新型コロナでエンタメ業界どうなった?
松竹は赤字、東宝は大幅減益…。最近、発表された映画会社2社の中間決算です。わたしたちに夢を与えてくれるはずのエンタメ業界も、新型コロナウイルスの影響を大きく受けています。このところ、映画館や劇場にはにぎわいも戻り始めているようですが、エンタメ業界は復活できるのでしょうか?経済部で流通やサービス業を担当する取材キャップの吉田稔記者に聞きます。
新型コロナによるエンタメ業界への打撃は大きいですよね。
吉田記者
そうですね。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、全国の映画館や劇場はことし2月以降、次々と休業を余儀なくされました。各地で予定されていた映画祭も中止。演劇や歌舞伎の公演も休演が続いたんです。
音楽のライブやコンサート、宝塚歌劇なども次々と休演になり、がっかりした人も多いでしょう。4月には緊急事態宣言が全国に拡大し、全国の映画館が休止になるなど、影響は広がりました。
大手映画会社「松竹」と「東宝」の、ことし8月までの中間決算で打撃の大きさが数字で表れました。
松竹は前年同期比で売り上げが60%の減少、90億円を超える最終赤字となりました。東宝は売り上げが48%の減少、最終利益は黒字を確保したものの、80%を超える大幅な減益となりました。
両社とも感染拡大の防止に取り組んだ結果で、赤字や大幅減益は「しかたのないこと」とは言え、かなりの打撃です。
新型コロナがまだおさまらない中、エンタメ業界には明るい話題を提供してほしいけど、この先、大丈夫でしょうか?
吉田記者
明るい話題がないわけでもないんです。
5月以降、映画館や劇場は営業を再開しています。当初は感染を抑えるため入場者を50%に制限していましたが、今は、食べ物を販売しないことなど、一定の条件のもと100%の開放も認められています。
そして、こうした環境下でも、映画のヒット作が生まれています。
松竹は8月に公開した「事故物件 恐い間取り」が若者を中心に人気を集めました。東宝も、漫画を実写化して7月に公開した「今日から俺は!!劇場版」が興行収入50億円を超えるヒット作となりました。6月からリバイバル上映した、「風の谷のナウシカ」や「もののけ姫」などスタジオジブリの4作品も盛況だったそうです。
海外でも感染が広がっている中、洋画はどうなっているの?
吉田記者
そこは相変わらず厳しい状況のようです。本来なら夏休みシーズンに向けて、大型作品の配給が集中しますが、映画の本場アメリカは今も感染がおさまらない状況が続いていて、この夏に配給が予定されていた作品も延期が相次ぎ、東宝によりますと、ことしはほとんど配給がない見込みだということです。
ただ、今の状況を逆手にとった新たな収益につながりそうな事業も生まれています。
松竹は看板事業とも言える歌舞伎を、ネットで配信する試みを始めています。また、演劇のリハーサル映像を映画館で上映する事業も始めました。こうした取り組みで収益改善を図りたい考えです。
また、東宝が行っているのが演劇のネット配信。東宝の劇場はまだ50%の入場制限を行っていて、入場収入では赤字にならざるをえない状況ですが、有料ライブ配信の収入が大きな利益を上げているそうです。
巣ごもり消費をうまく取り込んだ好例と言えるのではないでしょうか。
音楽ではサザンオールスターズのライブの有料配信が大きな話題となりましたし、クラシック音楽やバレエなどさまざまなジャンルで有料配信は広がっていて、新たなトレンドになっていると思います。
エンタメ業界の復活も近いのでしょうか?
吉田記者
それは簡単ではなさそうです。
松竹は来年2月までの通期の決算も170億円を超える最終赤字を見込み、慎重な見方を崩していません。また、東宝も回復の足取りは重いとして、前年に比べて75%の大幅減益の予想です。
それでも、人気アニメ「鬼滅の刃」の劇場作品の公開が始まりました。前売り券の発売も非常に好調だということで、映画館によってはこれまで50%に制限していた入場者数を、この公開に合わせて100%に引き上げるところもあります。
感染が収束せず、暗い気分になりがちですが、映画界でどんどんヒットが生まれて、エンタメ業界が活気づくことで、少しでも社会全体に明るい雰囲気が広がることを期待したいですね。
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