世界で争奪戦 航空燃料「SAF」 国産化の動きとは?
次世代の航空燃料と呼ばれる「SAF」(サフ)。
二酸化炭素の排出量を大幅に削減できるとして、今注目を集めています。実は食用油からも作れるという、この「SAF」を国産化しようという動きが始まっています。
一体、どういうこと?航空業界担当の真方健太朗記者、山下哲平記者、教えて!
そもそも「SAF」ってなんですか?
真方
記者
「SAF」は
Sustainable(持続可能な)
Aviation(航空)
Fuel(燃料)
この頭文字からとられています。
植物や廃油などから作ったバイオ燃料で、従来の原油からつくる燃料と比べて二酸化炭素の排出量を80%程度減らせるとされています。
航空機はほかの交通機関に比べて二酸化炭素の排出が多いとされ、航空機に乗るのは恥ずかしいという意味の「飛び恥」ということばも生まれているほどです。
SAFは、そんな航空分野の脱炭素に向けた切り札として注目されているんです。
今までの燃料は原油からつくっているから原料は輸入するしかなかったけど、バイオ燃料だったら国産も夢じゃないってこと?
真方
記者
そうなんです。
つい先日の3月2日、語呂合わせで「サ(3)フ(2)の日」に合わせて、この燃料を国産化するための新たな団体が立ち上がりました。
団体の名前は「ACT FOR SKY」。
全日空や日本航空、プラント建設の日揮ホールディングスのほか、原料となる廃油を提供する日清食品ホールディングスなど16社が参加しています。
でも、どうしてSAFを国産化する必要があるの?
真方
記者
国は、2030年までに国内の航空会社が使う航空燃料の10%をSAFに置き換える目標を掲げているんです。
今、日本はすべて輸入に頼っているんですが、脱炭素を目指すのは世界各国、どこの航空会社も同じこと。
各国の航空会社の間でSAFが争奪戦となっているんです。
目標の達成に向けて、SAFを安定的に調達するには、国産化が不可欠です。
さらにヨーロッパなどでは、航空会社に燃料の一定割合をSAFにするよう義務づける動きも出ています。
参加した企業は「国産化が実現できなければ、日本の航空機を海外で飛ばせなくなるのではないか」という強い危機感も持っています。
新しい団体では、業界の垣根を越えて協力し、国産化に向けた課題をクリアしようとしています。
なるほど切実なんですね。
でも、国産化に向けた課題ってなんですか?
山下
記者
ここからは、山下がお答えします。
最も大きな課題が「安定的な原料の調達」です。
SAFは古着や家庭ゴミ、それに使用済みの食用油といったさまざまな原料からつくることができます。
団体に参加している京都市の燃料メーカー「レボインターナショナル」では、全国の飲食店などおよそ2万5000か所から引き取った廃油などを原料にSAFを作ることを目指しています。
SAFの研究を行っている運輸総合研究所の試算では、国内にある使用済み食用油や家庭ごみなどをすべて生産に利用できれば、国内での航空機燃料のほぼ全量をSAFに置き換えられるとしています。
ところが、すでに本格的に生産を始めている海外の企業などが、使用済み食用油を高値で買い取るケースが増えていて、ここでも「争奪戦」が始まりそうな気配なんです。
原料めぐっても争奪戦!!
山下
記者
そうなんです。
取り合いが行われれば、原料となる廃油の値段も上がりかねません。
そこで、「製造コスト」も課題となってきます。
SAFは今のままでは従来の燃料の2倍から10倍のコストがかかるとされていて、メーカーが量産に踏み切るには、技術革新などによる大幅なコスト削減が不可欠となっているんです。
運輸総合研究所の松坂真史研究員は次のように指摘しています。
「SAFの国産化が進まなければ、物流が滞り、一人ひとりの経済生活にも影響が出かねない。今回の団体のような取り組みを通じてSAFの重要性を広く知ってもらい、多くの原料をSAFに振り向けられる社会をオールジャパンで実現していく必要がある」
国産SAFの実現は、航空業界の脱炭素だけでなく、日本のエネルギー業界の変革につながる可能性もあるだけに、今後も注目していきたいと思います。
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