23区新築マンション価格1億円超え なぜ?
東京23区で、去年1年間に発売された新築マンションの1戸あたりの平均価格は、1億1483万円と、初めて1億円を超えました。高騰の背景や今後の見通しについて、不動産調査会社「東京カンテイ」の井出武 上席主任研究員に聞きました。
東京23区の新築マンション、なぜ高騰しているのですか?
大きな理由の1つが、建設コストの上昇です。
建設資材の価格が上がり、輸入される資材もこのところの円安で価格が上昇しています。
マンションを販売する不動産会社は「コストが上昇する中でも利益を見込める物件を」と、都内でも人気のある地点で高級マンションを相次いで販売したため、全体の価格が押し上げられたとみられます。
さらに買い手側から見ても、住宅ローン金利が低い今のうちに買っておこうという動きが需要を後押ししています。
1億円超の物件は「億ション」とも言われますが、どんな人が買っているのですか?
まず、富裕層があげられます。
こうした層では、自分で住むためだけでなく、将来の価格上昇を見込んで、投資目的で購入する動きも見られます。
円安もあって、海外から見ると割安となるため、海外の富裕層も目立ちます。
そして、夫婦共働きで世帯収入の多いいわゆる「パワーカップル」の需要もあります。
ただ、マンション価格の上昇で、人気の地点の物件に手が届くような世帯の所得水準は、数年前より上がっているとみられます。
今後の価格の見通しは?
建設コストの高騰を受け、不動産各社は、新たなマンションの用地取得や建設に慎重になっています。
ことしはその影響を反映して高級マンションの供給が減少する見込みで、去年ほどには高騰しないとみられます。
一方で、ことし4月からは、建設業で時間外労働の規制が強化される影響で、人件費を含めて、建設コストがさらに高まることも予想されています。
こうしたことから、しばらくは高止まりの状態が続く見通しです。
金利の動向も気になりますね。
去年は、価格の上昇が過去に例を見ないほど急ピッチで進みました。
価格の上昇圧力が非常に高い状態で供給が進み、低金利が維持されたことが非常に大きく影響しましたが、ことしに関しては、金利が上がるのではないかということも想定される中では、わりと慎重なマーケットになる可能性もあると思います。
金利の動向次第で、買う時にどれぐらいの利回りが期待できるか大きく影響が出るので、富裕層や投資家など、比較的資金をたくさん持っている人にとっても、非常に重要な判断材料になると思います。
「勤務先に近い都心に住みたいけど、1億円では手が届かない」という方も多いと思います。
これから住居を購入したいという人はどうしたらいいのでしょうか?
東京23区を細かく見ることも1つの考え方です。
去年は、かなり高額な、しかも駅に近くて再開発物件でという物件がわりと市場をけん引したという側面がありました。
一方で、中心部から比較的離れたエリアでは、新築マンション1戸あたりの相場が6000万円ほどの場所もあります。
勤務先との距離が遠くても鉄道や地下鉄のアクセスはよい場合がありますし、駅の周辺が再開発され、住みやすくなっていることもあります。
街のイメージにとらわれず、現地を訪ねるなど、物件を幅広く探してみるといいと思います。
また、新築にこだわらないのであれば、中古マンションは郊外も含めて探すと比較的割安で、築年数が浅い物件もみられます。
築年数が長くなるにつれ、価格は安くなる傾向がありますが、今の耐震基準より古い建物などは購入した後のメンテナンスにお金がかかる場合もあるので、長期的な視点で必要な費用を見積もることが重要です。
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