ニュース画像

WEB
特集
出口調査から見える衆議院選挙

台風21号が近づく中で行われた第48回衆議院選挙。結果は、自民党が選挙前と同じ284議席を獲得し大勝、民進党が分裂して新しく設立された立憲民主党が野党第1党に、小池東京都知事が代表を務める希望の党が選挙前議席を下回る50議席などという形になりました。

解散から投票日まで3週間余りの短期決戦となった今回の選挙で、有権者は、各党の主張や安倍首相の政権運営などをどのように判断し、投票したのでしょうか。全国の4000か所余りの投票所で行った出口調査(※1)の結果や国勢調査のデータを基に分析します。
(報道局選挙プロジェクト 久保隆 ネットワーク報道部 栗原岳史 斉藤一成)

どんな支持層が1票を投じた?

まず、投票した人たちがどの政党を支持しているのか、全国の集計結果を見てみます。

ニュース画像

上段が今回、下段が前回2014年12月の第47回衆議院選挙のデータです。今回、前回ともに自民党は42%、公明党は5%と、与党の支持層の割合は同じでした。選挙直前に相次いで設立された2つの政党は、希望の党が6%、立憲民主党が8%でした。準備期間がより短かった立憲民主党のほうが、希望の党より支持層を拡大しています。こうした政党の支持層の厚さが、一定程度、選挙結果にも反映していることがうかがえます。

“無党派層”の投票行動は?

勝敗のカギを握ったのは、「特に支持している政党がない」と答えた、いわゆる無党派層の動向です。今回の選挙では、全体の27%を占めています。この無党派層が、比例代表でどの政党に投票したのか見てみます。

投票先で最も多かったのが、立憲民主党の30%。次いで、自民党、希望の党などと続きます。立憲民主党が躍進した背景には、この無党派層の支持が多かったことも1つの要因になっていることがわかります。

それぞれの政党の支持層が、どの政党に投票したのか見てみます。自民党は、「自民党支持層」の大半と「無党派層」の一部から得票し、公明党は、大半を「公明党支持層」から票を得ていることがうかがえます。この割合は、前回の衆議院選挙の時とほとんど同じで、大きな変化は起きていません。

一方、野党は、民進党の分裂という状況が作用して政党の構図に大きな変動があったうえ、自民党や公明党の支持層から得た部分もわずかです。野党には、与党支持層を取り込むほどの勢いはなかったようです。

政権批判票の行方は?

続いて政権批判票の行方を見てみます。出口調査では、安倍首相の政権運営についても有権者に尋ねました。「評価する」は56%、「評価しない」は44%でしたが、「評価しない」層の投票先は、大きく3つに分かれました。

ニュース画像

この層の8割以上が野党に流れていますが、内訳では、立憲民主党が37%、希望の党が25%、共産党が14%などと、投票先が分かれています。

「評価しない」という政権批判票が分散したことも、野党が与党を崩せなかった要因と言えそうです。

年代別の投票先は?

今回の衆議院選挙は、総選挙として初めて選挙権年齢が18歳以上に引き下げられて行われました。総務省の速報値によりますと、18歳と19歳を合わせた推定の投票率は41.51%。衆議院選挙全体の確定投票率 53.68%と比べると12.17ポイント下回る結果となりました。

若い層を含めて、年代別の投票先はどうだったのか見てみます。

ニュース画像

若い層は自民党。年齢が高くなるほど、野党に投票したという層が増えていきます。ただ、どの年齢層でも、比例投票先の第1位が自民党であることは変わりません。

希望の党と立憲民主党 どこで差がついた?

それでは、選挙直前に設立された、希望の党と立憲民主党について、どの程度、支持が広がったのか、都道府県別に見ていきます。

まず希望の党です。下の日本地図は、色が濃いほど支持層の割合が高いことを表しています。希望の党の支持が多かったのは、山形県や静岡県。逆に最も少なかったのは、日本維新の会との候補者の“すみわけ”で希望の党が候補者の擁立を見送った大阪府でした。

注目はやはり、東京都です。ことし7月の東京都議会議員選挙では、小池東京都知事が率いる都民ファーストの会が大旋風を起こしましたが、今回の衆議院選挙では、支持層の割合は、全国的に見ても中位にとどまりました。

ニュース画像

続いて、立憲民主党について見ていきます。

立憲民主党の支持層の割合が最も多かったのは北海道。枝野代表のおひざ元の埼玉県も支持層が多いのが特徴です。

希望の党の設立後、理念や政策の違いから枝野代表が立憲民主党を設立しましたが、24の都道府県で立憲民主党の支持層が希望の支持層を上回りました。

ニュース画像

新たな分析も

さて、NHKでは、今回の出口調査で得られた膨大なデータを新たな手法で分析しました。すると、有権者の政治意識や投票行動、それに地域性の間に一定の関係が見られることが分かってきました。

「安倍政権の評価」と「政党得票率」

まず、「安倍政権への評価」と「比例代表の投票先」を選挙区ごとに見てみます。

下のグラフは、1つひとつの点が小選挙区を表しています。ポインタを合わせると選挙区の名前が表示されます。

縦軸は、出口調査で尋ねた「安倍総理大臣の政権運営への評価」を数値化し、選挙区ごとにまとめた値(※2)です。上のほうの選挙区は安倍政権への評価が高く、下の選挙区は低くなっています。

横軸は比例代表の各政党の得票率です。下のボタンで、自民党、希望の党、立憲民主党を選べます。右のほうの選挙区はその政党の得票率が高く、左は低くなります。

自民党のグラフを見ると、左下から右上に伸びる斜めの分布が見られます。

安倍政権の評価が高い選挙区では自民党の得票率が高く(グラフの右上)、低い選挙区は得票率も低くなっているのです(グラフ左下)。ちなみに、評価が高い上位4つは、安倍総理大臣のおひざ元、山口県の4選挙区でした。

一方、立憲民主党のボタンを押すと、安倍政権への評価が低い選挙区で得票率が高くなり(グラフの右下)、評価が高いところは得票率が低い様子がうかがえます(グラフ左上)。

「小池氏の評価」と「政党得票率」

次に、「小池百合子氏への評価」と「比例代表の投票先」を見てみます。

縦軸は、出口調査で尋ねた「小池百合子氏の政治行動への評価」を数値化し、選挙区ごとにまとめた値(※3)です。上のほうの選挙区は評価が高く、下は低くなっています。横軸は、前のグラフと同じ、比例代表の各政党の得票率です。

希望の党のグラフを見ると、左下から右上に伸びる分布が確認できます。評価が高い選挙区で得票率も高く、評価が低いところでは得票率も低い。納得の結果と言えます。

ポインタを動かしてそれぞれの点がどの選挙区かを見てみると、実は、東京の小選挙区のほとんどは、小池代表の評価が、全国平均(緑色の横線)を下回っているのです。
都民ファーストの会が圧勝した、ことし7月の東京都議会議員選挙から一変して、厳しい評価になったことがうかがえます。

地域の特性も

さらに、国勢調査などの別の統計データを組み合わせ、独自に分析してみると、地域によって異なる特性が見えてきました。

上のグラフは、1つひとつの点が小選挙区で、当選した候補の政党を色で表しています。ポインタを合わせると、選挙区と当選者の名前が表示されます。

縦軸に、選挙区ごとの人口密度(※4)を当てはめてみました。おおむね、上にいくほど人口密度が高い、いわゆる“都市部”になります。横軸は、「投票の際に最も重視したこと」として、下のボタンの項目を挙げた人の割合を示しています。

興味深いのは、「消費税増税」と「憲法改正」です。

まず、「消費税増税」のボタンを押すと、右にいくほど「消費税増税への対応」を重視した人の割合が多くなります。このグラフでは、左上から右下に伸びる分布が現れます。上のほうの“都市部”では「消費税増税」を挙げた人が少なく、下の“地方”にいくほど重視した人が多い傾向が見られます。

一方、「憲法改正への対応」を見ると、逆の傾向があります。“都市部”ほど関心が高く、“地方”では低くなる傾向が見られます。

「原発への対応」や「北朝鮮への対応」などはグラフが縦に伸び、地域による差があまり見られませんでした。

縦軸を、「人口密度」から「第1次産業就業者の割合」(※4)に変えてみました。

これも、おおむね“都市部”か“地方”かを表す指標と言え、有権者の関心は同じような傾向を示しました。

こうした傾向は、選挙結果に影響したのでしょうか。

例えば、希望の党は公約に「消費税の凍結」を掲げ、東京など都市部の議席獲得に力を入れていました。しかし、都市部では消費税への関心が比較的低い傾向がうかがえます。得票が伸び悩む背景の1つになったとも考えられるのではないでしょうか。

議席の向こうにある有権者の意識

分析を監修した、学習院大学の福元健太郎教授(計量政治学)は「出口調査を詳細に分析すると、選挙結果の背後にある有権者のさまざまな意識を知ることができる」と指摘しています。選挙で決まった議席数だけに注目するのではなく、その先にある有権者の意識をくみ取り、政策に反映させていく…。有権者1人ひとりの協力で得られた膨大なデータと向き合った私たちは、選ばれた政治家にはその大きな責任があると感じました。

ニュース画像


(※1)出口調査:NHKが10月22日の投票日当日、全国の4000か所余りの投票所で投票を済ませた有権者40万人余りを対象に出口調査を実施、67%にあたる約27万3000人から回答。(期日前投票の有権者は調査の対象外)

(※2)出口調査の「安倍総理大臣の政権運営」についての質問で、
「大いに評価する」という回答を2点、
「ある程度評価する」を1点、
「あまり評価しない」を-1点、
「全く評価しない」をー2点とし、
合計を回答者数で割った値。

(※3)出口調査の「小池百合子氏の政治行動」についての質問で、
「大いに評価する」という回答を2点、
「ある程度評価する」を1点、
「あまり評価しない」を-1点、
「全く評価しない」をー2点とし、
合計を回答者数で割った値。

(※4)選挙区ごとの「人口密度」や「第1次産業就業者の割合」のデータは、東京大学 西沢明 特任教授が平成27年の国勢調査をもとに作成。
http://www.csis.u-tokyo.ac.jp/~nishizawa/senkyoku/index.html
(NHKを離れます)

栗原岳史
ネットワーク報道部記者
栗原岳史
久保隆
報道局
選挙プロジェクト記者
久保隆
斉藤一成
ネットワーク報道部
テクニカルディレクター
斉藤一成