NEW2022年08月10日

どうなる4-6月のGDP 日本経済の先行きは?

経済成長をみるうえで最重要指標とも言えるGDP=国内総生産。今年4月から6月までのGDPの速報が8月15日に発表されます。コロナによるダメージからどこまで回復したのかをみる上でも重要な今回の発表。日本経済は今、いったいどうなっているの。内閣府担当の野上記者教えて!

4-6月期のGDPの発表が間近に迫ってますが、成長率はどうなりそうなんですか?

GDPは国内で行われた消費や生産などの経済活動を分析することで、日本経済がどの程度成長したかを明らかにする重要指標です。

4月から6月までの3か月間は、各地に出ていたまん延防止等重点措置が直前の3月に解除されて、行動制限が緩和された時期でした。

外出する人が徐々に増えてきたタイミングといえます。

この期間のGDP、民間のシンクタンクや証券会社など15社の予測をみると、全社が2期ぶりのプラスの成長を見込んでいます。

物価の変動を除いた「実質」で、年率換算1.4%から3.6%の伸びが予想されています。

項目では「個人消費」や「企業の設備投資」、「公共投資」といった要素がプラスに寄与するとみられています。

野上記者
野上記者

マイナスからプラスに転じるという予想なんですね。

はい。注目されるのはGDPの半分以上を占める個人消費です。

コロナで大きな打撃を受けた外食や旅行、レジャーなど、いわゆる対面型サービスの需要が戻り、個人消費が全体を押し上げるという見方で各社の予測は一致しています。

もう少し詳しく、この時期の個人消費に関連するデータをみてみましょう。

こちらは国内のホテルや旅館の宿泊者数の推移をあらわすグラフです。外国人の宿泊者数の伸び率は依然として低いですが、日本人の宿泊者はコロナ前と比較してー6.5%と、感染拡大前の水準に戻りつつあるのがわかります。

GDPの対象となる4月から6月までの期間、宿泊者数は前の年の同じ時期と比べても大きく増えていて、宿泊を伴った移動が徐々に増える傾向にあることがわかります。

一方、こちらはクレジットカードの利用情報をもとに消費の動向を調査したグラフです。

「消費全体の支出」は、4月から6月を通して感染拡大前の水準(2018年度までの3年間の同月平均。消費税率が引き上げられた2019年度を除く)を上回っています。

このうち、旅行や外食などの「サービス消費」については、感染拡大前と比べて、マイナス幅が縮小されて改善を続けているのが分かります。

この「サービス消費」が、今回のGDPのプラスをけん引する見通しです。

野上記者
野上記者

4-6月期は海外経済も似たような状況なのでしょうか?

状況は異なります。主要国の4月から6月までのGDPはすでに発表されています。

まず、アメリカ。

年率に換算した伸び率がマイナス0.9%と2期連続のマイナスとなりました。中央銀行にあたるFRBがインフレを抑えこむための利上げを急ピッチで進めた影響が出ています。

住宅投資が大幅に減少したほかこれまで堅調だった個人消費の伸びも鈍化し、景気の後退が強く意識されています。

そして、中国は年率でマイナス10%(内閣府試算)という大きな落ち込みとなりました。

新型コロナの感染再拡大を抑え込むため、上海などでとられた厳しい外出制限の影響でサプライチェーンが混乱したほか、外食など個人消費が打撃を受けました。

一方、ユーロ圏は年率でプラス2.8%と前の3か月の伸び率を上回りました。

ただ、ドイツのGDPの伸び率がゼロ%に落ち込み、ロシアの軍事侵攻によるエネルギー価格の高騰が域内最大の経済国に重くのしかかっています。

野上記者
野上記者

日本経済の先行きは、どうなりそうですか?

慎重な見方が多くなっています。

アメリカ経済の減速は鮮明になっていますが、急ピッチで進む金融引き締めが実体経済に与える影響はこれから本格化する可能性もあります。

インフレやエネルギー不足に悩まされているヨーロッパ経済の減速も懸念され、この先日本経済にも影響が及ぶおそれも指摘されています。

さらに、物価の上昇が続く中で、国内の消費の冷え込みも懸念されます。こちらは消費の先行きをみる上で気になるデータです。

消費者の買い物への意欲を示す「消費者態度指数」は、6月、7月と2か月連続で悪化しています。

新型コロナの感染が全国的に急拡大していることや、生活必需品の値上がりが続いていることが影響し、暮らし向きに対する消費者の心理も悪化の兆しを見せています。

今回発表されるGDPのその先をどう見るか、決して楽観できる状況ではないのは間違いなさそうです。

野上記者
野上記者