件費が増加しています。経常事業収支差金は57億円で、前年度との増減はほぼありません。
 財務収入等と財務費の経常事業外収支は前年度とほぼ同水準で推移しており、経常事業外収支差金は前年度より2億円増加しています。
 この結果、経常事業収支差金と経常事業外収支差金を合わせた経常収支差金は43億円となり前年度より3億円増加しています。
 これに不動産の取得・処分などの特別収支を加えた事業収支差金は41億円で、前年度より5億円増加しています。
 続いて、貸借対照表で前年度決算との比較を見ると、資産の部では事業収支差金の発生や受信料前受金の増加などにより現金預金・有価証券が216億円増加しています。また、減価償却等による減少額が取得額を上回ったため、有形・無形固定資産が92億円減少しています。これらの結果、資産合計は93億円増加しました。
 負債の部では、受信料前受金が増加した一方で放送設備などの設備整備関連の未払金が減少したことなどにより、流動負債が3億円増加し、退職給付引当金の繰入額が取崩額を上回ったことなどにより、固定負債が48億円増加しました。これにより負債合計は51億円増加しました。
 純資産の部では、5月末の事業収支差金の発生に伴い、純資産合計が41億円増加しました。
 なお、自己資本比率は66.6%と引き続き良好な状態にあります。
 最後に、放送受信契約の状況は、契約総数が14.3万件、衛星契約が13.9万件前年度末より増加し、増加件数、年間目標に対する進ちょく率は前年度同期を上回って推移しています。しかし、今年2月から導入した事業所割引の影響などにより、受信料収納額は前年同月比で6億円の減収となっています。


(3) 財団法人放送文化基金の平成20年度事業報告および収支決算について
(総合企画室) 
 財団法人放送文化基金の平成20年度事業報告および決算について、先の同財団の理事会および評議員会で承認されたので報告します。
 放送文化基金は、千代田区内幸町の旧東京放送会館の土地・建物の売却益の一部など123億円が基金となっています。その関係から毎年度の事業報告、決算は、NHKの理事会・経営委員会に概要を報告しています。
 平成20年度は、同基金の設立35周年を迎えましたが、米国に端を発した世界的な金融危機と経済不況によって急速な円高や長期金利の低下が進んだことから、資産運用収入が前年度実績を大きく下回るという厳しい状況となりました。しかし、事務管理経費等の節減など経費全般の効率的使用に努め、放送文化の発展に寄与する放送の各種プロジェクトに対する助成・援助事業や、優れた番組に対する表彰事業、「制作者フォーラム」の開催などの諸活動について、主要事業を計画どおり実施しました。
 助成・援助事業では、「技術開発」と「人文社会・文化」の2分野で140件の応募があり、このうち49件6,440万円の助成を決定しました。また、表彰事業では、34回目の放送文化基金賞に加えて、ABUの番組コンクールや「日本賞」教育コンテンツ国際コンクールでも賞を贈呈しています。これらの事業のほか、NHK、民放、制作プロダクションなど団体の枠を越えた制作者同士の交流の場を設ける「制作者フォーラム」や「若手制作者全国交流セミナー」などを実施するとともに、35周年事業の一環として、昭和49年度から現在までの助成・援助対象を検索できるデータベースをホームページ上で公開しました。
 次に、収支の状況について説明します。収入総額は、3億3,777万円でした。基本財産の運用利回りが年々低下する厳しい状況にある中で、外部専門家を含めた「資産運用検討委員会」において、内外の市況、起債情報など債券市場や機関投資家の動向等の情報を分析・検討し、資産運用の専門性の向上と収入の確保に努めましたが、20年度の基本財産の運用利回りは、予算で2.73%を見込んでいたのに対し、2.52%にとどまりました。支出総額は、3億1,842万円でした。効率的な事業運営に努めた結果、事業活動支出では、予算に対し3,746万円節減しました。収支差額は1,935万円となり、全額を翌年度に繰り越しました。また、見込まれる投資損失に備えるための投資損失引当金と特別投資損失引当金を特別投資損失引当金に一本化し、1億円を支払停止となった債券の償却にあて、新たに3,000万円の積み増しを行いました。その結果、20年度末累計の特別投資損失引当金は、1億9,752万円となりました。

(4)地方放送番組審議会委員の委嘱と任期途中の退任について
(日向理事) 
 地方放送番組審議会委員の委嘱と任期途中の退任について報告します。
 九州地方で南慧昭氏(南陽山勝光寺住職)に、北海道地方で木下正明氏(鳥取神社宮司)に平成21年7月1日付で新規委嘱します。また、北海道地方で山本卓氏(北海道新聞社論説委員)に7月1日付で再委嘱します。
 北海道地方の長谷川幸男委員(北海道農業協同組合中央会副会長)については、本人の申し出により任期途中の7月31日付で退任されます。また、九州地方の佐藤英生委員(大分ケーブルテレコム(株)代表取締役社長)は、任期満了により6月30日付で退任されます。



以上で付議事項を終了した。
上記のとおり確認した。
      平成21年 7月 7日
                     会 長  福 地 茂 雄

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