NEW2021年03月31日

「税込み」を義務化ってどういうこと?

店頭で表示されている価格は980円。でも会計のため商品をレジに持っていくと、店員から告げられるのは「1078円です」。1000円を切ると思っていたのに、ちょっとがっかり…。そんな思いをする機会は少なくなるかもしれません。
4月1日から、モノやサービスの価格表示で「税抜き」に加えて、消費税を含めた価格を明示する「税込み」の価格表示が義務づけられます。
なぜ今、義務化されるのでしょう?
買い物にはどういった影響があるのでしょうか?

店の値札が「税込み価格」になるんですね?

そうなんです。
モノやサービスの値段である「本体価格」に、消費税分を加えた税込み価格で表示する「総額表示」が4月1日から義務づけられます。

もともとの価格が9800円の商品の場合、消費税10%を加えた10780円が「総額表示」の価格です。

では、店頭の値札で総額表示をする場合、下記の5つのパターンのどれが該当すると思いますか?

(1)は税込み価格だけを表示していて、総額表示にあたります。

(2)は税抜きの本体価格が書かれていますが、税込み価格も明示されているので、これも総額表示にあたります。

(3)は税込み価格が少し小さい文字になっていますが、明示されているのでこれも総額表示として認められます。

政府は、消費者にとって税込み価格が「明確に」表示されていることが重要だとしています。

税込み価格の表示が税抜き価格と比べて極端に小さかったり、税込み価格が背景の色と一体化して見えにくい場合などは、総額表示とは認められないとしています。

(4)の税込み価格は、文字が小さすぎてほぼ読めませんね。

(5)は税込み価格がまったく表示されていません。

法律に罰則はありませんが、政府は、事業者が税込み価格を表示していなかったり、税込み価格を極端に小さく表示したりしていた場合には、税務当局などが改善を求めて指導を行うこともあり得るとしています。

なぜ今、総額表示が義務づけられるのでしょうか?

総額表示は、実は2004年4月に義務化されていました。

当時から小売業界では税抜きで価格を表示することが一般化していましたが、消費者が支払う価格を一目でわかるようにするため、義務化されました。

ただ、消費税を5%から8%に引き上げる前の2013年10月に、条件付きで税抜き価格の表示も認める特別措置法が施行されました。

この特別措置法が、消費税率を10%に引き上げてから1年半が経過した3月末で失効することから、4月1日から再び総額表示が義務づけられます。

総額表示の義務化は、値札だけでなく、チラシや看板、ポスターなど幅広いものが対象です。ちなみに「100円ショップ」の場合、財務省は、店の名称としてすでに定着していることなどから、「110円ショップ」に変更する必要はないものの、店内の商品には税込みの価格を表示する必要があるとしています。

買い物への影響はあるのでしょうか。

消費者としては、税込みの価格が明示されることで実際に支払う金額が明確になるメリットがあります。

ただ小売業界を中心に、見かけの価格が上がることで、消費者の目には値上げのように映り、買い渋りにつながると懸念する声もあります。

実際に総額表示が義務化された2004年4月に、全国のスーパーの売り上げが前年の4月よりも4.4%減少したというデータもあります(日本チェーンストア協会が行った調査)。

このため、今回の義務化にあわせて値下げに踏み切る企業もあります。

《ユニクロ》
総額表示にしてもこれまでの表示価格を変えなくてすむよう税抜き価格を値下げ。
例えば、これまで税抜き1990円だった商品は、税込みで1990円となるよう本体価格を値下げします。

《NTTドコモ》
データ使用量20ギガバイトのプランの料金を当初、打ち出した月額2980円から2700円に引き下げ。
税込みでも2970円となり、総額で3000円を下回るとして割安感をアピールしています。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングの藤田隼平研究員は、「総額表示が消費者には値上げととらえられ財布のひもが固くなるおそれはありますが、支払う金額は変わらないため、影響は徐々に薄れるでしょう。しかし、企業は値上げが客離れのリスクになると考えるので、消費者の反応や競合する他社の動向を見ながら試行錯誤しつつ価格を設定していくことになるでしょう」と分析しています。

毎日の買い物で気になる値段。税抜き表示が税込み表示になることで、今後の企業の価格戦略や、消費者の買い物の仕方に変化が現れてくる可能性もありそうです。