第2回「デジタル時代のNHK懇談会」議事録

辻井座長  ぜひ発言したいという方は、あと5分ばかりございます。受信料というものを中心に議論を進めて、そうするとなぜ払わないのか。便乗組も多いけれども、やはり本質的な問題があるだろうと。それは政治の中立性、あるいは体質という問題。もう一つ、やはり、今、おっしゃった番組というのは結構あって、視聴率さえ上げれば公共放送としていいのかという点は疑問に感じておられる方もあるのではないか。
 たとえば、前回の山内委員の、国民の知識・意識レベルを向上させるというご発言がありました。あるいは吉岡委員から、そこには哲学が必要である、やること、やらなくてもいいことがあるということもございました。
 全部の人に見てもらわなくてはいけないというふうに考えると、どうしても迎合する感じにもなるし、民放との二元体制を認める以上、民放との補完的な関係、なかなか表現しにくいのですが、知識レベルの個人差、そういうようなことで、いろいろ娯楽番組に対する扱いも違うし、あるいは老若男女で違うかもしれない。そういうことは温度差があってもいいと思いますが、そういう議論を、公共放送の存在意義の中に採り入れるべきではないかと思います。
 つまり、これからの世の中は非常にむずかしくなっていくわけです。ネットワーク化によって、いろいろな組織が強連結、密結合になってきて、たとえば、情報公開とプライバシーの線引きをどうするかとか。いろいろな価値対立状況のなかで、ジレンマを解決する能力というのは、国民全部に求められているような時代で、単に面白ければいいかというと、そうでもないのではないか。そういう議論も少しやっていただきたいと思います。

江川委員  そのことに関連して、長谷部先生のご説明の中に、情報というのはニュースとか、そういうものだけではないとおっしゃったのですが、情報というと、すごく限定的なイメージがあります。たしかに一般的な情報という面では、インターネットで地域差がだんだん薄まっていますが、文化的な演劇だとか音楽などは、どうしても東京だけに集中するとか。お金のある人だけが行けるとか。やはり文化的なものの機会を均等に提供する意味では、公共放送の役割は大きいと思います。
 それをみんなが「分かち合うべき」かどうかわかりませんが、少なくとも機会だけは提供されることが望ましい。そういうことに資するのが、公共放送の一つの役割かと思いました。

辻井座長  もう一つ、国会承認というシステムだとどうもという話がでておりますが、それに代わる、つまり市民の委員会を作るとか。そのへんは具体的にある程度、仕組みをここから提言する必要があるでしょうか。

梶原委員  私はそれをしなければ、NHKが政治的に独立的に中立性を保つべきだということにならないと思います。国会が国民、受信者を代弁することで、予算の承認をしていますが、何回もいいますように、政治的中立の国会議員は一人もいないわけですから、そこのジレンマをどう解決するか、我々がやらないと根本的な解決にならない。
 さっきも申し上げたのですが、デジタル技術が発達して、双方向で受信者とやり取りができることになると、デジタル民主主義はオンラインで株主総会ができるわけです。スーパーコンピューターで、瞬時に整理ができる。そういうことと、この会に「デジタル時代のNHK懇談会」という名前があるというのは、そこに意味があると私は解釈していますが、そういう新しいシステムを代替することにしないと、政治的中立問題は解決しないと思います。
 一つは、技術的にそういうことであるし、そこで直接民主主義をやっていく、その中でオンラインで代表を選ぶこともできるのです。経営委員会というのは国会の任命ですか。

吉岡委員  国会の承認、首相の任命ですね。

梶原委員  だから政治的中立はもともとあり得ないのです。あくまでも受信者中心で仕組みを作っていくことが必要であり、それがデジタル技術によって可能になってきたのです。今までは「依らしむべし、知らしむべからず」という世界だったのですが、情報技術の発達で、「知らしむべし」ということができるようになったということです。
 多チャンネル化とか、そういうのは枝葉末節の話で、本質的にインタラクティブになったということだと思います。

江川委員  梶原さんがおっしゃることは究極的にそうだと思いますが、今は過渡期だと思います。実際に受信料を払っているのはどちらかというと高齢者の方がまじめに払っているとなると、そういう人たちは、デジタルだのオンラインだのと言われて、せっかく機会を提供されても生かしきれない。システムを変えるのだったら究極的にはこうだけれども、過渡期ではこうあるべきだという、そこも考えていかないと。

梶原委員  おっしゃるとおり。座長、時間的な要素を考えて議論をしていかないといけない。目先の対症療法でやっていくことと、体質を変える根本的な課題です。鈍行列車でいく部分と急行列車で行かないといけないのと、特急列車で当然やらないといけない。その辺をふるい分けて議論をしていかないと、こんがらかってしまいます。江川さんがおっしゃるとおりだと思います。

辻井座長  ただ、そのときに発言したいと思ったことはおっしゃるでしょうから、議論の整理は後でやる。自由に発言をしていただいて、これは短期的に対症療法的な部分とか、これは長期的な部分と、整理する方がいいと思います。

梶原委員  それは座長にお願いしたい。

辻井座長  あまり私は強制的に規制するのは反対なので、ご自由に発言をしていただいた方がいろいろな意見が出やすいと思います。次回の予定は「公共放送のガバナンス」ということでしたが、それにとらわれず、受信料の問題から入っていくのが、その本質に隠された問題をいろいろ議論をしていくほうがいいと思います。それでは、事務局から何かございますか。

事務局  どうもありがとうございました。幅広いご意見をいただきました。事務局としては、次回は、悩むところですが、今、座長からそういうご提案をいただきましたので、基本的にはそういう方向で資料等も取り揃えながら、説明をさせていただきながら、ご議論をいただければと思います。

永井委員  新プランの骨子の概要を次回に発表するということだったのですが、大変時間がもったいないので、もしできることであれば事前にパワーポイントでもなんでも結構ですので、委員の人に配っていただくと整理した発言ができると思います。

辻井座長  メールで流したりできますか。

永井委員  直前というのは2、3日前に。

事務局  3日が次回ですが、そのときに、お示しできるような段階になっているかどうか。

辻井座長  どういうことが行われているか、口頭でお話をしていただこうと思ったのですが、今のは早めにメール等で、ただメールで流すといろいろ転々流通しますので。

中川理事  今の件につきましては、私どもは執行部として相当時間をかけまして、いろいろの議論をしているところでございます。それでまだ骨格を、正直申し上げて議論の最中でございまして、そういうことで先程、若干、スケジュールの齟齬が生じたことは承知しております。 それは反省して、できるだけ次回にお諮りしたいと思います。事前にある程度、出していくのは、少し実務的な作業としてむずかしいと思いますので、今回につきましては、おそれ入りますが、差し支えない資料はなるべく早くお出ししたいと思いますが、プランについては、その場でご説明をさせていただくということですと大変ありがたいと思います。いかがでしょうか。

辻井座長  それではそういうことで。どうもありがとうございました。

−閉会−

                                                                         
(5/5) 戻る