日本放送協会 理事会議事録  (平成19年1月16日開催分)
平成19年2月2日(金)公表

<会 議 の 名 称>
 理 事 会

<会  議  日  時>
 平成19年1月16日(火) 午前9時00分〜9時25分

<出   席   者>
 橋本会長、永井副会長、原田理事、畠山理事、小林理事、金田理事、
 中川理事、小野理事、衣奈理事、石村理事、西山理事

 古閑監事、坂野監事

<場         所>
 放送センター 役員会議室

<議        事>
 橋本会長が開会を宣言し、議事に入った。


付議事項

1 報告事項
(1)考査報告
(2)平成19年度 放送番組テキスト発行計画の概要
(3)地方放送番組審議会委員の委嘱と任期途中の退任について


議事経過

1 報告事項
(1)考査報告
(考査室)
 18年12月〜19年1月上旬に放送されたニュース・番組について、概要を報告します。
 まず、政府税制調査会の本間会長、佐田行政改革担当大臣が相次いで辞任したニュースについてです。
 12月21日(木)、公務員宿舎に不適切な形で入居していたと指摘された政府税制調査会の本間正明会長が辞任しました。NHKでは、午前9時29分、「本間政府税調会長 辞任の意向 政府側に伝える」とスーパーで速報しました。「ニュースウオッチ9」では、記者が「政府税調の人事は、消費税増税を主張した前会長の続投を退けて成長重視の本間氏を据えた“安倍カラー”の象徴的存在だった。本間氏が辞任に追い込まれたことは安倍内閣のつまずきとなった」と解説するなど、辞任に至る経過と安倍政権への影響を記者解説も交えて的確に伝えました。
 12月27日(水)には、佐田行政改革担当大臣が、不適切な会計処理問題の責任を取るとして辞任し、安倍内閣にとっては一段と厳しい状況となりました。午後5時の「ニュース」開始直後に、「佐田行政改革担当相 辞任の意向 政治資金収支報告書の記載問題で」とスーパーで速報した後、佐田行政改革担当大臣は、自らの政治団体が実在しない事務所の経費などとして10年余りにわたり、約7800万円の支出を政治資金収支報告書に記載していたと指摘された問題の責任を取るとして辞任の意向を固めたと詳しく伝えました。「ニュース7」で、記者は「政府税制調査会の前会長の辞任では決着が長引いたため、政府・与党としては早く収拾したいという判断が働いたようだ。総裁選の論功行賞の入閣と見られていただけに首相の求心力にも影を落としそうだ」と報告しました。
 「ニュースウオッチ9」では、「私が任命したのだから、国民に対して責任を感じている」という安倍首相の会見を伝えるとともに、「“臭いものにふた”という話ではない。安倍首相が内閣のトップとしての責任を果たすべきだ」という民主党の鳩山幹事長などの声も紹介しました。端緒となる情報は他社に先行されましたが、その後は辞任の動きをきちんと伝えていたと思います。
 次に、改正教育基本法が成立したニュースについてです。
 戦後に制定され教育のあり方を定めてきた教育基本法に代わり、教育の目標に“愛国心”を明記した改正教育基本法が、12月15日(金)、可決され成立しました。午後5時51分、「改正教育基本法 参院本会議で成立」とスーパーで速報しました。
 「ニュース7」では、改正法は教育の目標に「我が国と郷土を愛する態度を養う」という表現で“愛国心”を新たに盛り込んでいることなどを紹介しました。「今後の教育の方向性を示していて評価できる」という淑徳大学の新宮弘識名誉教授に対し、「行政の行き過ぎた介入を防ぐ機能が失われ、政治の場の決定が教育に直接影響を及ぼすことになる」とする東京大学の苅谷剛彦教授の声を紹介しました。NHKが全国の都道府県の小学校長会の会長にアンケート調査した結果、“愛国心”の明記に81%が「賛成」または「どちらかといえば賛成」と答えているが、個々の児童生徒の“愛国心”を評価することは難しいなどとして、評価することについては55%が否定的だったと紹介しました。記者は「審議はいじめやタウンミーティング問題などに多くの時間が費やされ、“愛国心”などの論点が論戦を通じて浮き彫りになったとは言えない」と報告しました。このニュースについては、全体的に、改正に対する賛否などを記者解説や教育関係者の声も交え、多角的に伝えました。モニターのみなさんからは、「違う見方の2人の専門家の意見を伝えることでバランスがとれていた。学校現場の受け止め方を探るアンケート調査も理解に役立った」、「教育基本法の歴史についてもう少し詳しく解説してほしかった」などの声が寄せられました。
 続いて、フセイン元大統領の死刑執行のニュースについてです。
 判決確定4日後の12月30日(土)、イラクのフセイン元大統領の死刑が執行されました。「正午ニュース」の地域ニュース放送中の午後0時14分、「フセイン元大統領の死刑を執行と現地の放送局が伝える」とスーパーで速報した後、「正午ニュース」を5分間延長し、アメリカ政府が出資するテレビ、アル・フッラがフセイン元大統領の死刑が執行されたことを報じたと紹介しました。バグダッドから記者が中継で「旧フセイン政権で優遇されたスンニ派が今の政府を主導するシーア派に対する反発を一段と強めるのは避けられない」と報告するなど、混迷を深めるイラクの状況を伝えました。
 次に、いくつかの番組について報告します。
 「NHK紅白歌合戦」(12月31日放送)についてです。
 2006年の「NHK紅白歌合戦」は、失われつつある家族のきずなや世代間のつながりを歌の力で取り戻そうと、「愛・家族〜世代をこえる歌がある」というテーマで54組の歌手が競演しました。白組の司会は中居正広さん、紅組は仲間由紀恵さんが務めました。去年より出場歌手を6組減らし、じっくり歌を聞かせた点は評価できると思います。特に第2部では、ヒット曲、話題曲が続いたことや、「みんなのうた45年」のなかに「キッズショー」と題したショーがありましたが、家族三世代が一緒にテレビを見ながらいろいろな話をすることができたことは良かったと思います。ただし、テーマと今のヒット曲を結びつけて構成することの難しさも感じました。DJ OZMAのステージについては、裸と見間違えるようなボディースーツは視聴者のみなさんの誤解を招き、番組としてふさわしいものでなかったと思います。モニターのみなさんからは、「今年の『NHK紅白歌合戦』は全体的に、歌をじっくり聞かせていたのがよかった」、「デジタル審査をやろうと思っていたが、審査方法がよく分からず投票できなかった。また審査の得票のシステムが、番組では理解しにくかった」などの意見がありました。
 大河ドラマ「風林火山」第1回 「隻眼の男」(1月7日放送)についてです。
 井上 靖の原作を大森寿美男さんが脚色していますが、初回から11回までは大森寿美男さんのオリジナル脚本です。今回は、信玄の父、武田信虎(仲代達矢)が甲斐の統一を果たし、更に勢力を伸ばそうと駿河の今川、相模の北条と敵対するなか、子どものころ病で隻眼になった勘助(内野聖陽)が、15年の兵法修行の旅を終え、故郷の三河に向かう姿を描いていました。武門に生まれながらも諸国を巡り苦労を重ねた勘助の成り上がろうとする強い意志が印象的でした。モニターのみなさんからは、「野性的で野望に満ちた若き勘助を期待どおり楽しめた」、「内野聖陽さんの初回からの好演技に驚いた」など好評な意見が多くありましたが、「勘助が成人から始まっているので、なぜ今の境遇にいるのか分からなかったし、誰でも分かる合戦や事件で始まってほしかった」、「もう少し画面が明るくならないだろうか。地味に見えるし、テンポもゆっくりで、見ているうちに、飽きてきた。正統派に戻ったか?苦手だ」などの声も寄せられました。
 NHKスペシャル「ふるさとからのメッセージ 2007」(1月1日放送)についてです。過疎化や高齢化に加え、公共事業や地方交付税の削減によって、今、地域は疲弊し、強い閉そく感に覆われています。この番組は、大分県日田市大山町で安くて新鮮な作物を直売所で販売し、年収1000万円の農家も珍しくない事例や島根県海士町で商品開発研修生を公募し、彼らの視点で特産品を生み出した事例など、全国各地の先進的な取り組みを紹介しながら、地域再生へのヒントを探りました。ゲストは歌手の加藤登紀子さん、映画作家の大林宣彦さん、評論家の内橋克人さんで、司会は春風亭小朝さんと武内陶子アナウンサーが務めました。スタジオでは、大林さんが「知恵と工夫がこれからの資源」、内橋さんが「新しいモデルは苦しんだところから生まれる」と結び、エールを送りました。全国各地の事例は、これまでに紹介されてきたものもありましたが、地域の苦しみや新たな取り組みを丁寧に伝えていました。地域が元気になってほしいというゲストの熱い思いも感じ取れ、地域への応援歌として一年の巻頭にふさわしい内容でした。モニターのみなさんからは、「新春にふるさとからのメッセージは、よいテーマだと思った。ふるさとを愛しむ心を見つめ直すのにぴったりの番組だった」、「過疎高齢化の進む地域に住んでいるが、大いに参考になった。いろいろな地域の人たちの挑戦と努力に感銘を受け、元気づけられた」、「このテーマを元日に放送する意義が少し分かりにくいように感じた」などの声が寄せられました。
 新春ハイビジョン中継「フィレンツェ ルネサンス〜美の女神がほほえむ街」(1月2日 BShi 後6:05〜11:30放送)についてです。
 ルネサンスを生み出した芸術の都、フィレンツェの新年の様子と世界遺産のこの街の魅力を6部構成の生中継で紹介しました。案内役は、愛知産業大学教授の石川 清さん、国際日本文化センター教授の井上章一さん、女優の中越典子さん、野村正育・上田早苗両アナウンサーが務めました。観光客でにぎわう新年のフィレンツェを舞台に、ここに花開いた文化を案内役の分かりやすい話や丁寧なVTRで紹介し、中継のカメラワークもよく連携し安定していました。ただ、長時間の生中継ならではの工夫がもう少し欲しかったと思います。モニターのみなさんからは、「“美の回廊”などルネサンス芸術を十分味わえた。臨場感のある映像で現地にいるような雰囲気が感じられた。大聖堂からの展望もすばらしかった」、「いながらにして旅行をした気分に浸れ充実した内容だったが、生中継なのにフィレンツェの新年の様子があまり伝わってこなかったのは残念だった」などの声が寄せられました。
 最後に、地球特派員スペシャル「地球マップ2007 “格差”と“競争”にどう立ち向かうか」(1月1日 BS1 午後10:10〜前0:00(ニュースを除く)放送)についてです。
 この番組では、グローバル化は世界にどんなひずみをもたらしているのか、“格差”と“競争”の厳しい現実にどう立ち向かうべきなのかについて、世界の格差などを表す“地球マップ”を手がかりに、東京大学教授・姜尚中さん、住信基礎研究所主席研究員・伊藤洋一さん、ジャーナリスト・江川紹子さん、早稲田大学教授・榊原英資さんの4人の“地球特派員”が取材し議論しましたが、世界のグローバル化の動きを正面から見つめた内容で、年頭の放送にふさわしい問題提起の番組になっていました。モニターのみなさんからは、「地球規模の大きな変化をとらえた見応えのある番組だった。それぞれのリポートが簡潔で説得力があり、世界の抱える問題を浮き彫りにしていた」、「スタジオの出演者の間で外来語や専門語が多く使われていたので、私には理解できない個所がかなりあったのは残念だった」などの意見がありました。
(会 長)  視聴者のみなさんのご意見にもありますが、「新春ハイビジョン中継」などの番組を制作する場合、生中継をする必然性、その良さを十分に反映させる構成を常に考えてもらいたいと思います。
(原田理事)  今回は、じっくり見せてほしいという視聴者のみなさんの声を受けて番組を構成しています。そのため、絵画や彫刻などはむしろVTR映像で見せるという演出にしていますので、その時間が増えています。一方で、大聖堂を下から上まで上がっていくという臨場感などはVTRでは出せない生中継の良さがでたものになっています。生中継の良さと両方を生かすため、かなり今回は演出上の工夫をしています。進行、ゲストも落ち着いた進行ができていたと思います。

(2)平成19年度 放送番組テキスト発行計画の概要
(総合企画室)
 平成19年度放送番組テキスト発行計画の概要について報告します。
 NHKの放送番組テキストは、放送法第3条の2で教育番組について定められた「放送の計画および内容の公衆に対する事前周知」を主たる目的とした出版物で、NHKが業務の一環としてテキスト放送本文を編集し、日本放送出版協会に発行・頒布の業務を委託しています。テキストの発行計画については、一般の放送関連出版物と区別して、理事会に報告することにしています。また、NHKは日本放送出版協会がテキスト出版により得る収入(売上高)の一定割合をテキスト権料として収納しています。
 19年度の放送番組テキストの総発行点数は108点で、18年度当初発行計画点数の122点に比べて14点減少しています。これは19年度の番組改編に伴う変更です。
 新規テキストは、「きょうから英会話」(テレビ)、「きょうの料理ビギナーズ」(テレビ)、「古典講読 漢詩を楽しむ」(テレビ)です。
 廃止するテキストは、語学テキストの「いまから出直し英語塾」(テレビ)、「ドラマで楽しむ英会話」(テレビ)、「ミニ英会話 とっさのひとこと」(テレビ)、「日本語講座」(テレビ)、教育テキストのうち高校講座の「国語総合」(ラジオ)、「オーラル・コミュニケーション」(ラジオ)、「英語T」(テレビ)、「地理」(テレビ)、「生物」(テレビ)、学校放送の「えいごリアン4」(テレビ)、趣味・教養テキストの「NHKカルチャーアワー 漢詩への誘い」(ラジオ)、「スーパーピアノレッスン」、「スーパーバレエレッスン」(テレビ)です。
 このほか、番組名の変更に伴い、テキスト名を変更するものが2点あります。「新感覚☆キーワードで英会話」は「新感覚☆わかる使える英文法」に、「3か月トピック英会話」は「新3か月トピック英会話」にそれぞれ変更します。
 最後に定価の改定についてです。「おしゃれ工房」、「きょうの料理」、「つくってあそぼ」については仕様変更などにより定価改定を予定しています。

(3)地方放送番組審議会委員の委嘱と任期途中の退任について
(編成局)
 地方放送番組審議会委員の委嘱と任期途中の退任について報告します。
 中国地方で小泉凡氏(島根県立女子短期大学助教授)、堀江和義氏(中国新聞社論説委員会論説主幹)、九州地方で渡邊眞一郎氏(宮崎県酒造組合会長)を平成19年2月1日付で新規委嘱します。また、中部地方で揚原安麿氏(江守商事鰹務取締役、日本青年会議所前会頭)を同日付で再委嘱します。
 中国地方の福島義文氏(中国新聞社論説委員会論説主幹)は、本人の申し出により、19年1月31日付で委嘱を解くこととしました。
 なお、九州地方の中武英雄氏(前・宮崎県森林組合連合会代表理事会長)は任期満了により19年1月31日付で退任されます。

以上で付議事項を終了した。
上記のとおり確認した。
      平成19年1月30日
                     会 長  橋 本 元 一   

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