NEW2023年02月21日

気球で宇宙を疑似体験って?

高度2万5000メートルの成層圏に、気球を使って行く、というツアーの募集が始まりました。丸い地球を実感できるという成層圏。いわば“宇宙の入り口”に、どうやって旅行に行くというのでしょうか?経済部の名越大耕記者、教えて!

成層圏って、どのあたりなんですか?

成層圏は、地上およそ1万メートルから5万メートルにある空気の層をさします。

ここまで上空に来ると、雲はなく、晴れていることが多いということです。

通常、飛行機が飛んでいるのは、高度1万メートル前後の場所です。

今回、気球で向かう地点は、地上から2万5000メートルあたりですので、飛行機よりも2倍以上高い場所に行くイメージです。

この写真は、成層圏から撮影した地球の写真です。

高度2万5000メートル
名越記者
名越記者

地球が丸みを帯びているのが分かりますね。

宇宙というのは、地上から100キロ以上の場所とされていますが、成層圏まで行くと、地球を見下ろすことができるそうです。

宇宙を疑似体験できるとして、北海道のスタートアップ企業と大手旅行会社が、気球で成層圏まで行けるというツアーを企画しました。

名越記者
名越記者

でも気球って、そんなに高い所まで飛ぶイメージがないのですが。

今回の気球は、ヘリウムガスを使い、高度4万メートルまで飛ぶことができるとしています。

ヘリウムガスの量を調整することで、成層圏まで到達するとともに、高度の維持や地上への降下を行うことができるそうです。

名越記者
名越記者

そんな高い場所まで行ったら、気圧も違うので大変そうですが。

通常の気球は、外気にさらされますが、このツアーでは、気圧が地上と同じ状態に維持される密閉されたキャビンを使います。

人が乗車するキャビン

2人乗りで、操縦者とペアで乗り込んで成層圏に向かいます。

地上から2時間かけて成層圏まで上昇し、1時間ほど宇宙や地球を眺めたあと、1時間かけて地上へ降りてくるということです。

名越記者
名越記者

訓練は必要なんですか?

いえ。

キャビンの中は、常に地上と同じ気圧で、操縦者も同乗しているとして、特別な訓練は必要ないとしています。

なお飛行する際には、他の航空機の航路を邪魔しないよう、飛行計画を事前に国土交通省の航空局に届け出ます。

名越記者
名越記者

キャビンで行くとはいえ、気球で成層圏まで行くというのは、なんだか不安です。

安全性はどうなっているのですか?

成層圏は、氷点下50度ほどという過酷な環境です。

そうした状況に耐えるため、気球は熱気球で使われるゴムではなく、特殊なプラスチックを素材としたバルーンを使用しています。

北海道の会社では、プロジェクトを実現するため、この気球を使って何度も実験を行い、安全性を確保したとしています。

気球を飛ばす実験の様子
名越記者
名越記者

費用はどれくらいかかるんですか。

価格は、1人2400万円です。

ことし12月以降に最初の打ち上げを予定していて、今月から乗客5人の募集を開始しました。

名越記者
名越記者

やっぱり、お高いですね…。

出発地は北海道の十勝地方で、乗客は1週間、飛び立てる天候を待つために現地に滞在します。

ただ、なかなか手をだすことができない価格ですので、会社では将来的に1人100万円台のツアーを目指しているということです。

気球を開発した岩谷技研 岩谷圭介社長

「普通に旅行に行くことと同じ感覚で、気球に乗って地球や宇宙を見る体験を身近にしていきたい」

名越記者
名越記者

宇宙を疑似体験できるツアーって、ほかにもありましたよね。

国内外でさまざまな企業が企画しています。

名古屋市のベンチャー企業は、飛行機で高度約1万メートルまで飛んだあと、急降下し、機内に宇宙空間の無重力に近い状態をつくり出すツアーを2024年末に開始する予定です。

宇宙にいるのと同じ無重力の状態を、25秒間体験できるそうです。

さらに、起業家のイーロン・マスク氏が率いる「スペースX」が2021年に民間人だけが搭乗して地球を周回する宇宙旅行を世界で初めて行うなど、民間人が実際に宇宙に行けるツアーも相次いで企画されています。

今後、技術開発などが進んでコストが下がり、価格が安くなれば、誰もが宇宙に行ける時代が来るかも知れませんね。

名越記者
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