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あの老舗書店も閉店 本屋さんどうしたら残せる?

最近、街の本屋さんが少なくなったと感じませんか。雑誌の売り上げの不振やネット書店の普及で、全国の書店の数は2000年と比べて4割も減少しているんです。急速に街から姿を消す本屋さん。今、地域で支えようという動きが出ています。(ネットワーク報道部記者 野町かずみ、青森局 山内洋平、高松局 目見田健)

林真理子さんも愛した老舗書店が…

東京 渋谷にある創業40年の「幸福書房」。小田急線代々木上原駅前にある20坪ほどの家族経営の書店です。

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店長こだわりの品揃えに加え、朝8時から夜11時まで店を開けて、夜遅く立ち寄る客のニーズにも応え、地元の人たちから愛されてきました。近所に住む作家の林真理子さんのサイン本が購入できる店として「林真理子さんのファンの聖地」としても知られています。

ところが「幸福書房」は今月20日で閉店することになりました。

人通りも多い駅前の店だけに閉店は多くの人たちに衝撃を与えました。

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常連客の1人は「朝と夜の2回来ていたので、自分の体の一部がなくなるような感じです。本当に残念です」と話していたほか、閉店と聞いて涙ぐむ常連客もいました。

閉店の理由は、インターネットの普及で雑誌や本の売り上げが減少していることや、体力的にも長時間、店を開けることが難しくなったからだということです。

岩楯幸雄店長は「昔みたいに雑誌や文庫が売れない時代で、資金繰りが大変。本1冊の売り上げに対する本屋のマージンは非常に低くて、正直言って、言うのも恥ずかしいほどの給料しか取れていないですし、もう今が潮時かと思いました」と話していました。

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この書店を、こよなく愛してきた作家の林真理子さんは「駅を降りて、ぶらっと本屋さんに立ち寄って、ちょっと雑誌を買って新刊書も買うという習慣が消えていくのはとても寂しいです。あ、こんなおもしろい本と出会ったという経験ができる“街の本屋”という空間は得がたいものなんです」と残念そうに話していました。

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年々減少する書店

民間の調査会社アルメディアによりますと、全国の書店の数は、去年5月の時点で、1万2000店余り。2万店以上があった2000年に比べ、9000店余り、割合にして43%も減っています。

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背景には、書店の売り上げの半分以上を占めると言われる雑誌の不振やネット書店の広がりがあります。

出版取り次ぎ大手のトーハンの調べによりますと、去年7月の時点で全国のすべての自治体のうち2割にあたる420の自治体には書店が1店もありません。

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自治体が書店運営に

こうした中、書店の経営を地域で支えようという動きも出てきています。

青森県八戸市。読書家の小林眞市長の発案で、行政が書店の運営に乗り出しました。おととし12月にオープンした市営の「八戸ブックセンター」。

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店に並ぶ本は、およそ8000冊ですが、売れ筋の雑誌やベストセラーの本は置かず、あえて、地方では手に入りにくい専門書などを取り扱っているのが特徴です。

落ち着いた環境で本が選べるよう、店にはいすが置かれているほか、ハンモックもあります。

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本の売り上げで賄えない運営費は市の予算を充てており、まさに“公共施設”の位置づけ。

小林市長は「本屋が街から消えていく状況は寂しいことだが、あえて行政サービスで取り組むこともあるのではという一つの提案です。経営的に成り立たない品ぞろえとなっているが、行政だからできることをしたい」と話しています。

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クラウドファンディングで書店を

「街の小さな本屋の灯を消したくない」と、個人の資金を募って、街の書店を支援する動きもあります。

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去年8月に、オープンした高松市の「本屋ルヌガンガ」。

「クラウドファンディング」という仕組みを活用し、インターネットを通じて一般の人から開業資金の一部を募りました。

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店を開いたのは、大型書店で勤めた経験のある中村勇亮さん(35)と妻の涼子さん(41)です。店主の目利きで選んだ、絵本や国内外の小説やエッセイなど6000冊をそろえています。

自宅でくつろぎながら本を読んでいるような空間にしたいと階段状のいすや大きなダイニングテーブルを置き、コーヒーを飲みながら本を選ぶことができます。

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こうした店のコンセプトに共感して、集まった寄付は75万円。目標の50万円を大きく上回りました。店では、クラウドファンディングをきっかけに生まれたつながりを生かしたいと、寄付した人には特典として、この店で使える専用の図書カードを贈りました。

店主の中村さんは「このような小さな街の本屋をみんな求めているし、残ってほしいと思ってくださっていると強く感じ、街の人と一緒に作り上げるという形を選びました」と話していました。

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街に出て、本を買おう

作家の林真理子さんは、ネット書店の利便性を認めながらも、本との思わぬ出会いが書店に通う魅力だといいます。

林さんは「棚からの本の声を聞いてほしい。あ、こんな本もあったかとか、こういう分野のものもおもしろそうだって、どんどん(棚の本に)手が伸びていくのが本屋さん。ほしいものを買うのではなく、ほしいものを見つけに行くのが本屋さんのよいところです」と話しています。

最近、電車に乗っても本を読む人よりも、スマホを見ている人の方が目立つようになりました。私たちがスマホにばかり目を落としている間に、ふと気がつくと、近所の書店は姿を消し、思わぬ本との出会いを求めて、書店をぶらつく楽しみもなくなる日が来るかも知れません。

休日や会社帰り、近所の“本屋さん”に立ち寄って、本を手に取ってみませんか。

野町かずみ
ネットワーク報道部記者
野町かずみ
山内洋平
青森局記者
山内洋平
目見田健
高松局記者
目見田健