“日本経済の体温計”が変わった!影響は?
私たち消費者が買うモノやサービスの値動きを示す「消費者物価指数」。物価が上がれば景気は過熱気味、逆に下がれば冷え込み気味ということで、“経済の体温計”の1つとされています。その消費者物価指数、8月に5年ぶりの見直しが行われました。何がどう変わったのでしょうか? 9月8日の「ニュース シブ5時」で永野解説委員が解説しました。
阿部アナ
そもそも「消費者物価指数」ってなんですか?
永野解説委員
消費者がお金を払ってモノやサービスを買う「小売段階」の物価の動きを示したものです。総務省が合計582品目を調べ、「総合指数」にまとめて毎月発表しています。CPI(Consumer Price Index)という略称で呼ばれることもあります。
基準となる年の指数を100として、このときよりどれだけ物価が上がったか、下がったかを比べます。年金額や給料にも影響する大事な経済指標の1つなんです。
守本アナ
5年ぶりに見直しが行われたということですが、どう変わったのですか?
永野解説委員
指数の計算のしかたが変わったんです。「基準改定」と言って、具体的には価格を調査する品目を入れ替えました。
総務省は「消費者のライフスタイルの変化に合わせた」としていて、およそ30品目になります。
除外されたのは、◇固定電話、◇ビデオカメラ、◇辞書などです。
阿部アナ
なんとなく共通点が分かります。スマートフォンの影響ですよね?
永野解説委員
そのとおりです。スマートフォンで撮影したり、ことばの意味を調べたりという人、多いですよね。こうした品目が除かれた代わりに、◇タブレット端末が加わりました。そのうえで、指数を計算する際、携帯電話の通信料の比重をこれまでより大きくしました。
ほかには、◇味付け肉、◇カット野菜などが取り込まれました。共働きの世帯が増えて、調理にかける時間をなるべく短くしたいというニーズが高まっていることを踏まえたそうです。
「基準改定」は5年ごとに行われていて、ちなみに10年前は写真用のフィルムが除かれ、メモリーカードが加えられました。
守本アナ
消費者物価指数の調査品目から「時代の移り変わり」が見えてきますね。
永野解説委員
そうですよね。ここからがもっと大事なんですが、こうやって計算のしかたを変えると、当然、消費者物価指数に影響が出ます。実は、指数の伸びが“押し下げられた”んです。
天候の影響を受けやすい生鮮食品を除いた総合指数で見ますと、6月は、見直し前だと去年の同じ月に比べてプラス0.2%で、小幅な“上昇”でした。しかし、見直し後はマイナス0.5%と、逆に“下落”したんです。
7月の指数もマイナス0.2%で、統計の見直しを過去にさかのぼって当てはめた結果、12か月連続の下落となりました。
守本アナ
見直しの影響、大きかったんですね。
永野解説委員
そうですね。影響は、日銀の金融政策の運営にも及ぶのではないかとみられています。
日銀は2013年1月、政府と出した「共同声明」で2%の物価上昇率を目標に掲げました。この目標は8年余りにわたって実現できていませんが、今回の見直しで目標の達成が一段と遠のいたという指摘もあります。
阿部アナ
今の状況を考えると、目標とは相当距離がありますよね。
永野解説委員
日銀の黒田総裁は、9月で在任期間が8年半を超えて歴代最長になります。任期は2023年4月までですが、この間に物価目標を達成するのは極めて困難と言わざるをえません。
今後新しい内閣が発足するのを機に、政府と日銀で今の目標の在り方を点検する、そして国民に改めてその必要性などを分かりやすく説明することが大事になってくるのではないかと思います。
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