日本放送協会 理事会議事録  (平成21年 3月24日開催分)
平成21年 4月10日(金)公表

<会 議 の 名 称>
 理 事 会

<会  議  日  時>
 平成21年 3月24日(火) 午前9時00分〜9時45分

<出   席   者>
 福地会長、今井副会長、金田専務理事、日向理事、溝口理事、
 八幡理事、永井理事、後藤理事、大西理事、関根理事、今井理事

<場         所>
 放送センター 役員会議室

<議        事>
 福地会長が開会を宣言し、議事に入った。

付議事項
1 審議事項
(1)第1091回経営委員会付議事項の追加について
(2)「平成21年度国際放送等実施要請(通知)」への回答について
(3)特定失踪者問題調査会による八俣送信所の送信設備等の使用の期
   間延長について

2 報告事項
(1)平成21年度考査業務運営方針
(2)経営計画に基づく「放送局のちから」の公表について
(3)関連団体の事業運営状況について
(4)NOD業務の現状とサービス内容の充実について
(5)「IT統制委員会規程」の一部字句修正について
(6)放送技術審議会委員の委嘱、退任について

議事経過

1 審議事項
(1)第1091回経営委員会付議事項の追加について
(総合企画室)
 本日開催される第1091回経営委員会付議事項の追加について審議をお願いします。
 3月17日の理事会で審議、決定された事項のほかに、報告事項として「経営計画に基づく『放送局のちから』の公表について」を追加したいと思います。

(会 長)  原案どおり決定します。


(2)「平成21年度国際放送等実施要請(通知)」への回答について
(国際放送局)
 「平成21年度国際放送等実施要請(通知)」への回答について審議をお願いします。
 総務大臣から、放送法第33条第1項の規定に基づき、平成21年度のラジオ国際放送とテレビ国際放送について、実施要請の通知を3月12日付で受けました。通知によれば、NHKは、要請への諾否を検討のうえ、検討結果を4月1日付で文書回答するように求められています。
 これまでNHKは、放送法に基づく要請があれば、その重みを受け止めて、趣旨内容に応じて判断し、仮に要請がNHKの番組編集の自由に抵触する恐れがある場合には、要請に応じないこともあるという姿勢をとってきました。一般的に言えば、放送事項に対する個別具体的な要請は、放送の信頼性、客観性に疑念を抱かせる恐れもあり、その応諾には慎重な判断が必要だと考えます。
 今回の要請においては、ラジオとテレビジョンに共通する放送事項は、放送法に示されている一般的な放送事項であり、これらに応じることとしても、NHKの国際放送の信頼性、客観性が損なわれる恐れはなく、支障はないものと判断されます。また、ラジオについての放送事項に、前年同様「北朝鮮による日本人拉致問題に特に留意すること」が記載されていますが、拉致問題については、NHKは、報道機関として、自主的な編集判断を行ったうえで、一貫して必要な国際放送を適宜適切に実施してきていますので、今回の要請に応じても、番組編集の自由を確保していけるものと考えます。
 以上の見地から、NHKは、平成21年度におけるラジオ国際放送およびテレビ国際放送の実施要請について、要請を応諾したいと思います。
 なお、本議案決定のうえは、本日の第1091回経営委員会に報告事項として提出します。

(会 長)  原案どおり決定します。


(3)特定失踪者問題調査会による八俣送信所の送信設備等の使用の期間
   延長について
(永井理事)
 特定失踪者問題調査会による八俣送信所の送信設備等の使用の期間延長について審議をお願いします。
 KDDIが所有し、NHKが包括的使用権を有する八俣送信所の送信設備を、特定失踪者問題調査会(以下、「調査会」)の行う北朝鮮拉致被害者向け短波送信「しおかぜ」のために使用させる件については、NHK、KDDI、調査会の3者の合意に基づき、すでに19年3月26日から半年ごとの期間延長によって使用を認めています。このたび、調査会に、有効期間を平成24年11月30日までとする新たな電波免許が付与されたことをふまえて、平成21年度上半期についても引き続き使用させてほしいとの申し出がありましたので、人道上の見地から可能な範囲での協力として、本年3月30日から10月25日まで、引き続き調査会の使用を認めることとしたいと考えます。また、これを担保するため、NHK、KDDI、調査会の3者で覚書を締結することとしたいと思います。
 なお、3者で締結した確認書に基づき、NHKは業務に支障があるときは、いつでも調査会の短波送信の停止を求めることができるということになっています。

(会 長)   原案どおり決定します。


2 報告事項
(1)平成21年度考査業務運営方針
(考査室) 
 「平成21〜23年度NHK経営計画」では、「公共放送の使命の遂行」について、「さまざまなメディアに情報があふれる時代だからこそ、公平・公正であること、放送の自主自律と不偏不党を貫くこと、健全な民主主義の発達に資することなど、公共放送として大切にしてきた理念や使命は、一層重要性を増すと考えます。」と述べています。
 平成21年度の考査業務は、この「NHK経営計画」が掲げる理念に基づき、NHKが公共放送として迅速で的確なニュース・緊急報道や質の高い番組を提供していくために、リスクマネジメントの観点からも「放送の質」「放送倫理」の両面で充実を図る役割を果たし、視聴者のみなさまの信頼と期待に応えていきます。
 考査業務の運営にあたっては、NHKの放送が「放送法」「国内番組基準」「国際番組基準」にのっとっているかの考査を、次の重点事項により実施します。
 1点目は「放送考査、考査結果の周知」です。
 NHKの放送が、迅速・正確か、公平・公正でわかりやすいか、伝えるべきことを視聴者に伝えているか、表現・用語が適切か、また人権への配慮、広告・宣伝への配慮が十分になされているかなどの視点から考査します。ニュース、番組それぞれ的確な考査に努め、特に必要に応じて、より多角的・集中的な放送考査も実施していきます。考査結果は、迅速に放送現場に伝えるとともに、取材・制作現場との連携をいっそう深めて、放送内容の向上に寄与します。
 2点目は「事前考査」です。
 総合テレビの夜8時台・10時台の番組、ドラマ、衛星放送では、「プレミアム8」「BS世界のドキュメンタリー」などに重点を置きます。その他随時、定時・特集番組の事前考査を実施します。問題や疑義がある場合には、危機管理上の重要性もかんがみ、直ちに制作現場と協議して改善に努めます。
 3点目は「番組モニターの活用」です。
 全国から寄せられる「モニターリポート」を直ちに関係部局に伝えるとともに、視聴者の意向を集計・分析し、視聴者の声を客観的に把握して、現場への建設的な提言につながるよう努めます。21年度後半からは、全国で新しいモニター・システムの運用を開始して、「モニターリポート」のメール化をほぼ達成し、地域放送番組も含め、より迅速で効果的な現場へのフィードバックを図るように努めます。
 4点目は「放送倫理の向上」です。
 放送倫理や取材・制作の基本指針となる「NHK新放送ガイドライン2008」の放送現場へのいっそうの周知・徹底を図っていきます。その一環として、レファレンス業務をとおして、人権や差別、広告・宣伝等、放送倫理上の問題についての放送現場からの問い合わせや相談に対して適切なアドバイスを行います。また、マスコミ倫理懇談会やNHKと在京民放で構成する考査実務責任者会議など外部団体との連携・情報交換を行い、必要に応じて現場へ情報提供を行います。
 以上の方針に基づき、放送現場との連携と放送現場からの独立のバランスを適切にとりながら、考査業務を着実に遂行していきます。

(副会長)  3点目の「モニターの活用」について、リポートのメール化を進めているということですが、電子メールを使えない高齢者などに対して、それを理由に番組モニターから排除するということはありませんね。
(考査室)  全くありません。
(大西理事)  「放送考査、考査結果の周知」で、必要に応じてより多角的・集中的な放送考査も実施するということですが、具体的にはどういうことを行うのですか。
(考査室)

 2月24日の理事会で考査報告を行った際、会長から、意見や主張が対立するテーマについては、一定の期間内で関連するニュースや番組を総合的に考査することで、公平公正が保たれているかを報告することも考えてほしいという意見がありました。現在でも、例えばニュースの考査では、1つのニュース項目について関係する報道を考査し、一週間ごとに報告するようにしていますが、今後は従来にもまして、その時々で注目されている特定のテーマについて、一定期間内に多角的に行う考査を、必要に応じて実施していきたいと考えています。
 集中的ということについては、例えば今年度は、21年度の定時番組を目指して企画・開発された番組が数多く放送されましたが、そうしたさまざまなトライアル番組について、現場と情報を交換しながらできる限り考査してきました。こうした特定の番組群に対する考査などを集中的に実施していきます。


(2)経営計画に基づく「放送局のちから」の公表について
(総合企画室) 
 「平成21〜23年度NHK経営計画」の経営方針4「地域を元気にするための拠点となります。」に基づき、全国の放送局が、地域再生の拠点の役割を果たすために、どのように地域に貢献し存在感を高めていくか、平成21年度に重点的に取り組む目標として、「放送局のちから」を策定しました。その内容を取りまとめ、視聴者のみなさまに公表します。
 策定にあたって各放送局では、局長のリーダーシップのもと、組織横断的な検討委員会やプロジェクトを設けたり、職員から直接意見聴取を行ったりするなど、職員の積極的な参加により、全局的な体制で取り組みました。さらに、「放送局のちから」として掲げた目標を確実に実現していくために、放送、技術、営業、編成などの各部ごとに、より具体的な目標と具体施策の計画を立て、今後、実行に移していきます。
 全国の放送局は、一貫した目標管理・方針管理の考え方に基づき、自ら掲げた「放送局のちから」を発揮することを通じて、「NHK経営計画」の経営2目標・経営9方針の実現に努めます。そして、四半期ごとに自ら目標の達成状況を検証して改善に取り組み、PDCAサイクルを回していきます。
 こうした「放送局のちから」は、各放送局が独自に策定することを約束していたものであることから、全国分をまとめて公開ホームページで公表します。また、それぞれの放送局でも、地域のみなさまへの約束として、自局分をそれぞれのホームページや印刷物などで独自に公表していきます。


(3)関連団体の事業運営状況について
(総合企画室)
 関連団体の事業運営状況について、概要を報告します。
 まず、平成20年度の関連団体の決算見込みについてです。
 NHKが直接出資する子会社15社の全般的な傾向としては、増収減益が基調となっています。15社の売上高の単純合計は2,322億円を見込んでおり、19年度に比べ137億円の増収となる見通しです。一方で、当期の利益合計は45億円で、19年度に比べて9千万円減少しています。ただし、各社とも年度末まで懸命な営業努力を続けており、最終的に若干の増収に転じる可能性も残されています。
 売上高のうち、NHKとの取引額は1,282億円で、19年度から153億円増加しています。一方、NHK以外との取引額は1,040億円で、158億円減っています。率にすると、NHKとの取引額が55.2%となり、前年度から3.5ポイントの増加です。NHKとの取引が増えたのは、18年度以来のNHKから子会社への業務のアウトソーシングや、大規模中継局の整備などデジタル放送関連業務の受注増によるものです。NHK以外との取引の減少については、民放等のスタジオのデジタル化整備が一段落し受注が減ったことや、大型イベントの開催がなかったことなどが要因となっています。
 21年度配当の見込みについては、配当総額は27.5億円、うちNHKの受取額は16.7億円となる見込みです。特例配当については、処分可能な利益剰余金のうち配当に充てることが可能な40億円を、21〜23年度の3か年で取り崩す計画にしています。
 孫会社、関連会社、関連公益法人については、(株)ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ(B−CAS)、(財)NHKサービスセンター、(学)日本放送協会学園が、最終赤字となる見込みです。
 続いて、21年度の事業計画についてです。
 直接出資子会社の売上高の単純合計は2,266億円で、20年度の決算見込みに比べて55億円の減収、利益は34億円で11億円の減益を見込んでいます。売上高のうちNHKとの取引額が1,251億円で、20年度に比べ30億円の減少、NHK以外との取引額は1,015億円で、24億円の減少を見込んでいます。NHKとの取引額の率は55.2%で、20年度と変わりません。NHKとの取引額の減少は、デジタル中継局整備の小規模化や大型委託番組の本数減が主な要因です。NHK以外との取引額の減少は、景気後退の影響や他社との競争激化の影響によります。
 平成20年度の最終的な決算については、5月に各社の取締役会等を経て、6月に理事会と経営委員会に報告する予定にしています。


(4)NOD業務の現状とサービス内容の充実について
(NHKオンデマンド室)
 昨年12月1日から開始したNHKオンデマンドの現状と今後のサービス内容の充実について報告します。
 まず、サービスの現状についてです。12月のサービス開始以来3月22日現在での、NHKオンデマンドのサイトへの訪問者数は延べ156万人、番組が見られた回数(ビデオビュー)は80万回です。オンデマンドサービスの開始により放送では見られなかったNHKの番組やニュースが数多く見られ、NHKへの接触が高まったと認識しています。特に、いつでも好きなときに楽しめる「見逃し番組」サービスへの高いニーズが確認できました。また、テレビ系(CATV等)で配信されたハイビジョン品質の映像に高い評価が得られました。
 配信実績については、「見逃し番組」は、12月から3月29日までに延べ1,698本(月平均425本)に上ります。「特選ライブラリー」は、12月1日の開始時には1,260本だったのが、3月末に1,740本となるまで増えました。週20本以上のペースで追加してきたことになります。
 販売動向については、パソコン系サービスの会員登録数が3月22日までで4万1千人となっています。ただ、各月の新規登録数を見ると、12月が1万6千人、1月が1万4千人、2月が6千人と減少傾向にあります。同様に月別のサイト訪問者は、12月が50万人、1月が45万人、2月が32万人、ビデオビューは、12月が21万回、1月が23万回、2月が20万回と、いずれも減少しています。しかし、この減少傾向は、3月には下旬のキャンペーン実施などにより歯止めがかかったものと見ています。テレビ系サービスでは、「見逃し見放題パック」「単品」「特選パック」の総販売数が2月末で4万件となっています。このように、会員数、売り上げとも厳しいスタートとなっており、視聴料収入は想定を下回る見通しです。一方で配信経費が視聴料収入のレベニューシェア(収入に応じた負担)となっていることから、事業支出も当初見込みから減少し、事業収支は、ほぼ当初計画どおりとなる見込みです。
 サービス実施に伴い、課題・問題点がいくつか明らかになってきました。ネットユーザーの多くは無料での動画視聴を当然視しており、番組の有料視聴への抵抗感が根強いこと、会員登録数は4万人を超えたものの番組を購入するのはその一部にとどまっていること、毎月定額料金で見逃し番組とニュース番組がすべて見放題となる「見逃し見放題パック」のお得感が利用者に伝わっていないこと、「特選ライブラリー」の豊富な番組を十分紹介できていないことなどです。サービス開始当初、古いパソコンでは動画再生が難しいこともあった点は、現在までにほぼ改善しました。
 課題への対策という意味でも、今後さまざまな点でサービス内容を充実させます。新年度から「見逃し番組」サービスの対象番組を96本から122本に拡大・充実するとともに、その視聴期間を、利用者の要望に応えて7日間から10日間に延長します。料金では、「特選ライブラリー」の一部のドラマについて初回の視聴を無料にするほか、新年度の若者向け番組の一部については価格を210円と廉価に抑えます。TV系の配信業者2社では、4月から「見逃しパック」の加入月無料を実施します。利用者拡大に向けては、大手通信事業者系のCATVで8月からサービスを開始します。また、放送番組の末尾で「この番組はNHKオンデマンドでもご覧いただけます」という告知を試行できないか検討しているほか、家電量販店などで販促活動を実施したいと考えています。


(5)「IT統制委員会規程」の一部字句修正について
(八幡理事)
 3月17日の理事会で、一部字句を修正することとして決定した「IT統制委員会規程」について、修正する内容を次のとおりとしましたので、報告します。
 修正するのは、ITの定義を規定した第3条です。
 当初は、対象となるハードウェアについて「協会の放送の制作・送出に係る設備・映像機器等は含まない」としていましたが、この文言では、TOPICS(放送番組のスケジュール管理から保存管理のほか番組制作・送出用のスタジオや設備機材の割り当てを行い、番組送出情報を提供する番組技術システム)等のシステムがこの規程の対象に含まれないように読み取れるとの指摘を受け、「設備・映像機器等」という個所を「映像・音声機器等」と修正します。


(6)放送技術審議会委員の委嘱、退任について
(永井理事)
 放送技術審議会委員の委嘱について報告します。
 伊東晋氏(東京理科大学理工学部電気電子情報工学科教授)、畑文雄氏(早稲田大学理工学術院教授)に4月1日付で、野原佐和子氏(株式会社イプシ・マーケティング研究所代表取締役社長)に5月1日付で、新規委嘱します。
 また、白井克彦氏(早稲田大学総長)、原島博氏(東京大学大学院情報学環教授)は3月31日付、内永ゆか子氏((株)ベネッセコーポレーション取締役副会長、ベルリッツインターナショナルインク会長兼社長兼CEO)は4月30日付で、任期満了により退任されます。



以上で付議事項を終了した。
上記のとおり確認した。
      平成21年 4月 7日
                     会 長  福 地 茂 雄

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