日本放送協会 理事会議事録  (平成20年 7月28日開催分)
平成20年 9月 5日(金)公表

<会 議 の 名 称>
 理 事 会

<会  議  日  時>
 平成20年 7月28日(月) 午後4時00分〜4時55分

<出   席   者>
 福地会長、今井副会長、金田専務理事、日向理事、溝口理事、
 八幡理事、永井理事、後藤理事、大西理事、関根理事、今井理事

 多賀谷監査委員

<場         所>
 放送センター 役員会議室

<議        事>
 福地会長が開会を宣言し、議事に入った。

付議事項

1 審議事項
(1)第1075回および第1076回経営委員会付議事項について
(2)視聴者対応報告(平成20年6月)について

2 報告事項
(1)20年6月の視聴者満足(CS)向上活動報告
(2)監査結果報告
(3)考査報告
(4)地上デジタル放送の衛星利用による難視対策のための制度変更に
   対する意見の提出について
(5)放送番組審議会議事録(資料)

議事経過
1 審議事項
(1)第1075回および第1076回経営委員会付議事項について
(総合企画室)
 8月19日(火)に開催される第1075回経営委員会および26日(火)に開催される第1076回経営委員会の付議事項について審議をお願いします。
 第1075回の付議事項は、審議事項として「次期経営計画について」です。議決事項、報告事項はありません。また、第1076回の付議事項は、審議事項として「次期経営計画について」、報告事項として「地方放送番組審議会委員の委嘱と任期途中の退任について」と「視聴者対応報告(平成20年6月)について」です。

(会 長) 原案どおり決定します。


(2)視聴者対応報告(平成20年6月分)について
(視聴者サービス局)
 改正放送法第12条に定める視聴者対応の状況について、平成20年6月分をとりまとめました。ついては、放送法第22条の2第3項の規定に基づき、経営委員会に報告したいので、審議をお願いします。
 6月にいただいたご意見・お問い合わせは396,090件でした。その内訳は、4月、5月と大きくは変わっていません。苦情や要望を含めた意見の総数は75,212件で、うち90%は意見を受け付けた一次窓口で対応を完了し、残りの10%は該当部局へ転送・回付して業務実施現場で二次対応しました。
 放送番組に関して寄せられた意見・要望・問い合わせについて、特に好評な意見が集中した番組は、太王四神記スペシャル「ペ・ヨンジュンが語る撮影秘話」(6月21日放送)で、1,321件の好評意見が寄せられました。また、「ためしてガッテン」が引き続き好評で、毎回600件前後の好評意見が寄せられました。
 一方、「NHK職員 株取引問題〜第三者委員会調査報告を受けて〜」(6月16日放送)について、324件の厳しい意見がありました。また、6月14日(土)の岩手・宮城内陸地震報道に伴う番組変更や、6月21日(土)のプロ野球中継延伸による番組変更に対して、苦情や問い合わせが集中しました。プロ野球中継の延伸で放送時間が変更となった土曜ドラマ 監査法人(2)「800億円の裏帳簿」(6月21日放送)については、急きょ6月28日(日)午後に再放送を行い、メールで問い合わせをいただいた視聴者254人にメールを送信して、再放送日時を周知しました。
 次に具体的な対応事例について、いくつか報告します。
 「『NHKスペシャル』のホームページに、再放送の予定が『6月18日(水)深夜【木曜午前】0時55分〜1時44分』と記載されていたが、6月19日の放送とはわからず録画に失敗した」という苦情がありました。NHKでは番組編成上は放送時間をすべて暦日で表記することにしており、そのルールに従えば、今回の場合「6月19日(木)午前0時55分〜1時44分」と表記することになります。しかし、午前0時を越えた深夜の時間帯は暦日表記では放送時間をイメージしづらいことから、各番組のホームページでは、上記の例のほか、「午前0時10分」を「24時10分」と表示するなど、視聴者にとってよりわかりやすい表記を工夫しています。それでも依然として「録画に失敗した」などの声が寄せられていることから、さらなる改善に向けて視聴者満足(CS)向上委員会等の場で議論を進めることとしました。
 「『ウィンブルドンテニス』は、これまで衛星放送で生中継していたのに、今年は総合テレビのみの放送で、しかもほとんどが深夜の録画放送になってしまった。従来のように生中継で長時間放送してほしい」という要望に対しては、放送権交渉の結果、今年からNHKは地上波だけの放送となったこと、またウィンブルドンテニスは現地の天候等により試合時間が大きく変動することが多く、他の番組への影響を避けながら多くの試合結果を伝えられる方法として深夜の録画放送を選択したこと、そうした中でも決勝戦は生中継で伝えるほか、日本人選手の試合や注目選手の試合結果はきちんと伝えていくことを説明して、理解をいただきました。
 受信料関係の意見や問い合わせは196,343件ありました。そのうち契約や収納を委託している地域スタッフの態度や説明の仕方に対する意見が1,000件以上ありました。
 経営全般に対する意見や要望は、合わせて1,057件ありました。
 5月27日(火)に公表されたNHK職員の株取引問題に関する「第三者委員会報告」および6月16日(月)に放送した「NHK職員 株取引問題〜第三者委員会報告を受けて〜」に関連し、たいへん厳しい意見が691件寄せられました。また、長野放送局の記者による記事盗用事件に関し、「あまりにも不祥事が多すぎる」「処分が甘い」などの厳しい意見が56件寄せられました。環境問題に関しても、「NHKが率先して深夜放送をやめるべきだ」「視聴者にエコを訴える前にNHK自身がどんな省エネ対策をとっているのかを説明すべきだ」など、NHKの取り組みを問う意見が増えています。
 視聴者対応報告に合わせて、参考として地上デジタル放送に関する問い合わせと周知展開等について説明します。
 地上デジタル放送については、NHKの放送番組の受信に関する相談はNHK視聴者コールセンターが、地上デジタル放送全般に関する問い合わせは総務省地上デジタル放送受信センターが窓口となっています。6月にNHKにいただいた問い合わせ・相談の受付件数は8,562件でした。そのうち多かった内容は、「地デジのアンテナを設置したがデジタル総合だけ映らない」などの受信設備不良に関する相談が3,712件、「自分の住んでいる地域の地デジ開局はいつか、中継局はどこか」など技術相談等が3,477件でした。
 なお、7月24日(木)がアナログ停波の3年前にあたることから、アナログ放送終了の周知に向けて、同日からアナログ総合・教育の画面右上に「アナログ」ロゴマークを常時スーパーするとともに、その告知と関連問合せ先の周知を兼ねた1分スポットを7月14日(月)から放送しています。また7月29日(火)から「ご覧のチャンネルは2011年7月24日で停波します。お問い合わせは以下の番号に」という内容を、早朝に放送します。
 以上の報告内容が決定されれば、8月26日(火)の第1076回経営委員会に報告事項として提出します。

(会 長)  原案どおり決定します。


2 報告事項
(1)20年6月の視聴者満足(CS)向上活動報告
(視聴者サービス局)
 20年6月の視聴者満足(CS)向上活動について報告します。今回は地域放送局の取り組みを中心にとりまとめました。
 まず、沖縄放送局では、6月23日(月)の「沖縄全戦没者追悼式」を全国放送で中継しました。これまでは、昭和60年から沖縄県域で、戦後60年にあたる平成17年から九州・沖縄ブロックで放送してきましたが、沖縄放送局から「全国放送の実現は沖縄県民の悲願」との提案があり、今年から総合・衛星第2・ラジオ第1で全国放送することにしたものです。県民の声に応えたことに対し、沖縄県知事や各界各層の方々から多くの感謝の声が寄せられるなど高い評価をいただきました。
 営業地域スタッフのマナーアップに向けて、広島放送局では、今年3月に新規契約をいただいたお客様を対象にアンケートを実施しました。その結果、「良かった」とされた地域スタッフは「さわやか」「清潔感がある」「礼儀正しい」「ゆっくり丁寧な話し方をする」といった点が評価され、逆に「良くなかった」のは、「髪がボサボサ」「不潔そう」「早口で一方的」「声が小さい」という地域スタッフでした。広島放送局では、お客様からのクレームや要望を当該スタッフに伝えて注意喚起するとともに、集約した結果を中国地方の全職員・スタッフに周知しました。今後もアンケートの内容を改善して営業地域スタッフのマナー向上にさらに取り組んでいきます。
 津放送局では、地域の課題となっている高齢者の孤独死の予防に協力しました。津市内の団地で起きた高齢女性の孤独死をきっかけに、予防策を検討する地元自治会が協力を要請してきたことから、孤独死を取り上げた「NHKスペシャル」や「難問解決!ご近所の底力」の上映会を実施しました。自治会役員や地区の民生委員、市議会議員など30人が参加し、番組に地域の課題を重ね合わせて「今、自分たちの町に何が必要か」の視点から活発な議論が交わされました。地元福祉協議会会長からは、「地域住民と福祉関係者が問題を共有し、地域で支えあうことの重要性・可能性をともに学びあえる会でした」との感謝の言葉をいただきました。
 佐賀放送局では、7月5日(土)・6日(日)に三瀬村で、環境問題をテーマにした野外音楽イベント「三瀬プラネットジャム」を開催。ライブや展示ブースを通じて地球環境の大切さを訴えました。このイベントでは、会場で使用するすべての電力を、県内の企業や家庭で発電された太陽光電力を県が買い上げた「佐賀県産グリーン電力」でまかなったほか、来場者を112台のシャトルバスで輸送してマイカーのCO2排出を抑制する「マイカーゼロ作戦」を展開するなどして、運営もエコに徹しました。また、使用済み携帯電話に含まれる希少金属を回収再生することで、産地であるアフリカ・コンゴ民主共和国の乱採掘を防ぎ、絶滅危惧種であるマウンテンゴリラの生息地を保護する「ケータイゴリラ」の取り組みも実施し、343台の使わなくなった携帯電話が持ち込まれました。
 ワンセグローカルデータ放送の「災害情報コンテンツ」のサービスを6月24日(火)から全国で開始しましたが、仙台放送局と盛岡放送局では、6月14日(土)の岩手・宮城内陸地震の発生を受けて、当時運用テスト中だった同コンテンツのサービスを、予定を繰り上げて実施しました。
 視聴者満足の向上をめざした改善の実施状況は、6月末現在269件で、昨年同期より91件増えています。また、ふれあいミーティングは6月に全国で155回実施し、3,606人が参加しました。公募によるふれあいミーティングとして6月は環境問題をテーマに実施し、全国から各年代にわたって熱心な視聴者が参加しました。
 緊急地震速報に対する視聴者の声について報告します。反響の半数は問い合わせで、「テレビやラジオの電源が入っていなくても受信できるのか、自動的に電源は入るのか」「緊急警報放送とどう違うのか」「地震が起こった地域だけに速報するのではないのか」「デジタル放送はアナログ放送より数秒遅れるが、この時差は問題にならないのか」といった内容でした。
 最後に、土曜ドラマ「監査法人」に対して、たいへん大きな反響があった「ハゲタカ」に迫る件数の反響が寄せられています。「ハゲタカ」と比較した場合、特に60代男性からの好評意見が多いのが目立ちます。


(2)監査結果報告
(内部監査室)
 東北地方各放送局の監査結果の概要について報告します。監査は6月中旬に実施しました。岩手・宮城内陸地震が発生した直後でしたが、災害報道に取り組みながら監査に対して積極的な協力がありました。
 まず、仙台放送局についてです。
 岩手・宮城内陸地震に際し、迅速・的確な報道に努めました。災害情報や被災地の生活情報について、逆L字スーパーを活用して24時間態勢で伝えました。また、地上デジタルのデータ放送で地元プロスポーツチームの最新情報を強化し、プロ野球・東北楽天ゴールデンイーグルスの試合経過の随時速報を開始しました。
 次に、秋田放送局についてです。
 今年3月に新しい放送会館がオープンしました。4月の1か月間に1万人が来館し、早くも昨年度年間の総来館者数に達しました。また、比内地鶏偽装事件や児童連続殺害事件などの報道に的確に対応しました。
 山形放送局では、山形弁による地域トーク番組「今夜はなまらナイト」に大きな反響が寄せられ、「地元方言が地域を元気づける」と好評を得ています。また、ネットトライアル局としてインターネットとの連動に取り組み、ホームページ掲示板への投稿をすばやく画面表示する装置を開発しました。
 盛岡放送局では、岩手・宮城内陸地震への対応に局の総力をあげています。今年5月に地震を想定した災害対策訓練を実施しており、日ごろからの備えを実際の報道に生かしています。また、企画総務グループと編成事業グループの職員を一体運用し、放送部と技術部の間に席を配置して、効率的・機能的に業務を運営しています。
 福島放送局では、夕方6時台の地域番組「はまなかあいづToday」の昨年度の年間平均視聴率が12.9%で、地元で3年連続トップに立っています。また、番組公開ライブラリーを土・日・祝日にも開館し、19年度の利用者が1万人を超えました。
 青森放送局では、脱北者の不法入国や陸奥湾でのホタテ漁船沈没など緊急報道が頻発しており、これに的確に対応しています。また、夕方の地域情報番組のコーナーとして親しまれてきた「お国ことばで川柳」を、今年度は金曜夜の地域の看板番組としています。
 コンプライアンス活動については、各局とも各種の研修会や公金の適正使用の徹底に向けた部内会議を開催するなど、積極的に取り組んでいます。
 適正経理の取り組みでは、昨年度に指摘した処理手続きの不備について、改善が進んでいました。まだ一部に不十分な点がありましたので、今年度の要望事項としてさらに改善を求めています。

(会 長)

 経理手続き等で内部監査室から各放送局に改善を要望していますが、今後は、より明確に改善を指示して指導してください。


(3)考査報告
(考査室)
 6月から7月中旬にかけて放送したニュースと番組について報告します。前回の報告の際に指摘をいただきましたので、今回から考査室の評価や指摘事項をより明確にして報告します。
 まず、7月7日(月)〜9日(水)に開催された北海道洞爺湖サミットにおいて、地球温暖化対策で参加国が合意したニュースについてです。8日(火)のG8会合で温室効果ガス排出量の半減をめざす長期目標について、アメリカの立場にも配慮し、世界各国が目標を“共有し採択を求める”ことで合意、翌9日の中国やインドなど新興国も加わった会合で「中長期的に排出量の抑制推進」を宣言しました。こうした一連の動きに加え、テーマの1つである食料問題やテロに対する厳戒の様子、サミットに反対する勢力のデモ、その他関連の話題を含め、サミットについて連日多角的に報道していました。考査室の評価としては、サミットの焦点や合意の背景などについて記者解説を交えて分厚く紹介していたと思います。
 次に、6月26日(木)にアメリカが北朝鮮の「テロ支援国家」指定を解除する手続きを開始したニュースについてです。北朝鮮が「核開発計画の申告書」を提出したことを受けて、ブッシュ大統領が「北朝鮮のテロ支援国家指定を45日以内に解除するよう議会に通知すると発表しました。日本の拉致被害者家族が指定解除への落胆を表明する一方、日本政府は拉致問題について、今後経済協力をカードに交渉する立場を示しました。ワシントン支局の記者は、「ブッシュ政権が成果を急いだ結果との評価もある」と報告していました。米朝の思惑や日本の対応、拉致被害者家族の受けとめなどを丁寧に伝えていた点を評価します。
 6月に発覚した大分県の教員採用試験をめぐる汚職事件で、7月5日(土)県教育委員会の元審議監や参事ら4人が贈収賄容疑で逮捕されました。この日以降、校長や教頭への昇進人事でも商品券の受け渡しがあったこと、不正合格者は2年間で約40人にのぼること、7月16日(水)に県教育委員会が不正合格者の採用を取り消す方針を決定したことなど、組織ぐるみの汚職の実態や事件の波紋を、独自取材した証言などを交えて全国放送で連日続報を伝えています。
 7月16日(水)、愛知県の東名高速道路で中学生によるバスジャック事件が発生しました。午後1時54分に速報スーパーで事件の発生を知らせ、続いて2時のニュースで犯人の身柄確保とけが人がなかったことを伝えていました。その後2時16分に上空からの中継映像が入り、また、乗り合わせたバス会社社員が会見で状況を説明する模様も報じていました。逮捕された中学2年生は「親に怒られ嫌がらせでやった」と供述しており、「劣等感と自己顕示欲が見える」という専門家の分析と合わせて一報情報や映像をいち早く伝え、乗客解放までの状況をわかりやすく紹介していました。
 続いて、いくつかの番組について報告します。
 6月8日(日)に発生した秋葉原の歩行者天国での通り魔事件を受けて急きょ放送した、NHKスペシャル「追跡・秋葉原通り魔事件」(6月20日放送)は、3,000件の携帯電話サイトに残された加藤容疑者の言葉を分析し、孤独と不安が募り殺意を抱くまでの経緯と心の動きを描き出すとともに、「犯行は許せないが心情は理解できる」といった事件に寄せた若者たちの書き込みを紹介していました。考査室での番組評価として、携帯サイトの情報の丹念な分析や取材の積み重ねによって犯行に至るまでの経緯と心情を明らかにするとともに、若者が不安定な雇用の中で絶望的になる社会の問題も浮き彫りにしていたと考えます。モニターからは、「ぎりぎりの状況で耐えている多くの若者がいるとの指摘に背筋が寒くなる」「内容の濃いリポートで、同じ境遇の若者への取材は興味深かった」などの声が寄せられました。
 NHKスペシャル「沸騰都市」の第4回「イスタンブール 激突 ヨーロッパかイスラムか」(6月29日放送)は、トルコで激しさを増す政教分離派とイスラム派の衝突と融合のうねりや、ともにEU加盟をめざしながら対立する2つの経済団体の動き、そうした対立を抱える中でのアジアとヨーロッパの2つの文化圏を結ぶ海底トンネルの開通を紹介していました。トルコ国内の対立の様子を、2つの経済団体を軸にして丁寧な取材により巧みに描いたことで、EUとイスラム諸国との間で揺れながら国家として独自の道を模索するトルコの現状がよく伝わってきたと思います。モニターからは、「揺れるトルコを描きながら象徴的にトンネル工事を伝えたのが印象的だった」「政教分離派とイスラム派がせめぎ合う現状を経済面から興味深く見せてくれた」「都市自体が意志を持って生き続けるような不思議な感覚を感じさせてくれた」などの声が寄せられました。
 北海道洞爺湖サミットに合わせて放送した、NHKスペシャル「極秘交渉 シェルパたちの180日を追う」(7月7日放送)は、サミットの事前交渉に奔走する“シェルパ”たちの半年間の攻防を描き、温室効果ガス排出量の50%削減をめぐるアメリカとEUの激しい応酬を、サミット初日の洞爺湖からの中継リポートを交えて伝えていました。あまり知られていないシェルパの動きに密着して見応えがあり、議論の焦点や米仏の思惑をわかりやすく紹介しながら、当事者の苦悩する姿をよく描いていた点について、考査室として評価します。モニターからは、「シェルパのことを初めて知った。各国担当者の人物像や政策の分析も興味深かった」「事実上の交渉とも言えるやり取りをリアルに簡潔に伝えていた」「各国の思惑がよくわかり初めてこの問題に関心を持った」などの声が寄せられました。
 教育テレビのETV特集「医療事故 どう減らすのか〜新たな“安全システム”への模索」(6月22日放送)では、死者が年間約23,000人と言われる医療事故を減らすにはどうすればよいかを考え、「整理整頓」や「指さし呼称」など産業界の安全対策を医療現場に導入する試みなどを紹介していました。考査室では、医療現場の新たな試みについて具体的事例を交えてわかりやすく紹介していたことを評価するとともに、今後は誤診や手術ミスなどに対する取り組みについても伝えていってもらいたいと要望しました。モニターからは、「当事者では気づきにくい医療事故の問題点を丁寧な取材により浮き彫りにしていた」「外部の目を入れて安全対策を追ったのがよかった」「3つの現場を柱にした構成が簡潔で難しい用語もなくわかりやすかった」という声が寄せられました。
 松江放送局が制作したハイビジョンふるさと発「命の舞い〜隠岐・復活への1年間の記録」(衛星ハイビジョン 7月10日放送)では、伝統の「蓮華絵舞」の復活にかけた人たちの1年間の格闘を追い、面作りから舞いまで命をかけて伝えようとした主人公の村上秀男さん(今年4月、番組取材途中に逝去)の思いや、その遺影の前でよみがえった「竜王の舞い」を高校生の石川雄介くんが舞う様子を紹介していました。蓮華絵舞復活にかける村上さんの姿と石川くんの熱演が感動的で、島の人がきずなを大切にしながら伝統を守り伝えようとする思いが素直に伝わってきた番組だったと思います。モニターからは、「“まさか”の展開に感動した。村上さんと高校生の心のふれあいに涙が出た」「要所を押さえた取材で、死を覚悟していたと思われる村上さんの情熱に感動した」などの声が寄せられました。
 同じく衛星ハイビジョンで放送した「世界一周!地球に触れる エコ大紀行」の第14回「タンザニア 野生の王国 巨大クレーターへ」(7月12日放送)は、野生動物の楽園であるアフリカ・タンザニアの「ンゴロンゴロ自然保護区」からの中継で、クロサイやカバなど80種類の動物の貴重な生態や、マサイの人々と自然の共存の試みについて紹介していました。考査室としては、臨場感ある中継で野生動物のユニークな姿や生態が楽しめた点を評価しますが、ただ、エコという視点から保護区周辺の開発の状況などの情報があればよかったと考えます。モニターからは、「動物と人間の共存を伝えたところに感銘を覚えた。ガイドの説明もわかりやすかった」「クレーター内の野生動物が増えているのは決して喜ばしいことではなく、それだけ厳しい状態にあるという最後の言葉をかみしめたい」という声が寄せられました。


(4)地上デジタル放送の衛星利用による難視対策のための制度変更に
   対する意見の提出について
(総合企画室)
 総務省は6月30日(月)、地上デジタル放送の衛星利用による難視聴地域対策に関し、放送普及基本計画および放送用周波数使用計画の各一部変更案を公表し、7月31日(木)を期限に意見募集を開始しました。その対応について報告します。
 今回公表された変更案は、情報通信審議会の「地上デジタル放送の利活用の在り方と普及に向けて行政の果たすべき役割 第5次中間答申」(平成20年6月27日)に盛り込まれた暫定的な衛星利用による難視聴地域対策(いわゆる「衛星セーフティネット」)を実施するため、平成22年からBS17チャンネルを7系統の標準テレビジョン放送(NHKおよび関東広域圏を放送対象地域とする民放の同時再送信に限定)に使用できるよう関係規定を整備するもので、これまでの審議会等での検討結果を反映した内容となっています。
 NHKとしては、地上テレビジョン放送のデジタル放送への円滑な移行のためには、衛星セーフティネットは不可欠な措置と考えており、変更案に賛成する立場から、以下の趣旨により意見を提出することとします。

(意見の趣旨)

 

 今回の変更案に賛成します。なお、地上テレビジョン放送のデジタル化にあたっては、視聴者の皆様にご迷惑をおかけすることがないよう配慮することが重要であり、衛星セーフティネットの運用にあたっても、利用者の立場に立った運用が行われるよう配慮を要望します。

 今後は、今年9月の電波監理審議会への諮問、答申を経て、年内に受託放送事業者、委託放送事業者が決定され、平成22年3月から衛星セーフティネットの運用が開始される見通しです。


(5)放送番組審議会議事録(資料)
(編成局)
 編成局および国際放送局から、中央放送番組審議会、国際放送番組審議会、全国の地方放送番組審議会(関東甲信越、近畿、中部、中国、九州、東北、北海道、四国)の平成20年6月開催分の議事録についての報告。
(注1:放送番組審議会の内容)



以上で付議事項を終了した。
 注1: 放送番組審議会の内容は、NHKホームページの「NHK経営情報」のなかに掲載しています。
上記のとおり確認した。
      平成20年 9月 2日
                     会 長  福 地 茂 雄

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