日本放送協会 理事会議事録  (平成21年 2月10日開催分)
平成21年 2月27日(金)公表

<会 議 の 名 称>
 理 事 会

<会  議  日  時>
 平成21年 2月10日(火) 午前9時00分〜9時25分

<出   席   者>
 福地会長、今井副会長、金田専務理事、日向理事、溝口理事、
  八幡理事、永井理事、大西理事、関根理事、今井理事

<場         所>
 放送センター 役員会議室

<議        事>
 福地会長が開会を宣言し、議事に入った。

付議事項
1 審議事項
(1)平成21年度インターネットサービス基本計画について

2 報告事
(1)「日本人の意識」調査の結果について
(2)「平成21年度収支予算、事業計画及び資金計画」に付する総務
   大臣の意見及び「平成19年度業務報告書」に付する総務大臣の
   意見について

議事経過

1 審議事項
(1)平成21年度インターネットサービス基本計画について
(編成局)
 平成21年度のNHKの「インターネットサービス基本計画」を取りまとめましたので、審議をお願いします。この基本計画は、受信料を財源とする無料のインターネットサービスを対象としており、有料のNHKオンデマンドサービスは対象外です。受信料を財源とするインターネットサービスには、「既放送番組等を電気通信回線を通じて一般の利用に供すること」をNHKの業務範囲に定めた、放送法第9条第2項第2号に基づいて行うサービスと、同法第9条第1項等に基づく放送事業者としての本来業務を遂行するために行うサービスがあります。前者については、昨年11月に策定した「放送法第9条第2項第2号の業務の基準」に基づき実施します。
 平成21年度の基本計画の策定にあたっては、各部局から寄せられた500本余りの「インターネットコンテンツ提案」を基に、「平成21年度国内放送番組編集の基本方針」に準じる形で記述しており、サービス全体の方向性を示した「基本方針」、年度のポイントを示す「重点事項」、各メディアのサービスの「編集方針」の3段階の構成としています。
 今回の基本計画のポイントは、4点あります。1点目は、「平成21〜23年度 NHK経営計画」で掲げた、テレビ・パソコン・携帯端末などさまざまなメディアを通じてNHKの情報・コンテンツを見られる「3−Screens」時代のスタートを宣言し、インターネットサービスの取り組みを通じて、3か年の経営目標であるNHKへの接触者率80%を目指していきます。2点目は、百年に一度の経済危機が世界を覆い、環境問題が待ったなしの課題となるなどの現在の時代状況に即して、時代を生き抜くために視聴者が求める情報ニーズに応えるサービスを追求します。インターネットによって的確な情報をより早く、動画など、より“リッチ化した”サービスで提供します。3点目は、経営計画でうたう「いつでも、どこでも、もっと身近にNHK」の実現に向けて、放送・通信の連携をいっそう推進していきます。生活時間に応じた利用が可能なインターネットの特性を生かし、双方向サービスの強化や、地域からの情報発信、世界への情報発信に努めます。4点目は、サービスの展開にあたっては、法令および各種規程を順守し、適切な範囲で実施します。実施経費を年度終了後に公表するなど、透明性の確保にも努めます。
 以上のポイントに沿った基本方針のもとに、サービスの重点事項を定めました。1.「3−Screens」実現のためのサービス拡充と参加型コンテンツの充実、2.多彩で豊かなコンテンツの提供と社会還元、3.正確で迅速なニュースの提供と、安心・安全に暮らせるための情報の拡充、4.地球温暖化や自殺防止、防災など公共キャンペーンの展開、5.“デジタルメディアリテラシー”向上に資するサービスの開発・提供、6.地域に根ざした情報の積極的な提供と拡充、7.冬季オリンピックでの多彩なデジタルコンテンツの開発・提供、8.日本から世界への情報発信の拡充の8項目です。
 各サービスの編集方針については、第1部と第2部に分けて記述しています。
 第1部は、放送法第9条第2項第2号の業務として行う、各メディア向けサービスの編集方針を掲げています。
 パソコン等に向けては、動画を意識しながら、幅広いサービスを展開します。150年間にわたる日本の近現代史を改めて見つめなおす「プロジェクトJapan」などの大型企画と連動した、デジタルサービスならではの切り口によるサービス展開や、戦争を体験した人々の証言を動画を交えて集大成する「戦争証言アーカイブス」、英語ニュースを基に時事英語の学習をサポートする「ニュースで英会話」などの新しいサービスの開発を進めるとともに、より見やすくわかりやすくするために、ドラマなど番組ジャンル別や教育テレビ、衛星放送など放送波別のサブポータルサイトを充実させて、利便性の向上を図ります。スポーツ情報や教育・暮らしに関するコンテンツ、地域情報も積極的に発信していきます。
 携帯端末向けのサービスでは、視聴者との相互コミュニケーションをよりいっそう強化します。デイリーニュース、ニュース速報を開始し、ニュースや気象・災害情報を、モバイル端末に適した情報量で的確に、いち早く伝えます。また、投稿、投票、アンケートなど、視聴者が携帯端末で積極的に番組に参加できる演出により、新しい放送の楽しみ方を提案することで、視聴者層の拡大を目指します。地域放送局による携帯サイトも拡充し、地域からのきめ細やかな情報発信も推進します。
 デジタル放送連携サービスでは、視聴者がアンケートやクイズに参加できる双方向参加型サービスや、きめ細かい情報を伝えるサービスの積極的な実施により、デジタル放送受信機のインターネット接続率向上を図り、完全デジタル時代に向けて放送と通信の連携を推進します。ワンセグ独自放送では、放送・通信連携を強く意識したコンテンツを提供します。また、今年第60回を迎える「NHK紅白歌合戦」で、多くの視聴者が審査員として投票に参加できる仕組みなど多彩な企画を展開するのをはじめ、デジタルテレビのメリットを生かした双方向サービスを充実させます。
 各サービスの対象番組数については、パソコン向け、携帯端末向けは、定時番組、特集番組等を基本にそれぞれ700番組程度、デジタル放送連携サービスは、定時番組、特集番組のうちサービスにふさわしい80番組程度とします。いずれのコンテンツやサービスも、視聴者の大部分が接続しているインターネット環境や、保有しているモバイル端末、デジタルテレビ等で円滑に利用できる水準を確保します。
 第2部は、放送法第9条第1項、および第2項第5号(緊急情報・選挙情報・外国人向け情報)の業務として行うサービスの編集方針について述べています。
 NHKが番組制作、番組の周知・宣伝、経営広報、営業活動、職員採用等の業務に関連してインターネットサービスを行う場合は、それぞれの業務を効果的に実施するなどの目的に合致したコンテンツを制作・提供します。また、災害・危機管理情報その他の緊急情報など、国民の生命、財産にかかわる情報や、選挙の情報については積極的に伝えるほか、国際放送の強化に伴い、外国人向け情報(外国語によるものに限る)のインターネット提供も拡充します。そのほか、過去の映像アーカイブスを活用して子どもたちの創造活動を支援する取り組みや、“デジタルメディアリテラシー”の向上に資する取り組みなどを推進します。こうしたコンテンツやサービスの水準も、視聴者の大部分が接続しているインターネット環境や、保有しているモバイル端末等で円滑に利用できる水準を確保します。
 なお、同じ番組に関するコンテンツやサービスであっても、番組を放送する時点を分岐点に定め、それ以前の段階は番組の周知・宣伝や制作のためのツールとして放送法第9条第1項の業務と扱い、番組の放送後は同条第2項第2号の業務として、取扱いを明確に区分することとします。
 このインターネットサービス基本計画は、番組改定と合わせて今年3月30日から実施します。
 以上の内容が決定されれば、本日の第1088回経営委員会に報告事項として提出します。

(会 長)   原案どおり決定します。


2 報告事項
(1)「日本人の意識」調査の結果について
(放送文化研究所)
 「日本人の意識調査」は、放送文化研究所が1973年(昭和48年)から5年ごとに実施しており、日本人の考え方や価値観の変化をとらえるものとして、「国民生活時間調査」とともに社会的に評価され大学などでも活用されている調査です。
 今回の調査は、昨年6月28・29日の2日間にわたり全国16歳以上の国民5,400人を対象に、個別に面接する方法で実施しました。調査の有効率は57.5%で、前回2003年(平成15年)の調査より4%低くなっています。設問は全部で55問ありますが、その中から特徴的な傾向が見られたものについて報告します。
 まず、国民の投票行動やデモ・陳情・請願などの政治行動が国の政治に影響を及ぼしていると思うかという質問についてです。選挙での投票が、「非常に大きな影響を及ぼしている」、「かなり影響を及ぼしている」という回答を合わせた率が48%(前回41%)あり、過去7回の調査ではずっと下がり続けていたものが、今回初めて増加に転じました。デモや陳情・請願などの行動についても、これまで低下を続けてきた同様の回答が、今回は27%と、前回(23%)より増加しています。
 次に、支持政党についての質問では、過去2回の調査で5割を超えていた「支持政党なし」という回答が11%減少して46%と、今回は5割を切りました。また、「民主党を支持する」という回答が15%と、初めて2けたに上りました。
 続いて1993年(平成5年)から調査している、結婚に対する考え方についてです。「必ずしも結婚する必要はない」という回答が60%となり、「人は結婚するのが当たり前だ」という回答(35%)を大きく上回っています。「必ずしも結婚する必要はない」という回答を男女の年層別に見てみると、50〜54歳の層で男女が同率となったのを除き、どの年代でも女性が男性を上回っています。
 性の意識について、結婚していない若い人々の男女関係を認めるかを尋ねた質問では、1988年(昭和63年)までは、「結婚式がすむまでは、性的まじわりをすべきでない」という回答が最も多かったのですが、1993年以降は、「深く愛し合っている男女なら、性的まじわりがあってもよい」という回答が最も多くなっており、今回も44%と最多でした。この数字は過去10年間ほとんど変わっていません。
 女性が結婚しても仕事を続けることに関して、1993年までは、「結婚して子どもができるまでは、職業を持っていたほうがよい」という回答が最も多かったのですが、1998年(平成10年)からは、「結婚して子どもが生まれても、できるだけ職業を持ち続けたほうがよい」という「両立志向」の考え方が最も多くなり、今回も48%と最多でした。男女別に見ると、男女とも「両立志向」の回答が調査を重ねるごとに増えていますが、そのように回答した人の割合は、常に女性が男性を上回っています。
 家庭内での夫婦の理想的なあり方について、調査を開始した当初は、「父親は仕事に力を注ぎ、母親は任された家庭をしっかりと守っている」という「役割分担」をよしとする回答が最も多く、「父親はなにかと家庭のことにも気をつかい、母親も暖かい家庭づくりに専念している」という「家庭内協力」を挙げたのは21%しかありませんでしたが、しだいに「家庭内協力」を理想とする回答が増加して最も多くなり、今回は48%と半数近くに上りました。「役割分担」をはじめ、「夫唱婦随」や夫婦それぞれが自立することを選んだ回答に大きな差をつけています。
 続いて、仮に中学生の女の子どもがいたら、どの程度までの教育を受けさせたいかという問いについてです。今回、「大学まで」という回答が52%と、初めて5割を超えました。女の子に対しても高学歴志向が進んでいます。なお、男の子について尋ねた場合は、「大学まで」という回答が毎回70%前後で、大きな変化はありません。
 日本人としての自国への意識についてです。「日本人は、他の国民に比べて、きわめてすぐれた素質をもっている」と回答した人は57%(前回51%)、「日本は一流国だ」と回答した人は39%(前回36%)といずれも増えており、日本に対する自信が回復していると見て取れます。また、「日本に生まれてよかった」という人はこれまでも9割以上いましたが、今回も96%あり、「日本の古い寺や民家をみると非常に親しみを感じる」(87%)、「自分なりに日本のために役に立ちたい」(70%)などの回答と合わせて、日本への愛着心を持つ人が多いことを示しています。
 天皇に対する感情についてです。平成になってから最初の調査(1993年)で天皇に対して「好感をもっている」という人が急増して以来、「特に何とも感じていない」という「無感情」の回答と「好感」の回答が増減しながら1位と2位を交代してきました。今回は「無感情」が39%(前回36%)で最も多く、「好感」は34%(前回41%)となっています。今回の特徴として、「尊敬の念をもっている」という回答が、前回の20%から25%に増えています。
 生活面について、仮に生活費1か月程度の臨時収入があった場合の使い道を質問した調査では、低下していた「貯金しておく」という回答が再び増えて43%(前回40%)と、「何に使うか計画をたてて、その費用にあてる」の44%(前回46%)とほとんど並びました。この貯蓄志向について年層別に見ると、前回の調査では、高年層で高く若年層では低かったのが、今回は10〜20代でいずれも前回の数字を大きく上回っており、若い世代の堅実志向が顕著に現れていると言えます。
 最後に、日々の生活で何を重視しているかについてです。「身近な人たちと、なごやかな毎日を送る(愛志向)」という回答が過去の調査でも最も多い45%に上っており、若い世代を中心に「愛志向」の人が増えていることがうかがえます。
 今回の調査の結果については、2月13日に部外発表するとともに、NHKのホームページでもその要約を公開します。また、3月11・12日に千代田放送会館で開催する、放送文化研究所の春の研究発表でもこの調査について報告します。


(2)「平成21年度収支予算、事業計画及び資金計画」に付する総務
   大臣の意見及び「平成19年度業務報告書」に付する総務大臣の
   意見について
(総合企画室)
 NHKの「平成21年度収支予算、事業計画及び資金計画」については、これに付する総務大臣の意見が、2月4日の電波監理審議会への諮問・答申を経て取りまとめられ、意見が付されたうえで、2月6日の閣議を経て国会に提出されました。また、昨年5月に総務大臣に提出したNHKの「平成19年度業務報告書」も、これに付する総務大臣の意見が付されたうえで、同日の閣議を経て国会に報告されました。なお、「平成19年度財産目録、貸借対照表及び損益計算書」についても、会計検査院の検査および同日の閣議を経て、国会に提出されています。それぞれに付された総務大臣の意見の内容について報告します。(文中の「協会」は、NHKを指す。)
 まず、「平成21年度収支予算、事業計画及び資金計画」に付された意見についてです。
 意見では、「『平成21〜23年度 NHK経営計画』の初年度として、経営計画で掲げた経営9方針に従い、視聴者の信頼を高めるため組織風土改革、信頼される多様で質の高い放送、受信料の公平負担に向けた取組の強化、円滑な完全デジタル化等の取組を確実に進めるとともに、経営資源を多様で質の高いコンテンツの提供、報道体制の強化、多メディアへの展開等に重点配分しつつ、経費を圧縮し効率化を進めることとしており、これを着実に遂行すべきものと認める」としています。あわせて、「組織を挙げてコンプライアンスの確立に取り組んできたにもかかわらず、職員による不祥事はなお後を絶たず、協会においては、国民・視聴者からの信頼回復に向けて一層改革を進めていくことが必要である」、また、「依然として受信料を支払うべき者の約3割近くが不払いや未契約となっていることを真しに受け止め、受信料の公平負担の徹底に向けて全力で取り組むことが必要である」と述べています。
 さらに、収支予算等の実施にあたって特に配意すべき点として、7項目を挙げています。前年度は10項目ありましたので、項目数は減っています。
 第1の項目は、「経営改革の推進」です。「経営委員会と執行部が緊密に連携しつつ、それぞれの役割を全うすることにより、改革の果実が国民・視聴者に適切に還元されるよう、組織一体となって改革の実現に全力で取り組むこと」としたうえで、職員によるインサイダー取引や経費の不正支出の発覚を受けて、「コンプライアンスの確立に向けた協会のこれまでの取組が十分でなかったことを改めて示すものであり、組織風土改革に徹底して取り組むとともに、公共放送に携わる者としての職員の高い倫理意識の確立に努めること」などとしています。
 第2の項目は、「受信料の公平負担の徹底」です。「未収対策業務の強化や民事手続きによる支払督促、事業所割引や業界団体による取りまとめの活用等の各種施策を推進し、受信料の公平負担の徹底に向けて全力で取り組むこと」などとしています。
 第3の項目は、「業務の合理化」です。「一層質の高い放送・サービスを、より効率的・効果的な体制で実施するため、業務全般について抜本的な見直しを行い、業務の合理化・効率化を徹底すること」とあわせて、「任意に保有する子会社等について、更なる整理・統合計画の検討を進めるとともに、競争契約を一層推進し、また、財務状況に応じた適切な配当の実施を求める等、子会社等の事業運営の透明性、健全性の向上に努めること」などとしています。
 第4の項目は、「地上テレビジョン放送のデジタル化」についてです。「平成23年7月のデジタル放送への完全移行に向けた対応に万全を期するため、中継局整備や協会が保有する共同受信施設のデジタル化を可能な限り前倒しをして取り組むとともに、デジタル化により電波が届かなくなる地域への対策等の受信環境の整備に関して公共放送としての役割を十二分に果たすこと」、また、「デジタル放送の魅力を国民に十分に認識いただけるよう、データ放送の活用やマルチ編成等のデジタル放送の特長を活かした番組制作にこれまで以上に、また、他の放送事業者に率先して取り組むこと」などとしています。
 このほか、「放送番組の充実」、「国際放送の充実」、「番組アーカイブの活用」の3項目が、特に配意すべき点として挙げられています。
 次に、「平成19年度業務報告書」に付された意見についてです。
 意見では、「コンプライアンスの確立に向けたこれまでの取組が十分でなかったことを重く受け止め、国民・視聴者からの信頼回復に向けた改革にこれまで以上に徹底して取り組む必要がある」、また、「受信料の公平負担の徹底に向けて引き続き全力で取り組む必要がある」としながらも、「豊かで質の高い放送番組の充実、災害・緊急報道体制の強化、地上デジタル放送の推進等の取組については、おおむね所期の成果を収めたものと認める」と述べています。
 その上で、19年度および今後の業務について特記すべき事項として、「コンプライアンスの徹底」、「経営改革の推進」、「受信料の公平負担の確保」、「業務の合理化等」、「情報公開」、「地上テレビジョン放送のデジタル化」、「国際放送の充実」、「放送番組の充実」、「災害対策」、「字幕放送」の10項目が取り上げられています。



以上で付議事項を終了した。
上記のとおり確認した。
      平成21年 2月24日
                     会 長  福 地 茂 雄

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