日本放送協会 理事会議事録  (平成21年 2月24日開催分)
平成21年 3月13日(金)公表

<会 議 の 名 称>
 理 事 会

<会  議  日  時>
 平成21年 2月24日(火) 午前9時00分〜9時35分

<出   席   者>
 福地会長、今井副会長、金田専務理事、日向理事、溝口理事、
 八幡理事、永井理事、大西理事、関根理事、今井理事

 井原監査委員

<場         所>
 放送センター 役員会議室

<議        事>
 福地会長が開会を宣言し、議事に入った。

付議事項
1 審議事項
(1)就業規則の一部改正について

2 報告事項
(1)考査報告
(2)契約・収納活動の状況(平成21年1月末)

議事経過

1 審議事項
(1)就業規則の一部改正について
(人事総務局)
 業務の見直し・改善のため、就業規則を一部改正したいので、審議をお願いします。おもな改正点は3点あります。
 1点目は、採用関連手続きの見直しです。
 新規に採用した職員と取り交わす労働契約書について、試用期間を経た後、正式に職員として採用する時に手続きを行ってきましたが、今後はNHKとの雇用関係をより明確化するため、手続きの時期を職員見習の採用時に変更します。あわせて、労働契約書の内容を見直し、見習い期間等を明示するとともに、契約書では詳細に記載することが難しい、労働の場所や期間等の条件を、別紙の労働条件通知書によって通知することとします。
 また、採用時に提出を求めていた身元保証書は、国家公務員の採用でも現在は提出を求めておらず、これまで実際に保証人に賠償を求めた事例もありませんので、廃止します。さらに、試用期間について、就業規則の本則上に「6か月」と明記することとします。
 2点目は、産前産後休暇等の付与要件の緩和です。
 産前産後休暇・母性保護休暇等の付与を受けるためには、医師・助産師による妊娠診断書か妊娠証明書の提出を必要としてきました。しかし、診断書や証明書を取得するには手間や費用がかかりますので、職員の負担軽減のため、出産予定日の記載がある母子手帳の提示によっても付与を認めることとします。
 3点目は、車両の業務上使用における運転適格者の認定基準の見直しです。
 業務のために業務用車両やマイカー、レンタカーを運転するには、運転適格者の認定を受けることを必要としています。認定基準について、これまでは「3年以上の運転経験を有し、一定水準の運転技術を有すると認められる者」をその一つとしてきましたが、運転経験が3年未満でも、所定の運転技能講習を受講し技能が認められれば、この基準を満たすこととします。また、報道室勤務者においても、安全運転を徹底するため、同様の運転適格者認定基準を適用することとします。
 そのほかにも、一部の字句の修正を行います。
 改正実施日は平成21年4月1日ほかとします。
 以上の改正については、理事会の決定後、労働基準監督署に届け出ることにしています。  

(大西理事)  運転適格者の認定基準についてですが、これまで3年以上の運転経験がなければ認めなかったものを、運転技能講習を受講すれば運転経験が3年未満であっても認めるようにするということですね。
(人事総務局)  はい。3年を超えると事故発生率が極端に減少するというような統計があるわけではないので、講習受講により運転技能が認められれば柔軟に対応しようということです。
(大西理事)  逆に、3年以上の運転経験があるにもかかわらず、運転適格者と認定されない場合も出てくるのでしょうか。
(人事総務局)  現在の、「3年以上の運転経験」という基準も残ります。ただし、現在でも認定にあたっては、単に運転年数だけでなく、上司が本人の運転技能や事故歴等も考慮して可否を判断することにしています。また、実際に運転する都度、上司の許可が必要です。上司は、本人の健康状態、体調や前日の勤務時間等を考慮したうえで許可することにしています。
(会 長)  原案どおり決定します。

2 報告事項
(1)考査報告
(考査室) 
 今年1月から2月中旬にかけて放送したニュースと番組について報告します。
 まず、ニュースについてです。
 2月16日(月)、内閣府が発表した去年10〜12月のGDP(国内総生産)伸び率の速報値が、年率換算でマイナス12.7%と、石油危機直後だった昭和49年以来の2けたマイナスになりました。これに関する一連のニュースでは、経済が石油危機当時より深刻な状況にあることを、記者の報告や専門家へのインタビューに加え、業績が悪化している企業の“城下町”と言われる各地の様子を紹介するなど、多角的に伝えていたことを評価します。
 麻生首相が、「自分は郵政民営化に賛成ではなかった」などと発言したことに対して、2月12日(木)、小泉元首相が「怒るというより笑っちゃうくらい、ただただあきれる」と激しく批判したことを伝えたニュースでは、小泉元首相の発言により政界に波紋が広がった様子や、与野党幹部・議員たちの反響を丁寧にバランスよく紹介し、政界や自民党内の動きを視聴者にわかりやすく伝えていたと思います。
 1月22日(木)〜27日(火)の期間、アメリカのオバマ新大統領が就任翌日から本格始動している動きを伝えたニュースを考査しました。オバマ新政権が、経済や外交でブッシュ前政権とは異なる新政策を矢継ぎ早に打ち出していることを、就任演説を引用して解説しながら、きちんと報道していたと思います。
 2月10日(火)、大分市のコンサルタント会社社長が、キャノンの工場建設をめぐって大手ゼネコンの鹿島などから受け取った裏金や仲介手数料の所得を隠し、2億9千万円の法人税を脱税した疑いで、東京地検に逮捕されました。逮捕について「NHKニュース7」の中で一報を伝えるとともに、「ニュースウォッチ9」で、この社長が、キャノン会長との親密な関係を背景に業者選定などに影響力を行使していたことを解説していました。考査室では、地元業者の証言など摘発前から独自に取材を重ねてきたことが、報道に厚みを増していたと評価します。
 続いて、いくつかの番組について、報告します。
 2月2日(月)放送の、NHKスペシャル「アメリカ発 世界自動車危機」では、アメリカの大手自動車会社ゼネラル・モーターズ(GM)の売り上げを支えていた“自動車版サブプライムローン”の破たんによって、GMが経営危機に陥った経緯や、子会社の生き残りをかけた戦いの様子を、章立てしながらつづる構成で、わかりやすく整理して伝えていました。考査室としては、GM関係者へのインタビューを通して、“自動車バブル”の実態を詳しく伝えた点、生き残りをかけて奮闘する部品会社やビジネスチャンスを狙う投資家の姿を交え、自動車業界の新たなうねりも描き出していた点を評価します。モニターからも、「住宅ローンの証券化から発した金融危機と同じ構造であることがわかった」「支払い能力のない人に高額なローンを組んでいた事実に驚いた」という声が寄せられました。
 日本の、これから「雇用危機」(2月7日(土)放送)では、現在の雇用危機をどう乗り切るかについて、関連の「NHKスペシャル」を編成した後の生放送で、2時間にわたって討論していました。有識者に加えて当事者の“生”の声を数多く紹介することで現状をよく伝えており、雇用危機を考えるうえで有効な材料を提供する討論だったと思います。ただ、論点を明らかにするため二者択一で議論していましたが、一方で議論を深めていく点では課題が残ったように感じられました。モニターの声でも、「中身が濃かった。視聴者は参加者の誰かに自分を投影したのでは」と好評の一方で「重要な問題だけにもう少し絞り込んだ範囲で議論してほしかった」という意見もありました。
 2月9日(月)放送の、NHKスペシャル「職業“詐欺”〜増殖する若者犯罪グループ」について考査しました。若い犯罪者たちを4か月間にわたって追いかけ実像に迫った内容ですが、こうした番組では、取材対象との“距離”について配慮することが必要です。この視点に立って、事前考査も含め精査を重ねましたが、取材相手の発言に「それは犯罪ですよね」と問いかけるなど、適切な配慮によりギリギリの距離を保ちながら、犯罪者に肉薄していたと思います。それにより犯罪者たちの声を通して、ゆがんだ価値観や倫理観が若者の間に広まっている社会状況を生々しく伝えていたと評価します。モニター報告でも、「犯人グループに迫り動機や手口など実態を明らかにした秀逸な番組」「若者の罪の意識の希薄さ、身勝手さがよくわかった」「細かく役割分担され、お金を給料、詐欺を仕事と呼ぶことに驚くばかり」と評価されていました。
 1月19日(月)に教育テレビで放送した、福祉ネットワーク「シリーズ 介護保険は“老後”を支えているか」の第1回「新宿・大都市の団地からの報告」では、新宿にある団地で行ったアンケートを通して、10年目となる介護保険法の問題点を探っていました。対象となった団地では、世帯のおよそ半数が独り暮らしの高齢者ということでした。番組を通じて、介護保険法の改正で自己負担が増えたり、介護サービスが減らされたりする実情がよく理解できました。独り暮らしの高齢者が孤立し支援が必要な状況や、介護支援が浸透していない実態を浮き彫りにして、現状の問題点をきちんと伝えていたと評価します。モニターからは、「高齢者の多い団地でアンケートし現状を把握しようとしたのはよい試み」「介護保険の不合理性を感じた。もっと福祉制度を見直さねば」などの声が寄せられました。
 衛星第1で1月25日(日)に放送した、BS世界のドキュメンタリー「大洪水に襲われた村〜ミャンマー・デルタ地帯」では、13万人の犠牲者を出したミャンマーのサイクロン災害の被災地を、海外メディアとして初めて取材した番組でした。報道されなかった被害の実態や再建へ向けて歩みだした人々の様子、また、大災害が子どもたちの心に残した深い傷あとなどを、克明に伝えたことを評価します。モニターからも、「こんな悲惨な状況だとは。大洪水の被害者が頑張る姿に胸を打たれた」「軍事政権下でわからなかった現状を伝えたのはよかった」などの声が寄せられました。

(会 長)

 公共放送NHKにおいて考査はきわめて重要です。その点、個別のニュースや番組に対する考査はしっかりとなされていると思います。今日の報告で言えば、NHKスペシャル「職業“詐欺”〜増殖する若者犯罪グループ」について、取材対象との距離のとり方をポイントにして念入りに事前考査していたのがよかったと思いました。
 ただ、NHKが最も大事にしなければならない公共放送の根本の一つが不偏不党ですが、これは個別の番組だけを取り出してみても判断しにくいことがあります。考査にあたって、個々のニュースや番組を対象にするだけではなく、意見や主張が対立するテーマについては、一定の期間内で、関連するニュースや番組を合わせて考査することで、公平公正が保たれているかを報告することも考えてほしいと思います。そうすれば、「NHKは特定の主張ばかり取り上げているのではないか」という意見があっても、この報告によって客観的な根拠として説明できます。もう一つ付け加えると、ニュースでは、もちろん事実を正確に報道することに日々努めていますが、考査室が現場から独立した視点で考査することで、公共放送としての信頼性をいっそう補強してもらえばよいと思います。


(2)契約・収納活動の状況(平成21年1月末)
(営業局) 
 21年1月末の契約・収納活動の状況について報告します。
 まず、放送受信契約総数の増加状況についてです。第5期(12月・1月)は、訪問集金廃止に伴い委託契約収納員の業務を契約の取次業務にシフトしたことや、ホテル等の事業所に対し、同一敷地内の受信機すべてについて必要な受信契約を締結する場合に2台目以降の受信料を半額とする事業所割引を2月から開始することなどにより、期間での契約総数取次数が前年度の132%に増加しました。契約総数は、障害者に対する受信料免除の適用範囲を拡大したことにより、有料契約から全額免除への変更が2.1万件ありましたが、事業所契約の増加等もあり、期間で8.9万件、年度累計で22.5万件(年間目標に対する進捗率89.7%)の増加となりました。
 同様に、衛星契約取次数は、委託契約収納員の業務シフトや事業所割引の開始等により、期間での前年度比率が126%となり、また、衛星契約についても、有料契約から全額免除への変更が0.6万件あったものの、事業所契約が増加したことなどから、期間で12.3万件、年度累計で43.8万件(同97.4%)の増加となりました。
 次に、第5期の当年度収納額については、訪問集金廃止に伴い継続振込払いに変更となったお客様の払い込みの遅れや、障害者免除の適用範囲拡大による全額免除の増加等の影響により、1,056億円、前年度同期に比べ2.6億円の増にとどまりした。その結果、年度累計の当年度収納額は5,242億円となり、前年度同期に比べて55.5億円の増収となりました。なお、継続振込払いのお客様で、5期末までに振込がない方に対しては、訪問して支払いをお願いする活動を2月から実施しています。 
 第5期末の支払い拒否・保留数については、訪問集金廃止により支払い再開をお願いする活動にも業務をシフトしたことなどにより、51.8万件に減りました。最も多かった時期から76.2万件(約60%)減少しています。引き続き、支払いを再開していただけけるように努めてまいります。
 また、口座・クレジットカード継続払いについては、第5期は10.2万件の増加で、年度累計では85.0万件の増加になりました。



以上で付議事項を終了した。
上記のとおり確認した。
      平成21年 3月10日
                     会 長  福 地 茂 雄

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