NEW2022年12月14日

ポイント経済圏って、誰トクなの?

決済サービスのPayPay、ヤフー、LINEの3社は12月13日、飲料や日用品メーカー、小売店などと提携して、新たなサービスを始めると発表しました。来年3月からスタートするということです。どうしてこんなこと始めたの?経済部の谷川浩太朗記者、教えて!

PayPayが発表した新たなサービス、どんなものなんですか?

「マイレージ」というサービスで、提携メーカーが販売する対象商品を買うことで、ポイントとして、たまっていく仕組みです。

コンビニやスーパーでスマホ決済のPayPayで支払いをしたり、ヤフーの通販サイトで買い物したりするたびに、対象商品ごとにマイルが自動的に増えていきます。

一定量のマイルがたまると、店舗などで支払いに使えるPayPayポイントと交換できます。

つまり、利用者にとっては、スマホ決済で得られるもともとのポイントに加えて、新たに「マイル」のポイントも上乗せされる形です。

谷川記者
谷川記者

こうしたポイントの仕組み、競合他社の楽天グループの楽天PayやNTTドコモのd払いなど、たくさんありますよね。

新サービスのねらいは?

ひと言でいえば、自社の「ポイント経済圏」作り、お得なサービスを打ち出すことで、利用者を囲い込みたいという戦略です。

各社とも、キャッシュバックなどの還元キャンペーンによって、すでに多くの利用者を獲得しています。

一方で、各社のサービスが乱立する中で、ただ登録してもらうだけでは意味がなく、メリットを高めることでいつも使ってもらえるようにする、つまり「選ばれるアプリ」になることが競争の鍵になっているんです。

谷川記者
谷川記者

たしかに、各社が同じようなサービスをしているので、どれを使えばお得なのか、考えるのが面倒になると、いつも同じ決済サービスを使うかも知れませんね。

そうなんです。

だから、各社とも利便性の向上やお得感を出すことにしのぎを削っているわけです。

こうしたポイントサービス、1990年に大手家電量販店が顧客の囲い込みのために導入したことなどをきっかけに大きく広がったようです。

今でこそ、ポイントサービスは電子決済が中心ですが、もっと昔から、クリーニング店やラーメン屋さんで、スタンプカードとか、割引券とかを使って、お客さんに継続して利用してもらう工夫がされていましたよね。

楽天グループでは地方の有力スーパーを中心に楽天ポイントを普及させる戦略を進めていますが、これもスーパーのスタンプカードがデジタルに置き換わったのと同じですね。

「あそこのスーパーは、ポイントがたまるから」と、いつも行くお店として選ばれるようになっていく。

人間の心理を考えた戦略です。

谷川記者
谷川記者

今回の発表、飲料メーカーなどと提携して行うということですが、参加する企業にとってはどんなねらいがあるんですか?

実は利用者が得られるポイントの原資は、参加する企業が負担することになっています。

それでも企業が参加するのは、スーパーのスタンプカードと同じように、自社の商品を優先的に選んでもらうことに加えて、購買データを活用するねらいがあります。

今回のサービスで参加企業は、リアル店舗ではPayPayの、ネット通販ではヤフーの購買履歴を活用することで、利用者がいつどんな時に商品を購入しているか、正確に把握することができます。

プライバシー保護のため、個人は特定されないものの、データを活用することで、販売促進のキャンペーンなどを効果的に行うことが期待できるといいます。

今回のサービスにはLINEも加わっているため、利用者にキャンペーン情報を通知することにしています。

谷川記者
谷川記者

企業にとっても「お得」ということですね。

そうですね。

利便性を高めて、ポイント経済圏を広げるためには、利用者や加盟店に選ばれるだけでなく、メーカーに選ばれることも重要になってきたということだと思います。

今回のサービスに多くの企業が参加し、実際に軌道に乗るかはまだ見通せませんが、各社が競争する中で、利用者にとってメリットがある新しいサービスが生まれることに期待したいですね。

谷川記者
谷川記者