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“一斉解除” 避難区域の将来は?

原発事故から6年がたった福島県では、3月末から4月初めにかけて、帰還困難区域を除く多くの地域で、避難指示が一斉に解除されます。一つの節目とも言えますが、復興はむしろ、ここからがスタートです。福島第一原発のある双葉郡では、人口が震災前の4分の1程度まで減少する可能性があり、行政サービスの維持など課題は山積しています。こうした地域の現状と将来に向けた課題について、福島放送局の大崎要一郎記者が解説します。

“一斉解除”

原発事故から6年が過ぎ、福島県内では、3月31日に浪江町と飯舘村、川俣町山木屋地区で、4月1日に富岡町で、それぞれ帰還困難区域を除く地域の避難指示が一斉に解除されます。これで、放射線量が比較的高い帰還困難区域を除く、大部分の避難指示が解除されることになり、対象となる人は最も多かった時の8万7000人から28%程度の2万4500人に、面積も1150平方キロメートルから3分の1の369平方キロメートルに大きく減少します。

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(飯舘村は平成27年度調査)

多くはない帰還の意向

ただ、避難指示が解除されれば、町や村が元どおりになるわけではありません。住民の帰還を進め、いかに復興させていくかは大きな課題です。
復興庁が住民に対して行った帰還に関する調査では、戻りたいと答えた人の割合は、人口が1000人余りの川俣町でこそ40%を超えますが、富岡町で16%、浪江町で17.5%、飯舘村でも30%余りと高くはありません。理由としては、原発の安全性や放射線への不安があることや、住宅が確保できていないこと、医療や介護など地域の生活環境が整っていないこと、それに、すでに避難先で生活の基盤ができていることも多く挙げられています。

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福島の復興について研究してきた福島大学の今井照教授は、こうした帰還の進みにくさについて、「原発への不安や、生活環境の厳しさがある、リスクの高いところに、あえて戻る必要はないわけで、今は戻らないという選択は十分にありうる。この戻りにくさが、原発事故による被害の最大の特徴だ」と話しています。

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どれほど人は戻るのか?

すでに避難指示が解除された地域でも、帰還した住民は多くありません。今後、住民はどれほど戻るのでしょうか。
今回、私たちは、自治体の人口推計や、復興計画にある目標人口などを基に、2035年までの、福島第一原発がある双葉郡の人口の推移をまとめました。その結果、外部からの人口の流入がほとんどない厳しい状況を想定したケースでは、18年後の双葉郡の総人口は2万500人余りと、原発事故の前の7万4000人余りから4分の1程度まで減少する可能性があります。また、原発の廃炉のための作業員が定住することなどを折り込んだケースでも、総人口は3万200人余りで、事故の前の4割程度にとどまっていました。

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人が戻らない自治体は…

人が戻らない自治体では、どんなことが起きるのか。それを知る手がかりが、すでに避難指示が解除された地域から見えてきました。
おととし9月に避難指示が解除された楢葉町は、帰還した住民が今も1割余りにとどまっていて、行政サービスの維持が課題になりつつあります。

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町は、すでに帰還がある程度進んでいる広野町など、4つの町と共同で水道事業を行っています。しかし、利用者が激減してしまったことで、経営を維持することが危うくなっているのです。現在は、東京電力からの賠償金でなんとか維持していますが、賠償が確実に見込めるのは来年度までで、水道企業団の今後10年間の財政計画では、現在の水道料金のままでは7年後の2023年度に運営に必要な資金が底をつくと試算しています。
水道企業団の担当者は、「このままでは料金を3倍にしないと元が取れない。しかし、そのような水道料金は現実的でない」とこぼします。

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避難区域の将来は?

実は今、避難区域を抱える自治体は、避難中の住民の税金などを免除していて、その分、国から補填(ほてん)を受けています。ただ、この支援もいつまで続くか不透明な状況です。
自治体の財政に詳しい専門家は、この支援が終わってしまえば、人口減少と財政難に一層の拍車がかかると懸念しています。福島大学の清水修二特任教授は「住民税や社会保険料の減免が打ち切りになると、住民票を持っている実利的な意味、経済的な意味が大きく失われる。その支援がなくなったときにガタガタと住民の数が減ってしまう可能性がある。そうなると税収の基礎になる住民登録数が大きく減るわけなので、これは自治体にとって打撃になる」と話します。

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あるべき復興のかたち

人口が戻らず、自治体の財政の悪化も懸念されるとなると、今後、こうした地域はどうなるのか。
清水教授は「原因が人為的な事故なので、国がそれを放置するわけにはいかない。なんらかの手当てはしなければいけないし、当然、されると思う」として、国の支援が継続されるという見通しを示したうえで、「福島第一原発はここ数十年は廃炉の作業が続くので、それなりの資源、人員の投入が続く。ある意味、それが地域を支える期間が一定程度続くと思う」と話します。
一方、今井教授は「時間をかけて戻る人がいる場合は、その人たちがしばらくの間、過ごせるような住宅を支援することは大事」と話し、避難指示の解除後も住民への支援を継続する必要性を訴えます。さらに、現在、巨額の予算を投じて集中的に進められている復興事業については、「その時点、その時点で、適切な方法をとっていかなくてはいけない。あまり過大な目標とか、過小な目標ではダメで、成長が見込めない社会で負担だけを背負ってしまうと、非常に大変なことになる」と話し、人口の回復状況に応じて段階的に進めるべきだと指摘しています。

復興に長期的な視点を

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現状と正面から向き合えば、原発事故による避難区域が解除されても、町や村を元に戻すことが容易でないことは明らかです。そもそも、福島第一原発の廃炉には30年から40年かかるとされているわけで、避難区域の復興にも、長期的な視点が必要なのではないでしょうか。

大崎要一郎
福島放送局
大崎要一郎 記者