日本放送協会 理事会議事録  (平成19年 7月17日開催分)
平成19年 8月 3日(金)公表

<会 議 の 名 称>
 理 事 会

<会  議  日  時>
 平成19年 7月17日(火) 午前 9時00分〜 9時35分

<出   席   者>
 橋本会長、永井副会長、原田専務理事、畠山理事、小林理事、金田理事、
 中川理事、石村理事、西山理事、日向理事、溝口理事、八幡理事

 古閑監事、坂野監事

<場         所>
 放送センター 役員会議室

<議        事>
 議事に先立ち、昨日の「新潟県中越沖地震」に関し、取材の初動とそ
の後の体制、停電に伴う中継放送局の停波と復旧、被災世帯の状況、避
難所への対応などについて各理事から報告があり、橋本会長から、公共
放送の根幹の活動であることから的確に対応するよう指示があった。
 その後、橋本会長が開会を宣言し、議事に入った。


付議事項
1 審議事項
(1)第1049回経営委員会付議事項について
(2)「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会 中間取りまとめ」
  に対する意見募集への対応について
(3)地上デジタルテレビジョン中継放送局の設置計画について
(4)「電波利用料制度に関する研究会」報告書(案)に対する意見募 
   集への対応について

議事経過
1 審議事項
(1)第1049回経営委員会付議事項について
(秘書室)
 7月24日(火)に開催される第1049回経営委員会付議事項について審議をお願いします。
 付議事項は、議決事項として「BSアナログ放送に関する放送衛星局の廃止および委託放送業務の開始について」、「地上デジタルテレビジョン中継放送局の設置計画について」です。報告事項として「コンプライアンスの徹底に向けた『工程表』第1四半期報告」、「地方放送番組審議会委員の委嘱について」です。
 そのほか、「『次期経営計画』の重点となる考え方について」の説明や会長報告などを予定しています。

(会 長) 原案どおり決定します。


(2)「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会 中間取りまとめ」
   に対する意見募集への対応について
(総合企画室)
 「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会 中間取りまとめ」に対する意見募集への対応について審議をお願いします。
 総務省は、平成18年8月から、通信・放送の融合・連携に対応する法制度の在り方に関して専門的見地から調査研究を行い、それに対応した法体系の検討の方向性を具体化することを目的として、「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」を開催しています。今般、「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会 中間取りまとめ」が取りまとめられ、総務省は7月20日を期限に意見募集を開始しました。
 「中間取りまとめ」のポイントは、現状認識、通信・放送法制の抜本的再編の方向性、コンテンツに関する法体系のあり方、プラットフォームに関する法体系のあり方、伝送インフラに関する法体系のあり方、レイヤー間の規律のあり方等です。
 今回の「中間取りまとめ」においては、具体的な規制のあり方は明らかになっていませんが、次のとおり意見を提出したいと考えています。
 通信・放送の総合的な法体系に関する研究会(以下、「研究会」といいます。)においては、デジタル化等による情報通信産業構造の変化を踏まえ、技術中立的で世界最先端の情報通信法体系に向けた検討が進められているものと承知していますが、標記「中間取りまとめ」では、新たな法体系における具体的な規律のあり方がまだ明らかではありません。この点を前提として、内容全般に関し、以下に申し述べます。

 「中間取りまとめ」においては、電磁的な手段による情報流通に関する法制(情報通信法制)について、従来の放送・通信の法体系の集約を目指す方向が示されていますが、情報政策としての観点からは、情報通信産業の規律体系としての視点に偏することなく、ICTの進歩発達や質のよいコンテンツの流通による恩恵が広く利用者・国民に行きわたるようにすること、国民生活にとって重要な基本情報について個人間の格差が生じないようにすることなど、受け手にとってどのような利益がもたらされるのか、そして、そのためにどのような仕組みが適切なのかという視点に立って十分な議論が行われることが非常に重要であると考えます。
 今後、研究会において、こうした視点からの検討がさらに深められることを期待します。

   

 「中間取りまとめ」では、情報通信を「コンテンツ」「プラットフォーム」「伝送インフラ」の3つのレイヤーを基軸として分類し、それぞれについて規律する「レイヤー型法体系」の考え方が示されています。
 そもそも、情報政策全体として見れば、情報内容に対する規律は、憲法で保障された表現の自由との関係において、社会的機能や社会的影響力があることをもって一般的に正当化されるものではなく、仮に認められるとしても極めて例外的に許容されるものだと考えます。
 こうしたことを踏まえ、「中間取りまとめ」で示されている「レイヤー型法体系」の考え方が、コンテンツに対する規制強化につながることのないよう、コンテンツに対する規律は、その根拠について慎重の上にも慎重な検討を行う必要があると考えます。また、規律の対象範囲や内容については、十分な明白性、明確性が確保されなくてはならないと考えます。

   

 1に述べた利用者・国民の視点に立った情報政策という視点からは、利潤動機に基づく企業活動のみによっては実現され得ないような、公共的な情報環境の確保・整備という観点も極めて重要だと考えます。NHKは、視聴者全体によって支えられる公共放送として、こうした基本情報の提供に貢献してきたものと考えており、新たな法体系の下でも、そのような存在として位置づけられることが、利用者・国民にとって望ましい情報環境という観点から重要だと考えます。
 公共放送のあり方については、今回の「中間取りまとめ」では触れられていませんが、求められる機能・役割が十全に果たされることを前提として、新たな法体系の下での位置付けをできるだけ早い段階から、全体との整合性を確保しつつ検討することが適当と考えます。
 なお、その具体的なあり方等については、今後、公共放送機関であるNHKの意向も十分聴きながら検討を進められるよう要望します。


(会 長) 原案どおり決定します。

(3)地上デジタルテレビジョン中継放送局の設置計画について
(西山理事)
 地上デジタルテレビジョン中継放送局の設置計画について審議をお願いします。
 放送局設置に関する諸条件が整った北海道の洞爺、山梨県の穴山、南部、初狩、静岡県の東伊豆、秋葉、三ケ日、富士川、京都府の中舞鶴、山城田辺、兵庫県の西脇、篠山、氷上、姫路西、川西北、和歌山県の橋本、鳥取県の佐治、香取、米子日南、岡山県の美作、美作加茂、広島県の安芸千代田、南加計、豊栄、五日市、大朝、黒瀬、白木、安芸佐伯、庄原、世羅、大門、三原中之町、大竹、河内、小奴可、高陽、山口県の阿東、光、小郡、豊北、山口豊浦、下関西、下松、徳島県の阿波勝浦、山城、池田松尾、西祖谷山、阿波井川、三頭山、香川県の讃岐白鳥、愛媛県の南宇和、菊間、宇和、野村、美川、大三島、伊予由良、高知県の本山、大豊、豊永、吾川村、梼原、物部、土佐清水、佐賀県の肥前有田、武雄、熊本県の牛深、肥後小国、阿蘇、南阿蘇、阿蘇北、大分県の佐伯、日田、西日田、鹿児島県の南種子の地上デジタルテレビジョン中継放送局を設置したいと考えています。
 本日、了承されれば、第1049回経営委員会に諮りたいと思います。

(会 長)  原案を了承し、経営委員会に諮ることとします。


(4)「電波利用料制度に関する研究会」報告書(案)に対する意見募 
   集への対応について
(技術局)
 「電波利用料制度に関する研究会」報告書(案)に対する意見募集への対応について審議をお願いします。
 総務省の「電波利用料制度に関する研究会」は、次期(平成20年度〜平成22年度)電波利用料制度の見直しに資するため、今年の4月から検討を進めてきました。
総務省は、同研究会で取りまとめた報告書(案)「〜電波利用料制度の見直しについての基本的な考え方〜」について、7月19日を期限に無線局免許人等からの意見募集を開始しました。
 報告書(案)の概要は次のとおりです。

1 電波利用料の制度の在り方

  • 電波利用共益事務の性格
     次期(平成20年度〜平成22年度)についても、電波利用共益事務において基本的に負担額が使途に係る費用と同額となる現行の考え方を維持すべき。
  • 電波逼迫対策事業と無線局の受益・負担の関係
     電波の逼迫帯域を使用する免許人等は、その高まった電波の経済的価値に応じた負担をすることが適当。
  • 受益と負担が迅速に連動できる制度の導入
     3年ごとの見直しの合間に、新たに使途を追加する場合に、無線局毎の負担比率が迅速に連動して変更できる仕組みを検討していくことが必要。

2 電波利用料の使途の在り方

  • 基本的な考え方
     使途の追加に際しては、電波利用共益費用の総額が現状を大きく上回ることのないよう留意し、予算規模が適正となるよう配慮。
  • 主な新使途案
    - 携帯電話等エリア整備支援事業      約 70億円/年
    - 地上放送の完全デジタル化のための環境整備支援事業
                         約 75億円/年
    - 国際競争力強化(国際標準化、研究開発等)
                         約140億円/年

3 電波利用料の料額の在り方

  • 基本的な考え方

    電波を利用する無線局の免許人等は、利用者・免許形態にかかわらず費用負担に応じることが原則。負担については、電波の経済的価値を勘案した考え方をさらに推し進めることが必要。

    -

    アナログ周波数変更対策業務を、「a群」「b群」のどちらに入れるべきか検討が必要。

     「a群」は電波の経済的価値を高める事務で、逼迫帯域等を使用する無線局で費用負担。
    「b群」は電波監視や無線局監理等の「a群」以外の事務で、原則、無線局数で均等負担。現在、アナログ周波数変更対策業務は「b群」となっています。


  • テレビジョン放送の電波利用料の見直し
    「a群」に要する費用については、通信、放送に関わらず、原則、使用周波数帯幅に応じて負担すべき。テレビジョン放送事業者は、370MHz幅(現在は6MHzで料額算定)に応じた料額の算定が必要。
    - 負担額の算定に当たっては、使用周波数帯域幅とは別に、現在のラジオ局等の扱いを踏まえ、公共性等を勘案することとし、その際には時期的な事情も踏まえ中期的な視点を加味して考えていくことが適当。
    - 「b群」に要する費用については、原則、無線局数で均等負担する現行の考え方を維持することが適当。

  • 国等の無線局の電波利用料負担

    原則として、国等の無線局についても、電波利用料を負担することが適当。


 この報告書(案)について、NHKは次のとおり意見を提出したいと考えています。

「電波利用料制度に関する研究会」報告書(案)に対するNHKの意見は、

1 電波利用料の制度の在り方

  • 受益と負担が迅速に連動できる制度の導入について
     電波利用料の3年ごとの見直しの合間に新たに使途を追加する場合に、電波の経済的価値の変動に応じて無線局ごとの負担比率が迅速に連動して変更できる仕組みを検討していくことが必要とされていますが、こうした仕組みを検討される場合には、使途の追加・拡大のみを前提とするのではなく、業務の収斂等による使途の縮小の可能性も含めた視点が必要と考えます。
     また、平成16年度の電波有効利用政策研究会の最終報告書において、負担額の歯止めとして、電波利用料の使途・料額は法律で規定することを基本とすることが適当との認識が示されているところです。
     今回提言されているような制度が設けられれば、使途の拡大と免許人の負担増を法律改正よりも容易な手続きで行うことが可能になるため、料額の高騰防止等の観点から、特に慎重な議論が必要です。仮にこうした制度を設ける場合には、その範囲や決定の透明性を確保する方策等が重要な課題になると考えます。

2 電波利用料の使途の在り方

  • 基本的な考え方について
     使途の追加に際して、電波利用共益費用の総額が現状を大きく上回ることのないよう留意し予算規模が適正となるよう配慮するという基本的な考え方については、賛成します。むしろ、電波利用料の総額については、平成5年の制度施行開始時と比較して、現在はその10倍近くまで規模が拡大してきている事実があり、このまま使途の拡大路線をとるのではなく、総額の上限を設定する等の方法により、電波利用共益事務が現に電波利用料を負担している無線局免許人の共益に繋がる範囲で実行され、それらの事務の成果を確認しつつ取り進められることが重要であると考えます。

  • 地上放送のデジタル化への完全移行について
     地上放送のデジタル化は、国の施策として行われる事業であり、かつ、2011年までの限られた期間において達成しなければならないことから、1「デジタル中継局整備支援」、2「辺地共聴施設のデジタル化支援」、3「デジタル混信等対策」及び4「デジタル受信相談体制の整備」については、必要な支援事業であると考えます。
     特に、3「デジタル混信等対策」については、デジタル混信が、周波数が逼迫している地上放送のサイマル期間中においてやむを得ず発生するものであり、無線局間の調整のみによって回避できず受信対策等が必要となることから、円滑なアナログ放送の終了に向けての有効な施策と考えられます。
     また、4「デジタル受信相談体制の整備」については、視聴者のデジタル受信を支援するための重要な施策であり、3の事業を効果的に行うための付随的な援助策であるとの認識に賛成します。したがって、これらの地上放送のデジタル化に資するための事業は、有限な電波資源の有効利用のための電波利用料の使途として適当であると考えます。

3 電波利用料の料額の在り方

  • a群、b群の使途の振り分けについて
     アナログ周波数変更対策は、地上放送のデジタル化を進め、テレビジョン放送に使用する周波数帯を圧縮し130MHz幅の周 波数帯が他の無線システムで活用することが可能になるなど、放送業務のみならず他業務も含めた無線局免許人全体の受益を図るための国の施策として行われる事業です。アナログ周波数変更対策業務については、平成16年度の電波有効利用政策研究会の最終報告書において、「二度の国会審議を経て、負担関係の整理も含め電波法が改正された経緯を踏まえることが必要」、「引き続き、現行の算定方法を踏襲することが適当」とされ、これに係る経費をb群に位置づけて実施されています。既に業務の大半が実施され、当該年度の電波利用料の徴収も行われた段階において、その位置づけ自体を変更することは、遡及的な問題を生じ得るものであり、適当でないと考えます。

  • テレビジョン放送の電波利用料の見直し
     周波数の使用形態は、それぞれの業務における無線システムによって異なるものであり、使用する周波数帯域幅が広いことがそのまま電波の経済的価値が高いことを意味するものとは単純には考えられません。
     放送業務は、広いエリア内の視聴者に対して一斉に効率的に電波でサービスを行うものであり、必然的に広い周波数帯域幅を用いる高出力のシステムになる特性があります。
    したがって、異なる性格の無線システム間において、単純に周波数帯域幅に応じて費用の配分を行うことは適当ではなく、それぞれの業務とその無線システムの性格を十分加味することが必要と考えます。
     放送事業者は、現在、地上放送のデジタル化に全力を挙げて取り組んでおり、デジタル送信・送出設備等の整備に多大な投資を行いつつ、2011年までのサイマル期間においてはアナログとデジタル両方の放送設備の維持管理を行わなければならない過渡的な状況にあります。国の施策に沿ってデジタル化を推進している放送事業者の時期的な事情を十分勘案することが必要と考えます。
     したがって、仮にa群に係る経費の見直しがなされるとすれば、テレビジョン放送の負担額の算定について、公共性等を勘案することが必要であり、時期的な事情も踏まえ中期的な視点を考えていくことが適当であるとの報告書案の方向性は妥当と考えます。
     料額算定に当たっての勘案要素は、いずれも政策としての必要性から設けられているものだと理解しています。先般行われた公開ヒアリングでは勘案要素なしの試算が示されましたが、公開ヒアリングの中では、勘案要素自体を不要とする意見は、免許人の中には全く無かったものと理解しています。放送事業者は2010年までアナログ周波数変更対策業務に係る追加的な電波利用料を負担しています。平成17年3月に公表された「平成17年度電波利用料見直しに係る料額算定の具体化方針」においては、テレビジョン放送局のa群に係る金額については、「2010年までの間は特例措置として、現在の負担額に適切に配慮して、おおむね現行水準程度に設定します」旨が明記されています。すなわち、2010年までの間は、テレビジョン放送局のa群に係る金額をおおむね現行水準程度に設定するということは、総務省の政策として示されているのであって、2010年までの追加負担は、その政策の前提の上に放送事業者として了承したという経緯があります。放送事業者の電波利用料を「使用帯域幅及び出力に見合った額に改めて見直す」こととされた「規制改革・民間開放推進3か年計画(再改定)」も、当然のことながら、この政策との整合性を総務省としても整理検討されたうえで閣議決定されたものと承知しています。国民の負担に関する政策の変更、特に負担の増加に関わる政策変更は、十分に慎重に検討する必要があると考えます。放送事業者としては、事業に関する予見可能性の観点からは、上記の政策を前提として、デジタル投資計画を策定しております。仮にa群に係る経費の見直しをする場合であっても、それは、テレビジョン放送局のa群に係る金額は「おおむね現行水準程度に設定する」旨の政策の範囲内であることが必要であると考えます。
     さらに、当協会は、公共放送としてあまねく全国に放送サービスを届け、国民の生命・財産を守るために正確な情報を迅速・的確かつ安定的に提供するなどの使命を果たしています。その事業は、視聴者の皆さんに広く負担していただく受信料によって運営されており、電波を利用することによって利益を得る企業活動とは基本的に性格が異なっています。当協会が果たしているこうした公共的な役割と事業運営の性格についても十分勘案されることが必要と考えます。
(会 長)  原案どおり決定します。

以上で付議事項を終了した。
上記のとおり確認した。
      平成19年7月31日
                     会 長  橋 本 元 一   

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