青少年と放送に関する専門家会合 NHK information
 
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1 日本放送協会
平成11年6月16日
日 本 放 送 協 会
青少年と放送に関する専門家会合
NHKの施策
 
 
はじめに
 
 わが国では、テレビ放送が始まって46年、日進月歩の技術革新の恩恵を受けながら、テレビ・メディアは高度情報化社会の実現に大きく貢献してきた。今や、国内はもとより世界中の多様な情報に誰もが瞬時に触れることが出来る時代となった。
 テレビが、他のマスメディアと大きく異なる特性は、映像と音声による多彩な表現力にある。視聴者の視覚と聴覚に直接訴えることは、報道の分野は勿論、教育、教養、芸術、娯楽などのあらゆるジャンルにおいて、幅広い世代に大きな訴求力、影響力を発揮する。この、テレビならではの特性が、人々の社会的知見を高め、暮らしを豊かにし、情操を育むことにつながり、テレビはマスメディアの中でも特に高い支持を獲得している。
 そうしたテレビの特性を考えるとき、心身ともに発達の途中にある子どもや青少年がテレビから受ける影響を、十分に配慮することが不可欠であると考える。とりわけ、暴力的表現や性についての扱いは、表現の自由を堅持するためにも、自らの責任において、熟慮と慎重さを銘記して対応すべきである。
 公共放送NHKは、テレビ草創期から一貫して放送番組基準を遵守して、子どもや青少年の豊かな心を育み、心身の健全な発達に資する放送に努めてきた。時代とともに変容する青少年の社会環境や意識については、継続的な調査・研究を重ね、その結果を番組制作に反映させている。
 今日、少年事件の多発や教育現場の混乱など、子どもや青少年の心の荒廃が叫ばれるなか、21世紀に向け次世代の担い手である子どもや青少年に夢と感動を与え、豊かな情操を育てる番組の制作・放送が重要な課題である。公共放送NHKは、この課題に対し、これまでにも増して、真剣かつ誠実に取り組んでいく。
 以上の基本認識に立ち、NHKは公共放送として、青少年と放送の問題に対し、改めて以下の8項目の施策を掲げ、具体化を進めることとする。

 
 
1.青少年向け番組の充実
 
 NHKは、「国内放送番組編集の基本計画」ならびに「国内放送番組編成計画」等により、21世紀の担い手である10代の子どもたちの心の世界を受け止めながら、子どもたちが抱える悩みや問題に真正面から取り組む。
 具体的には、総合テレビと教育テレビを中心に、親子・友人・先生など、身近な人間とのコミュニケーションを伝える番組や、夢・冒険・友情・心の悩みなどを描くドラマなど、繊細な感性を持つ青少年に夢と感動を与え、心を豊かにしていく番組を積極的に編成し、さらなる充実を図る。
 番組:「課外授業 ようこそ先輩」「ドラマ愛の詩」「ききたい! シリーズ」 「YOU&MEふたり」「シャルル・デュトワの若者に贈る音楽事典」など
 また、学校等での有効活用に資するため、平成11年度は、教育テレビの深夜の放送時間を延長して、「学校放送番組を集中編成するゾーン」を新設する。

 
 
2.メディア・リテラシーの向上
 
 NHKは、学校現場や子どもたちに向かって、メディアを学んだり、送り手と受け手の関係を理解するうえで手掛かりとなる番組を積極的に制作し、あわせて、海外でのメディア・リテラシーの活動の様子を定時番組や特集番組で紹介する。
 また、放送以外の活動として、学校向けビデオの貸出、番組制作体験の場の提供などを引き続き行う。
番組:「教育トゥデイ '99 メディアと教育」「週刊こどもニュース」 「こどもスペシャル テレビ調査本部」など
活動:「週刊こどもニュースができるまでビデオ」「キッズTVユメディア号」

 
 
3.青少年と放送に関する調査等の推進
 
 NHKは、テレビが子どもに与える影響に早くから注目し、継続的に調査・研究を行ってきた。今後も、「日本人とテレビ2000調査」(5年ごとに実施)、「子ども向け番組・視聴反応調査」「幼児視聴率調査」などを実施する。あわせて、これまで実施してきた、「メディアと中学・高校生」等の小・中・高校生のテレビ視聴関連調査のデータを再分析して、番組の企画や編成に反映させていく。
 さらに、「青少年へのメディアの影響」等の調査が大学や専門調査機関等で実施される場合には協力する。

 
 
4.第三者機関の活用
 
 放送事業者の自主的な機関として、放送番組向上協議会に「青少年と放送委員会」(仮称)を設置する。この委員会は、視聴者からの番組に関する意見や提言・苦情を受け付けることを主な役割とする。その中から必要に応じて委員会で議論し、活動内容や放送事業者の対応等を委員会報告等で公表する。これによって、視聴者と放送事業者を結ぶ回路としての役割を果たし、青少年向け番組の一層の向上に寄与する。
 上記の委員会を発足させるため、「専門家会合」終了後、速やかにNHKと民放連が主体となる「準備委員会」を発足させ、来年4月のスタートを目指す。

 
 
5.放送時間帯の配慮
 
 NHKは、公共放送として国内番組基準に則って青少年の健全な育成に資する番組を制作し、放送することを基本としており、今後とも、この精神を貫いていく。
 したがって、時間帯に制限を設けて青少年を保護するというよりは、青少年が見やすい時間帯を意識し、積極的に青少年向けの良質な番組を編成する。平成11年度には、番組のゾーンを設定し、青少年にわかりやすくした。時間帯の設定にあたっては、「国民生活時間調査」や「全国個人視聴率調査」等にあらわれた、青少年の起床在宅率などを参考にする。
ゾーン:
「少年少女アワー」(ETV)
月〜木 18時から19時10分
金・土 18時から19時45分
日   18時から19時40分
「日曜ファミリータイム」(GTV)
日 10時30分から11時54分

 
 
6.番組に関する情報提供の充実
 
 記号による画一化された番組情報(レイティング)では、放送事業者と視聴者との間に大きな誤解を生じる可能性がある。NHKは、従来から番組タイトルや内容の告知を工夫することで、放送の内容や視聴対象を周知するよう努めてきたが、放送時間の拡大やチャンネル数の増化が進むなかで、その意図が思うように伝わりにくい状況が生じてきている。
 したがってNHKは、新しい広報番組を設けるなどして、視聴者からの疑問に答えるとともに、視聴者が放送の内容や意図を正しく理解できるよう努める。さらに、青少年の健全な育成という視点も加えながら、番組情報の提供をいっそう充実させていく。
 また、広報番組以外にも、新聞、週刊誌、テレビ専門誌等を積極的に活用するとともに、インターネットホームページでの番組情報の提供を充実する。
 新設広報番組:「NHKプレマップ」「土曜スタジオパーク」など

 
 
7 Vチップ
 
 今後とも情報の収集に努める。
 
 
8.その他(民放連との番組の制作)
 
 NHKと在京民放各社で、年2本(各45分程度)の「子どもとテレビ」(仮題)を題材とした番組を制作し、幅広く議論の素材を提供する。
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