NEW2022年11月14日

ネット通販がリアル店舗 どうして?

ファッション通販の大手「ZOZO」が、自社として初めて、実際に店舗を構える新戦略を打ち出しました。ネット通販の拡大を追い風に成長してきた会社がなんでリアルに進出するの?流通・アパレル担当の河崎眞子記者、教えて!

新たにオープンする店舗では、どんなサービスが受けられるのですか?

来月、東京・表参道にオープンするこの店舗では、通販サイト「ZOZOTOWN」で扱う商品のうち、服や靴、アクセサリーなど約700点を取りそろえます。

ただ、店舗と言っても、ここで商品を買うことはできず、来店も完全予約制です。

では、何ができるかというと、プロのスタイリストが接客にあたり、AI=人工知能も活用しながら客に“似合う”服や靴などを提案してくれるのです。

スタイリストのデモンストレーション

客は事前にファッションの好みや悩みのアンケートに答えたうえで店を訪れます。店では、AIが客からの回答を踏まえて選んだ3種類のコーディネートをもとに、スタイリストが客から話を聞いて、より客のなりたいイメージに近づけていきます。

さらにヘアメイクと写真撮影も行い、スタイリングのアドバイスをつけて手渡します。サービスは無料で、客1人に2時間以上をかけて提供されます。

河崎記者
河崎記者

自分にあった服が見つかりそうですね。でも、店頭では買えないんですよね?

そうなんです。客が試着したコーディネートを気に入った場合には、会社の通販サイトを通じて、購入してもらうことになります。

店頭で売り上げを伸ばすのが目的ではなく、店舗はあくまでも客に商品を体験してもらう場になります。

河崎記者
河崎記者

では、なぜ通販サイトがこうしたリアルの店舗を開くのですか?

自社の通販サービスを向上させるには、対面でのサービスも必要だと考えたからです。

アパレル業界では、新型コロナの影響でリアル店舗の売り上げが落ちて、店舗の縮小が進んだ一方、オンライン販売は売り上げを伸ばす形とはなりました。

しかし、この会社では、自分に“似合う”ファッションを求める客のニーズに十分に応えるには、現状では対面でないとできないことがあると考えています。

澤田社長は次のように話していました。

ZOZO 澤田宏太郎社長

「これまでサイズの測定技術は開発してきましたが、“似合う”というのはサイズだけでなく、色味とか、本人の気持ちや好みとか、総合的に捉えて初めて完成します。このあたりは、どうしても対面で選ぶことを重視せざるをえない。それに、外見をぱっと見てすぐ似合うものが分かるのは、人間の感性がまだ勝っています」

河崎記者
河崎記者

リアル店舗の対面サービスをどうオンライン販売に生かすのですか?

会社のねらいの1つは、接客を通じてリアル店舗で“似合う”ファッションに必要なさまざまなデータを集めることです。そのうえで、そうしたデータを数値化して、人ではなく、AIなどが自動で提供できるサービスにしていこうとしています。

こうした技術を通販サイトに転用し、オンライン販売でも客に“似合う”ファッションを選んでもらえるようにすることで、ほかの通販サイトとの違いを打ち出したいと考えています。

澤田社長は「似合うファッションが分からなくて困っている人が多いものの、その悩みをバチッと解決できるサービスがまだないんですよ。ここに、ビジネスチャンスがあると思いました。ECサイトで商品を並べて売ることは誰でもできる時代になったので、差別化が必要なんです」と話しています。

河崎記者
河崎記者

リアルとネットの相乗効果をねらうこうした動きは広がっているのでしょうか?

はい。かつては小売業界もリアル対ネットという構図で語られることがありましたが、いまは様変わりしています。大手デパートでも商品を展示する機能を重視したスペースを設ける動きが相次いでいます。

ネット販売専用の売り場(高島屋新宿店)

例えば「高島屋新宿店」には陳列された商品の横にQRコードをつけて、それを客がスマートフォンで読み取ることで、オンラインで購入できるショールーム型のスペースがあります。

また、アメリカ発のベンチャー企業「b8ta」は、量販店ではあまり取り扱っていない家電製品や寝具などを手に取ったり、使ってみたりできる店を都内にオープンしています。買いたい場合は商品の横にあるタブレットを使って、インターネットから予約や購入をすることもできます。

ネットとリアル、それぞれの良さを掛け合わせて顧客のニーズに応えようという動きは今後も広がっていきそうです。

河崎記者
河崎記者