NEW2023年03月17日

花の価格も上昇?

3月から4月にかけては歓送迎会シーズン。出会いと別れの場を彩る花の需要も、1年の中で特に伸びる時期です。しかし花の価格がいま、例年以上に上がっているんです。いったいどうして?取材した新潟放送局の米田亘記者、教えて!

大切な人に贈る花を準備している人も多いと思います。

花の価格は、どれくらい上がっているんですか?

全国の業者が花を競りにかける、東京都中央卸売市場のデータによりますと、切り花1本当たりの市場価格は、去年の年間平均で80円となっています。

これは過去20年でみると最も高い水準で、20年で3割以上も高くなっています。

さらに、ことし1月には86円にまで上昇しました。

米田記者
米田記者

当然、私たちがお店で買う時の花の価格も上がっているんですよね。

私が勤務する新潟市の生花店を訪ねて聞いてみました。

新潟県はチューリップの切り花の産出額が全国トップで、送別シーズンの3月は需要のピークを迎えます。
この店では、チューリップの仕入れコストが例年の同じ時期と比べて2割ほど上昇していることから、取材した3月初旬の販売価格は1本275円と、70円ほど値上げしたということです。

米田記者
米田記者

花は何本かまとめて買うので、花束で買ったら、値上がり幅はもっと高くなりそうですね。

そうなんです。

この店では、客の予算に応じて花束をオーダーメードしていますが、値上げを受けて使う花の本数を減らしたり、比較的安い花に変えるなどして対応しているそうです。

生花店経営 丸山裕介さん
「例年この時期は花の需要が高まるので価格が上がりますが、ことしはさらに1~2割は高くなっています。イベントの減少で法人向けを中心に受注が減っており、売り上げも落ちています。経営状況は厳しさを増しています」

米田記者
米田記者

 なぜ、花の価格は上がっているんですか。

農林水産省の担当者によりますと、背景には「新型コロナウイルス」と「エネルギー高」の2つがあるということです。

米田記者
米田記者

この2つが、どう影響しているんですか?

新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年以降、結婚式や歓送迎会などあらゆる催しが自粛され、花の需要が減少しました。

さらに、チューリップなどは、送別シーズンの3月に合わせるため冬の間、農業用ハウスで暖房を使いながら育てますが、暖房に必要な重油の価格がコロナ禍前より3割ほど高騰しているんです。

米田記者
米田記者

生産者の方は大変ですね。

そうなんです。

このため花の生産者の間では、赤字を避けようと生産量を減らす動きが広がりました。

しかし、2022年ごろから冠婚葬祭をはじめとした社会経済活動が再開され始めると、急速に回復する需要に供給が追いつかなくなり、値上がりにつながっているということです。

米田記者
米田記者

それ以外にも、価格が上がっている要因はあるんですか。

新潟市でチューリップを生産する高野博さんの農園では、チューリップの栽培は新潟で行うものの、球根は品種が豊富なオランダやニュージーランドからの輸入に頼っています。

球根の輸入にかかるコストは、円安や輸送費の上昇などで、コロナ禍前と比べて2割ほど上がりました。

さらに物価高に合わせて従業員の賃上げにも対応したことで、会社の支出も膨らんでいるということです。

新潟市 チューリップ生産者 高野博さん
「チューリップ自体は50日もあれば栽培できますが、球根の輸入を含めると生産のスケジュールは1年単位で動いているため、急な需要回復に生産が追いついていないのが実情です。生産者はもともと高齢化で担い手不足が課題でしたが、今回の状況を受けて生産をやめる人が増えないか懸念しています」

米田記者
米田記者

この状況、いつまで続きそうですか。

市場関係者は「エネルギー高や円安などの状況が解消されれば、多少生産量は回復するかもしれないが、コロナ禍前のような価格に戻ることは考えづらい。価格の高止まりが続くと、し好品である花は『買われなくなる』おそれがある」と不安の声を上げていました。

一方で、生産者の高野さんは「コロナ禍の巣ごもり生活に入ってから、顧客から『花のおかげで明るい気分になれた』などの感謝のメッセージが増えた。花は今後も重宝される存在だと考えています」と話していたのが印象的でした。

私も花の産地・新潟から、今後の動向を見守っていきたいと思います。

米田記者
米田記者