NEW2023年04月28日

G7デジタル・技術相会合の焦点 DFFTって?

ネット通販の拡大や「ChatGPT」といった人工知能の開発などで、ますます重要性が高まる個人情報などのデータの取り扱い。29日に開幕するG7=主要7か国のデジタル・技術相会合でも、国や地域を越えたデータのやり取りの制度づくりが議題となります。日本政府は「DFFT」=信頼性のある自由なデータ流通を掲げて、議論を主導しようとしています。経済産業省を担当する小野志周記者、くわしく教えて!

DFFTって何の略ですか?

DFFTは「Data Free Flow with Trust」の頭文字で「信頼性のある自由なデータ流通」という意味です。

企業などが国境を越えてデータをやり取りする際の信頼性を高めていこうと、2019年に日本政府が各国に呼びかけました。

小野記者
小野記者

どうしてそんなことが呼びかけられたのですか?

企業や研究機関などが収集する大量のデータをどう活用していくかがますます重要になっているからです。こうしたデータは新たな製品やサービスづくり、AI=人工知能の開発など幅広い用途で使われています。

例えば、急速に利用が拡大している「ChatGPT」などの生成AIは、大量の文書や画像データを学習することで賢くなります。また、買い物の履歴や健康状態などのデータを活用して、より顧客のニーズを捉えた商品やサービスを提供することもできます。

一方で、こうしたデータには個人情報などが含まれ、利用の際にはきちんとプライバシーに配慮しているかや間違った情報が含まれていないかなど、十分に注意する必要があります。ただ、国や地域によって規制が異なっていたり不透明だったりして、企業がデータを利用する際の妨げになっているという指摘もあります。

そこで、企業の成長や技術革新につながるデータ活用とプライバシーなどの配慮をどう両立させていくか、各国で理念を共有し、制度づくりを進めていこうと、日本政府としてDFFTの重要性を呼びかけています。

小野記者
小野記者

そうなんですね。そもそもデータは自由にやり取りできないのでしょうか?

国や地域によって考え方が違うので、ルールも異なるケースが多くなっています。

グーグルやアマゾンといった巨大IT企業があるアメリカは、自由なデータのやり取りを重視しています。

一方、個人情報の保護などを重視するEU=ヨーロッパ連合では、データの取り扱いは厳格だと言われています。

また、中国のように国境を越えたデータのやり取りを厳しく規制する国もあります。

小野記者
小野記者

海外展開している企業にとっては大変そうですね。

そうなんです。

例えば、1か月で2000万人以上の利用者がいるフリマアプリ大手「メルカリ」は去年6月、インドにアプリ開発の拠点を設立しました。

しかし、拠点を作る前の準備では、インドにおける個人情報の取り扱いなどデータの利用や保護に関する法律や制度がどうなっているのか、確認するのにかなり時間がかかったそうです。

このため、今回のG7デジタル・技術相会合での議論を通じて、データの活用がしやすい環境の整備が進展してほしいと話していました。

G7の議長国である日本は、国際的なデータのやり取りでの障壁を取り除き、政府や企業などが連携した新しい制度づくりに道筋をつけたいとしています。

小野記者
小野記者

日本として、どのような制度を目指しているのでしょうか?

日本政府は、これから企業や研究機関の協力も得たうえで、誤った情報をチェックしたりプライバシーを守る技術をより一層高める取り組みを各国で進めたり、いわば信頼性の高いデータを扱っている企業や研究機関を対象にした認証制度のようなものを作ったりできないか、各国とともに検討を進めていきたいとしています。

また、各国のデータの利活用に関する制度や規制もよりわかりやすい形で企業などに示せないかも、G7以外の国々にも働きかけていきたいとしています。

小野記者
小野記者

経済成長につながるデータの活用と適切な保護が両立できるといいですね?

生成AIの急速な普及もあって、データの信頼性の確保や活用のあり方といった議論は今後さらに活発になっていくことが予想されています。

国によっては、規制を強化する動きも出るなかで、企業は各国政府の動きを注意深く見ていく必要がありそうです。

小野記者
小野記者