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財政の黒字化 歳出膨らんでも達成可能?

財政の健全性を示す「基礎的財政収支」。政府は国と地方をあわせた基礎的財政収支を「2025年度に黒字化する」という目標を掲げています。先日、国は最新の試算を公表しました。新型コロナウイルスも大きな影響を及ぼすなか、国の財政はどうなっていくのでしょうか?財政の取材を担当している山田裕規記者、教えて!

そもそも「基礎的財政収支」って、どんな指標なんですか?

山田記者

社会保障や公共事業など、政策にあてる経費を借金に頼らず税収などでどれだけ賄えるかを示す指標で、「プライマリーバランス」とも呼ばれます。

税収などがこの経費に対して不足すれば収支は赤字になり、その分借金が増えることになります。

日本の現状は?

山田記者

国の財政は年々悪化していて、国の借金の残高は今年度末に1000兆円を超えると見込まれているんです。

こうしたなか政府は現在、「2025年度の国と地方合わせた、基礎的財政収支の黒字化」という目標を掲げています。

新型コロナの影響も心配です。今回、どんな試算が公表されたんですか?

山田記者

内閣府は基礎的財政収支の見通しについて2種類の試算を公表しました。

このうちの1つが、経済成長率を物価の変動を除いた「実質」で2%程度、物価を加味した「名目」で3%程度を上回る高めの経済成長を続けた「成長実現ケース」です。

この場合、一定の条件のもと「2025年度の黒字化も可能」としています。

どういう内容なんですか?

山田記者

具体的に説明しますね。

こちらのグラフをご覧ください。青線のグラフが、「成長実現ケース」を示しています。

まず、今年度・2021年度の「基礎的財政収支」は42兆7000億円という大きな赤字になっています。

と言うのも、新型コロナ対策などで去年11月に30兆円を超える規模の補正予算を編成したので、赤字が膨らんだんです。

ただ、新年度・2022年度は国の税収が65兆円あまりと過去最高を見込んでいるので、赤字は35兆円に縮小。

その後も高成長が続き、2026年度には2000億円とわずかながら黒字になると見込んでいます。

それって、目標に1年届かないということ?

山田記者

確かに、目標に1年届きませんが、試算では、社会保障費の伸びを抑えるなど歳出改革を続けるという条件付きで、2025年度には2兆2000億円の黒字化が「視野に入る」、つまり政府の目標達成は可能だとしています。

岸田総理大臣も、この試算が報告された経済財政諮問会議で、2025年度に黒字化するという政府目標を維持する姿勢を強調しました。

でもそもそも、試算の前提になっている経済成長率って実現可能なんですか?

山田記者

疑問に思いますよね。試算の前提として「名目3%程度を上回る成長率」を見込んでいますが、実は過去20年余りの間、成長率が名目で3%を超えた年度は1回しかないんです。

日本経済の実力と言われる「潜在成長率」も、2005年度以降は1%を下回る状態が続いていますから、「実質2%、名目3%」という前提自体が「あまりに楽観的」だという指摘もあります。

経済財政諮問会議でも、民間議員からは「試算の経済前提や予測のあり方などについて検討を深めるべき」という意見も出されているんです。

ちょっと、現実的ではないってことですね。ところで、もう1つの試算は、どのような内容だったんですか?

山田記者

もう1つは、実質で年間1%程度、名目で1%台前半程度の経済成長が続く「ベースラインケース」です。

先ほどのグラフの赤線の部分を見てください。

この場合、2025年度は4兆7000億円の赤字で、試算の最終年度である2031年度でも4兆6000億円の赤字が残るという見込みになっています。

さらに国は毎年度、当初予算と別に補正予算も編成します。

しかし、「成長実現ケース」「ベースラインケース」ともに新年度以降の試算では補正予算が計算の考慮に入っていません。

このところ新型コロナ対策として大型の補正予算を編成することが続いていますから、実際には、赤字はもっと大きくなる可能性があります。

いずれにしても、黒字化の達成は大変そうです。達成に向けて、何が必要ですか?

山田記者

政府は、「基礎的財政収支の黒字化」という目標を長年掲げていて、そもそもは目標年度を2010年代初頭としていたんです。

ただ、景気悪化などを理由に、目標年度を繰り返し引き延ばしてきました。

政府はコロナ禍の中、財政出動が必要だという与党内の意見を受けて「経済あっての財政」としています。

しかし、際限なく借金を続ければ、将来世代にツケをまわすことになります。

新たな成長戦略によって日本経済の成長率の引き上げ、デフレの脱却、そして不断の歳出改革が求められると言えると思います。