NEW2022年11月02日

すでに2割上昇 どうなる電気料金?

11月1日、東京電力はすべての家庭向けの電気料金のメニューを値上げに向けて見直すと発表しました。燃料価格の高騰を背景に、大手電力会社が発表した中間決算は、10社のうち9社で最終的な損益が赤字に。ことしに入って電気料金は2割上昇しています(東京電力)。われわれの電気料金はどうなるのか。エネルギーを担当する五十嵐圭祐記者、教えて!

そもそもですが、最近、電気料金を値上げするというニュースの中で「規制料金」という単語を耳にします。

これって一体なんですか?

「規制料金」は、国の認可を受けたうえで価格が決まる家庭向けの料金体系のことです。

電力の小売りは2016年に全面的に自由化されました。

私たちはさまざまなプランから自由に選んで、電気を利用できるようになりました。

その一方で、国は消費者の利益を守るため、料金の急激な上げ下げがないプランが必要だとして、自由化前から存在する「規制料金」という料金体系を残しています。

最大のポイントは「燃料費の高騰分を上乗せできる上限が設定されていること」です。

政府の認可がなければ、上限を超えて値上げすることはできません。

五十嵐記者
五十嵐記者

値上げするにも上限があるんですね。

利用者の立場からすると、いいことのように思えますが。

たしかに利用者の立場からすると、上限以上に値上げされることがないのは安心ですよね。

ただ日本の発電量のうち、現状でおよそ7割が火力発電に依存しています。

火力発電の燃料となるLNG=液化天然ガスや石炭・石油は、ロシアのウクライナ侵攻を背景に、かつてないほど高騰しています。

各社とも現在は、燃料の高騰分を自社で負担し続けていますが、その結果、ことし上半期の決算で10社のうち9社が最終赤字になりました。

このままでは安定的に電気を供給できなくなる、そうした状況を受けて多くの社が料金の値上げに踏み切ろうとしているのです。

五十嵐記者
五十嵐記者

各社の値上げに対するスタンスはどうなっているのですか?

地図にまとめてみました。

まず最初に規制料金の値上げを発表したのは北陸電力でした。

記者会見で松田光司社長は「経営の効率化を最大限に進めてきたが、企業努力で対応できる範囲を大きく超えた。お客様にはご負担を強いる事態になり大変心苦しいが、ご理解とご協力をお願いしたい」と述べ、来年4月から規制料金を含むすべての電気料金を値上げすると発表しました。

値上げ幅などが決まり次第、国に認可を申請する方針です。

そしてこれに続くように、東北電力と中国電力が値上げする方針を発表したほか、東京電力と四国電力、それに沖縄電力は値上げに向けた検討を始めると発表しました。

一方、北海道電力は「現時点で値上げは考えていない」としたほか、中部電力は「いまのところ考えてない」としています。

関西電力は「経営環境や経営効率化などを慎重に見極め、総合的に判断していきたい」として、現時点では白紙としています。

九州電力は「検討はするが、何とか頑張れる所までは頑張りたい」として、現時点では値上げしない方針を示しています。

五十嵐記者
五十嵐記者

実際どれくらいの値上げになりそうですか?

各社は現時点でどれくらい値上げするか表明していません。

これから具体的な検討を行うことになります。

ただ火力発電所に依存する割合など、電力会社ごとに事情は異なりますので、値上げの幅も変わってくると思います。

一方、政府に取材してみると、これまでに各社が負担している燃料高騰分を考慮すると2割から3割程度の値上げになるのではないかと話しています。

これを東京電力の料金にあてはめると、ことし12月分の電気料金は平均的な家庭で9126円となっていますので、2000円程度の値上げになる計算です。

五十嵐記者
五十嵐記者

政府は新たな経済対策をまとめ、電気料金の負担を軽減する支援制度を発表しましたよね。

この支援制度と値上げとの関係はどうなっているのですか?

もともと政府は、来年度早々にも各社が規制料金の値上げに踏み切るのではないかと見ていました。

その値上げ分を補てんするのが今回の支援制度の目的です。

政府では、毎月の電力使用量が400キロワットアワーの標準的な世帯の場合、2800円の補助になるとしていて、各社の値上げ分に相当する額になります。

五十嵐記者
五十嵐記者

値上げした分の補てんということなら、利用者の立場からすると負担軽減を感じにくいかもしれませんね。

最後に電気料金はこれからどうなっていくのでしょうか?

電気料金を左右する燃料価格ですが、今後も下がる見通しはありません。

専門家の間では、この先数年は高い水準が続くという見方があります。

そうした意味で、電気料金は高止まりの状況が続きそうです。

一方で忘れてはならないのは、政府が実施する支援制度の原資は、将来返済が必要となる国の借金でまかなわれているということです。

いつまでもそうした手法を続け、負担を将来に先送りするわけにもいきません。

こうしたなか政府は、燃料高騰対策として原発の最大限の活用を掲げています。

目標とする17基の原発を再稼働すると、およそ1兆6000億円の天然ガスを輸入せずに済むという試算もあります。

その一方で、原発をめぐっては、再稼働に慎重な意見があるのも事実です。

世界的なエネルギー危機をきっかけに、いま電力需給はかつてないほどひっ迫しています。

それだけに、火力だけでなく原子力や再生可能エネルギーといったさまざまな電源をバランスよく使うことの重要性が高まっています。

五十嵐記者
五十嵐記者